人事評価で考えられる不満とは?訴訟リスクを回避する健全な運用法
更新日: 2024.4.5
公開日: 2022.5.6
OHSUGI
人事評価とは、従業員の成果や貢献度を評価し報酬や待遇に反映していくことをいいます。
設計段階では完璧な人事評価制度であっても、すべての人が納得するような評価をおこなうのは、難しいでしょう。ときには従業員の不満が募り、訴訟に発展するようなリスクも起こり得ます。
この記事では、人事評価の不満をきっかけにしたトラブルを回避する方法について解説いたします。
関連記事:人事評価はなぜ必要?導入して考えられるメリットやデメリット
目次
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 人事評価に不満を感じている人が多い理由とは?
人事評価は人が人を評価する仕組みになっているため、評価される側から不満が出ることもあります。
株式会社識学が実施したアンケートによると、自社の人事評価に不満を抱える人の割合は44.56%にも及びました。多くの人が人事評価に満足していないのには、以下のような理由が考えられます。
関連:人事評価で部下がやる気をなくすのはなぜ?やる気を高める方法を解説
1-1. 人事評価の基準が不明瞭だから
多くの従業員は、人事評価の基準が不明瞭であるために公正な評価がされていないと感じています。働きぶりや個々の業績を一定の基準において評価するのは、非常に困難です。
人事評価の基準が曖昧になってしまうのは、評価の仕組みやフィードバックが適切でないためです。特に、人事評価の結果である昇給や降格といった結果のみを従業員に知らせている企業は注意が必要です。
評価内容を適切にフィードバックしなければ、従業員は評価内容が不適切ではないかと不信感を持ってしまいます。
また、複数の評価者がいる場合、人によって評価の内容にばらつきがでることもあります。主観が入って厳しい評価をする、特定の人への評価が甘くなるなど、評価に感情が入りバイアスがかかる例は少なくありません。
評価に個人的な感情が入る原因にはハロー効果や寛大化傾向などが挙げられます。これらを防止するための対策には、定量基準を設け、基準値を明確化することが有効です。
定量評価が難しい場合は、評価者に対する研修や評価基準のすり合わせも効果的です。当サイトが配布しております「わかりやすい!人事評価の手引き」では、人事評価を正しく行うための必要手順や、評価項目の適切な設定方法についても解説しています。
人事評価を適切に行いたい方は、こちらからダウンロードしてご活用ください。
1-2. 人事評価が給与に反映されないから
人事評価の内容は報酬や昇進など処遇や待遇の改善に活用されます。しかし、評価内容がストレートに給与や報酬の金額に反映されるとは限りません。
中には、成果を出しているにもかかわらず給与や待遇に反映されないという点に不満を抱える従業員もいます。人事評価と報酬の内容に乖離があると、従業員のモチベーションは大きく低下してしまいます。
1-3. 人格を否定されたように感じてしまうから
人事評価を人格否定のように受け止めてしまう従業員もなかには存在する。特に、厳しい評価をした場合や人事評価に関するフォローをしなかったときには、従業員のモチベーションが著しく低下することがあります。最悪の場合には従業員が退職を決断したり、訴訟に発展したりするケースもあるので気をつけましょう。
人事評価の際にはなぜその評価になるのかを説明することや、良い点を褒めるなどフォローすることが大切です。
1-4. 自己評価よりも他己評価が低いから
自身の頑張りが会社に正当に評価されていないと感じ、人事評価に不満を抱くケースもあります。
本人の自己評価と企業側の人事評価にはたびたびギャップが起こります。このギャップを埋めるためには、なぜその評価になるのかを本人が納得できるよう説明する必要があります。
1-5. 現場を見ない評価者が判断するから
評価者が現場を見ずに、上辺の成果や売上のみをチェックして人事評価をした場合、従業員には不満が蓄積しやすいので注意が必要です。
特に、近年多くの企業が導入しているテレワークにおいて正当な人事評価ができない例は少なくありません。リモートでは仕事ぶりをチェックしにくいため、何を基準に人事評価をおこなうべきかも不明瞭になってしまいます。
現場の状況を見ないままの人事評価を続けると、従業員と評価者の信頼関係も薄れてしまいます。
2. 人事評価が訴訟に発展する例もあるので要注意!
