試用期間中に最低賃金を下回ることはできる?支払い対象の手当や注意点を解説
更新日: 2026.2.27 公開日: 2025.7.8 jinjer Blog 編集部

試用期間中の従業員であっても、最低賃金法が適用されるため、原則として給与を最低賃金未満に設定することはできません。このルールは正社員に限らず、パートやアルバイト、契約社員などすべての労働者に適用されます。
本記事では、試用期間中に最低賃金を下回ることが許される特例の条件や 、支払い義務のある諸手当、賃金設計時の注意点について詳しく解説します。法令を正しく理解し、適切な賃金設定をおこなうことで、労働トラブルを未然に防ぎましょう。
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◆押さえておくべきポイント
- 雇用契約の基本(労働条件通知書との違い、口頭契約のリスクなど)
- 試用期間の適切な設定(期間、給与、社会保険の扱い)
- 契約更新・変更時の適切な手続きと従業員への合意形成
- 法的トラブルに発展させないための具体的な解決策
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1. 試用期間中も最低賃金法は適用される


試用期間中であっても、最低賃金法は適用されるため、原則として給与を最低賃金未満に設定することはできません。ただし、一定の条件を満たす場合、試用期間中は最低賃金を下回る給与を設定できる特例が認められています。
1-1. そもそも最低賃金とは?パート・アルバイトにも適用
最低賃金とは、労働者が受け取るべき最低限の賃金額を、国や都道府県が定めたものです。これは正社員だけでなく、パート・アルバイト、契約社員、派遣社員などすべての労働者に適用され、試用期間中の労働者も例外ではありません。
最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」の2種類があります。地域別最低賃金は都道府県ごとに設定され、産業や職種に関係なく適用されます。一方、特定最低賃金は特定の産業に対して設定される賃金です。いずれの場合も、これらの最低賃金を下回る賃金を支払うことはできません。
支払われる賃金が最低賃金以上かを確認するには、1時間あたりの賃金を計算する必要があります。月給制の場合は、月給を月の平均所定労働時間で割ることで算出します。この際、通勤手当や家族手当など一部の手当を除いた、毎月支払われる基本的な手当が計算に含まれることに注意が必要です。
関連記事:労働基準法に基づく最低賃金とは?その基準や違反への罰則を解説
1-2. 試用期間中は最低賃金を下回る特例が認められる
試用期間中の労働者については、原則として最低賃金法が適用されますが、一定の条件を満たす場合に限り、最低賃金を下回る給与を支払える特例が認められることがあります。この最低賃金の減額特例が認められる対象者は次のとおりです。
- 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い方
- 試の使用期間中の方
- 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方
- 軽易な業務に従事する方
- 断続的労働に従事する方
試用期間中の労働者はこの特例の対象に含まれ、減額率の上限は20%です。例えば、仮に最低賃金が1,100円の場合、減額率15%を適用すると935円まで下げることが可能です。
ただし、特例を適用するには、事前に都道府県労働局長の許可を受ける必要があります。また、最低賃金の減額特例の適用ができるのは、次のような場合に限られます。
- 本採用労働者の賃金水準が最低賃金と同程度である
- 試用期間中の賃金を低く設定することに合理性がある
そのため、単に「試用期間中だから」という理由だけでは特例は認められません。さらに、試用期間は必要最小限にとどめ、最長でも6ヵ月を上限とすることが求められています。
1-3. 【注意】最低賃金は毎年改定される可能性がある
最低賃金額は毎年10月に改定され、7月ごろに新しい額が厚生労働省から公表されます。給与計算ミスを防ぐためにも、毎年必ず最新の最低賃金額を確認することが重要です。各都道府県の最低賃金額は、厚生労働省のホームページで確認できます。
令和7年度の地域別最低賃金では、東京都が最も高く1,226円となっています。全国のすべての都道府県で最低賃金は1,000円を超えており、これを下回る賃金を支払うことは原則として法律違反となるので注意が必要です。
また、最低賃金は従業員が実際に勤務する事業所の所在地に基づいて適用されます。事業所が複数の地域にある場合や、従業員が複数の地域で勤務する場合には、それぞれの地域の最新の最低賃金額を把握する必要があります。
2. 試用期間中の賃金設計に関するポイント


