正社員の雇用契約書の作成は義務?不要な場合もある?必要性について解説
正社員として採用された場合、実際に働き始める前に雇用契約書を交わすケースが大半であり、この手続きに疑問を持つ方はあまりいないのではないかと思います。
しかし、雇用契約書を交わすという手続きは必ず行わなければならないのかどうかと聞かれて、正しく即答できる人もあまりいないかもしれません。
本記事では、正社員を採用する際に雇用契約書を交わすことは義務なのかどうかや、雇用契約書の作成方法などについて解説いたします。
雇用契約は法律に則った方法で対応しなければ、従業員とのトラブルになりかねません。
当サイトでは、「自社の対応が適切か確認したい」という人事担当者様に向け、雇用契約の方法から、雇用契約についてよくある質問までをまとめた資料「雇用契約手続きマニュアル」を無料で配布しております。
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目次
1. 正社員の雇用契約書は義務ではない
雇用契約書は、従業員を採用する際に従業員と雇い主の間で交わされる契約書であり、雇用契約の内容について双方の合意がなされたことを証明するための書面です。
正社員として入社する際は企業(雇い主)と雇用契約書を交わすことが大半なので、正社員への雇用契約書の作成は必ず必要なものと思われている方も多いかもしれません。
実は、雇用契約の効力は従業員と雇い主双方の合意があれば成立するため口約束だけでも成立します。
必ずしも雇用契約書の作成が必要というわけではないのです。
一方で、労働基準法では「入社時に労働条件について書面で明らかにしなければならない」ということが定められています。
これに関しては雇用契約書ではなく「労働条件通知書」という書類で代替可能です。
また、そのため雇用契約書の作成は雇い主や企業にとっての義務、というわけではないのです。
2. 雇用契約書の必要性
雇用契約書の作成が雇い主や企業にとって義務ではないにも関わらず、大半の場合正社員を採用する際に雇用契約書を作成し取り交わしているのはメリットがあるからです。
具体的には、雇用契約書を交わすことで双方の間で労働条件についての合意が得られて、認識の違いや勘違いなどによるトラブルが起きるのを避けやすくなるという点が挙げられます。
労働条件通知書は、法的に交付義務があるものの、雇い主や企業が従業員に対して一方的に労働条件を通知する書類であるため、雇い主と従業員間の合意が取れているわけではありません。
そのため、労働条件について従業員が「わかりにくく、納得していない」といった意見の対立が起きた場合、双方が合意した証拠として労働条件通知は有効ではないのです。また、口頭で雇用契約を取り交わしていたとしても、物理的な記録が残っていないため水掛け論へ発展してしまうでしょう。
一方、雇用契約書の場合は双方が同意して交わされる書類なので、労働条件について後から「聞いていない、納得していない」という意見が出た際に、合意をとった証拠として有効なのです。
契約の時点で曖昧な部分をなくすことができるというのは、雇用契約書を作成する大きなメリットといえます。
逆にいえば従業員は、雇用契約書を交わした時点で「記載されているすべての内容について納得した」という意思表示とみなすことができます。
労働条件について曖昧な部分や不明瞭な部分がないか従業員にしっかり確認したうえで、雇用契約書にハンコを押してもらうよう、書面での交付だけでなく口頭で補足説明や質疑応答をするとより安心な契約となるでしょう。
その他にも雇用契約には禁止事項が定められていたり、就業規則と雇用契約書のどちらの方が優先順位が高いのかわからなくなったりと、雇用契約に関する業務を行う際には、正しい知識が求められます。
当サイトでは、上述したような雇用契約に関する禁止事項や、雇用契約を結ぶ際の適切な対応などを解説した資料を無料で配布しております。自社の雇用契約が問題なく結べているか確認したいご担当者様は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
3. 正社員の雇用契約書を作成するタイミング
雇用契約書はどのようなタイミングで取り交わすべきでしょうか?
雇用契約書と労働条件通知書を別で用意している場合は、労働条件通知書を先行して送付し内容を確認してもらい、入社日当日に雇用契約書を取り交わすことが多いようです。
労働条件通知書兼雇用契約書で交付している場合も、一度事前に送付し内容に目を通してもらい、入社日当日に原本に署名・捺印して契約を取り交わすことが多いようです。
なお、雇用契約書は電子データでの交付が可能です。そのため、入社前に事前に送付して取り交わすことも可能です。労働条件通知書も電子データの送付が許容されていますが、従業員の希望があった場合は紙で交付しなければなりません。労働条件通知書兼雇用契約書を利用している場合は、注意しましょう。
詳しくは以下の記事をご参照ください。
関連記事:雇用契約書・労働条件通知書を電子化する方法や課題点とは?
