【2024年度】社会保険の料率や改定タイミング、計算方法について徹底解説!
社会保険は事業所単位で加入する保険制度で、保険加入の適用事業所に勤める会社員が加入できます。今回ご紹介するのは、社会保険にかかる保険料についてです。社会保険料は会社員全員が一律に定められているわけではなく、会社員ごとの報酬額を加味して計算します。
社会保険料の計算方法、保険料率の確認方法、計算時の注意点などを解説しておりますので、社会保険料について不安な点がある方は、ぜひご一読ください。
▼社会保険の概要や加入条件、雇用保険との違いなどを詳しく知りたい方はこちら
社会保険とは?雇用保険との違いや種類、加入するメリットを徹底解説
目次
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社会保険料は従業員の給与から控除するため、ミスなく対応しなければなりません。
しかし、一定の加入条件があったり、従業員が入退社するたびに行う手続きには、申請期限や必要書類が細かく指示されており、大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。
さらに昨今では法改正によって適用範囲が変更されている背景もあり、対応に追われている労務担当者の方も多いのではないでしょうか。
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1. 社会保険料とは?
給与計算を行う際には、社会保険料の計算が重要となります。社会保険は細かく分けると、以下の5つに分けることができます。
①健康保険料
②介護保険料
③厚生年金保険料
④雇用保険料
⑤労災保険料
上記5つの保険は、保険料率や計算方法、会社の負担割合などが異なり、給与計算業務においてもミスの起きやすいポイントとなるので、本記事を通して正しく理解しましょう。
1-1. 社会保険の加入対象者
社会保険の中でも健康保険、介護保険、厚生年金保険のいわゆる狭義の意味での社会保険加入対象者は適用事業所で働く正社員や法人の代表者、役員は、原則として全員、社会保険の被保険者となります。
ただし、短時間労働者や派遣労働者に関しては、保険の種類によって加入条件が異なるので注意しましょう。
- 短時間労働者で社会保険の適用対象となるのは以下のとおりです。
- 従業員数が101人以上の事業所で勤務している
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
- 雇用が2か月を超えて使用される見込みである
- 賃金の月額が88,000円以上であること
- 学生でないこと
介護保険に関しては、上記の内容に追加して40歳以上であることが条件となります。
介護保険に関しては、上記の内容に追加して40歳以上であることが条件となります。
続いて、雇用保険の加入条件は下記の通りです。
- 31日間以上働く見込みがある
- 所定労働時間が週20時間以上
- 学生ではない(例外あり)
労災保険については、雇用形態にかかわらずすべての従業員が加入対象者となります。
関連記事:社会保険の加入条件とは?2022、2024年10月の適用範囲の拡大や未加入時の罰則について解説!
2. 【2024年度】社会保険料率の改定タイミングは?
