源泉徴収票の乙欄の意味とは?記載すべき内容や甲欄・丙欄との違いを解説
源泉徴収票は、従業員の1年間の給与収入や納付した税金、控除額などが記載されている書類です。年末調整では、この源泉徴収票をもとに、年末に精算して過不足を調整するのでとても重要な書類です。
そのため源泉徴収票に記載しなければならない項目に関して、担当者はしっかりと理解しておく必要があります。
ここでは、数ある項目の中でもわかりづらい「乙欄」の概要や他の欄との違いについて解説していきます。
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1. 源泉徴収票の乙欄とは?
源泉徴収票を正しく理解するには、基本的な概要を知っておくことが重要です。
担当者はすでに理解していると思いますが、源泉徴収票には3つの税区分があります。また、処理は乙欄か甲欄、丙欄のいずれかでおこないます。
ここでは、3つの区分について、また乙欄を使用するケースを紹介するので、認識があっているか再確認してみてください。
1-1. 源泉徴収は3つの税区分に分かれている
企業が年末調整をする際には、給与から源泉徴収した税額を精算し、過不足を調整しなくてはなりません。源泉徴収の金額を最終的に決めるのが、給与所得の源泉徴収税額表と呼ばれる国税庁の書類です。
給与所得の源泉徴収税額表には、月額表や日額表、賞与に対する源泉所得税の算出率の表などの種類があります。ほとんどのケースで月額表が使われますが、日額表を使うこともゼロではありません。
なお、ボーナスを支払う際には賞与に対する源泉所得税の算出率の表を使用します。
この源泉徴収税額表の上部には、甲欄や乙欄、丙欄といった項目があります。多くの場合は甲欄を使用して処理しますが、特定の条件に当てはまった場合には乙欄を適用する必要があります。
1-2. 乙蘭は扶養控除等申告書がない場合に適用する
源泉徴収票の乙欄は、給与所得者の扶養控除等申告書の提出がない場合に適用されます。扶養控除等申告書は、年末調整の際に必須です。
しかし、2箇所以上の企業で兼業をしているなどの事情を持つ従業員は、複数の企業に対して同時に提出することはできません。
そのため、副業や兼業などで2箇所以上の企業から給与を受け取っており、従たる給与、つまり別の企業に対して給与所得者の扶養控除等申告書を提出している場合には、乙欄を適用することになります。
一般的には、より勤務時間が長い勤務先や給与総額が高くなる勤務先が主たる給与の支払者となります。年末調整をするのも、主たる給与の支払者です。
2. 源泉徴収票の甲・乙・丙欄の違い
源泉徴収票の上部にある甲欄・乙欄・丙欄は区分を示すもので、従業員の雇用状態に応じて最適な区分を選ぶことが大切です。
多くの場合には甲欄が適用となりますが、乙欄を使わなければならないケースもあります。そのため、それぞれの欄についての正しい知識を持っておく必要があります。
ここでは、それぞれの違いや適用の条件について詳しくみていきましょう。
2-1. 源泉徴収票の甲欄とは
源泉徴収票の甲欄とは、給与所得者の扶養控除等申告書と呼ばれる書類を提出した従業員に対して適用する税区分です。
扶養控除等申告書を受け取った企業が主たる給与の支払先になり、書類をもとに源泉徴収税額表の甲欄を使って処理をします。
日本国内で給与の支給を受ける人は、原則として扶養控除等の申告をしなければなりません。扶養控除の手続きというと、配偶者や扶養親族がいる場合にのみ適用されるというイメージを持つ方もいますが、源泉控除対象配偶者や扶養親族がいない場合でも、申告自体は必要となります。
この申告がされなかったときには、源泉徴収にあたって受けられるさまざまな控除の対象外となります。さらに、年末調整もできなくなってしまいます。
甲欄に該当する場合にはまず、その従業員の給与所得者の扶養控除等申告書を確認し、扶養家族の人数を確認します。その後、従業員の社会保険料などを除いて実際の給与額を確認します。
