同一労働同一賃金の抜け道を探すのは危険?リスクや対応ポイントをわかりやすく解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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同一労働同一賃金の抜け道を探すのは危険?リスクや対応ポイントをわかりやすく解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

同一労働同一賃金の抜け道を探すのは危険?リスクや対応ポイントをわかりやすく解説

ゴールまでの道のり

有期雇用・パートタイム・派遣などの非正規雇用労働者と、フルタイムかつ無期雇用の正規雇用労働者との間にある不合理な待遇差を是正するため、同一労働同一賃金制度が導入されました。

制度の導入は大きな転換点となりましたが、形式的な対応にとどまり、制度の「抜け道」ともいえる運用がされているケースもあります。その結果、待遇差が十分に是正されていない企業も少なくありません。

今回は、同一労働同一賃金制度の「抜け道」となり得る実態やそのリスク、対応のポイントに加え、活用できる助成金や相談先について解説します。

▼そもそも「同一労働同一賃金とは?」という方はこちら
同一労働同一賃金とは?派遣・非正規の待遇における規定や法改正の背景をわかりやすく解説

労務リスクに備える。 「同一労働同一賃金」対応の再点検を

意図せず不合理な待遇差を放置してしまうと、思わぬ労使トラブルに発展する可能性があります。
企業の信頼性を守るためにも、客観的な視点での定期的な見直しが不可欠です。

◆押さえておくべき法的ポイント

  • 「均衡待遇」と「均等待遇」の判断基準
  • 企業に課される「待遇に関する説明義務」の範囲
  • 万が一の紛争解決手続き「行政ADR」の概要

最新の法令に対応した盤石な体制を構築するために参考になりますので、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。

1. 同一労働同一賃金の抜け道とは?

抜け道

同一労働同一賃金は正規雇用労働者と非正規雇用労働者との格差を是正することが目的です。しかし、同一労働同一賃金には、制度の目的である格差是正が十分に及ばない「抜け道」のようなケースがいくつかあります。ここでは、どのようなケースがあるのか一つずつ詳しく紹介します。

1-1. 中小企業は適用までに猶予期間があった

同一労働同一賃金は大企業と中小企業とで導入タイミングが異なりました。そのため、2020年4月1日~2021年4月1日までの1年間は、中小企業では同一労働同一賃金に対応する必要がないという歪みがありました。しかし、2021年4月1日を過ぎた時点で、中小企業にも同一労働同一賃金が適用されています。

関連記事:同一労働同一賃金で中小企業が受ける影響や対応しない場合のリスクを解説

1-2. 性別による雇用形態の傾向

総務省統計局が公表した労働力調査(2025年5月分)によると、正規雇用労働者の割合は全体で63.9%ですが、男性が78.3%であるのに対し、女性は48.1%にとどまっています。

このように女性の正規雇用率が依然として低い状況は、出産や育児などが理由で、そもそも正規雇用される機会が男女間で不均等なことも大きな要因の一つといえるでしょう。そのため、たとえ同一労働同一賃金によって正規・非正規間の不合理な待遇差が是正されたとしても、性別間の賃金格差は十分に解消されない可能性があります。

今後は、雇用形態の違いだけでなく、ジェンダーに起因する雇用機会の不平等にも目を向けた施策が求められるでしょう。

参考:労働力調査(基本集計) 2025年(令和7年)5月分結果の概要|総務省統計局

1-3. フルタイム無期雇用労働者(正社員同士の格差)は適用除外

同一労働同一賃金の抜け道として指摘されているのが、フルタイムで働く無期雇用労働者です。無期雇用とは、有期雇用が通年で5年を超えた場合、労働者の申請によって契約期間が無期限になる制度で、安定して働き続けられるメリットがあります。

しかし、フルタイムで働く無期雇用労働者には同一労働同一賃金が適用されません。また、待遇は有期雇用の状態から引き継がれるため、給与や福利厚生の待遇差が解消されていない場合はトラブルにつながりかねません。そのため、従業員が不満を抱かないような対応が求められるでしょう。

