正社員の雇用契約書について解説!内容や書き方【雛形・テンプレートあり】
正社員を採用する際は、雇用主と労働者の間で雇用契約を締結します。その際、雇用主側が労働者に対して作成・提示するのが雇用契約書です。
雇用契約書には、契約期間や賃金の取り決め方など大事な事項が記載されていますので、漏れなどの不備なく作成することが大切です。
そこで今回は、正社員雇用に欠かせない雇用契約書の作成方法や、雇用契約書の必要性、作成時の注意点などをまとめました。
関連記事:雇用契約書とは?法的要件や雇用形態別に作成時の注意点を解説!
目次
「雇用契約手続きマニュアル」無料配布中!
従業員を雇い入れる際は、雇用(労働)契約を締結し、労働条件通知書を交付する必要がありますが、法規定に沿って正しく進めなくてはなりません。
当サイトでは、雇用契約の手順や労働条件通知書に必要な項目などをまとめた資料「雇用契約手続きマニュアル」を無料で配布しておりますので、「雇用契約のルールをいつでも確認できるようにしたい」「適切に雇用契約の対応を進めたい」という方は、是非こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
2024年4月に改正された「労働条件明示ルール」についても解説しており、変更点を確認したい方にもおすすめです。
1. そもそも雇用契約書とは?
雇用契約書とは、企業と従業員が雇用関係を正式に成立させるための文書です。この契約書には、労働条件や業務内容、労働時間、賃金などが記載され、従業員と企業の権利と義務を明確にします。雇用契約書を作成することで、双方が内容に同意していることを確認し、将来的なトラブルを防ぐことができます。
特に、就業規則や賃金規程は従業員の労働条件を集団的に規律するものであるのに対し、個別の従業員ごとの労働条件を確認するための雇用契約書の作成が重要です。これにより労使間の紛争防止に役立ち、労働関係が健全かつ円滑に進むことが期待されます。
さらに、自社の労務環境や就業環境にマッチした雇用契約書を作成することが求められます。自社の就業規則や賃金規程との整合性を確認しながら作成することで、労使紛争の原因を未然に防ぎ、適切な労働環境を整えることができます。
1-1. 雇用契約書の作成は義務ではない
労働基準法では、雇用契約の締結にあたり、労働者に労働条件を明示することと定めていますが、これは雇用契約書の作成そのものを義務づけるものではありません。
実際、労働基準法施行規則第5条4では、労働者が希望した場合、FAX送信や電子メールなどの方法で労働条件を提示することを認めています。
ただ、雇用契約や労働条件をめぐるトラブルは決して少なくなく、令和元年度に寄せられた約118万件の総合労働相談件数のうち、「労働条件の引き下げ」や「出向・配置転換」といった雇用・労働条件にまつわる相談は全体の1割以上を占めています。
関連記事:雇用契約書が正社員でも必要な場合と不要な場合の違いとは?
関連記事:正社員でも雇用契約書は毎年の更新が必要!その理由や注意点を解説
1-2. 労働条件通知書との違い
雇用契約書と労働条件通知書は類似の役割を果たしますが、異なる点もあります。労働条件通知書は、労働基準法により従業員に対して労働条件を通知する義務が定められています。
通常、労働条件通知書は従業員の署名や捺印が必要ないため、記載された労働条件に基づき就業することを従業員が同意したことが明確にならない場合があります。一方、雇用契約書は両者が合意した契約内容を記載し、従業員の署名や捺印を求めるため、記載された労働条件に基づき就業することを従業員が同意したことが明確になります。
このため、従業員との間で労働条件についてトラブルを避けるためには、労働条件通知書ではなく、法的拘束力を持つ雇用契約書を作成することが推奨されます。労働条件通知書は一方的な通知であるのに対し、雇用契約書は双方の合意を前提としています。
2. 雇用契約締結の際に注意したい正社員の定義
正社員の定義は企業によって異なることがありますが、一般的には「正社員」とは、退職や解雇などの特別な事情がない限り、定年までフルタイムで雇用を継続する内容の雇用契約を企業と締結した従業員を指します。
