70歳以上の従業員も社会保険に加入する?年齢別の手続きや注意点を解説

少子高齢化が進む現代では、70歳以上になっても働く方が多くいます。70歳以上の従業員も社会保険に加入させる必要があるのか、必要な手続きは何かがはっきりわからず、対応に戸惑う人事担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、70歳以上の従業員が加入する社会保険を種類ごとにまとめ、必要な手続きと注意点を解説します。人事担当として必要な対応を取れるよう、正しい取り扱いを押さえましょう。
社会保険の全体像を知りたい方は、次の関連記事をご覧ください。
関連記事:社会保険とは?概要や手続き・必要書類、加入条件、法改正の内容を徹底解説
目次
従業員の入退社、多様な雇用形態、そして相次ぐ法改正。社会保険手続きは年々複雑になり、担当者の負担は増すばかりです。
「これで合っているだろうか?」と不安になる瞬間もあるのではないでしょうか。
とくに、加入条件の適用拡大は2027年以降も段階的に実施されます。
◆この資料でわかること
- 最新の法改正に対応した、社会保険手続きのポイント
- 従業員の入退社時に必要な手続きと書類の一覧
- 複雑な加入条件をわかりやすく整理した解説
- 年金制度改正法成立によって、社会保険の適用条件はどう変わる?
この一冊で、担当者が押さえておくべき最新情報を網羅的に確認できます。煩雑な業務の効率化にぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 70歳以上の従業員が加入する社会保険の種類


社会保険は、種類によって被保険者資格を喪失する年齢が異なります。70歳以上での加入要否と年齢要件は次のとおりです。
|
社会保険の種類 |
70歳以上の加入 |
被保険者資格を喪失する年齢要件 |
|
健康保険 |
要 |
75歳未満まで |
|
介護保険 |
要 |
なし |
|
厚生年金保険 |
不要 |
70歳未満まで |
ここでは、健康保険と厚生年金保険、介護保険それぞれの加入年齢について解説します。
1-1. 健康保険:75歳未満まで継続
健康保険は70歳以上になった場合も、75歳に達するまでは被保険者資格が継続します。健康保険料の負担額や給付の内容も変わりません。
75歳になると健康保険から後期高齢者医療制度に移行します。後期高齢者医療制度とは、75歳以上の方や一定の障害がある65歳以上の方を対象とした医療保険制度です。
75歳になるとそれまで加入していた医療保険制度の被保険者資格は喪失し、原則として全員が後期高齢者医療制度に加入します。後期高齢者医療制度の保険料は個人ごとに算定され、原則として年金から天引きされます。
関連記事:健康保険料はいくら?仕組みや計算方法をくわしく解説!
1-2. 介護保険:70歳以上も継続
介護保険の被保険者資格は70歳以上も継続しますが、65歳以降の介護保険料は、給与から控除する必要はありません。
介護保険の被保険者は、40歳以上65歳未満までの第2号被保険者と、65歳以降の第1号被保険者に分かれます。第2号被保険者の介護保険料は毎月の給与から控除され、企業負担分と合わせて納付します。一方、第1号被保険者の介護保険料は全額が被保険者負担で、徴収方法は原則として年金からの天引きです。
従業員が第1号被保険者となり、給与からの保険料控除や企業負担分がなくなっても、本人の被保険者資格が継続している点は押さえましょう。
関連記事:介護保険料はいつから支払う?開始時期や保険料について解説
1-3. 厚生年金保険:70歳になると喪失
70歳以上と70歳未満で大きく異なるのが厚生年金保険の被保険者資格です。従業員が70歳に達すると、被保険者資格を喪失します。
喪失したあとも働き続ける場合「70歳以上被用者」に該当しますが、保険料を納付する必要はありません。
関連記事:厚生年金保険料とは?保険料率や計算方法などわかりやすく解説
2. 70歳以上の従業員に必要な社会保険手続き


