雇用契約書における契約社員からの正社員登用についての記載ポイント
更新日: 2022.12.7
公開日: 2020.12.7
野村 佳史
契約社員の方を採用する場合、後にその方を正社員登用する可能性もあります。雇用契約書には正社員登用のことについてきちんと記載する必要があります。
雇用契約書は、労働条件について雇用主と従業員が納得していることを示すための書類です。正社員登用の条件や基準についても明記しておくことで、不要なトラブルを避けやすくなります。
本記事では、契約社員からの正社員登用について雇用契約書の作成で押さえるポイントや、契約社員からの正社員登用について雇用契約書の記載で注意するべきことについて、解説いたします。
参考記事:雇用契約の定義や労働契約との違いなど基礎知識を解説
目次
1. 契約社員からの正社員登用について雇用契約書の作成で押さえるポイント2点
契約社員を正社員登用する可能性がある場合、雇用契約書を作成する際に押さえておくべきポイントとしては、以下の2点が挙げられます。
- 絶対的明示事項と相対的明示事項を網羅する
- 正社員登用のための判断基準をきちんと記載する
それぞれについて、説明します。
1-1. 絶対的明示事項と相対的明示事項を網羅する
社員の雇用形態に限らず、雇用契約書には必ず記載しておかなければならない事項があります。
それらは必ず記載しなければならない「絶対的明示事項」と、その企業において何らかの決まりやルールがある場合に記載する必要がある「相対的明示事項」に分けられ、それぞれの事項は以下のようになっています。
【絶対的明示事項】
- 労働契約期間
- 就業場所および業務内容
- 始業時刻と終業時刻
- 所定労働時間を超える労働(いわゆる残業)の有無
- 休憩時間・休日・休暇に関する事項
- (交代制勤務が発生する場合)交代順序あるいは交代期日
- 賃金計算方法、支払い方法および支払日
- 退職・昇給に関する事項
- (昇給に関する内容のみ、文書で示さずに口頭での説明などでも問題なし)
【相対的明示事項】
- 退職手当の計算方法、支払い方法および支払日
- 臨時の賃金および最低賃金額に関する事項
- 労働者への負担が発生する食費や作業用品に関する事項
- 安全衛生や職業訓練に関する事項
- 災害補償および業務外の疾病扶助に関する事項
- 表彰・制裁に関する事項
- 休職に関する事項
雇用契約書の作成においては、これらの事項を網羅しているかどうかをしっかりと確認する必要があります。
なお、就業規則の交付が行われているのであれば、相対的明示事項に関してはあらためて文書で明示をする必要はなく、就業規則を参照してもらう形でOKです。
また、雇用契約書は法律必要なわけではありませんが、労使間トラブルが起きた際の証拠資料になるので、必ず結ぶようにしましょう。
当サイトでは、雇用契約書・就業規則を作成する際に注意しなければいけない点を、労働契約法に沿って解説した資料を無料で配布しております。自社の人事業務の対応で不安な点がある方は、こちらから「有期雇用の説明書」という資料をダウンロードしてご確認ください。
1-2. 正社員登用のための判断基準をきちんと記載する
契約社員から正社員への登用は無条件ではなく、何らかの条件が設けられているケースが大半です。
勤務成績・勤務態度、業務遂行能力、契約更新時期の会社の経営状況など、さまざまな要素を考慮に入れたうえで正社員登用の可否が判断されるため、雇用契約書にもそのことをきちんと記載しておくべきといえます。
正社員登用の条件をあやふやにしておくと、トラブルの原因になりかねません。
参考記事:正社員の雇用で必須の雇用契約書の作成方法を分かりやすく解説
2. 契約社員からの正社員登用について雇用契約書の作成で注意するべき2つのこと
契約社員からの正社員登用について雇用契約書の作成で注意しておくべきこととしては、以下のようなことが挙げられます。
- 雇用形態ごとに雇用契約書の雛形を作成しておく
- 正社員登用した際にはあらためて雇用契約書を交わす
それぞれについて、説明します。
2-1. 雇用形態ごとに雇用契約書の雛形を作成しておく
契約社員でも正社員と同じような仕事を担当するケースは多々ありますが、雇用形態が違えば当然ながら労働条件も異なります。
そのため、雇用契約書の雛形を一つしか用意せずに、雇用契約を結ぶ際に雇用形態に応じてその都度細部を修正しているようだと、本来であればその雇用形態にそぐわない内容の雇用契約書で契約を結んでしまうといったミスも考えられます。
正社員・契約社員・派遣社員・パート・アルバイトなど、雇用形態ごとに雇用契約書の雛形を作成しておき、それぞれに適した雇用契約書で雇用契約を交わすようにしましょう。
参考記事:雇用契約書が正社員でも必要な場合と不要な場合の違いとは?
2-2. 正社員登用した際にはあらためて雇用契約書を交わす
契約社員を正社員登用しても仕事内容に大きな違いがない可能性がありますが、ボーナスの有無や定年までの雇用保障の有無など、雇用契約の条件には大きな違いが生じる可能性が高いです。
そのため契約社員を正社員登用した場合には、あらためて雇用契約書を交わすのが一般的です。
雇用契約書は、雇用主と従業員の双方が労働条件について確認したことを示すための書類なので、正社員登用のタイミングで再度交わしておくことで、不要なトラブルを避けることにつながります。
参考記事:雇用契約を更新する手順|従業員に対して実施すべき具体的対応を解説
3. 契約社員の正社員登用がある場合はその条件・判断基準の記載が重要
契約社員として働く場合、正社員に登用されることを目指す方も多いので、そのための条件や判断基準をうやむやにしておくと、トラブルの火種になってしまう可能性もあります。
雇用契約書は、労働条件について雇用主と従業員の双方が納得したことを示すための書類です。正社員登用の条件や判断基準についてもきちんと記載することを心がけましょう。
参考記事:雇用契約の違反に当たる10のケースとトラブルを避ける対策をご紹介
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