労働者派遣法に違反する行為とは?罰則規定や違反例を解説 - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

労働者派遣法に違反する行為とは?罰則規定や違反例を解説 - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

労働者派遣法に違反する行為とは?罰則規定や違反例を解説 - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

労働者派遣法に違反する行為とは?罰則規定や違反例を解説

ペナルティ

派遣労働者を守るために制定された労働者派遣法は、派遣元事業主が遵守すべき法律の1つです。

しかし法改正が頻繁に行われ、次々と新しい条文が追加されるため、うっかり失念して違反してしまうケースもあるかもしれません。労働者派遣法に違反した場合、罰則を科される恐れもあるため、あらかじめ正しい対策を取っておく必要があります。

今回は、労働者派遣法の違反になる行為と罰則、その対策を解説します。

▼そもそも労働者派遣法とは?という方はこちらをお読みください。
労働者派遣法とは?その内容や改正の歴史を詳しく紹介

自社の雇用契約対応や内容に不安がある方へ

雇用契約は法律に則った方法で対応しなければ、従業員とのトラブルになりかねません。

当サイトでは、「自社の対応が適切か確認したい」という人事担当者様に向け、雇用契約の方法から、雇用契約についてよくある質問までをまとめた資料「雇用契約手続きマニュアル」を無料で配布しております。

雇用契約業務を適切に進めるための参考としてご利用いただけますので、気になった方はこちらから資料をダウンロードしてご覧ください。

雇用契約のebook

1. 労働者派遣法に違反する行為とは?

スーツの男性

2021年に法改正がおこなわれたばかりの労働者派遣法には、新しく追加された項目や修正もあるため、見落としや認識の違いにより違反してしまうかもしれません。故意であってもなくても、違反をすれば罰則対象となることもあるので注意が必要です。

ここでは、労働者派遣法で違反になる行為を紹介するので、違反しないように確認しておきましょう。

1-1. 二重派遣

二重派遣とは、派遣労働者が派遣元事業主以外の事業者から労働者派遣の役務を受けることです。

通常の労働者派遣では、派遣元事業主が派遣労働者を派遣先事業主へ派遣します。派遣労働者は、派遣先事業者で労働する仕組みです。

しかし二重派遣では、派遣労働者を派遣先事業主から、さらに別の派遣先へ派遣するのです。このような派遣は、労働者派遣法第24条の2で禁止されています。

また、二重派遣違反の罰則は労働基準法第6条に定められており、1年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科せられるので注意しましょう。

参考:労働基準法 | e-Gov法令検索

1-2. 同じ派遣先に3年を超えて派遣する行為

労働者派遣法では、同じ派遣先事業主に3年を超えて派遣を継続するのは違反行為となっています。

仕事に慣れた派遣労働者にとっては不利な項目のように思えますが、これは派遣労働から直接雇用への切り替えを促すための法律です。しかし、派遣元事業主にとっては期間の定めがあることで、派遣労働者を長期間同じ派遣先に派遣しにくいデメリットがあります。

しっかり管理していないと、派遣期間を超えてしまうケースもあるので、担当者の方は派遣労働者の管理を怠らないようにしましょう。

関連記事:労働者派遣法第40条の2第4項に定められた期間制限について解説

1-3. 派遣労働者へ就業条件等を説明しない行為

派遣元事業主は、派遣労働者へ就業条件等の説明をすることが義務づけられています。

これは労働者派遣法第34条で定められている事項で、派遣労働に関与する事柄を事前に明示しなくてはいけません。「忙しくて説明する暇がなかった」「書類を渡し忘れた」などの理由で違反しないように、派遣労働者への派遣労働の詳細説明義務を忘れないようにしましょう。

加えて、派遣先企業も同様に、派遣スタッフに対して職務内容や労働条件についての理解を促進する責任があります。

特に、同一労働同一賃金の原則が導入されている今、派遣労働者と正規雇用者との待遇差が問題視されることもあります。そのため、有効なコミュニケーションを図り、派遣労働者が安心して業務に取り組める環境を整えることが重要です。このように、派遣契約の締結においては情報提供の徹底が不可欠であり、事前の確認を忘れないよう心掛けましょう。

1-4. 受け入れ時に派遣スタッフを特定する行為

企業が派遣スタッフを特定して受け入れる行為は、労働者派遣法に違反しています。

具体的には、派遣先が派遣元に特定の派遣労働者の指定を求めたり、事前に履歴書の提出を求めたり、面接を行うことが該当します。これは、派遣先が直接雇用している労働者と同様の扱いとなり、公正な労働環境を損なう恐れがあるためです。このような違反が発覚すると、罰則が科されることがあります。