関連記事:無期雇用は同一労働同一賃金の対象外!リスクや高齢者の特例措置も解説

1-4. 非正規(パート・アルバイトなど)同士の賃金格差も適用除外

同一労働同一賃金の制度は、正社員と非正規社員との間の不合理な待遇差を解消することを目的としており、正社員同士のみならず、非正規社員同士についても直接適用されません。

例えば、同じ仕事に就くパートタイム労働者AとBに賃金差があっても、その差についてはこの制度の適用対象外です。ただし、不合理な格差がある場合には、労使間でトラブルを生む原因にもなるので是正していくことが望まれます。

1-5. 定年後再雇用される高齢者の待遇格差

労働人口の減少を背景に、定年後も再雇用を希望する労働者を受け入れる企業が増えています。多くの場合、定年後の従業員を再雇用する際は有期雇用契約を結ぶのが一般的であるため、「パートタイム・有期雇用労働法」の適用を受けます。そのため、同一労働同一賃金の原則に基づき、不合理な待遇差を設けることはできません。

しかし、再雇用後の業務内容や仕事に対する責任の違いなどを合理的な理由として、正社員と非正規社員の待遇の差が認められる可能性があります。このように、定年前と同じ仕事をしているように見えても、待遇に差が生じるケースもあるのです。

関連記事:定年後再雇用は同一労働同一賃金の対象になる?メリット・デメリットも解説
関連記事:同一労働同一賃金における60歳以上の定年後再雇用の扱いとは

1-6. 正規雇用労働者と非正規雇用労働者を別々の会社で雇用する場合

同一労働同一賃金の制度は、原則として同一企業内における正社員と非正規社員との待遇差の是正を目的としています。例えば、正社員がA社に所属し、非正規社員がB社に所属しているような場合には、たとえ仕事内容が類似していたとしても、両者の待遇を比較することは制度上想定されていません。このように、制度の適用が同一企業内に限られている点は、実質的な格差是正の観点から見て課題の一つとされています。

関連記事:同一労働同一賃金の問題点と日本・海外との考え方の違いを解説!法改正の影響とは?

2. 同一労働同一賃金の抜け道を利用するリスク

リスク

同一労働同一賃金には、制度の適用範囲外や実務上対応が難しいケースなど、いわゆる「抜け道」とされる状況がいくつかあります。ここでは、そのような状況を放置したり、制度の趣旨に反して利用したりするリスクについて詳しく紹介します。

2-1. 法令違反や訴訟につながる恐れがある

例えば、正社員同士は同一労働同一賃金の制度の適用対象外ですが、国籍や地位などを理由とした不合理な待遇差がある場合、労働契約法第3条「均等待遇」に違反する可能性があります。また、パート社員同士であっても、性別を理由とした待遇差がある場合には、男女雇用機会均等法第6条に違反する恐れがあります。

このように、同一労働同一賃金の適用対象外だからといって、安心できるわけではありません。別の法律に違反するリスクは十分にあります。また、たとえ刑事罰が課されなくとも、従業員から損害賠償を求められる可能性がある点に注意が必要です。

参考:労働基準法第3条|e-Gov法令検索
参考:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)第6条|e-Gov法令検索

2-2. 従業員のモチベーション低下

同一労働同一賃金は、正社員同士や非正規社員同士(パート同士など)の間に直接適用されるものではなく、その差に合理性が欠ける場合でも、直ちに法令違反と判断されるとは限りません。しかし、このような社内での不合理な待遇差が放置されると、「努力しても報われない」という不満につながり、従業員のモチベーションの低下や離職率の上昇、生産性の低下といった問題を引き起こす可能性があります。制度の対象外であっても、公平性の観点から待遇差を見直す姿勢が企業には求められます。

2-3. 社会的信用の失墜

同一労働同一賃金の趣旨に反する対応や、制度に即していない運用が外部に知られた場合、企業のコンプライアンス意識が問われる事態となります。現代では、内部告発やSNSによる情報拡散のスピードが速く、たとえ一部の従業員間での問題であっても、瞬く間に社会の注目を集める可能性があります。

その結果、報道機関による報道やSNS上での炎上を通じて企業名が広まり、企業イメージの低下やブランド毀損を招く恐れもあるでしょう。さらに、求職者から「ブラック企業」と認識されて採用活動に支障が出たり、既存の取引先からの信頼が損なわれたりするなど、長期的な経営リスクにも発展しかねません。

3. 同一労働同一賃金は「意味ない」「おかしい」?