試用期間は労働者と企業が互いに適性や環境を確認する重要な期間であるため、賃金設計も慎重におこなう必要があります。ここでは、試用期間中の賃金設計における注意点や実務上のポイントについて詳しく解説します。
2-1. 従業員に不信感を与えないよう合理性を重視する
試用期間中の賃金は、基本的に最低賃金以上であれば、本採用後より低く設定することも可能です。ただし、理由を説明せずに低賃金の状態が長引くと、「人件費を節約するために意図的に試用期間を延ばしているのでは」と不信感を抱かれるおそれがあります。
本採用後より賃金を低く設定する場合は、その待遇に合理性があることを従業員に丁寧に説明することが重要です。例えば「研修用のカリキュラムが3か月間あるため」といった具体的な期間や理由を示すことで、納得してもらいやすくなるでしょう。契約時や面談の場でしっかり説明することが求められます。
2-2. 試用期間中の待遇を就業規則・雇用契約書に明記する
試用期間中と本採用後で待遇が異なる場合は、認識のずれによる賃金トラブルを避けるため、就業規則や雇用契約書に必ず明記することが重要です。試用期間中の労働者であっても、労働条件の明示義務は適用されます。
本採用後の待遇のみを記載し、試用期間中の条件に触れていない場合、情報の不備や虚偽表示とみなされるおそれがあります。誤解やトラブルを未然に防ぐため、次の事項は就業規則や雇用契約書に含めることが望ましいです。
- 試用期間の有無と期間
- 試用期間中の給与や待遇
- 本採用後の給与や待遇
さらに、求人票にも試用期間中と本採用後の給与条件を具体的に記載すると、応募者との間でトラブルが起きにくくなります。面接時には待遇の違いについて丁寧に説明し、応募者に納得してもらったうえで契約手続きを進めましょう。
関連記事:試用期間は雇用契約書に記載すべき?書き方のポイントを紹介
2-3. 最低賃金法(労働基準法)に違反すると罰金が課されるおそれがある
最低賃金法は1959年に制定され、労働者の生活を守るとともに、労働力の質の維持・向上を目的としています。もし最低賃金を下回る給与を支払うと、最低賃金法第4条に違反することとなります。
違反があった場合、未払い分の賃金を支払う必要があるほか、最低賃金法第40条に基づき、50万円以下の罰金が課される可能性もあるのです。また、労働基準法第28条でも、賃金の最低基準は最低賃金法に従うことと定められています。
最低賃金以上の給与を支払うことは、従業員の生活を保障すると同時に、企業と従業員の信頼関係を維持するうえでも重要です。事業主が独断で最低賃金未満の賃金を設定することは避け、必ず法令に基づいた適切な対応をおこないましょう。
関連記事:労働基準法に基づく最低賃金とは?その基準や違反への罰則を解説
3. 試用期間中も支払い対象になる手当