続いて、その年の給与所得の源泉徴収税額表の甲欄から、扶養家族の人数に該当する列を見ていきます。さらに、社会保険料等控除後の給与等の金額欄から、給与額をチェックします。それぞれの項目の交わる部分が、源泉徴収額ということになります。
2-2. 源泉徴収票の乙欄とは
源泉徴収票の乙欄は、給与所得者の扶養控除等申告書の提出がない場合に利用する区分です。
給与所得者の扶養控除等申告書の提出がないケースで多いのは、従業員が期限までに書類を申告しなかった場合です。企業が従業員に対して扶養控除等申告書を配布し忘れたミスがあった場合に、やむを得ず乙欄が使われることもあります。
また、従業員が副業や兼業をしているときに乙欄を使用するケースもあります2箇所以上の企業に勤めて給与支払いを受けている人は、1つの企業に対して扶養控除等申告書を提出しなくてはなりません。提出しない方の企業では、源泉徴収票の乙欄を使って処理をします。
2-3. 源泉徴収票の丙欄とは
丙欄は日額表にのみあり、日雇い賃金について記載する区分となっています。継続して同一の企業に雇用されない、日雇い労働者などが丙欄の対象者です。
日雇いで働いている人や短期間のアルバイトを雇い入れたときなどには、丙欄を使って処理をします。雇用期間が2ヶ月以内であれば丙欄を使用しますが、それ以上の期間を連続して雇用する場合には甲欄を使用しなければなりません。
3. 源泉徴収票の乙欄に記載する際の注意点
源泉徴収票の乙欄に記載する際は、以下の2点に気をつけると記載漏れやミスをなくせます。
- 社会保険料控除後の給与額を記載する
- 甲乙丙欄を間違えずに記載する
見直しをする際も重点的に確認しましょう。
3-1. 社会保険料控除後の給与額を記載する
源泉徴収票を受け取る従業員が乙欄の該当者である場合には、甲欄ではなく乙欄の部分に丸をつけて処理をしていきます。
まずは従業員に対し、扶養控除申告書の提出の有無を確認しましょう。
扶養控除申告書の提出がなく乙欄に該当するときには、社会保険料などの控除をしたあとの給与額から、当てはまる欄を確認します。乙欄に記載される税額が、その従業員の源泉所得税額ということになります。
また、扶養控除申告書の提出があったときには、扶養家族の人数を確認します。扶養家族の人数に応じて差し引いた金額が、源泉所得性として計上されます。
3-2. 甲乙丙欄を間違えずに記載する
甲欄と乙欄の区分を間違って源泉徴収票を作成すると、損をしてしまうことがあります。
例えば、給与所得者の扶養控除等申告書の提出がないにも関わらず甲欄で源泉徴収をしたときには本来とは異なる金額を毎月源泉徴収することになってしまいます。
このような場合、税務署から源泉徴収義務者へ問い合わせがあります。問い合わせに対応せず、税務調査によって間違いが明らかになった場合、本来納付しなければならなかった源泉徴収額をさかのぼって納付することが求められます。
長期にわたって甲欄と乙欄を間違って使用していた場合、数万円から数十万円という金額の追加納付が求められることもあります。
さらに、不納付加算税や延滞税が加算されるケースもあり、企業が大きな損をしてしまいます。
甲欄や乙欄の違いを理解しないまま源泉徴収をすると、余計なコストが膨れ上がってしまうおそれもあるため注意しましょう。
4. 甲欄や乙欄の区分を理解して源泉徴収票を正しく作成しよう
源泉徴収票の甲欄は、給与所得者の扶養控除等申告書を提出している従業員に適用されます。
兼業などの事情で別の企業に給与所得者の扶養控除等申告書を提出している従業員には、乙欄を適用して書類を作成しましょう。
甲欄と乙欄の区分によって源泉徴収の金額は変わってきます。使う区分を間違ってしまった場合には、追加納付が求められるなどのトラブルが起きることもあるので注意が必要です。
トラブルのリスクを防ぐためにも、甲欄や乙欄の区分を理解して源泉徴収票を正しく作成しましょう。
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