人事評価はときに、訴訟などのトラブルに発展することもあるので評価者は十分に注意する必要があります。
例えば平成10年に出されたマナック事件の判例は、人事評価の大きな問題点を炙り出しました。マナック事件のポイントは、人事評価の対象期間が就業規則に定められているにも関わらず、その期間外の出来事が人事評価に影響したという点にあります。
また、平成13年に判決が出された住友生命事件では、職務遂行能力以外のことを人事評価の判断基準にしたことが問題視されました。また、婚姻の有無を評価基準にしたり、女性従業員を一律で低く評価したりしたことも住友生命事件の大きな問題点です。
ほかにも、人事評価の公平性や裁量範囲の逸脱が認められる場合や納得性が低い場合には従業員とのトラブルが勃発しやすいので気をつけましょう。
訴訟といった大問題に至らない場合でも、人事評価がきっかけで従業員のモチベーション低下や生産性の低下、優秀な人材の流出が起きる例は多いものです。評価者はこういった問題を防ぐために、フィードバックなどの方法で適切に対処するようにしましょう。
3. 評価面談や評価結果のフィードバックを重視することが大切
従業員を適正に評価するためには、評価者による評価面談が必要です。しかし、評価面談で十分に従業員の評価を見極められず、結果的に人事評価の基準が曖昧になってしまうケースもあります。
ここからは、評価面談の方法とフィードバックのポイントについて見ていきましょう。
3-1. 従業員が自己評価を述べる機会を作る
一方的な人事評価で従業員の処遇を決めてしまうと、不満が蓄積しやすくなります。評価面談の際には従業員が自らの評価について話す機会を設けるのがおすすめです。
ただし、その場で自己評価を話すよう促してもなかなかうまくはいきません。前もって面談の内容を伝えておいたり、書式を用意したりといった方法でスムーズに評価面談を進めましょう。
3-2. 評価結果のフィードバックは順番に注意する
評価面談の際にはまず従業員の自己評価を聞き、その後評価結果のフィードバックをおこないます。先に評価者が話をすると従業員は反発心をもつことがあります。また、正当な自己評価ができなくなる可能性も考えられるので気をつけましょう。
評価者からのフィードバックはポジティブな面から伝えていくのがセオリーです。続いて、従業員が自己評価で述べた評価と一致しているネガティブな面を伝えていきましょう。従業員が意識していないマイナス評価がある場合には、最後に述べるようにするのが最適です。
この順番で評価結果のフィードバックをおこなえば、従業員が抱えやすい反発心や評価者への不信感を減らすことができます。
3-3. 今後の課題をお互いに共有する
評価面談は現在起きている問題を解決し課題を共有するまたとない機会です。自己評価と他己評価の内容をもとに、今後の課題や具体的な行動目標を決めていきましょう。
このとき、マイナス面を責めるような言い方をすると従業員の不満が蓄積しやすくなります。非難的にならないよう、今後どうすれば問題を解決できるかを軸に話を進めていきましょう。
また、一方的なアドバイスに終始しないことも重要なポイントです。一方通行の面談をした場合、従業員は意見を聞いてもらえないと判断してしまうことがあります。また、評価を押し付けられたと感じ、反発心を持ってしまう可能性も考えられます。
課題の共有をおこなう際には、従業員に意見を求め双方向のコミュニケーションを取りながらビジョンを見定めていくことが肝心です。
4. 自社に応じた評価制度を導入するのもポイント
評価制度を導入するには自社に応じたものを選びましょう。適していない評価制度を選んでしまうと、従業員に不満を抱かれて転職されてしまうかもしれません。例えば、従業員が自律して行動できる場合は360度評価、優秀な従業員がいるのであればコンピテンシー評価が適しています。
4-1. 従業員が自律して行動できるなら360度評価
従業員同士がフラットな関係を築けている自律型組織であれば、多面評価が可能な360度評価が適しています。360度評価は旧来型の上から下への評価ではありません。360度評価は上司や部下、同僚など複数の視点から評価を受ければ、従業員も納得しやすいでしょう。
4-2. 優秀な従業員がいるのであればコンピテンシー評価
自社に優秀な成績を残す従業員がいるのであれば、コンピテンシー評価を導入してみましょう。コンピテンシー評価では自社で高い成績を残す従業員の行動特性に着目するため、導入までに時間がかかります。しかし、自社にあった納得できる人事評価制度を実現可能です。
5. 人事評価は評価内容をフィードバックして適切におこなおう
人事評価の不満は従業員のモチベーション低下につながるだけでなく、ときに訴訟に発展するなどのリスクを孕んでいます。
人事評価の不満に向き合い対処をおこなえば自社の人事制度がブラッシュアップされていきます。また、生産性やモチベーションの向上、人材流出の阻止にもつながります。
人事評価をおこなう際には、評価内容をフィードバックするなどの方法で適切に対処しましょう。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
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