適切な対応策としては、派遣元への依頼時にポジションの要件のみを伝えることが求められます。

1-5. 同一労働同一賃金に反する行為

現在の労働者派遣法では、同一労働同一賃金の原則が強く求められています。

これに反して派遣労働者に不公平な賃金を支払うことは違法であり、企業は厳守する必要があります。

具体的には、派遣スタッフにも正規雇用労働者と同等の待遇が求められ、同種の業務に従事する場合は同等の賃金および労働条件を提供することが義務付けられています。不適切な賃金設定は法的罰則を受ける可能性があり、企業の信頼性にも影響を与えるため、適切な対応策の実施が不可欠です。

この原則を理解し、労働者派遣法に従うことで、企業は法令遵守を確実にし、派遣労働者との信頼関係を維持することができます。

1-6. 労働基準法・労働安全衛生法に違反する行為

労働者派遣法に違反する行為の一つとして、労働基準法や労働安全衛生法に違反する行為が挙げられます。

派遣労働者であっても、労働基準法や労働安全衛生法を遵守する責任があります。これらの法律に基づいた適切な労働環境の確保は、派遣元と派遣先双方に求められる基本的な義務です。

特に、派遣先企業は派遣労働者の労働時間管理の責任を負っており、36協定の上限を超えた時間外労働を行わせることは労働基準法違反となります。罰則対象となる可能性もあるため、企業の人事担当者や派遣業者はこれを十分に理解し、適切な管理と対応を徹底する必要があります。

1-7. 離職後1年以内の派遣スタッフの受け入れ行為

企業を離職して1年以内の労働者を同一企業が派遣スタッフとして受け入れることは、労働者派遣法に違反する行為です。

例えば、A社で直接雇用により社員として働いていた人が退職し、半年後に派遣スタッフとしてA社で再び就業することは認められません。

この規制は、離職後の労働者が派遣形態で再び同一企業に従事することを防ぎ、労働条件の悪化を回避するためです。ただし、例外があります。具体例として、A社の60歳以上の定年退職者であれば、1年以内に派遣スタッフとして受け入れることが可能です。

1-8. 日雇派遣に該当する行為

日雇派遣とは、1日単位または30日以内の短期間の労働契約を指し、特定の例外を除いて基本的に禁止されています。

例えば、今日だけ、1週間だけといった日雇いでの就業は、労働者派遣法に違反する行為となります。ただし、人材派遣会社は、高齢者や学生などの例外に該当する場合や、31日を超える雇用期間のある派遣スタッフを派遣することが認められています。

労働者派遣法に違反すると、法的責任や罰則が科される可能性があるため、人事担当者や派遣業者は法令を遵守し、適切な対応策を講じる必要があります。

2. 労働者派遣法に違反したときの罰則規定

ルール

1986年に施行された労働者派遣法は、以降複数回に渡って改正されています。最近の改正は2021年4月1日です。

2021年にもいくつかの追加条文や変更があるため、故意でなくても労働者派遣法に違反してしまう可能性もあります。労働者派遣法に違反すると厳しい罰則があるため、改定内容をきちんと理解しておかなければなりません。

しかし、「違反に対しどのような罰則があるか」というのはわかりづらいため、以下に違反内容と罰則規定をまとめたので確認しておきましょう。

2-1. 罰則規定の内容

違反内容 罰則規定
公衆衛生上あるいは公衆道徳上有害な業務への派遣 1年以上10年以下の懲役、または20万円以上300万円以下の罰金
就業条件を派遣労働者に説明しなかった場合(第34条) 30万円以下の罰金(第61条)
3年を超えて同じ派遣先に継続して派遣させた場合(第35条)
必要な報告をしなかった、あるいは虚偽の報告をした場合(第50条)
違反申告をした派遣労働者に対して解雇、その他不利益な取り扱いをした場合(第49条の3 第2項) 6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金

参照:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 | e-Gov法令検索

2-2. 勧告に従わないと公表されることもある

罰則というのは違反してすぐに科せられるものではなく、違反の内容によっては事前に改善勧告が出されることがあります。改善勧告が出た場合、すぐに改善をすれば罰則が科せられることはありません。ただし、勧告に従わないと事業者名が公表される可能性があるので注意しましょう。

