給与計算は誰に頼む?税理士、社労士の違いとは
更新日: 2024.4.12
公開日: 2020.12.14
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一人でも従業員がいれば、毎月の給与計算業務が発生します。小規模の会社であれば余裕を持って給与計算ができるかもしれませんが、従業員が多いと業務負担が大きくなるため外部への依頼を検討する必要があるかもしれません。
給与計算を外部に依頼する場合、税理士と社労士という2つの選択肢が主流となっていますが、どちらに依頼すればいいか分からないという方もいるのではないでしょうか。
ここでは、税理士と社労士の違いや、依頼するメリット・デメリットを中心に解説していきます。
【給与計算のやり方について解説はコチラ▶【図解】給与計算ガイド!例を用いて給与計算のやり方を徹底解説!】
【給与計算業務のまとめはコチラ▶給与計算とは?計算方法や業務上のリスク、効率化について徹底解説】
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目次
1. 税理士と社労士の業務の違い
税理士と社労士、どちらも名前を聞いたことはあると思いますが、どのような業務を専門におこなっているかは知らないという方もいるかもしれません。ここでは、税理士と社労士がどういった業務を担当しているのかを紹介します。
1-1. 税理士
税理士は、税務署の対応や税務書類の作成をおこなう専門家であり、「税務の代理」「税務書類の作成」「税務相談」などの項目が専門的な業務となっています。
税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼に応え、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命としています。
税理士制度は、このような公共的使命を負っている税理士が納税義務者の援助をすることによって、納税義務を適正に実現し、これによって、申告納税制度の適正かつ円滑な運営に資することを目的として設けられたものです。
昭和26年に税理士法が施行されて以来、税理士制度は時代の推移とともに変化する社会の要請に応えて、申告納税制度の定着と発展に寄与するとともに、納税義務の適正な実現、納税者に対する税知識の普及、国家財政の確保に大きな役割を果たしています。引用:税理士制度|国税庁
簡潔にまとめると、財務処理や税務処理の作成代理などの税金の管理や年末調整、税務署に提出する書類の作成手続きを中心におこなうのが税理士の仕事です。
1-2. 社労士
社労士は、労働法や社会保険に精通したプロフェッショナルであり、これらに関する書類(就業規則や社会保険の手続きなど)作成や提出を代行するのが業務となります。
労働・社会保険の問題の専門家として、
①書類等の作成代行、②書類等提出代行、③個別労働関係紛争の解決手続(調整、あっせん等)の代理、④労務管理や労働保険・社会保険に関する相談等を実施するのが、社会保険労務士です。
また、社労士がおこなう業務に関しては、下記のような記載もあります。
社会保険労務士でない者は、営利を目的として以下の業務を行ってはなりません。
① 申請書等の作成
② 提出代行
③ 事務代理
④ 紛争解決手続代理業務(特定社会保険労務士に限る)
⑤ 帳簿類の作成
つまり、社会保険に関する申告書の提出や事務処理、行政官公庁等の調査や処理を依頼者に代わって遂行するというのは社労士の独占業務となるため、社会保険関連の手続きが主な仕事となります。
【社労士について知りたい方はコチラ▶社労士の給与計算業務とは|相場ややり方、準備すべきことをご紹介】
2. 給与計算を税理士や社労士に依頼するのは違法?
結論からいうと、給与計算を税理士や社労士に依頼することは違法ではありません。どちらも、難関試験に合格した専門家であり、給与計算業務を規制する法律もないのでアウトソーシングをすることは可能です。
ただし、前述しているように社労士と税理士には、専門性と業務範囲の違いがあります。社労士は給与計算を含む労務全般、税理士は給与計算における税金や源泉徴収などが業務範囲となります。そのため、給与計算に付随する他の業務は請け負えないことがあるのです。
例えば、1ヵ月のお給料から源泉徴収されていた所得税の合計額と、その年1年間の確定した所得税との差額を精算する「年末調整」という業務は税金に関する「税理士の業務範囲」と決まっています。社労士がおこなうと違法になる場合があるので注意が必要です。
ただし、年末調整に必要な給料を計算したり社会保険料などを確定したりする業務は、社労士がおこなっても違法にはならないので、必要に応じてアウトソーシング先を決めることをおすすめします。
3. 税理士、社労士に依頼するメリット
給与計算業務を、税理士か社労士のどちらかに依頼する場合、自社に必要な業務を請け負ってくれる方を選ぶことが重要です。しかし、給与計算業務のみを依頼するという場合は、どちらか迷ってしまうかもしれません。
もしも決められないようであれば、双方のメリットとデメリットを比較し、自社にとってメリットがある方を選びましょう。
3-1. 税理士のメリット
税理士に給与計算を依頼すると、年末調整までワンストップで業務を任せられるというメリットがあります。税理士であれば税金に関わることすべてが業務範囲となるので、年末調整や住民税、従業員毎の支払総括表、支払報告書の電子申請まで任せることが可能です。
また、税理士は「税に関するアドバイスができる」という独占業務も担えるため、節税の相談ができます。「どういった会計処理をすれば節税できるのか」、など消費税や法人税の節税対策の相談に乗ってもらえるのは、企業にとって大きなメリットとなるでしょう。
