雇用契約と請負契約の違いとは?それぞれの内容・注意点を解説
更新日: 2022.12.7
公開日: 2020.11.19
NOMURA
雇用契約と請負契約の違いを正しく理解できているでしょうか。
従業員を雇用する場合、雇用主側が雇用契約と請負契約の違いについて理解しておくことは、思わぬトラブルを引き起こさないためにとても重要なことです。
今回は、雇用契約と請負契約、それぞれの内容や注意点について解説します。
関連記事:雇用契約の定義や労働契約との違いなど基礎知識を解説
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1. 雇用契約と請負契約の違い
結論から記載すると、雇用契約と請負契約の違いは「労働者性の有無」になります。
労働者とは、「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」と労働基準法では定められており、雇用主は労働者に対して労働基準法などの法令に従って雇用しなければなりません。
雇用契約の場合は、雇用される側は「労働者」となるため、労働関係の法令の保護を受けることができますが、一方で、請負契約の場合は、雇用主と労働者という関係ではなく、注文者と請負人という関係となります。
請負人は労働関係の法令における労働者ではないので、労働者としての保護を受けることができません。
2. 雇用契約と請負契約の具体的な意味・内容
それでは、雇用契約と請負契約の具体的な意味や内容を見ながら、双方の具体的な違いについて確認していきましょう。
2-1. 雇用契約とは
雇用契約の根拠となるのは民法第623条で、労働者が行う労務に対して雇用主が報酬を支払うことを意味しています。
雇用契約では、始業・就業の時刻が定められていたり、就業する場所が決められていたりするなど、雇用主に指揮命令があります。
労働者に仕事についての指示や命令を拒否する権利がない、あるいは拒否したくてもできない状況であれば、指揮命令があると判断され雇用契約となるでしょう。
また、「時給」「日給」「月給」といったように、労働に対する報酬が支払われることに特徴があります。
関連記事:雇用契約とは?法的な位置付けと雇用契約書を作成すべき理由を解説
2-2. 請負契約とは
対して、請負契約では指揮命令がないため、注文者からの依頼を拒否することができます。
雇用主が材料や機材を提供する雇用契約とは異なり、請負契約では自分の機械や資材を使用しなければなりません。
そして非常に重要なのは、完成品を引き渡すことが厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」によって定められているという点です。
したがって請負契約では、成果物を引き渡さないと報酬が支払われません。
請負契約の場合、仕事が完成する前であればいつでも契約を解除することが可能である点も、雇用契約と大きく異なるポイントです。
【表】「雇用契約」と「請負契約」
雇用契約 | 請負契約 | |
指揮命令 | あり | なし |
労働者側に求められる要件 | 「労働」に対して 報酬が支払われる |
「成果物」に対して 報酬が支払われる |
法令による保護 | あり | なし |
契約解除 | 雇用主側から一方的に 契約解除はできない |
仕事が完成しない間であれば 契約解除が可能 |
3.雇用契約や請負契約を結ぶ際の注意点
最後に、雇用契約・請負契約を労働者と結ぶ場合の注意点について、それぞれ解説いたします。
3-1. 雇用契約がどうかは労働者の実態によって決まる
雇用契約における重要な注意点は、契約上は雇用契約でなくても、働く人が労働者の実態を備えていれば雇用契約と見なされるということです。
たとえば、雇用契約以外の形態で契約していても、従業員に業務を拒否する選択肢がなかったり、業務に必要な材料や用具を会社が用意していたりする場合には雇用契約と見なされます。
3-2. 雇用契約の労働者は労働関係の法令で保護される
雇用契約の場合、労働者は労働関係の法令でしっかり保護されているため、雇用主としては、この点をよく覚えておく必要があるでしょう。
たとえば雇用契約を締結している労働者には、以下のような権利が与えられています。
・残業代の請求や有給休暇の申請が行える
・労働者は雇用主の指示や命令の元に業務を行うので、ある程度の範囲の損害は雇用主が負担する
・不合理な理由での解雇・契約解除を拒否できる
これらは、会社の就業規則にかかわらず与えられている権利であるため、たとえ就業規則に「残業代は支給されない」などと書かれていても無効となります。
3-3. 請負契約は労働者にとって不利な点が多い
請負契約は、雇用契約と比較して請負人に不利な点が多くあります。
請負契約を締結した場合、労働基準法などの保護を受けられなくなるからです。
もし不可抗力によって成果物が引渡し前に壊れてしまったり、なくなってしまったりした場合でも、報酬を請求することはできません。
雇用契約であれば会社が補填してくれる損失も、請負契約になるとすべて自分で穴埋めをしなければならないという状況も生じ得ます。
4. まとめ
雇用契約と請負契約の間には、それほど違いはないように思えるかもしれませんが、実は非常に大きな差があることがわかります。
そのため、雇用主側であっても労働者側であっても、これから結ぶのが雇用契約なのか請負契約なのかをはっきり理解する必要があるでしょう。
雇用主側としては、契約の際に雇用契約か請負契約かを新調に検討したうえで契約を締結するようにしましょう。
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