正社員は企業の組織に深く関与し、安定した雇用関係を築くことが期待されます。さらに、正社員は長期の雇用を前提に企業内で育成され、キャリアを積むに従って賃金も引き上げられることが通常です。そのため、契約締結の際には正社員としての労働条件や福利厚生、キャリアパスなどを明確にすることが重要です。
2-1. 契約社員・パートとの違い
正社員と契約社員、パートとの違いについて説明します。正社員は企業の中心メンバーであり、定年までの長期雇用を前提としたフルタイムの従業員です。一方、契約社員は期間限定の雇用契約であり、定年までの雇用ではありません。
パート社員は正社員よりも所定労働時間が短く、フルタイムでない点が特徴です。賃金や福利厚生、昇進の機会などもそれぞれ異なるため、雇用契約を締結する際にはその違いを明確にし、適切な条件を設定することが重要です。
3. 正社員向けの雇用契約書に記載する内容
労働基準法第15条では、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」と定めています。
労働条件は複数にわたりますが、正社員向けの労働条件通知書を作成する際は、最低でも以下11の項目を書面にして明示することが義務づけられています。
ここでは、雇用契約書と労働条件通知書を兼ねる場合には必ず記載すべき事項、それぞれのポイントをまとめました。
3-1. 契約期間
正社員の場合は原則として契約期間の定めがない「無期雇用契約」になりますので、「期間の定めなし」と記載します。
なお、試用期間を設ける場合は、「試用期間:入社後◯ヶ月間」「試用期間:◯◯年◯月◯日~◯◯年△月△日」など、いつまで試用期間にあたるのか、はっきり明記しておきます。
関連記事:雇用契約の期間とは?期間の定めがあるとない場合の違いや契約時の注意点を解説
3-2. 就業場所
採用後、労働者を配置する具体的な場所を記載します。本社以外に支社・支店がある場合は、「本社 営業課」「◯◯支社 総務課」などと区別して記載しましょう。
なお、転勤の可能性がある場合は、就業場所の欄に「業務上の必要に応じて配置転換する場合あり」などと記載しておくと、実際に転勤や配置転換を命じる際、トラブルに発展しにくくなります。
よって、雇用契約書に会社の転勤命令には従う必要があることを明記し、採用面接の際にも転勤があることを説明する必要があるでしょう。
3-3. 従事すべき業務の内容
採用後に従事してもらう業務の内容を記載します。事細かに記載する必要はなく、「総務に関する業務」「経理業務」など、一般的な業務を明示すればOKです。
複数の業務に携わってもらう場合は箇条書きにし、多種多様な仕事を任せる可能性があることをあらかじめ示しておきましょう。
3-4. 始業および終業の時刻
労働を開始する時刻と、終業する時刻を記載します。
労働時間は労働基準法第32条により、休憩時間を除き「1日について8時間」「1週間について40時間」をそれぞれ超えて労働させてはならないと定められています。
そのため、通常なら始業時間を起点として、休憩1時間を経た9時間後を終業時間にするのが一般的です。(例:9:00~18:00)
一方、労働時間を月単位または年単位で清算する変形労働時間制を適用する場合は、労働時間の組み合わせや、フレキシブルタイム・コアタイムの設定など記載しなければなりません。
たとえばシフト制を導入している場合、「1ヶ月単位の変形労働時間制・交代制として、次の勤務時間の組み合わせによる」などと記載したうえで、始業時間と終業時間の組み合わせを箇条書きにします。
3-5. 所定労働時間を超える労働の有無
所定労働時間を超える労働、つまり残業や休日出勤をする可能性について明記します。
所定時間外労働の可能性がある場合は「有」、ない場合は「無」と記載すればOKです。
3-6. 休憩時間、休日、休暇に関する事項
所定労働時間のうち、休憩時間がどのくらいあるか具体的に記載します。(例:60分)
休日については、特定の曜日や日にちに休むことが決まっている場合は「毎週 土・日・祝日」「年末年始(12月29日~翌年1月3日」)などと表記します。
一方、週あたり・月あたりの休日が変則的な場合は、「週あたり2日」「月あたり10日間」などと記載してもかまいません。
なお、年単位の変形労働時間制を採用している場合は、「年間105日」など、一年で取得するトータルの休日を記載するケースもあります。
休暇に関しては、年次有給休暇の日数だけでなく、付与する条件もあわせて記載するのが一般的です。
