退職日で社会保険料はいくら変わる?月末・月中の違いを徹底解説
更新日: 2026.4.17 公開日: 2022.3.18 jinjer Blog 編集部

給与から控除する社会保険料は、従業員がいつ退職するかによって異なります。特に、退職日が月末かどうかで、最終月の給与から社会保険料を控除するかが変わるので注意しなければなりません。
本記事では、退職日による保険料額の差や月の途中で退職するときの注意点、従業員が退職後に支払う社会保険料の種類を解説します。
目次
給与計算業務でミスが起きやすい社会保険料。保険料率の見直しが毎年あるため、更新をし損ねてしまうと支払いの過不足が生じ、従業員の信頼を損なうことにもつながります。
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1. 退職日によって社会保険料はどう変わる?【退職日別に解説】


社会保険料(本記事では健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料と定義)は、従業員がいつ退職したかによって、給与から控除する額が変わります。具体的にいうと、月末か月中のいずれかの日に退職するかによって、控除額が変わるのです。
ここでは、退職日により社会保険料額がどのように変わるかを解説します。
1-1. 月末の1日前に退職したとき
はじめに、月末の1日前に退職した場合を解説します。例えば、5月の月末の1日前の5月30日に退職する場合は、社会保険の資格喪失日は5月31日です。そのため、月末時点で社会保険の資格を失うため、5月分の社会保険料がかかりません。
社会保険料というのは、控除する月の前月分を給与から控除するので、この場合、社会保険料の支払いは4月(前月)分のみとなります。


1-2. 月中に退職したとき
次に、月中に退職した場合を解説します。月中は、月末の1日前の退職と同じように、納める社会保険料は前月分までです。例えば5月15日に退職した場合、資格喪失日は16日となるため、4月分の社会保険料のみを控除します。


1-3. 月末に退職したとき
最後に、月末に退職した場合を解説します。例えば、5月31日に退職した場合は、社会保険の資格喪失日が翌日の6月1日です。そのため、4月分と、5月分の社会保険料を支払わなければいけません。


よって給与が当月払いの場合、月末退職のときは、社会保険料を2ヵ月分控除します。ただし、この2ヵ月分の社会保険料の控除が必要なのは給与が当月払いの場合です。給与が翌月払いのときは、このような月末日の退職時に2ヵ月分の社会保険料を控除するという工程は発生しません。
なお、従業員は社会保険料の支払いの仕組みを知らないことが少なくありません。そのため、社会保険料が2ヵ月分控除されていることに対し、「なぜ今月は社会保険料がいつもより高いのか」といった質問がよくあります。このような質問を事前に解消しておくためにも、社会保険料は退職月の給与から2ヵ月分まとめて控除する場合は、事前に従業員に伝えておくとよいでしょう。
1-4. 社会保険上の退職日に平日・休日の差はない
退職日は、平日・休日どちらでも、実務上の違いはなく、月末が土日祝日であったとしても、社会保険上の退職日が前倒しになることはありません。
ただし、会社の休日に退職日が重なる場合は、健康保険証の回収を最終出勤日にするか、後日郵送してもらうかしっかりとした取り決めをしておきましょう。担当者は、資格喪失日から5日以内に資格喪失の手続きをおこないます。
参考:従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き|日本年金機構
1-5. 社会保険料は日割り計算ではなく月割りで計算する
社会保険料は日割り計算ではなく、1ヵ月単位の月割りで計算して納付します。また、保険料は月末時点で社会保険の資格があるかどうかによって、その月分が発生するか決まります。
そのため月途中で退職した場合は、その月の社会保険料はかかりません。ただし、入社した月と同じ月に退職する場合は、例外です。厚生年金保険は保険料が発生しませんが、健康保険料と介護保険は保険料の納付が必要となるので注意しましょう。
関連記事:社会保険料の計算方法とは?給与計算や社会保険料率についても解説
1-6. 退職日による社会保険料負担の計算シミュレーション
退職日によって退職月の給与から控除される社会保険料がどのように変わるかをシミュレーションしましょう。なお、ここでいう退職月の給与とは、最後に支払われる給与のことです。給与が翌月払いの場合は、退職した月の翌月に支給される給与を指します。
▼シミュレーションの条件
- 全国健康保険協会東京支部加入
- 標準報酬月額 280,000円
- 40歳未満(介護保険料は発生しない)
- 同月での入社、退職ではない
- 毎月の給与の本人負担分の保険料額
- 健康保険料 13,790円
- 子ども子育て支援金 322円
- 厚生年金保険料 25,620円
参考:令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
▼給与が当月払いの場合
- 月末の退職
-
前月分と退職月の2ヵ月分社会保険料の控除
(13,790円+322円+25,620円)×2ヵ月=79,464円
社会保険料は健康保険法第167条、厚生年金保険法第84条により、給与支給月の前月分を控除します。ただし例外的に、月末退職の場合は当月分の社会保険料も控除可能です。そのため、給与が当月払いで月末退職の場合は、前月分と退職月の社会保険料の2ヵ月分をまとめて控除します。
- 月末1日前を含む月中の退職
-
前月分の社会保険料のみの控除
13,790円+322円+25,620円=39,732円
月末1日前を含む月中退職の場合は、当月分の社会保険料が発生しません。そのため、前月分の社会保険料のみの控除となります。
▼給与が翌月払いの場合
- 月末の退職
-
前月分の社会保険料のみの控除
13,790円+322円+25,620円=39,732円
- 月末1日前を含む月中の退職
- 最終月の給与から社会保険料は控除しない
月中退職の場合は、当該月の社会保険料は発生しません。つまり、最終月の給与から引くべき社会保険料が発生していないこととなります。そのため、最終月の給与からは社会保険料は控除しません。
関連記事:社会保険料の計算方法とは?計算例を交えて給与計算の注意点や条件を解説
2. 社会保険料の資格喪失日は退職日の翌日