事業者名が公表された場合、派遣労働者の離職や応募しても集まらないという状況になるかもしれません。また、取引がなくなったり、新たな派遣先業者との取引ができなくなったりするリスクもあります。

つまり、罰則が科せられなくても社会的制裁を受ける可能性があるので、勧告には必ず従いましょう。

2-3. 業務改善命令を受けるケースもある

労働者派遣法に違反した場合、重大な違反が認められ、指導で改善が見られない場合、業務改善命令が出されることがあります。

この命令を受けた派遣先企業は、具体的な改善計画を作成し、その計画に基づいて労働環境の是正措置を行う必要があります。

労働局はこの過程で企業に対し、指導や監視を行い、是正が完了するまで継続的に追跡調査を実施します。業務改善命令に従わない場合、企業はさらに厳しい法的処分を受ける可能性があります。適切な対策を講じることで、法令遵守を徹底し、労働環境の改善に努めることが重要です。

3. 労働者派遣法の違反例

内部監査のイメージ

実は、「二重派遣」や「就業条件の説明をしない」ということ以外にも、法律に抵触することがあります。労働派遣法では、派遣労働者の雇用に関して細かい規程を設けているので、見落としている項目があるかもしれません。

いずれにしても、違反をすれば罰則が科せられる可能性もあるため、担当者の方は違反例をしっかり把握しておきましょう。

3-1. 不正行為による期限更新をする事例

労働者派遣事業をおこなうには、厚生労働省に申請をして、厚生労働大臣の許可をもらう必要があります。また、派遣事業の許可には期限があるため、更新をする必要もあります。派遣事業をおこなったり期限を更新するためのルールにはたくさんの規程があるので、許可を取るのは簡単なことではありません。

そのため、中には虚偽の記載をしたり、ごまかしたりする事業者もいるようです。しかし、当然ですが不正行為による許可や期限更新は禁止されているので違反となります。

したがって、派遣事業を営む際は、法令を遵守し、必要な手続きを正確に行うことが極めて重要です。違反した場合には、厳しい行政処分や罰則が科せられる可能性があるため、企業は常に法令遵守に努めなければなりません。適切な申請と運営を行うことで、派遣労働者の権利と安全を守るとともに、企業の信用を維持することが求められます。

3-2. 無許可で派遣をおこなう事例

労働者派遣事業は、「届出制」と「許可制」にわかれていましたが、2015年の派遣法改正により「許可制」に一本化されました。そのため、派遣労働事業をおこなうには、厚生労働大臣の許可を受けることが必須となります。

つまり、「届出制」で派遣事業をおこなっていた事業者が、許可を取らず労働者を派遣している場合は違反になるので注意しましょう。違反が認められた場合は、都道府県労働局の指導対象となり、悪質性が高いと判断された場合は事業主名の公表や罰則対象となる可能性があります。

3-3. 派遣期間の制限を超えて派遣する事例

2015年の派遣法が改正され、派遣労働者の派遣期間には制限が設けられました。この改正は、「同一の派遣先企業や同一の部署で3年を超えて働くことはできない」ということを定めていて、通称「3年ルール」ともよばれています。つまり、3年の派遣期間を超えて派遣をした場合も違反となります。

ただし、期間制限には「個人単位」と「事業所単位」の2種類があります。どちらも派遣期間3年というのは共通した制限ですが、事業所単位は一定の条件を満たすと最大3年の延長が可能なので、必要がある場合は条件を確認しておきましょう。

関連記事:労働者派遣法第40条の条文で定められた派遣の期間制限について解説

3-4. 30日以内の短期雇用する事例

2012年の10月1日の労働派遣法改正により、30日以内の雇用契約で働く「日雇い派遣」は原則禁止となっています。かなり前の改正なので、日雇い派遣をしている事業者はないかもしれません。しかし、「日雇い」というと1日単位の契約と思っている可能性があります。

「日雇い派遣」は、30日以内の労働契約を指しているので、短期雇用をしていないかチェックしておきましょう。

ただし、契約期間が31日以上であれば日雇い派遣にはならないので、問題ありません。

参考:労働者派遣法が改正されました|厚生労働省

3-5. 派遣事業者の名義を貸す事例

基本的に「名義貸し」というのは違法になることが多いですが、派遣法第15条でも名前や商号、免許などを第三者に貸すという行為は禁止されています。また、当然ですが借りた「一般派遣元事業主」の商号で派遣事業をおこなうことも禁止です。

