15分単位の勤怠管理や切り捨ては違法?残業代は原則1分単位で正しく計算しよう
更新日: 2026.2.26 公開日: 2020.1.29 jinjer Blog 編集部

勤怠の締め日に従業員に与える給与の算出を容易にすることを目的として、15分単位で残業代を求めるという仕組みを設けている会社は多いです。
15分単位での残業代の算出方法であれば、会社の規模が大きくなればなるほど給与計算にかかる時間がある程度削減することが可能です。 しかし、的確な残業時間の算出方法を知っておかなければ、法律に抵触してしまう場合もあります。
本記事では15分単位で残業計算をすることの是非や、残業代を的確に算出するために有効な方法を紹介します。
関連記事:勤怠とは?管理方法や管理項目など人事が知っておきたい基礎知識を解説!
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目次
1. 15分単位の勤怠管理・残業計算は違法?


残業時間を15分単位で計算すると、勤怠を締めたり給与計算をする業務負担が大幅に軽減されます。しかし法律的に残業時間の計算方法がどのように定められているかを知っていなければ、健全な事業運営ができなくなってしまいます。
まずは労働基準法で定められている残業時間の計算方法や、適切に超過勤務したぶんの給与支払い方法を説明していくので、基本的な残業代についての知識を身につけておきましょう。
1-1. 残業時間・勤務時間を15分単位で計算するのは違法
結論を言うと定時を過ぎて働いた時間を15分単位で求めるのは法律に抵触してしまいます。労働基準法には以下のように記されています。
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
つまり、15分単位で残業代を計算している会社は14分以下の定時以降に働いた時間を切り捨てているため、全額支払いの原則を破っていることになるのです。 労働について定められた法律に沿って考えると、定められた労働時間を1分でも超過すれば1分単位で定時以降に働いた時間を計算し、全ての時間に対する給与を労働者に与えなければならないということになります。

1-2. 法律に違反した場合の罰則
仮に、15分単位(30分単位も同じく)の切捨てによる残業代の計算をおこなった場合、次のような罰則が下る可能性があります。
第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。 一 (省略)第二十三条から第二十七条まで(省略
このような罰則を科せられてしまうと、企業の信用が低下しかねません。企業の信用を維持するためにも適切な計算を心掛けましょう。
2. 15分単位で勤怠管理をおこなうリスク


15分単位で勤怠管理をおこなうことは次のような問題につながりかねません。
- 労働基準監督署による調査で指摘される
- 従業員から未払い残業代を請求される
- 企業の信用が低下する
ここでは、このような問題が起こるリスクについて解説します。
2-1. 労働基準監督署による調査で指摘される
15分単位で勤怠管理をおこなっている場合、労働基準監督署の調査時に「実働との乖離がある」と判断されるケースがあります。調査では勤怠データの保存状況やシステム設定、就業規則との整合性まで確認されるため、形式的な運用では不十分です。
例えば、タイムカードや勤怠システム上の記録と支給実績に差異がある場合、賃金不払いとして是正勧告の対象になるかもしれません。
是正勧告を受けると期日までに環境の改善が求められます。また、期日までに環境を改善させたら是正報告が必要です。
2-2. 従業員から未払い残業代を請求される
15分単位で勤怠管理をおこなっていると、従業員から未払い残業代を請求されるかもしれません。
15分単位で勤怠管理している場合、未払いの給与が発生している状況です。そのため、従業員から未払いだった残業代を請求される可能性があります。
裁判例でも、5分単位・15分単位での一律切り捨てを違法とする判断が示されています。例え1日あたり数分であっても、積み重ねれば大きな金額となるため、企業にとっては多額の遡及支払いリスクにつながるので注意が必要です。
2-3. 会社の信用が低下する
15分単位での勤怠管理は認められません。そのため、このような勤怠管理をおこなっている場合、企業の信用に影響を及ぼす可能性があります。
是正勧告を受けた場合、監督署の公表制度により企業名が明らかになるケースもあります。また、SNS等で情報が拡散すれば、採用活動や取引先との関係にも悪影響を及ぼしかねません。
15分単位で勤怠管理をしていることが広まると、コンプライアンス意識を疑われ、取引の停止や従業員の離職、人手不足などにつながるリスクがあります。コンプライアンス重視の風潮が高まる現代では、正しい勤怠処理は企業価値を守る基本といえるでしょう。
3. 残業代の切り捨ては原則違法!給与計算は1分単位でおこなおう