前章で解説したように、退職日が月末かそれ以外の日付かによって、社会保険料額に差が出ます。これは、社会保険の資格喪失日の考え方が原因です。
社会保険の資格喪失日は、退職日その日ではなく退職日の翌日と定義されています。これは、退職日までは会社に在籍しており、社会保険の資格もその日まで有効だからです。例えば、退職日が5月31日なら、資格喪失日は6月1日となり、前月である5月分まで保険料の納付が必要になります。
さらに実務上の注意点として、給与からの控除タイミングが挙げられます。通常、社会保険料は「当月の給与から前月分の保険料」を差し引く形をとりますが、月末退職の場合には特例が認められています。その特例とは、退職月の給与において、本来のスケジュールである前月分に加え、当月分の保険料も併せて一括控除が可能になる、というものです。このように、喪失日の定義と控除の特例が重なることで、月末退職時には、ほかの時期とは異なる精算が発生します。
2-1. 保険適用で病院にかかれるのは退職日まで
社会保険の資格喪失日は、退職日の翌日です。したがって、その会社で加入している健康保険を利用して病院を受診できるのは退職日までです。退職日の翌日以降は資格を失うため、退職前に加入していた健康保険での受診はできません。資格確認書も返却する必要があります。
また、会社によっては資格確認書を退職日の前に回収する場合もあるでしょう。この場合、退職日当日であっても医療機関で資格を証明できなくなり、従業員が全額自己負担を求められる可能性があります。退職日に受診予定がある従業員には申し出をしてもらい、受診後に速やかに返却できるように調整しておきましょう。
3. 月の途中退職で注意すべき社会保険料のケース