社会保険の種類によって、保険料率の基準が国で一律にしているものと、自治体や組織ごとに異なるものに分かれます。例えば、健康保険料率は「協会けんぽ」のそれぞれの都道府県によって異なったり、厚生年金保険料率は国で統一されているというようになります。
本章では、各社会保険をどこのホームページで、どのように確認すればいいかを解説します。
2-1. 健康保険・介護保険・厚生年金保険の料率改定
2024年度の健康保険・介護保険の料率は、協会けんぽのホームページにて確認することができます。
▼確認したい方はこちら
令和6年度都道府県単位保険料率|全国健康保険協会
2024年(令和6年)度の健康保険の料率は都道府県ごとに異なりますが、10%前後の値となっています。介護保険の料率は、全国一律で1.60%になります。
続いて、厚生年金保険の料率は、日本年金機構のホームページにて確認することができます。
▼確認したい方はこちら
厚生年金保険料額表|日本年金機構
厚生年金保険の料率に関しては、平成29年の引き上げを最後に2022年(令和4年)度現在も18.3%で固定されています。
2024年(令和6年)度の各料率をまとめると、下記の通りです。
- 健康保険の料率:10%前後(都道府県ごとに異なります)
- 介護保険の料率:1.60%
- 厚生年金保険料率:18.3%
関連記事:給与計算における社会保険料の計算方法を分かりやすく解説
2-2. 雇用保険の料率改定
2024年度の雇用保険の料率は、厚生労働省のホームページにある「令和6年度の雇用保険料率について」から確認できます。
雇用保険は健康保険などとは異なり、事業の種類によって保険料率が変わるので、自社がどの保険料率に該当するか必ず確認するようにしましょう。
また、雇用保険料率は2022年の10月に1.35%まで引き上げられることがすでに決まっています。年度の途中で変更となるので、保険料を算出する際には忘れずに反映するようにしましょう。
〈2024年4月1日~2025年3月31日の雇用保険料率〉
2-3. 労災保険の料率改定
2024年度の労災保険の料率は、厚生労働省のホームページにある「労災保険料率表」から確認できます。
▼確認したい方はこちら
参考:労災保険率表|厚生労働省
2024年度の労災保険の料率は、昨年度から変更はありません。事業の種類によって料率は異なるので、自社はどの事業に該当するのかきちんと把握してから、保険料率が何%なのか確認するようにしましょう。
3. 社会保険料の計算方法
次に、先ほど確認した料率を元におこなう、保険料の計算について解説します。
保険料率が各保険で異なることは解説しましたが、計算方法も各保険で異なります。各保険で計算方法が混同しやすいので、本章で違いを理解しましょう。
3-1. 標準報酬月額とは
「標準報酬月額」とは健康保険・介護保険・厚生年金保険の計算に利用する数値で、ひと月当たりの給与を区切りのよい幅で区分された金額を指します。どの金額でどの標準報酬月額になるかが定められている表は「標準報酬月額等級表」とよばれ、協会けんぽや日本年金機構のページから確認することができます。
参照:令和6年度保険料額表|全国健康保険協会
厚生年金保険料額表|日本年金機構
標準報酬月額は、4~6月の報酬月額の平均に基づいて決められ、これを定時決定と呼びます。定時決定によって決められた標準報酬月額は、9月から翌年8月までの各月の保険料計算にて使用されます。
ただし、1年間のなかで昇給や降給などで固定的賃金が変動し、変動月から3か月間に支給された報酬額に、これまでの標準報酬月額と比べて2等級以上の差が出た場合、標準報酬月額は再度改定されます。これを随時改定(月額変更)と呼びます。
改定をおこなわなかったり、実際とは異なる届出をしてしまうと、6か月以下の以下の懲役や30万円以下の罰金を課せられることもあるので、十分に注意しましょう。
3-2. 健康保険・介護保険・厚生年金保険の計算方法
健康保険・介護保険・厚生年金保険の計算は、下記の表を元におこなうと簡単でしょう。
参照:令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表|全国健康保険協会(東京都)
従業員それぞれの標準報酬月額を算出し、表の右側の「全国保険協会管掌健康保険料」と「厚生年金保険料」を参照してください。なお、どのような計算式が立てられているのか説明すると以下の通りになります。
例えば、Aさんの報酬月額が30万円だった場合、29~31万円の欄に該当するため、標準報酬は月額30万円で、等級は22として計算されます。
