同一労働同一賃金での慶弔見舞金の扱いとは?考え方も解説
同一労働同一賃金とは、同じ労働に対しては雇用形態に関係なく同じだけの賃金が支払わなければならないという原則です。ただし、賃金だけでなく福利厚生を含む待遇に関しても正社員と同じようにしなければなりません。
今回は、同一労働同一賃金での慶弔見舞金の扱いを詳しく解説していきます。考え方や判断基準も併せて紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
▼そもそも「同一労働同一賃金とは?」という方はこちら
同一労働同一賃金とは?適用された理由やメリット・デメリットについて
同一労働同一賃金に罰則はありませんが、放置すると損害賠償のリスクが高くなります。
同一労働同一賃金とは、「正社員と非正規社員を平等に扱う概念」のように認識されていても、具体的にどのような対策が必要かわからない方も多いのではないでしょうか?
本資料では、どのような状態が「不平等」とみなされうるのかや、企業が対応すべきことを4つの手順に分けて解説しております。 自社でどのような対応が必要か確認したい方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 同一労働同一賃金で慶弔見舞金はどうなる?
同一労働同一賃金では、賃金だけでなく福利厚生でも正社員との間にも待遇差を設けてはなりません。実際に厚生労働省が公開しているガイドラインには以下のように記載があります。
食堂、休憩室、更衣室といった福利厚生施設の利用、転勤の有無等の要件が同一の場合の転勤者用社宅、慶弔休暇、健康診断に伴う勤務免除・有給保障については、同一の利用・付与を与えなければならない。
以上の通り現時点では慶弔休暇に関する取り決めのみで、慶弔見舞金に関する明確な記載はありません。しかし、同一労働同一賃金では「正社員とは違った雇用形態であるため」という理由で待遇差を設けてはならないので、慶弔見舞金についても正社員同様に支給する必要があります。
また、実際に兵庫労働局が公開している資料では、「正社員のみに支給している慶弔休暇・慶弔見舞金・家族手当・カフェテリアプランなどの福利厚生は、短時間・有期雇用労働者にも与えるべきか」という問いかけに対して次のように回答しています。
令和3年4月1日から適用されたパートタイム・有期雇用労働法に基づき、全ての待遇において不合理な待遇差を設けることが禁じられているため、事情を考慮して適切な待遇を決定する必要がある。
以上より、正社員に慶弔見舞金を支給している場合は、短時間・有期雇用労働者に対しても慶弔見舞金を支給しましょう。ただし、業務の内容や責任の範囲による差は問題ありません。
次章では慶弔見舞金を支給するか否かの争点となる、同一労働同一賃金の考え方を解説していきます。
関連記事:同一労働同一賃金における福利厚生の待遇差や実現するメリットとは
2. 同一労働同一賃金での考え方とは
同一労働同一賃金では、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者の間に、不合理や差別的な取り扱いを禁止しています。また、派遣労働者に対しても同一労働同一賃金の原則が適用されており、それぞれ違法な取り扱いがあった場合には某的な罰則は科されないものの、賠償請求される可能性もあります。
また、同一労働同一賃金は一言でいうと簡単ですが、どのような労働を同じとみなすかも重要です。同一労働同一賃金んでは、以下の基準に沿ってそれぞれの労働を位置付けています。
- 職務の内容
- 職務の内容・配置の変更の範囲
ただし、職務の内容には単に業務内容だけでなく、責任の程度も含まれています。従って、業務内容が同じでも責任の程度が異なれば、待遇に差を設けるのは合理的とされているのがポイントです。
また、職務の内容・配置の変更の範囲とは、転勤や人事異動の有無や範囲のことを指します。従って、短時間・有期雇用労働者だとしても正社員と業務内容・責任の範囲・転勤や人事異動が同じなら、同等の待遇を受けられるのが重要です。
2-1. 同一労働同一賃金の職務の内容とは?
ここでさらに同一労働について詳しくご紹介します。同一労働で定めている職務の内容では、業務内容と責任の程度が同じなら同一の労働とされますが、ポイントは責任の程度です。
責任とひと言にいっても、
- クレーム対応の有無
- 緊急時の対応
- 繁忙期の残業や休日出勤
など、幅広い定義があるのが重要。同じ業務内容でも、クレームに対応する必要がなかったり、残業の義務がなかったりする場合は、合理的な待遇差として認められます。
関連記事:同一労働同一賃金で業務における責任の程度はどう変化する?