はてな

同一労働同一賃金の制度は「意味ない」「おかしい」と言われることも少なくありません。ここでは、その理由について詳しく紹介します。

3-1. 形式的な理由で待遇差が正当化されてしまう

同一労働同一賃金の制度では、業務の内容や責任の程度、配置転換の範囲などを総合的に踏まえて、正社員と非正規社員の待遇差が合理的かどうかを判断すべきとされています。

例えば、実際には転勤の可能性がほとんどないにもかかわらず、契約書上で「正社員には全国転勤あり、非正規にはなし」といった形式的な違いを設け、待遇差の根拠として扱うケースも考えられます。

このような形式だけの運用は、制度の趣旨に反し、実質的な待遇格差の是正にはつながりません。そのため、制度が「形だけ」「意味がない」といった批判を受ける一因ともなっています。企業には、実態に即した待遇設計と、納得感のある説明が求められるでしょう。

3-2. 違反しても直接的な罰則がない

同一労働同一賃金制度には、制度違反に対する直接的な罰則が設けられていません。仮に企業が不合理な待遇差を設けていた場合でも、労働基準監督署による是正勧告や行政指導にとどまり、刑事罰や行政処分といった強制力のある制裁が課されることは原則ありません。

そのため、制度に真摯に取り組む企業と、対応を後回しにする企業との間で、対応意識に差が生じやすくなります。結果として、制度が十分に機能していないと感じられる場面もあり、「結局守らなくても罰せられない」「不公平な企業が得をしている」といった批判につながることもあるのです。

参考:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期雇用労働法)|e-Gov法令検索
参考:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)|e-Gov法令検索

関連記事:同一労働同一賃金の説明義務はどう強化された?注意点や説明方法も解説

4. 同一労働同一賃金で非正規雇用労働者の対応はどうなった?

相談する様子

同一労働同一賃金制度がすべての企業に原則として適用されるようになって以来、基本給だけでなく、通勤手当をはじめとする各種手当や福利厚生の一部についても、正社員と非正規社員の間で見直しをおこなう企業が多く見られます。また、法改正により待遇差に関する説明義務が強化されたことで、「なぜ待遇に差があるのか」という非正規社員からの問いに対し、企業側が具体的な理由を説明する場面も多くなっていると考えられます。

一方で、同一労働同一賃金制度には罰則規定がないので、名目上の職務範囲や責任の違いを根拠に待遇差が継続されているケースも見受けられ、依然として不合理な格差を感じている非正規労働者も少なくないはずです。制度の本来の目的である不合理な待遇差の解消を実現するためには、形式的な対応にとどまらず、実態に基づいた公正な運用と、納得感のある透明な説明が今後一層求められるでしょう。

4-1. 同一労働同一賃金で会社が得られるメリット

社内で同一労働同一賃金の取り組みを推進するためには、そのメリットを十分に理解することが重要です。この制度を適切に運用することで、従来の不公平な待遇差が是正され、従業員一人ひとりの仕事への納得感やモチベーションの向上が期待できます。

また、公平な処遇を実現できれば、従業員の自社への信頼や帰属意識を高め、「この会社で長く働きたい」という意識を生み出します。その結果、離職率の低下や優秀な人材の定着といった効果も期待できるでしょう。さらに、制度の適正な運用は「働きやすい企業」「公正な職場環境を整えた会社」として社外に好印象を与える要素となり、採用活動の強化や取引先・顧客からの信頼獲得といった面でも有利に働きます。