年次有給休暇については、労働基準法第39条にて休暇を与える条件が定められていますので、「6ヶ月継続勤務で10日、以降は労働基準法の定めに従う」などと記載しておけば問題ないでしょう。
年次有給休暇のほかに、慶弔休暇や傷病休暇などがある場合は、その旨もあわせて記載します。
3-7. 交替制勤務をさせる場合、交替期日あるいは交替順序等に関する事項
交代制勤務を導入している場合には、交替期日あるいは交替順序等に関する事項を記載しなければなりません。
勤務パターンごとに始業時間や終業時間を記載するほか、交替する期日や交替する順序なども明記します。
3-8. 賃金の決定、計算および支払いの方法
基本給や所定時間外労働に支払われる割増賃金の計算方法、および賃金支払いの方法などを記載します。
通勤手当や資格手当などを支給する制度がある場合は、支給の条件や計算方法なども明記しましょう。
3-9. 賃金の締め切りおよび支払いの時期
賃金はいつを締め切り日とし、いつまでに支払うのかを記載します。たとえば月末締めの翌月25日払いの場合は、「賃金締切日:毎月月末」「賃金支払日:翌月25日」などと記載します。
3-10. 昇給に関する事項
昇給の回数や時期について記載します。(例:年1回4月)
なお、会社の業績や個人の成績によって昇給されない可能性がある場合は、その旨をしっかり明記しましょう。
条件を記載しない場合、会社の業績や個人の成績にかかわらず、毎年昇給されるものと認識されてしまうので要注意です。
3-11. 退職に関する事項(解雇の事由含む)
定年制の有無や、定年の年齢、定年後再雇用制度の有無など、退職に関する事項を記載します。あわせて、自己都合退職する際の手続き方法や条件も表記しておきましょう。(例:退職する30日以上前に届け出ること)
また、退職に関する事項には、解雇の事由や手続きに関する項目も含まれます。
解雇の事由や手続き方法の詳細は、会社の就業規則に詳細が記されていますので、雇用契約書では「懲戒・処分等就業規則に定める手続きを行う」とだけ記載し、参照すべき就業規則(◯条)を書き添えておくとよいでしょう。
その他、会社の規定に応じて昇給に関する事項や賞与に関する事項を記載しますが、これらは口頭説明でも問題ないとされています。
もちろん、雇用契約書に盛り込むのがベストですが、まずは必ず記載すべき11の事項をしっかり確認し、不備のないよう作成することを最優先に考えましょう。
参考記事:雇用契約を更新しない場合の正当な理由と社員への伝え方
4. 正社員の雇用契約書における書き方のポイント
それでは正社員の雇用契約書を作成する際の書き方のポイントを解説していきます。雇用契約の締結において、重要なポイントですので正しく理解しておきましょう。
4-1. 雇用契約書に記載すべき項目を網羅する
正社員を雇用する際は、法的に必要とされる全ての記載事項を確実に網羅することが求められます。雇用契約書には、雇用条件に関し、労働基準法施行規則で義務付けられた項目を明示する必要があります。例えば、労働条件や賃金の決定方法、休暇制度などが挙げられます。これにより、労働者が安心して勤務でき、企業も法的なトラブルを回避することができます。正社員の雇用契約書を作成する際には、これらの項目に漏れがないようにしっかりとチェックすることが重要です。
4-2. 会社がどのような労働時間制を採用しているか記載する
企業が採用する労働時間制を明確にし、適切な制度を選択することが正社員の雇用契約書作成の重要なポイントです。法律上、「通常の労働時間制」(原則的制度)に加え、「変則的な労働時間制」を採用することが認められており、どの制度を選ぶかが鍵となります。
通常の労働時間制では、固定された勤務時間が定められており、雇用契約書には必ず「始業時刻・終業時刻」を記載する必要があります。この明確なスケジュールにより、労働者の働きやすさや生産性の向上が期待できます。
一方、変則的な労働時間制では、より柔軟な勤務時間を許容し、従業員個々のライフスタイルやニーズに応じた労働環境を提供することができます。例えば、フレックスタイム制や裁量労働制などがこれに該当します。これにより、労働者のワークライフバランスの向上が図られるため、企業にとっても重要な選択肢となります。最適な労働時間制を選択し、その詳細を雇用契約書に記載することで、労働者が働きやすい環境を提供することが可能になります。このため、雇用契約書作成の際には、どの労働時間制を採用するかを慎重に検討することが必要です。