先ほどもご紹介した通り、賃金はその全額を支払わなければならないと労働基準法で定められています。 賃金は労働の対価として支払われるものであるため、全額を支払うには労働時間は1分単位で管理し、給与計算も1分単位でおこなわなければなりません。
したがって、日々の出勤時間を始業時間に丸めたり、退勤時間を15分や30分単位で管理し労働時間を切り捨てることは違法となる可能性が高いです。残業代も含め、勤怠管理も給与計算も1分単位でおこないましょう。
3-1. 勤怠システムの丸め処理に注意
勤怠管理をシステム化していても、設定内容によっては違法な丸め処理が自動的におこなわれている場合があります。システム導入時や運用変更の際は、設定を確認し、1分単位で打刻・集計できる仕様に見直すことが重要です。
例えば、打刻時間を15分単位や30分単位に自動変換する設定にしていると、実際に働いた時間より短く計上される恐れがあります。このような処理が続けば、結果的に未払い残業代が発生し、労働基準法第24条の賃金全額払いの原則に抵触する可能性があります。
労働基準法では、残業代は1分単位で正確に計算することが求められており、パートやアルバイトも例外ではありません。パートやアルバイトなどの短時間勤務者は、数分単位の差が大きく影響するため注意が必要です。就業規則や賃金規程との整合性も定期的に確認し、法令遵守を徹底しましょう。
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関連記事:1分刻みは常識!タイムカードで残業時間を正しく計算する方法
4.1分単位計算は手間じゃない!企業が得られる3つのメリット


勤怠を1分単位で管理することは、一見すると手間が増えるように感じられるかもしれません。しかし、近年ではシステム化が進み、集計や給与計算の自動化によって精度と効率を両立できる環境が整っています。
また、正しく計算することで得られるメリットもあります。
- 従業員の信頼向上
- 労使トラブル予防
- コンプライアンス評価向上
ここでは、3つのメリットについて解説します。
4-1.従業員の信頼向上
1分単位で勤怠を集計すると、勤務時間の端数を切り捨てるような処理がないため、不公平感も生じにくく、企業への信頼や納得感が高まるメリットが得られます。
特に、残業代に関するトラブルは従業員との信頼関係を損なう要因となるため、透明性のある勤怠管理は労使関係の安定に欠かせません。また、正確な勤怠管理は評価制度や人事考課の精度向上にも寄与します。
従業員の努力が正確に反映されることで、モチベーションアップや離職防止にもつながり、長期的な人材定着も期待できます。
4-2.労使トラブル予防
勤怠管理を1分単位でおこなうと、労働時間や残業代の計算をめぐる誤解や不信感を防ぎ、労使トラブルを予防するメリットが得られます。また、時間外労働や休日出勤の算定を正確に処理することは、未払い残業や労働時間の過少申告などのミスを未然に防ぐ有効な手段にもなります。
裁判や監督署調査では労働時間の記録精度が重要視されるため、正確な記録を残しておくことはとても重要です。
さらに、システムを導入し勤怠データを可視化すれば、長時間労働や偏った業務負担を早期に発見し、改善策を講じることも可能です。
1分単位の精密な勤怠管理は、労使トラブル予防になるだけでなく法令遵守と職場の健全性を両立する基盤となります。
4-3.コンプライアンス評価向上
1分単位で勤怠を集計することは、単に正確な賃金支払いを実現するだけでなく、企業のコンプライアンス意識の高さを示す指標にもなります。行政調査や社内監査においても、実労働時間を正確に把握・記録している企業は高く評価されます。
また、法令遵守を徹底する姿勢は投資家や取引先からの信頼にも直結します。
勤怠管理の適正化は労務施策だけでなく、ガバナンス強化や企業ブランドの向上を支える取り組みとなるため、コンプライアンス評価が向上するメリットにもなるのです。
正確な勤怠データがあれば、働き方改革や労働環境改善を戦略的に進めることも可能になります。
5. 残業時間の計算方法によっては切り捨てが容認される場合もある