試用期間中であっても、労働者には最低賃金が保障されるだけでなく、時間外労働や深夜労働、休日労働が発生した場合には割増賃金の支払いが必要です。さらに、解雇をおこなう際には、解雇予告または解雇予告手当の支払いも義務となります。
3-1. 時間外手当
試用期間中であっても、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働いた場合は、時間外労働の割増賃金(時間外手当)を支給する必要があります。割増賃金は次の式で計算できます。
割増賃金 = 1時間あたりの基礎賃金 × 該当する時間数 × 割増率
時間外労働の割増率は、月60時間以下の時間外労働であれば25%以上、月60時間を超える時間外労働では50%以上となります。
例えば、所定労働時間が1日6時間の従業員が2時間残業した場合、1日の合計労働時間は8時間以内なので、割増賃金は発生せず、通常の賃金として2時間分を支払えば足ります。一方、残業が3時間となり1日の労働時間が8時間を超えた場合、超過分の1時間について時間外手当を支給する必要があります。
なお、週単位で労働時間が40時間を超えた場合も、超過分には割増賃金が必要となるため、日単位だけでなく週単位の労働時間管理も重要です。
関連記事:試用期間の給料設定や各種手当の取り扱いを分かりやすく解説
3-2. 休日手当
試用期間中であっても、法定休日に従業員を勤務させた場合は、休日労働の割増賃金(休日手当)の支払いが必要です。休日手当を計算する際の割増率は35%以上です。
ここでいう「法定休日」とは、労働基準法により週1日以上、または4週4日以上の付与が義務付けられている休日を指します。一方、「所定休日(法定外休日)」は会社が独自に設定する休日であり、法定休日とは区別されます。
休日手当の支払い対象となるのは法定休日のみです。例えば、土曜日を所定休日、日曜日を法定休日とした場合、休日手当を支払うのは日曜日だけです。ただし、所定休日に法定労働時間を超えて働いた場合は、時間外手当の支払いが必要になる点に注意してください。
関連記事:法定休日とは?労働基準法のルールや法定外休日との違いを解説
3-3. 深夜手当
試用期間中であっても、22時から翌5時までの勤務には、深夜労働の割増賃金(深夜手当)の支払いが必要です。深夜手当の割増率は、通常の賃金の25%以上です。
また、深夜労働は時間外労働や休日労働と重なることがあります。例えば、夜勤中の残業や、法定休日に出勤した日の夜勤などが該当します。
複数の割増対象となる労働が重なる場合は、それぞれの割増率を合算して計算しなければなりません。例えば、時間外労働(月60時間以下)と深夜労働が重なった場合は、25%+25%=50%以上の割増率で深夜手当を算出します。
3-4. 解雇予告手当
試用期間中の労働者であっても、解雇する場合には原則として30日以上前に解雇予告をおこなう必要があります。
もし30日前までに予告をおこなわなかった場合は、 不足日数分の賃金を支払うことで、その分を解雇予告期間に充てられます。
例えば、1日の平均賃金が1万円の従業員に対し、解雇を10日前に通知した場合、30日−10日=20日分、つまり20万円を解雇予告手当として支払わなければなりません。
ただし、試用期間中の場合、雇用開始から14日(2週間)以内であれば、解雇予告や解雇予告手当の支払いは不要です。
関連記事:試用期間中の解雇は可能?解雇できる条件や必要な手続きを解説
4. 試用期間中の最低賃金を正しく理解してトラブルを防ごう


試用期間中であっても、原則として最低賃金以上の賃金を支払うことが必要です。
最低賃金額は地域ごとに異なり、毎年改定されるため、事業所の所在地ごとに最新の情報をチェックしましょう。
最低賃金法に違反した場合は、最大で50万円以下の罰金が課される可能性があり、企業としての信用にも影響を及ぼします。
試用期間中と本採用後の待遇に差がある場合は、合理的であるか考慮し、求人票や雇用契約書に明記することで、トラブルの未然防止につながります。



雇用契約の基本から、試用期間の運用、契約更新・変更、万が一のトラブル対応まで。人事労務担当者が押さえておくべきポイントを、これ一冊に凝縮しました。
法改正にも対応した最新の情報をQ&A形式でまとめているため、知識の再確認や実務のハンドブックとしてご活用いただけます。
◆押さえておくべきポイント
- 雇用契約の基本(労働条件通知書との違い、口頭契約のリスクなど)
- 試用期間の適切な設定(期間、給与、社会保険の扱い)
- 契約更新・変更時の適切な手続きと従業員への合意形成
- 法的トラブルに発展させないための具体的な解決策
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