70歳以上の従業員に必要な社会保険の手続きは、在籍する従業員が70歳以上になった場合と、70歳以上の従業員を新たに雇い入れた場合で異なります。
ここでは、従業員が70歳に達した場合や、新たに70歳以上の従業員を雇い入れた場合、退職した場合の手続きを解説します。
2-1. 70歳以上被用者とは
「70歳以上被用者」とは、厚生年金保険の被保険者資格を70歳到達日に喪失したあとも、適用事業所で働き続ける従業員です。下記の要件を満たした場合、70歳以上被用者に該当します。
- 厚生年金の適用事業所に勤務している
- 70歳以上である
- 厚生年金の被保険者期間を有する
- 年齢以外の厚生年金の被保険者要件を満たす
70歳以上被用者の場合、給与や賞与から厚生年金保険料を控除する必要はありませんが、在職老齢年金の該当有無や調整額の算出のために、標準報酬月額に相当する額や、賞与の額を日本年金機構に届け出なければなりません。
在職老齢年金とは、企業から受け取る報酬の額に応じて受給できる年金額が調整される制度です。なお、一般従業員だけでなく、要件を満たせば役員も70歳以上被用者に該当します。
2-2. 従業員が70歳になったときの手続き
すでに雇い入れていた従業員が70歳に達した場合、厚生年金保険の被保険者資格は年金機構が喪失手続きをします。人事担当者の手続きは原則として不要ですが、年金機構から届く次の書類に誤りがないか確認し、必要に応じて問い合わせましょう。
- 厚生年金保険被保険者資格喪失確認通知書
- 厚生年金保険 70 歳以上被用者該当および標準報酬月額相当額のお知らせ
従業員が70歳に到達した際、契約変更などで標準報酬月額が変わる場合は例外として「厚生年金保険 被保険者資格喪失届/70歳以上被用者該当届」を提出しなければなりません。
該当する場合は、70歳に到達した日から5日以内に、事業所の所在地を管轄する年金事務所に提出しましょう。
70歳になったときに必要な手続きは厚生年金のみです。健康保険の資格は継続するため、資格喪失の届出や資格確認書の回収は不要です。
高齢受給者証が届いた場合は、本人に交付しましょう。高齢受給者証とは、医療機関での自己負担割合を判定するための、健康保険に関する証書です。従業員が70歳以上になると、所得の状況に応じて医療機関での自己負担割合が1〜3割の範囲で変動します。70歳以降、医療機関にかかる場合は高齢受給者証の提示が必要です。
なお、2024年12月2日より、従来の高齢受給者証の新規発行は原則として終了しました。マイナ保険証で受診すれば、高齢受給者証を提示する必要はありません。マイナ保険証を保有していない方には、自己負担割合が記載された『資格確認書』が交付されます。
健康保険組合によっては、被保険者から申請がない限り、高齢受給者証を交付しない場合もあります。自社が健康保険組合に加入している場合、申請が必要か確認しましょう。
2-3. 70歳以上の従業員を雇い入れたときの手続き
新たに70歳以上の従業員を雇い入れた場合の手続きは、原則として70歳未満の従業員を雇い入れた場合と変わりません。加入条件を満たす場合は「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届/厚生年金保険 70歳以上被用者該当届」を提出します。
ただし、厚生年金保険の資格取得届は、70歳以上被用者該当届として扱われます。備考欄の「1.70歳以上被用者該当」に丸をつけて提出しましょう。
2-4. 70歳以上の従業員が退職したときの手続き
70歳以上の従業員が退職した場合の手続きも、70歳未満の従業員が退職したときと基本的に同じです。「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届/厚生年金保険 70歳以上被用者不該当届」を提出しましょう。
70歳未満の場合と異なる点として「⑧70歳不該当」欄の記入が必要です。「70歳以上被用者不該当」と書かれた横のチェックボックスにチェックを入れ、「不該当年月日」欄に日付を記入します。
記入する日付は退職または死亡した日当日です。翌日ではないため注意しましょう。
3. 75歳以上の従業員に必要な社会保険の手続き


従業員が75歳になると、健康保険の資格を喪失し、後期高齢者医療制度へ移行します。従業員が75歳になった場合に必要な手続きを解説します。
3-1. 健康保険から後期高齢者医療制度へ移行する
従業員が75歳に達すると、健康保険の被保険者資格を喪失し、後期高齢者医療制度へ移行します。
後期高齢者医療制度とは、75歳(一定の障害がある場合は65歳)以上の方全員が加入する医療保険です。一般的に医療にかかる機会が多い高齢者向けに、健康保険よりも医療負担や高額療養費の自己負担額が抑えられています。
後期高齢者医療制度の保険料は、原則として従業員本人の年金から全額天引きされるため、健康保険のように給与から保険料を控除したり、企業が半額負担したりする必要はありません。
従業員が健康保険の被保険者資格を失うと、被扶養者も同時に健康保険の資格を失います。扶養から外れた親族は、国民健康保険への加入手続きが必要です。
参考:後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?|政府広報オンライン
3-2. 従業員が75歳になったときに必要な手続き
従業員が75歳になったときは、健康保険の資格喪失届を提出します。厚生年金保険のように自動的に喪失するわけではないため注意しましょう。
資格喪失日は、75歳に達した日の翌日、つまり誕生日当日です。健康保険被保険者資格喪失届の「⑥喪失(不該当)原因」欄で「7.75歳到達(健康保険のみ喪失)」に丸をして提出します。提出期限は75歳の誕生日から5日以内です。
参考:従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き|日本年金機構
4. 70歳以上の従業員の社会保険に関する注意点