原則として残業時間も含め労働時間は1分単位での管理が必要ですが、例外として切り捨てが認められている場合があります。 ここからは給与を算出する際に残業時間の端数処理として切り捨てが容認される場面を述べていくだけでなく、残業時間を切り上げて給与を算出しなければならない場合についても説明します。
5-1. 1か月単位で時間外労働等の合計時間を計算した際の端数処理は容認される場合がある
まずはじめに、定時以外で働く時間の端数部分を処理する際に、切り捨てが容認される事例を紹介します。原則では定時以外で働く時間を算出するときは1分単位で賃金を支払わなければなりません。 しかし、1ヶ月ごとに残業時間を算出する仕組みを設けている会社では、例外的に切り捨てが認められています。
二 割増賃金計算における端数処理 次の方法は、常に労働者の不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものと認められるから、法第二十四条及び第三十七条違反としては取り扱わない。 (一) 1か月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。
これは勤怠を締めて給与を計算する作業を簡便化するためです。定時以外で働く時間の端数は30分未満であれば切り捨てることができます。
5-2. 場合によっては残業時間の切り上げ計算が求められる
定時以外で働く時間を算出を1ヶ月単位としている会社の場合、30分未満の定時以外で働く時間の端数であれば、切り捨ててしまってから給与を求めることが可能ですが、端数が37分だったなど、30分以上になってしまった超過勤務時間は、端数を切り上げて給与算出しなければなりません。 よって、定時以外で働く時間のうち端数となる部分が1か月で31分や48分になった場合は、端数を切り上げて給与計算する必要があります。

このように1ヶ月ごとに定時以外で働く時間を算出して給与を算出しているような会社では、定時以外で働く時間の端数部分の切り上げや切り捨てによる計算方法が求められます。1分単位で定時以外で働く時間を算出する仕組みを設けている会社のように、正確に給与計算ができなくなりますが、そのぶん給与計算や勤怠を締める作業を簡易化できます。 そのため勤怠締めの仕事を効率化したい会社は、定時以外で働く時間の算出を1か月単位でするメリットが大きいといえるでしょう。
6. このケースは切り捨て(切り上げ)可能?それとも不可能?


勤怠の端数処理は、原則として実働時間に基づく計算が求められますが、実務上は判断が難しいケースも存在します。
例えば、遅刻・早退の数分間を切り捨てて扱ってよいのか、始業前や終業後におこなわれる朝礼や終礼の時間を労働時間とみなすべきかなどのケースです。
これらは一見些細な時間に思えても、処理を誤ると未払い残業や是正勧告につながる可能性があります。ここでは、実務で迷いやすい2つのケースを例に、切り捨て・切り上げの可否を解説します。
6-1. ケース1:遅刻(早退)時間の切り上げ(切り捨て)
遅刻や早退の時間を「15分単位」「30分単位」で切り上げて控除する運用は、実際の勤務実態を超えた控除となるため、原則として違法です。
労働基準法に則れば、遅刻や早退の場合も1分単位で労働時間を記録しなければなりません。 例えば、始業時刻より5分ほど遅刻して出社した従業員がいた場合に、その従業員の始業時刻を本来の始業時刻から15分切り上げて計算する、というのも違法となります。
ただし、就業規則で「遅刻5分以上は15分単位で控除する」と明示し、かつ労使双方が合意している場合は、一定の合理性が認められることもあります。しかしこの場合も、実労働時間の管理は1分単位でおこなわなければなりません。
関連記事:勤怠管理における遅刻早退の控除の取り扱いや処理の方法について
6-2. ケース2:始業前(終業前)の朝礼(終礼)
始業前や終業前におこなわれる朝礼や終礼で、業務上の指示や報告がおこなわれる場合には労働時間に該当します。労働者が会社の指示で参加している以上、「任意の活動」ではなく、使用者の指揮命令下にあると判断されます。そのため、朝礼や終礼が業務の一環とみなされる場合には、その時間を切り捨てることはできません。
切り捨てた場合はケース1と同様、労働基準法に違反する可能性があります。ただし、自由参加のミーティングや制服への着替え・私物整理のみであれば、労働時間には含まれない場合もあります。運用上は、業務命令に基づくか否か、強制性があるかどうかを明確に区別することが重要です。
7. 正しい勤怠管理をおこなうポイント