月の途中で退職しても、基本的には前月分の社会保険料を従業員の給与から控除すれば問題ありません。
しかし、入社当月に退職するなど稀なケースでは、処理方法が異なるため注意が必要です。次に、月の途中退職の社会保険料で注意しておくべきポイントを解説します。
3-1. 入社した当月に退職した場合(同月得喪)
社会保険は入社日が資格取得日となるため、その月分から保険料を納めます。これは、月の途中から入社したときも同じ対応です。
例えば、4月3日に入社して4月5日に退職した人は、2日間しか出勤していなくても、1ヵ月分の社会保険料を納めなくてはなりません。
本来、社会保険料は前月分を控除しますが、同一の月に資格の取得と喪失があれば、当月の給与から保険料の控除が可能です。なお、給与が少なく保険料を控除できないときは、従業員に別途請求し、支払ってもらう必要があるので、退職前に伝えておくようにしましょう。
3-2. 入社当月に退職し、同じ月に別の社会保険に加入した場合
入社した月に退職した人が、同じ月に別の会社の厚生年金保険や国民年金保険に加入した場合には、より注意が必要です。社会保険のうち、厚生年金保険は後に取得した資格が優先されます。そのため、退職した従業員から厚生年金保険料を給与から控除していた場合、会社は退職した従業員に厚生年金保険料の返還をしなければなりません。
一方、健康保険にはこのような同月得喪の調整制度がありません。そのため、同じ月に複数の資格がある場合は、それぞれで保険料が発生します。そのため、会社は1ヵ月分の保険料を納付しなければなりません。健康保険料は、従業員の給与から控除するようにしましょう。
3-3. 賞与支給後に退職した場合
社会保険料は給与だけでなく、賞与からも控除が必要です。しかし、控除は「退職する月の末日に会社に在籍している」というのがポイントになるので、退職日によって控除するかどうかが変わります。
例えば、7月10日に賞与を支給して、7月20日(末日以外の日)に退職をするのであれば、賞与から保険料を控除する必要はありません。一方、7月31日(末日)に退職をする場合は控除する必要があるので間違えないようにしましょう。
関連記事:賞与から控除する社会保険料の計算方法とは?保険料率や給与との違いも解説
3-4. 健康保険証(資格確認書・マイナ保険証)の回収と空白期間の対応
社会保険は、退職日の翌日に喪失します。そのため、退職者には資格喪失の説明をおこない、資格確認書を速やかに回収する必要があります。月の途中で退職した場合でも、退職日の翌日以降は保険証を利用できません。万が一、資格喪失後に医療機関で資格確認書を使用すると、後日、従業員本人へ医療費の請求が届きます。
さらに、退職後すぐに転職先で社会保険手続きが完了するとは限らず、「新しい資格確認書が届く」または「マイナ保険証が利用できる」までの間に空白期間が生じる場合があります。この期間に受診が必要な従業員には、その健康保険の窓口で「健康保険被保険者資格証明書」を申請するよう案内してください。この資格証明書は資格確認書と同様に利用できます。
また、医療機関で一度医療費を10割負担し、保険負担分を療養費として後日請求することも可能です。
参考:従業員に健康保険被保険者資格証明書を交付するときの手続き|日本年金機構
参考:よくある質問:マイナンバーカードの健康保険証利用について|デジタル庁
月途中での退職では、原則会社が退職月の社会保険料を控除する必要はありません。ただし、退職者の社会保険料が免除されているわけではなく、退職後も空白期間なく何らかの社会保険に加入する必要があります。
つまり今までは会社が負担してくれていた保険料分も自身で負担するということです。そのため、退職日を何日にするかで本人負担分の保険料が変わりトラブルにつながるケースも少なくありません。
こうしたトラブルを防ぐためにも退職日と社会保険の関係を十分に理解し、退職前に従業員に伝えておくことが重要です。また、同月得喪などのようなイレギュラーなパターンの時、社会保険料がいつまでかかるのか分からなくなったら、事前に年金事務所などに確認を取りましょう。
4. 退職後に従業員が加入する社会保険の種類と注意点