ちなみに標準報酬の等級欄は括弧が付いていない方が健康保険、括弧が付いているものが厚生年金です。健康保険は50段階、厚生年金は32段階まで等級が分かれているのがポイントです。
Aさんの標準報酬は30万円だったので、それぞれに保険料率をかけて計算していきます。
- 健康保険料:30万円×9.81%
- 健康保険料(介護保険料込み):30万円×11.45%
- 厚生年金保険料:30万円×18.30%
▼計算結果
- 健康保険料:29,430円
- 健康保険料(+介護保険):34,350円
- 厚生年金保険料:54,900円
上記で算出された金額は、会社と従業員が折半で納めます。
保険料額表には折半額も記載されているため、とても便利です。
また、上記の保険料は都道府県によっても異なります。全国健康保険協会のホームページより、該当する都道府県を選択肢して保険料を算出してください。
参照:令和6年度保険料額表(令和4年3月分から)|全国健康保険協会
関連記事:厚生年金保険料とは?概要と計算方法、法改正などによる注意点を解説
3-3. 雇用保険・労災保険の計算方法
雇用保険と労災保険の納付が、月ごとと年ごとで異なるので分けて解説します。
①雇用保険料の計算方法
雇用保険料の計算式は「従業員の月次賃金総額 × 雇用保険の料率」です。
賃金総額とは毎月従業員に支払う賃金の総額のことを指し、通勤手当や深夜手当などの各種手当、賞与までが含まれます。雇用保険の計算では、標準報酬月額は用いないことに注意しましょう。
例えば、一般の事業に従事し、賃金総額が40万円の場合における事業主負担の金額を算出してみましょう。
上記ページを参照すると、2022年度の雇用保険料率の事業主負担は、6.5/1000(0.65%)です。
「雇用保険料 = 賃金総額 × 雇用保険料率」に当てはめて計算すると、40万円 × 0.65% = 2,600円
つまり雇用保険料は2,600円となります。
なお、算出された雇用保険料に1円未満の端数が生じた場合は、50銭以下を切捨てし、50銭1厘以上を切り上げた金額が雇用保険料となります。
関連記事:雇用保険料の計算方法は?保険加入後の計算時期や計算するときの注意点
②労災保険料の計算方法
労災保険料の計算式は「従業員の賃金総額 × 労災保険の料率」です。
算出時に用いる保険料率は、以下の画像のように88/1000 ~ 2.5/1000まで細かく決められており、業種ごとに分けられています。
出典:労災保険率表|厚生労働省
例えば、従業員数100人、平均年収が550万円の卸売業・小売業、飲食店又は宿泊業(労災保険料率:3/1000)の場合、下記の計算式が立てられます。
550万円 × 100 × 0.30% = 1,650,000円(会社全体の労災保険料)
労災保険料の支払いは1年に1回のみで、4月から翌3月までの分をまとめて、雇用保険料と合わせて事業所から支払います。
4. 社会保険料を算出する際の注意点
ここまで社会保険料の計算方法を解説してきましたが、事業主と労働者で保険料率が異なるなど、注意すべき内容が合ったと思います。
本章にて、社会保険料を計算するときに計算ミスにつながりやすい注意点をご紹介します。
4-1. 社会保険料の会社負担割合が異なる
社会保険料の計算で特に注意が必要なのが、各保険によって雇用主と労働者の負担割合が異なるという点です。
それぞれ下記の通り、社会保険料が折半されます。
- 厚生年金保険・健康保険・介護保険:雇用主と労働者で半額ずつ負担
- 雇用保険:雇用保険二事業分については事業が多く負担します。
- 労災保険:全額会社負担
雇用保険に関しては、「3-3 雇用保険・労災保険の計算方法」の表に負担割合を記載しているのでご確認ください。
関連記事:雇用保険料に関して会社側の負担額はいくら?社会保険への加入事情も解説
4-2. 毎年料率の改定がある
前章でも説明した通り、社会保険の料率は毎年決まったタイミングで改定されます。
給与計算の年間スケジュールを立てて、年度初めに料率改定があることをしっかりと認識し、保険料の徴収ミスが起こらないように気を付けましょう。
5. 社会保険料率は「標準報酬月額」や「賃金総額」に応じて変動がある!
社会保険料は従業員の報酬額や、事業所を置いている都道府県で定められている保険料率をもとに計算されます。
本記事で説明したように、保険の種類によって、計算方法や料率は異なるので注意してください。料率表に関しては見方が少し特殊ですが、まずは月額報酬のどの値に当てはまるか確認し、それをもとに標準報酬を確定させて計算しましょう。
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