勤怠管理を正しくおこなううえでは、次のようなポイントを押さえておきましょう。
- 従業員の勤務状況を把握する
- 法令を理解して遵守する
- 過重労働を防止する
- 勤怠管理システムを活用する
ここでは、これらのポイントについて解説します。
7-1. 従業員の勤務状況を把握する
正しい勤怠管理をおこなうには、従業員の勤務状況を把握しましょう。誰がどのくらいの時間外労働をしているか、有給休暇を適切に取得しているかなど、従業員の勤務状況を把握することは勤怠管理においては重要な要素です。
また雇用形態によって、残業時間の計算が異なるため、月給制である正社員や時給制であるアルバイトの違いを把握しておくことも重要です。このように詳細に従業員の勤務状況を適切に把握することは正しい給与計算のためにも欠かせません。
7-2. 法令を理解して遵守する
正しい勤怠管理では法令への理解を深めることが大切です。勤怠についての法令は残業代計算だけではありません。週や月で稼働できる時間外労働の時間なども36協定によって上限が設けられています。そのため、適切な勤怠管理をするには法令を理解して遵守するようにしましょう。
また、法改正に伴う上限規制や有給休暇の取得義務なども、随時見直しが必要です。
「前からこのやり方で問題なかった」という理由で運用を続けると、現在の法令と乖離しているケースもあります。担当者は定期的に法改正をチェックし、社内規程に反映させる体制を整えましょう。
7-3. 過重労働を防止する
勤怠管理によって過重労働を防止することも大切です。過重労働が進んでしまうと、従業員の負担が増加して離職や心身の疲弊につながりかねません。
また、長時間労働はメンタルヘルス不調や過労死などの深刻な問題につながる可能性があるので、企業には労働安全衛生法に基づく安全配慮義務が課されています。そのため、勤怠データから残業時間を定期的に分析し、基準を超える社員に対しては早期に面談や勤務調整をおこなう必要があります。
7-4. 勤怠管理システムを活用する
従業員の勤務状況や法令の遵守、過重労働の防止には勤怠管理システムを活用しましょう。勤怠管理システムは従業員の勤務状況をリアルタイムで把握できるようになります。また、勤怠管理システムであれば法改正にすぐに対応可能です。さらに、従業員の時間外労働を把握するのにも勤怠管理システムは有用です。 勤怠管理システムであればシステム上で勤怠情報を管理できます。エクセルのように人それぞれで書き方が異なり、集計に時間がかかるといったこともありません。
8. 残業時間は適切に計算しよう


勤怠管理や残業時間の集計は、企業の信頼性や法令遵守に直結する重要な業務です。
15分単位の丸め処理は、現在の法制度では違法と判断される場合があり、未払い残業や是正指導につながるおそれがあります。そのため、1分単位での正確な勤怠計算と、就業規則・システム設定の見直しが不可欠です。
また、長時間労働の傾向を把握し、早期に改善できる体制を整えることも大切です。残業時間を適切に計算し、従業員が安心して働ける環境を整え、より健全な会社運営を目指していきましょう。より健全な会社運営を目指していきましょう。
関連記事:勤怠管理の丸めとは?処理方法の基本と丸めの違法性について解説
「打刻まるめの労働時間集計ってどうやるの?」「そもそも打刻まるめは問題ない?」という疑問をおもちではありませんか?
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