通常の労働時間制の場合
通常の労働時間制では、始業時刻と終業時刻が固定されています。これにより、労働者は毎日のスケジュールを予測しやすくなります。一方で、業務内容や繁忙期には柔軟な対応が求められる場合もあります。労働基準法上、企業は従業員の所定労働時間を「1日8時間以内、1週間40時間以内」で設定し、少なくとも「週1日以上の休日を与えなければならない」とされています。「1日8時間労働、週休2日」がその典型です。そして、実際の労働時間が「1日8時間、1週間40時間」を超えると、それは「残業」となります。
残業が発生するときは、以下の2つの対応が必要です。まず、企業は従業員を「1日8時間、1週間40時間」を超えて就業させるときは、時間外労働・休日労働に関する労使協定を締結し、労働基準監督署に提出する必要があります。この労使協定は、労働基準法36条で義務付けられていることから「36協定」(サブロク協定)と呼ばれます。そして、企業が所定労働時間を超えて従業員を就業させるときは、残業代の支払いが必要です。
以上が、正社員の雇用契約において通常の労働時間制での重要なポイントです。
変則的な労働時間制の場合
変則的な労働時間制では、フレックスタイムやシフト制が採用されることが多いです。これにより、労働者は自分のライフスタイルに合わせて勤務時間を調整することができます。ただし、企業側は労働時間の管理が難しくなるため、明確なガイドラインを設定することが必要です。
正社員の雇用契約において、変則的な労働時間制には労働基準法で認められた以下の制度があります。
1.専門業務型裁量労働制
3.事業場外のみなし労働時間制
5.変形労働時間制
6.フレックスタイム制
これらの制度のうち、「専門業務型裁量労働制」と「事業場外のみなし労働時間制」は、原則として残業代が発生しない制度となります。一方、「変形労働時間制」と「フレックスタイム制」には残業代が発生しますが、一部残業代の発生を減らすことができる可能性があります。
専門業務型裁量労働制では、一部の専門職について実労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間を労働したとみなします。また、事業場外のみなし労働時間制では、社外で働く従業員に対し、実働時間にかかわらず定められた時間を働いたとみなします。
変形労働時間制は、あらかじめ定めた期間内で平均労働時間が週40時間以内であれば、特定の日に8時間以上、または特定の週に40時間以上の労働でも残業代が発生しないようにできます。フレックスタイム制は、従業員が始業時刻と終業時刻を一定のルールに基づいて自由に決定することができる制度です。
企業はこれらの制度を適切に導入し、従業員の働き方の柔軟性を高める一方で、労働時間の管理と法令遵守に努める必要があります。
4-3. 異動や職種変更の有無を明記する
人事異動や職種変更の可能性について明記することで、労働者に対する期待や将来のキャリアパスを示すことができます。これにより、労働者は企業での成長やキャリアアップの機会を視野に入れることができ、長期的な雇用関係の構築が期待されます。
また、正社員の雇用契約締結においては、「就業の場所」を明示することが重要です。特に「転勤があるかないか」は従業員にとって極めて重要な情報となり、就職先を選ぶ際の重要な判断材料となり得ます。
したがって、雇用契約書には人事異動や職種変更の有無を明確に記載し、労働者に対して透明性を保つことが不可欠です。これにより、労働者は安心して自分のキャリア計画を立てることができ、企業も優秀な人材を長期間にわたって確保することが可能となります。
4-4. 転勤の有無を明記する
転勤の有無について事前に明確にすると、労働者は将来的な勤務地の変更に対する心構えを持つことができます。これにより、家庭や生活の計画が立てやすくなり、転勤に伴うトラブルを未然に防ぐことが可能です。
記載がない場合、転勤を命じられても拒否するケースなどもあります。このため、従事する業務内容や転勤の有無について具体的に明示することが重要です。
4-5. 試用期間の有無と長さを明記する