派遣事業者の名義貸しは、借りた側だけでなく、貸した方にも改善命令や派遣事業許可の取消、事業停止命令などの重い罰則があるので、絶対にやらないようにしましょう。

参考:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律|e-GOV法令検索

3-6. 外国人派遣スタッフが不法就労をした事例

外国人労働者が適法なビザステータスを持たずに就労することは労働者派遣法違反であり、派遣先企業も共同責任を負う可能性があります。外国人派遣スタッフが不法就労をした場合、不法就労助長罪が適用されるのは原則として派遣スタッフと人材派遣会社です。

しかし、派遣スタッフのオーバーステイが発覚した際、派遣先企業がその事実を把握していたにもかかわらず、その外国人派遣スタッフを働かせていた場合には、派遣先企業も不法就労助長罪に問われるリスクがあります。

派遣先企業は外国人派遣スタッフの在留カードを直接確認することは個人情報保護の観点から制限されていますが、それでもなお適切な対応が求められます。

具体的には、派遣先企業が人材派遣会社に対して在留カードの確認が適正に行われているかどうかを問い合わせることが重要です。これにより、不法就労のリスクを最小限に抑え、法令順守を確認することができます。

4. 労働者派遣法に違反しないための対策

対策

故意でなくても、改正された労働者派遣法にうっかり違反してしまえば、罰則を科せられてしまいます。労働者派遣法の改正ポイントを把握しておくことはもちろん、うっかり違反してしまいやすい行為への対策を取っておくのも重要です。

ここでは、労働者派遣法に違反しないために取っておくべき対策を解説します。

4-1. 3年ルールへの対策

派遣元事業主は、同一の派遣労働者を同じ派遣先へ3年を超えて派遣できません。違反しても改善しなかった場合は罰則があるため、あらかじめ以下の対策を立てておくとよいでしょう。

  • 派遣労働者を別の者に交代させる
  • 同じ派遣先でも部署を異動させる
  • 派遣元事業主で無期雇用する

3年ルールは、あくまでも同じ派遣労働者が、同じ派遣先(部署)へ3年を超えて派遣した場合のルールです。そのため、派遣する派遣労働者を交代したり、派遣先の部署を変えたりすれば罰則には値しません。また、派遣元事業主が無期雇用契約を結んだ場合は、3年ルールの適用の例外となるので、違反にはなりません。

そのため、同じ派遣先に同じ派遣労働者を派遣したい場合は、上記の対策しておくとよいでしょう。

4-2. 紛争解決の求めに対する対応

労働者派遣法第47条の5では、派遣労働者からの苦情に対し、派遣元事業主は解決を図るように努めることが義務づけられています。また第47条の7では、派遣労働者が紛争の援助を求めたことを理由に、該当労働者に不利益な扱いをしてはいけないと定めています。

これらの定めに違反しないために、派遣元事業主は派遣労働者と派遣先事業主の両方から迅速に情報を入手しなくてはなりません。派遣元事業主は派遣労働者の雇用主ですが、同じ職場で働くわけでないので、コミュニケーションが取れず情報が入りづらいという問題があります。そのため、定期的に派遣先を訪問し、派遣労働者と面談するなど普段からコミュニケーションを取っておくことが大切です。

5. 労働者派遣法のポイントを押さえて対策を講じよう

職場労働者派遣事業に対しては、派遣労働法においてたくさんのルールが設けられています。そのため、ルールを正確に把握していないと、知らないうちに違反してしまっているかもしれません。違反すると、労働基準監督署から行政処分や罰則を受ける可能性があり、処分や罰則によっては事業が続けられなくなることもあるので注意しましょう。

特に、派遣期間に関しては、単に3年が期限というだけでなく、派遣期間対象外となる労働者がいたり、派遣の業態によって変わったりすることがあるのでしっかり把握しておく必要があります。細かい規程が多く、把握するのは大変かもしれませんが、ポイントを押さえて対策を講じておきましょう。

自社の雇用契約対応や内容に不安がある方へ

雇用契約は法律に則った方法で対応しなければ、従業員とのトラブルになりかねません。

当サイトでは、「自社の対応が適切か確認したい」という人事担当者様に向け、雇用契約の方法から、雇用契約についてよくある質問までをまとめた資料「雇用契約手続きマニュアル」を無料で配布しております。

雇用契約業務を適切に進めるための参考としてご利用いただけますので、気になった方はこちらから資料をダウンロードしてご覧ください。

雇用契約のebook

人事・労務管理のピックアップ

新着記事