また、正社員は原則無期雇用となります。従業員から退職の申し出がない、もしくは企業側から解雇がない限り契約が切れることはありません。有期雇用契約のように定期的な契約更新は必要ないため、一度取り交わしてしまえば再交付することは原則ありません。
契約内容が交付時から変更する場合、雇用契約書の覚書を発行するか、就業規則の変更にとどめられる範囲での条件変更とすれば雇用契約書の再取り交わしは不要となります。
詳しくは以下の記事をご参照ください。
関連記事:雇用契約の条件は途中変更できる?契約期間内に変更する方法をご紹介
4. 正社員の雇用契約書の作成方法
正社員の雇用契約書を作成する際、法的に必ず記載しなければならない項目は定められていないため、極端な話、最低限契約をする上で必要な項目を用意するだけでも問題ありません。
しかし、どのような契約内容に対して双方が合意したか書面で確認できる方が締結時や後日見返した際にわかりやすいため、労働条件通知書で定めた項目の内容から重要と判断した項目を抜粋して雇用契約書に記載することが多く見られます。
このように、雇用契約書と労働条件通知書に記載する項目は結果的に重複しがちです。
採用する正社員が多くなればなるほど書類作成や締結の手間も増えてしまうため、雇用契約書と労働条件通知書を1通にまとめた労働条件通知書兼雇用契約書を作成する企業も増えてきました。
もし労働条件通知書兼雇用契約書の作成を検討している場合、労働条件通知書に必ず記載しなければならない「絶対的明示事項」と、その企業や職場において何らかの決まりやルールがある場合に記載する必要がある「相対的明示事項」を、きちんと書面に含める必要があります。
絶対的明示事項と相対的明示事項は、それぞれ以下のような内容になっています。
なお、相対的明示事項に関しては、企業や職場において就業規則の交付が行われているのであれば、あらためて労働条件通知書兼雇用契約書で明示をしなくても問題ありません。
【絶対的明示事項】
- 労働契約期間
- 就業場所および業務内容とその変更範囲
- 始業時刻と終業時刻
- 所定労働時間を超える労働(いわゆる残業)の有無
- 休憩時間・休日・休暇に関する事項
- (交代制勤務が発生する場合)交代順序あるいは交代期日
- 賃金計算方法、支払い方法および支払日
- 退職・昇給に関する事項
- (昇給に関する内容だけは、文書で示さずに口頭での説明などでもかまいません)
【相対的明示事項】
- 退職手当の計算方法、支払い方法および支払日
- 臨時の賃金および最低賃金額に関する事項
- 労働者への負担が発生する食費や作業用品に関する事項
- 安全衛生や職業訓練に関する事項
- 災害補償および業務外の疾病扶助に関する事項
- 表彰・制裁に関する事項
- 休職に関する事項
労働条件通知書兼雇用契約書の雛形を作成する場合は、上述したような事項が網羅されているかどうかをきちんと確認しましょう。
インターネット上には用途や職種に応じた労働条件通知書兼雇用契約書の雛形がいくつもありますので、そういったものを利用したり参考にしたりするのもひとつの方法です。
ここまで記載すべき事項を押さえたところで、実際に労働条件通知書(兼雇用契約書)を作成する際に参考にできるサンプルがほしいという方向けに、当サイトでは社労士が監修した労働条件通知書のフォーマットを配布しています。
令和6年に労働条件の明示ルールが変更された点も反映した最新のフォーマットで、雇用契約書として兼用することもできる雛形です。「これから作る雇用契約書の土台にしたい」「労働条件通知書を更新する際の参考にしたい」という方は、ぜひこちらからダウンロードの上、お役立てください。
関連記事:正社員の雇用で必須の雇用契約書の作成方法を分かりやすく解説
5. 雇用契約書は必ずしも必要ではないが交わしておくべき
雇用契約書は必ず交わさなければならない書類というわけではありませんが、労働条件について従業員と雇い主の間で確認を行い、後にトラブルが起きてしまうのを避けるためには、交わしておくのがベターです。
雇用契約書や労働条件通知書は電子化が可能なため、面倒な作業を楽にこなすためにも電子化することがおすすめです。電子化について気になる方は以下の参考記事をご覧ください。
参考記事:雇用契約書・労働条件通知書を電子化する方法や課題点とは?
労働条件通知書兼雇用契約書を作成する場合は、絶対的明示事項および相対的明示事項が網羅されているかどうかが重要ですが、雛形の作成に自信がない場合はインターネット上にあるような雛形を流用するとよいでしょう。
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