正社員の雇用契約書を作成する際の重要なポイントとして、「試用期間を明記する」という項目があります。「試用期間」の制度は、新しく採用した従業員を一定期間実際に働かせ、その従業員が業務に適しているかどうかを判断するためのものです。この制度を設けることで、会社側は従業員の適格性を確認でき、一緒に働くことによる現実的な評価が可能になります。
雇用契約書には試用期間の有無やその条件を必ず明記することが重要です。これにより、労働者は試用期間中に期待されるパフォーマンスや評価基準を理解しやすくなり、適切な業務遂行が促進されます。また、試用期間中も雇用契約は成立しているため、試用期間の経過後に本採用を自由に取り消すことはできません。不当に本採用を拒否する場合、不当解雇と見なされることもありますので注意が必要です。
従業員に対する透明性と公平性を保つためにも、試用期間の条件を明確にし、その内容をしっかりと理解させることが企業にとっても労働者にとっても非常に重要です。
5. 正社員の雇用契約書の雛形・テンプレート
正社員の雇用契約書を作成する際には、雛形やテンプレートを利用することでスムーズに進行できます。これにより、全ての必要な記載事項を漏れなく含めることができ、法的にも問題のない契約書を作成することが可能です。
正社員と締結する雇用契約書の雛形として、以下の項目を含めることをお勧めします。
1. 労働契約の期間 2. 就業の場所 3. 従事する業務の内容 4. 始業時刻 5. 終業時刻 6. 所定労働時間を超える労働の有無 7. 交替制勤務をさせる場合は交替期日あるいは交替順序等に関する事項 8. 休憩時間 9. 休日 10. 休暇 11. 賃金の決定・計算方法 12. 賃金の支払方法 13. 賃金の締切り・支払の時期に関する事項 14. 退職に関する事項(解雇事由を含む) |
これらの項目を適切に含めた契約書を作成することで、労働者と雇用者の双方にとって透明性のある労働契約を締結することが可能となります。また、制度化された雛形を用いることにより、細部にわたって確認すべき事項を漏れなく対応することができ、トラブルの防止にも繋がります。雛形として、厚生労働省よりテンプレートも公開されていますのでぜひ参考にしましょう。
また当サイトでも、労働条件通知書を作成する際に参考にできる労働条件通知書のフォーマットを無料配布しています。
社労士の監修付きで、令和6年に労働条件の明示ルールが変更された点も反映した最新のフォーマットです。雇用契約書として兼用することもできる雛形ですので、「これから作る雇用契約書の土台にしたい」「労働条件通知書を更新する際の参考にしたい」という方は、ぜひこちらからダウンロードの上、お役立てください。
6. 雇用契約書の電子化について
近年では、雇用契約書を電子化する企業が増えています。これは、管理がしやすく、検索や更新も容易であり、ペーパーレス化によるコスト削減にも寄与するためです。
以前は、労働基準法第15条により雇用契約書の書面交付が義務付けられていたため、別途紙媒体で労働条件通知書を交付しなければならない問題がありました。しかし、平成31年4月に労働基準法施行規則が改正され、従業員の希望がある場合に限り、電子メール等で労働条件の通知が可能となり、この問題が解決されました(労働基準法施行規則5条4項)。適切な電子署名を利用することで、電子化された雇用契約書の法的効力も担保されます。
社内で紙の雇用契約書の保管が難しい場合や、リモートワークなどで郵送の手間を省きたい場合など、雇用契約書の電子化は有力な選択肢となります。
7. 正社員の雇用契約書についてよくある質問
ここまで正社員の雇用契約の締結内容や書き方について詳しく説明してきました。少しずつ基礎情報を解説できたところで、続いて正社員の雇用契約の締結においてよくある質問をケースごとまとめました。ケースごとにどう対応すべきか解説していますので、参考にしましょう。
7-1. 在宅勤務の記載について
在宅勤務については、勤務場所や勤務時間、業務内容などを明確に記載する必要があります。これにより、労働者が自宅で働く際のルールや期待されるパフォーマンスを理解しやすくなります。
さらに、雇用契約書を修正することで、在宅勤務の従業員を採用する場合にも対応可能です。具体的には、就業場所を「自宅」と記載し、労働時間の把握方法を明記する必要があります。加えて、在宅勤務中の通信費や光熱費の負担についても明示することが重要です。
7-2. 雇用契約書に違反した場合どうなる?