5. 同一労働同一賃金を効率よく適切に実現するためのポイント

相談する様子

同一労働同一賃金の進め方に明確な決まりがあるわけではなく、企業ごとに取り組み方が異なるのが実情です。ここでは、同一労働同一賃金を効率よく適切に実現するためのポイントを詳しく紹介します。

5-1. 厚生労働省の提供するガイドライン・取組手順書を活用する

同一労働同一賃金の進め方に迷った場合は、まず厚生労働省が提供しているガイドラインや取組手順書を確認するのがおすすめです。

「同一労働同一賃金ガイドライン」では、制度の基本的な考え方や、対象となる待遇項目などが簡潔に整理されており、全体像をつかむのに役立ちます。

また「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」を活用すれば、自社で待遇の見直しをどのように進めていくべきか、具体的な手順やチェックポイントを把握することが可能です。

参考:同一労働同一賃金ガイドライン|厚生労働省
参考:パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書|厚生労働省

5-2. 非正規雇用労働者の待遇改善には助成金が活用できる

同一労働同一賃金によって非正規労働者の待遇を改善する場合は、助成金が活用できます。同一労働同一賃金の助成金として活用できるのが、キャリアアップ助成金です。キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者の職能を改善するために支給される助成金で、

  • 正社員化コース
  • 賃金規定等改定コース
  • 賃金規定等共通化コース
  • 賞与・退職金制度導入コース
  • 社会保険適用時処遇改善コース
  • 短時間労働者労働時間延長支援コース(2025年7月1日新設)

以上の6つのコースがあります(※2025年7月時点)。助成金の利用によって企業の負担が軽くなる点がポイントです。実際に待遇差を改善する場合は、助成金を活用すると良いでしょう。

参考:キャリアアップ助成金|厚生労働省

5-3. 同一労働同一賃金の対策をおこなう際の相談先

同一労働同一賃金に関して、不合理な待遇差の判断基準や賃金の引き上げ、待遇を改善する具体的な取り組みの方法などに悩んだ場合は、各種の相談窓口を活用するのが有効です。厚生労働省が運営する無料の「働き方改革推進支援センター」や「改正法個別相談窓口」のほか、各自治体が独自に設置している相談窓口もあります。

なかでも、働き方改革推進支援センターでは、無料で相談を受け付けており、同一労働同一賃金に関する助成金制度の案内や、中小企業の対応事例なども紹介しています。また、弁護士事務所でも、同一労働同一賃金制度の導入に際して生じる待遇格差の問題について、専門的な相談を受けられるでしょう。

▽同一労働同一賃金の相談先

  • 働き方改革支援センター(厚生労働省)
  • 改正法個別相談窓口(厚生労働省)
  • 自治体が対応する無料相談窓口
  • 弁護士事務所

6. 同一労働同一賃金における待遇差を解消するためには、助成金や無料相談を活用しよう

面談

同一労働同一賃金制度により、非正規雇用労働者と正社員との間にあった不合理な待遇差は、徐々に見直されてきています。しかし、雇用形態や形式的な職務区分を理由に、実質的な格差が残っているケースもあり、「抜け道」と指摘されることもあります。

労働者自身が説明を求めることも重要ですが、トラブルや訴訟に発展しないよう、企業側から積極的に対応を進める姿勢が不可欠です。不安がある場合は、厚生労働省や自治体が提供する無料相談窓口を活用すると良いでしょう。また、待遇改善に取り組む企業には、助成金を活用することでコスト負担を軽減できる制度も用意されています。

労務リスクに備える。 「同一労働同一賃金」対応の再点検を

意図せず不合理な待遇差を放置してしまうと、思わぬ労使トラブルに発展する可能性があります。
企業の信頼性を守るためにも、客観的な視点での定期的な見直しが不可欠です。

◆押さえておくべき法的ポイント

  • 「均衡待遇」と「均等待遇」の判断基準
  • 企業に課される「待遇に関する説明義務」の範囲
  • 万が一の紛争解決手続き「行政ADR」の概要

最新の法令に対応した盤石な体制を構築するために参考になりますので、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。

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