70歳以上の従業員の社会保険は、現役世代とは取り扱いが異なる点が多々あります。正しく対応できるよう、実務で間違えやすい注意点を4つ紹介します。
4-1. 年齢到達日は誕生日の前日
社会保険の年齢到達日は、誕生日の前日です。法律上、年を取るのは誕生日前日が終了する瞬間(午後12時)とされており、生まれた日の前日に1歳加算されます。70歳に達する日は、70歳の誕生日「前日」です。
社会保険では「年齢到達日が属する月」という表現がよく出てくるため、到達日のルールを正しく押さえないと、手続きや給与計算を誤る可能性があります。普段の生活ではあまり馴染みのない考え方ですが、社会保険の実務では必須の知識です。
月の初日が誕生日の従業員には特に注意しましょう。初日が誕生日の場合、生まれた月の前月が法律上の「年齢到達日が属する月」です。
例えば4月1日生まれの従業員の場合「年齢到達日が属する月」は4月にはなりません。年齢到達日が3月31日で「年齢到達日が属する月」は3月です。
年齢到達日の扱いが間違っていると、何月まで社会保険に加入していたか、社会保険料をいつの給与まで控除するかを誤るおそれがあります。社会保険では重要な論点のため、必ず押さえましょう。
4-2. 厚生年金保険料の控除がなくなるタイミング
多くの企業の場合、厚生年金保険料の控除がなくなるタイミングは70歳に達する日が属する月の翌月です。
厚生年金保険料は、資格を喪失した月の前月分、70歳到達により資格を喪失する場合は、70歳に到達した月の前月分まで負担します。例えば4月に70歳に達する従業員の場合、前月の3月分まで給与から保険料を控除しなければなりません。
厚生年金保険料の納付期限が翌月末のため、多くの企業では前月分を給与から控除しています。3月分の保険料は、4月に支給する給与から控除するのが一般的です。
結果的に、70歳に達する月に支給される給与まで保険料を控除し、翌月から控除がなくなります。
4-3. 賞与支払届の提出は必要
70歳以上になって厚生年金保険の被保険者資格がなくなっても、賞与支払届は提出します。
賞与支払届とは、賞与の支給額を年金機構に報告する書類です。年金機構は賞与支払届にもとづき、保険料や在職老齢年金の計算をします。
在職老齢年金とは、収入が高い方を対象に、老齢厚生年金の支給額を調整する仕組みです。標準報酬月額と、標準賞与額を12で割った額、老齢厚生年金の月額の合計が65万円を超えた場合、年金の支給額が調整されます。
「被保険者資格がない従業員の賞与支払届は提出不要」と覚えている方ほど、70歳以上被用者の届出を忘れやすくなるため、注意しましょう。
4-4. 高齢任意加入被保険者資格取得申出/申請書の提出が可能
「高齢任意加入被保険者資格取得申出書」とは、70歳に達するまでに老齢年金の受給資格である10年の納付・免除期間がない従業員が、特例として70歳以降も厚生年金に加入する場合に必要な申出書です。
「70歳到達時の厚生年金資格喪失」や「70歳以上被用者」とは異なり、本人が希望しなければ申し出る必要はありません。
申出ができる従業員には、70歳に達する前に制度を案内しましょう。
「高齢任意加入被保険者資格取得申請書」は、厚生年金保険の適用事業所以外で働く70歳以上の従業員が、任意加入を希望する場合に提出する書類です。従業員が申し出れば無条件に加入できるわけではなく、事業主の同意や厚生労働大臣の認可が必要になります。
参考:70歳以上の方が厚生年金保険に加入するとき(高齢任意加入)の手続き|日本年金機構
5. 70歳以上の従業員がいる企業は社会保険の手続きに気をつけよう


社会保険は、従業員の年齢に応じて扱いが変わります。70歳になると厚生年金保険の資格を喪失する、75歳になると健康保険から後期高齢者医療制度へ移行する点がポイントです。
高齢化が進み、70歳以上になっても働く従業員は今後も増えると見込まれます。年齢ごとに必要な手続きを忘れずおこないましょう。



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