2-2. 待遇差がある場合は労働者に説明する必要がある
上記で説明した合理的な待遇差がある場合は、労働者に説明を行いましょう。労働者にあらかじめ周知しておけば、トラブルの対策にもなります。
また、労働者に対する説明義務はありませんが、仮に労働者から説明を求められた場合は説明義務が課されます。説明するタイミングは、
- 雇用する前
- 待遇に関して労働者から説明の請求があった場合
以上の2回がおすすめです。
雇用形態がパート・有期雇用労働・派遣、いずれの場合でも説明義務があります。
この説明の際に不合理な理由と判断される場合、特に罰則等は生じませんが、人材流出や損害賠償などのリスクが生じるため注意が必要です。 当サイトでは、待遇差が生じる場合における、合理的だと判断される理由や不合理だと判断された後の対応について解説した資料を無料で配布しております。
自社の対応が問題ないか不安な点があるご担当者様は、こちらから「同一労働同一賃金 対応の手引き」をダウンロードしてご確認ください。
関連記事:同一労働同一賃金の説明義務はどう強化された?注意点や説明方法も解説
3. 不合理な待遇差の判断基準
実際に不合理な待遇差がないか確認してみましょう。本章では厚生労働省が公開している情報をもとに、待遇差の判断基準をご紹介します。
3-1. 不合理な待遇差を是正する均衡待遇と均等待遇とは
判断基準を紹介する中で、重要なのが均衡待遇と均等待遇です。
- 均衡待遇:不合理な待遇差を禁止するもの
- 均等待遇:差別的取り扱いを禁止するもの
均衡待遇では
- 職務内容
- 職務内容・配置の変更範囲
- その他の事情
を踏まえつつ、待遇差が不合理ならその待遇差は認められません。
また、均等待遇では
- 職務内容
- 職務内容・配置の変更範囲
以上が同じなら、差別的な取り扱いはできません。
3-2. 各待遇の判断基準
続いて基本給や役職手当などの取り扱いをご紹介します。ガイドラインには
- 基本給
- 役職手当等
- 通勤手当等
- 賞与
- 時間外手当等
が明確に記載されています。
基本給は、能力・経験または業績・成果、勤続年数に応じて決定します。短時間・有期雇用労働者・派遣社員が以上の選定基準と同じなら、同じだけの基本給を支給しなければなりません。
また、役職手当や精皆勤手当も正社員と同様の取り扱いです。さらに、賞与や時間外手当も正社員と同様に判定され、通勤手当を支給する場合は正社員と同一の支給が必要です。
家族手当や住宅手当はガイドラインに記載がないものの、均衡待遇・均等待遇の対象となるため、企業の事情も考慮しつつ支給額を決めましょう。
関連記事:同一労働同一賃金で賞与はどうなる?就業規則や罰則についても解説
関連記事:同一労働同一賃金で各種手当はどうなる?最高裁判例や待遇差に関して
関連記事:同一労働同一賃金で交通費はどうなる?判例や課税について解説
3-3. 同一労働同一賃金では福利厚生や教育訓練も判断基準の一つ
また、同一労働同一賃金では福利厚生や教育訓練においても正社員と同じ取り扱いか、差がある場合には合理的な説明が必要です。
例えば福利厚生施設の利用や転勤者用の社宅などは同一の利用や付与が必須とされています。また、病気休職や有期休暇も正社員と同様の基準で扶養することが求められます。有期雇用契約労働者は労働契約期間に応じて、正社員と同一の休暇を付与します。
さらに、教育や能力を獲得するための機会も、不合理な差は認められません。
4. 同一労働同一賃金では賃金だけでなく福利厚生も正社員と同等にしなければならない
同一労働同一賃金の原則では、単に給料(基本給)だけでなく、福利厚生も正社員と同じ待遇にしなければなりません。従って、慶弔休暇や慶弔見舞金でも正社員と待遇を合わせる必要があります。
待遇差の不合理は最終的に裁判所で判断が下されます。労働者との間にトラブルを生まないように、不合理な待遇差がある場合はただちに是正を、不合理でない正当な待遇差は説明を行いましょう。
不合理な待遇を決めない均衡待遇、差別的な取り扱いを禁止する均等待遇の考え方が重要です。
同一労働同一賃金に罰則はありませんが、放置すると損害賠償のリスクが高くなります。
同一労働同一賃金とは、「正社員と非正規社員を平等に扱う概念」のように認識されていても、具体的にどのような対策が必要かわからない方も多いのではないでしょうか?
本資料では、どのような状態が「不平等」とみなされうるのかや、企業が対応すべきことを4つの手順に分けて解説しております。 自社でどのような対応が必要か確認したい方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
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