雇用契約書に違反した場合、その内容に従って対応が取られます。例えば、労働者が無断欠勤を続けた場合、懲戒処分や解雇などが検討されることがあります。
また、企業が労働条件を守らなかった場合、労働者は法的手段を取ることが可能です。会社側の契約違反には、「雇用契約書に記載のあるとおりの賃金を支払わない」、「雇用契約書に記載されている業務内容とは別の業務に就かせる」等のケースがあげられます。
従業員は、賃金の支払いを求めたり、損害賠償を会社に請求することができ、ただちに退職することも可能です(労働基準法第15条2項)。契約違反の内容によっては労働紛争が発生することもありますが、解雇については慎重に対処することが求められます。
不当解雇として訴えられるケースも多いため、企業は適切な手続きを踏む必要があります。
7-3. 雇用契約書の労働条件が現実と違う場合はどうなる?
雇用契約書に記載された労働条件と現実が異なる場合、まずは労働者と企業が話し合いを行うことが重要です。それでも解決しない場合、労働基準監督署に相談するなどの対応が必要です。
労働基準法第15条2項によれば、従業員は即時に労働契約を解除することが可能です。つまりすぐに退職する可能性があり、さらに会社に対する損害賠償請求も行えます。
最悪の場合、法的手段を検討することも必要です。このような問題を未然に防ぐために、企業は雇用契約書の内容を正確に示すことが重要です。
7-4. 雇用契約書を未締結のまま退職した場合はどうなる?
雇用契約書を締結していない場合でも、労働基準法に基づいて基本的な労働条件は守られるべきです。しかし、従業員が雇用契約書を提出しないまま退職してしまうケースが存在します。会社から従業員に雇用契約書を提示したにもかかわらず、従業員がその内容を承諾せずに退職した場合、そもそも雇用契約の内容について十分な合意ができていなかったことになります。そのため、雇用契約は成立していなかったと考えられます。
このような状況では、契約が成立していないため、従業員に対して出勤を督促したり、損害賠償請求をすることはできません。この種のトラブルを避けるためには、採用のタイミングで雇用契約書を提示し、その内容を確認してもらった上で採用を決定することが重要です。
一方、会社から提示した雇用契約書を従業員がその場で承諾した場合、直接的な提出がなくても承諾があった時点で雇用契約は成立していると考えられます。その上で、従業員が会社の定めた手続きを無視し突然退職した場合、会社は従業員に対して損害賠償を請求できる可能性があります。
7-5. 雇用契約書の内容を変更した場合はどうする?
正社員の雇用契約書とは、企業が正社員として働く労働者との間で交わす公式な契約書です。これは労働条件や就業規則、雇用期間などを明確に記述した文書であり、企業と労働者の双方にとって大切な取り決めを明文化するものです。
いったん作成した雇用契約書の内容に変更が生じるケースもあります。例えば、勤務時間や賃金を変更する場合、勤務地や業務内容を変更する場合、また正社員の契約を契約社員に変更する場合などが考えられます。
このように雇用契約書の内容を変更する場合、会社と従業員の双方の合意が必要です。「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる」とした労働契約法第8条が適用されます。
8. 正社員を雇う際にはトラブル回避のため雇用契約書を締結しておこう
正社員は契約期間を設けず、長期間働いてもらうことを前提に雇用する人材です。双方が納得し、より良い関係を築いていけるよう、雇用契約書は万全を期して作成しましょう。
また雇い入れ時に労働条件通知書の交付は必要です。システムを導入し電子化を進めることで作業の効率化も期待できるので、今のうちに導入を検討してみるのもおすすめです。電子化について気になる方は、ぜひこちらの記事をご覧ください。
関連記事:雇用契約書・労働条件通知書を電子化する方法や課題点とは?
雇用や労働関係の法規は時代とともに見直されますので、改正が行われたら、適宜見直す習慣をつけることも大切です。
アルバイトの雇用契約書を作成する場合は、下記の記事をご参照ください。
関連記事:アルバイト採用でも雇用契約書は必要?作成するための4つのポイント
関連記事:飲食店で正社員を採用する際の雇用契約書の作成方法・必要な手続き
関連記事:有期雇用契約書に正社員登用についての条件記載は必須?作成ポイントも解説!
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