退職者が支払う社会保険料は、退職後に加入する社会保険によって異なります。説明を間違えるとトラブルにつながる部分でもあるため、退職者に質問されたときに案内できるように、正しく理解しておきましょう。
4-1. 退職後に加入する社会保険の種類
従業員が退職後に加入する社会保険には、年金で3つ、健康保険で4つの選択肢があります。
【年金】
- 転職先の厚生年金保険
- 国民年金
- 配偶者の被扶養者になる
【健康保険】
- 転職先の健康保険制度(協会けんぽ・健康保険組合)
- 健康保険の任意継続
- 国民健康保険
- 健康保険加入者の被扶養者になる
特に迷うのが、健康保険の任意継続と国民健康保険の選択です。保険料や給付内容の違い、加入条件、手続き方法などを整理したマニュアルを用意して案内すると、退職者にとって親切な対応となるでしょう。次の章で詳しく解説します。
関連記事:社会保険と国民健康保険の切り替え手続きとは?タイミングや注意点を解説
4-2. 国民健康保険・任意継続保険の保険料の違い
従業員が退職後、誰かの扶養家族にならず転職先が決まっていない場合などは、国民健康保険か健康保険の任意継続に加入します。それぞれの特徴は次のとおりです。
|
国民健康保険 |
健康保険の任意継続 |
|
|
保険料の計算方法 |
前年の所得や加入者数をもとに算出 |
在職時の標準報酬月額をもとに算出 |
|
保険料の負担 |
世帯単位で計算 |
会社負担がなくなり全額自己負担 |
|
扶養制度 |
なし(家族もそれぞれ保険料が発生) |
あり(扶養家族が増えても保険料は変わらない) |
|
手続き先 |
居住地の市区町村 |
加入していた健康保険(協会けんぽ・健保組合など) |
|
加入期間 |
制限なし |
退職後2年間まで |
|
申請期限 |
退職日の翌日から14日以内 |
退職日の翌日から20日以内 |
|
保険料の軽減 |
所得減少などに応じた軽減制度あり |
軽減制度はないが上限金額あり |
国民健康保険の保険料は前年の所得などで算出され、健康保険の任意継続は退職時の標準報酬月額を基準に算定されます。ただし、任意継続では会社負担分がなくなるため在籍時より自己負担額が増えるのが一般的です。
そのため、前年の所得が比較的低い場合や単身世帯の場合は国民健康保険のほうが保険料を抑えられる傾向にあります。一方で、扶養家族がいる場合は、扶養制度を引き継ぐ任意継続のほうが保険料が安くなる場合が多いです。「どちらの保険料が安くなるのか」という質問を従業員から受けることもあるので、退職後の健康保険について理解しておきましょう。
4-3. 退職後に扶養に入る場合の注意点
退職後、親族などの扶養に入る場合、保険料を払うことなく社会保険に加入できます。社会保険料の支払いが不要になることは、大きなメリットです。しかし、メリットだけでなく次のようなデメリットもあります。
- 収入制限があり、働き方を調整する必要がある
- 失業給付の受給中は扶養に入れないことがある
- 将来受給できる年金額に影響が出る
扶養に入るメリットはたしかに大きいですが、このようなデメリットも従業員に説明しましょう。
関連記事:社会保険の扶養の条件や手続きを解説!扶養内におさめる金額や130万円の壁とは
4-4. 切り替え手続きの期限と退職者への案内ポイント
退職後の社会保険の切り替え手続きには期限があります。
例えば、任意継続として健康保険に加入するためには、資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内に退職者本人が手続きをしなければなりません。もし手続きが遅れてしまうと、任意継続保険に入りたくとも加入できません。入れなかった、という事態が起きないように退職者に事前に説明しておきましょう。
一方で、国民健康保険や国民年金保険の加入手続きは、資格喪失日から14日以内の申請が必要です。ただし、健康保険の任意継続とは違い期限を過ぎても遡って手続きができます。
このように、退職後の社会保険の切り替え手続きにはそれぞれ期限が定められているので、退職者がスムーズに手続きを進められるよう事前に案内してあげるとよいでしょう。
参考:健康保険法第37条|e-Gov法令検索
参考:国民健康保険の届出について|新宿区
参考:国民年金に加入するための手続き|日本年金機構
関連記事:社会保険と国民健康保険の切り替え手続きとは?タイミングや注意点を解説
5. 退職時の社会保険料は間違いのないように給与から控除しよう


退職時の社会保険料は、退職日によって、毎月控除している金額と異なる場合があります。そのため、正確な知識をもって給与計算業務をおこなわなければなりません。トラブル防止のためにも、社会保険料控除の仕組みを前もって従業員に説明しておきましょう。
また、退職時の社会保険料の計算方法や手続きはケースによって変わります。労務担当者はそれぞれの違いを理解し、従業員からの問い合わせがあれば説明できるように準備しておきましょう。



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