3-2. 社労士のメリット
社労士というのは、労務管理および社会保険に関する円滑に実施できるよう、労働や税金に関しての書類を代行してくれるというメリットがあります。
会社の規模や従業員の人数によっては、給与計算の他にも、労務の人が足りていなかったり、従業員が多く手続きが捌き切れていなかったりすることもあるかもしれません。
社労士に依頼をすれば、入退社手続きや、労務手続(社保の定時決定・随時改定・賞与支払届・労働保険料申告等)も依頼できるため、給与計算以外に労務や税金関連でリソースが足りていない企業におすすめです。
4. 税理士、社労士に依頼するデメリット
税理士や社労士に依頼するのはメリットがある一方、デメリットもあるのでしっかりチェックをしておきましょう。
4-1. 税理士のデメリット
税理士は、労務相談や雇用保険、雇用関連助成金などの代行ができないのがデメリットです。そのため、従業員の入退社や社会保険の手続きを委託したい企業には不便かもしれません。
また、税理士に依頼をすると、年末調整など税金関係の業務まで対応してもらえるメリットがありますが、税金業務までを依頼すると費用が高額になってしまう可能性があります。そのため、できるだけ多くの業務をアウトソーシングをしたいけど費用も抑えたいという会社にとっては、給与計算しか依頼できないのはデメリットといえるでしょう。
ただし、費用がかかってもすべてを任せたい、という場合は問題ないかもしれません。また、社会保険関連の手続きが不要であれば、税理士に依頼してもデメリットはないでしょう。
4-2. 社労士のデメリット
社労士は、税理業務をおこなえないのがデメリットです。
例えば、年末調整の法定調書の作成については税理士の独占業務となっています。そのため、社労士が年末調整をおこない、源泉徴収票を作成してしまった場合は違法となる可能性があります。
ただし、年末調整に必要となる給与計算や社会保険料などを確定する業務は社労士がおこなっても問題ないので、税理業務の依頼が必要ないのであれば社労士に依頼するデメリットはないといえるでしょう。
5. 税理士、社労士に依頼する相場
税理士に依頼するか、社労士に依頼するかは、費用で決めたいという方もいるのではないでしょうか。当然、それぞれの事務所で費用は異なりますが、ここでは相場を紹介するので、費用で比較する際の参考にしてみてください。
5-1. 税理士の相場
社員数 | 報酬相場 |
1人 |
1,000円〜2,000円 |
5〜9人 | 5,000円〜10,000円 |
10〜19人 | 10,000円〜30,000円 |
20〜29人 | 20,000円〜45,000円 |
30〜49人 | 40,000円〜70,000円 |
50人〜 | 50,000円〜 |
費用は、従業員数に応じて変動する形になっています。従業員1人あたり1,000~2,000円程度の値段になっていますが、規模感の大きい会社ほど依頼費用がかかる傾向があるので注意が必要です。
また、確定申告や年末調整など、依頼する業務範囲を増やすと費用が加算されるため、料金プランは事前に税理士事務所に問い合わせた上で依頼をしましょう。
5-2. 社労士の相場
社員数 | 報酬相場 |
~4人 | 20,000円~ |
~10人 | 25,000円~ |
~20人 | 35,000円~ |
~30人 | 45,000円~ |
~50人 | 60000円~ |
社労士に給与計算を依頼する場合の費用も、税理士と同じく従業員数次第で変動するのが一般的です。
このほかに、就業規則の作成や届出、従業員の入退社手続き、社会保険料変更手続きなどを依頼範囲に含めると、その分の費用が加算されます。
税理士、社労士それぞれに依頼する値段に大きな差異はありませんが、給与計算の他に依頼したい業務を踏まえた上で依頼先を選定していきましょう。
関連記事:給与計算を社労士に依頼する手順や相場、準備すべきことは?
6. 給与計算は誰に頼むべきか
これまで、税理士と社労士の業務範囲や、依頼することによるメリットやデメリットをご紹介しましたが、結局誰に頼めばいいのか分からないという方もいるかもしれません。
もしどうしても決められないのであれば、給与計算の業務負担がどれぐらいかかっているか見直してみましょう。業務負担は、会社の規模や、予算、従業員の数によって変わるので、企業によって負担の度合いが異なります。
例えば、大企業は従業員も多いので、社会保険・残業の給与計算を正確におこなうための業務負担が大きいので、社労士に依頼すると良いでしょう。
それに対して、中小企業は会社全体で持っている予算も少ないため、相談ベースで依頼するというのも可能です。
いずれにしても、給与計算は労働時間や保険料の計算が多く、間違えることも少ないため、正確性を保つためにも自社にあった第三者に委託してみることをおすすめします。
関連サイト:税理士・社労士が揃う総合型事務所【税理士法人松本】
7. 給与計算の業務負担は専門家に任せよう
給与計算を税理士や社労士に依頼すると費用はかかりますが、給与計算だけでなく、派生する労務手続きなど猥雑な業務を手助けしてもらうことも可能です。
労務管理や財務管理の専門家に仕事を依頼することで、労働環境の整備や雇用保険の手続きなど他の仕事に取り組むこともできます。税理士や社労士に仕事を依頼することによるメリットやデメリットを理解し、会社の規模感に合わせた手法を選定しましょう。
【給与計算をアウトソーシングする際のポイントと費用相場はコチラ▶給与計算のアウトソーシング・代行のメリット・デメリットと相場をご紹介】
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