従業員の残業対策で企業が今すぐ取りかかるべき5つのこと - ジンジャー(jinjer)|統合型人事システム

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従業員の残業対策で企業が今すぐ取りかかるべき5つのこと

残業をしている女性のイラスト

働き方改革の推進により、残業削減への意識はますます高まっています。
強制退社時刻や残業条件の厳格化といった取り組みを実施している企業も増えていますが、業務量に対する従業員の数や能力のバランスが崩れていると、なかなか上手くいかないのが現実です。

従業員の意識改革や労働時間に関する制度や体制の見直し、労働の平準化やIT化推進などによる業務改善をおこなうことで、「残業の原因」を排除していきましょう。
ここでは、残業対策の必要性や残業対策として取り組むべき5つのポイント、具体的な成功事例などを解説します。

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勤務間インターバル制度の法規制強化が検討されている今、企業にはこれまで以上の対応が求められています。

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1. 時間外労働の上限規制と36協定違反のリスク

リスクのブロック

時間外労働をおこなわせるためには、労働基準法に基づき36協定(時間外・休日労働に関する協定)を締結し、所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。

また、働き方改革関連法の施行により、時間外労働には原則として月45時間、年360時間の上限が設けられています。臨時的な特別の事情がある場合には特別条項を設けることで上限を超えることが可能ですが、その場合でも年720時間以内、単月100時間未満(休日労働を含む)、複数月平均80時間以内などの厳格な上限が定められています。

これらの上限規制に違反した場合、企業には行政指導や是正勧告がおこなわれるほか、悪質な場合には罰則が科される可能性があります。また、36協定を締結していない状態で時間外労働をさせた場合も法令違反となるため、適切な協定締結と労働時間管理体制の整備が重要です。

企業としては、実態に即した上限時間の設定と定期的な労働時間の確認を徹底し、違反リスクの防止に努めることが求められます。

2. 残業対策が必要な理由

はてなマーク

残業対策を実施しても、その目的や背景が明確でなければ十分な効果を得ることは難しいです。

企業が残業対策に取り組む理由は、単に労働時間を減らすことだけではなく、法令遵守や従業員の健康確保、人材確保、企業の持続的成長など、多面的な観点に関係しています。

そこでここでは、企業が残業対策に取り組む必要がある主な理由について解説します。

2-1. 労働基準法遵守のため

働き方改革関連法案によって、残業時間に罰則付きの上限規制が設けられました。36協定を結んでいる場合は原則として月45時間、年360時間以内が上限です。

臨時的で特別な事情がある場合には、特別条項付き36協定を締結することで、一定範囲内で時間外労働を延長することが可能です。ただし、この場合であっても、次の上限をすべて守らなければなりません。

  • 年720時間以内
  • 複数月(2〜6ヵ月)平均80時間以内(休日労働を含む)
  • 単月100時間未満(休日労働を含む)
  • 月45時間を超えることができるのは年6ヵ月まで

これらの上限を超えて労働させた場合は、労働基準法違反となり、6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科される可能性があります。

また、時間外労働の管理が不十分である場合、労働基準監督署による臨検監督の対象となり、是正勧告や指導を受ける可能性があります。

処罰されなかったとしても、労働基準監督署による臨検監督が入った場合は世間的に「従業員に長時間労働させている会社」というイメージを持たれて、社会的信用を損なうリスクがあります。

2-2. 従業員の満足度や幸福度を高めるため

残業時間の上限を守っていたとしても、残業時間が多い状態が続くと、従業員の満足度や生活の質に影響を与える可能性があります。例えば、月45時間の残業は、1ヵ月の所定労働日数を20日とした場合、1日あたり約2時間程度の残業に相当します。これは残業が少ないとはいえません。

法定労働時間が1日8時間であることを踏まえると、実質的な拘束時間は長くなりやすく、通勤時間などを含めると、仕事中心の生活になりやすい状況が生じます。

残業時間を削減することは、従業員の満足度や幸福度の向上につながります。十分な休息時間や私生活の時間を確保できる環境は、従業員の働きやすさを高める重要な要素です。

また、残業時間を減らし長時間労働を防止する制度の整備は、採用活動においても重要な要素となります。近年ではワーク・ライフバランスを保ち、満足度や幸福度を重視する層が増えています。残業が少なく、私生活と仕事のバランスがとりやすい企業は、求職者から良いイメージをもたれやすくなっています。

2-3. 従業員の心身の健康を守るため

長時間労働が続くと肉体的・精神的な健康を損なうリスクが高くなります。

十分な休息が取れないまま働き続けていると、疲れや睡眠不足が蓄積し、不調や病気のリスクを高めてしまいます。また、長時間労働によるストレスは、気分の落ち込みや意欲の低下、うつ病の原因などになるため、メンタルヘルスにも大きな影響を与えるでしょう。

そうした状況が長引くほど症状は悪化しやすく、重篤な病気になる可能性や、精神的に追い詰められて休職や離職、最悪の場合は過労死や自死というおそれも出てきます。過度な長時間労働は、過労死等の重大な労働災害の原因となることもあるため、企業には従業員の健康を守るための適切な労働時間管理が求められています。

このようなリスクを未然に防ぎ、従業員が心身共に健康な状態で働ける環境を維持するためにも残業対策が必要です。

2-4. 適正な勤怠管理をするため

残業対策が適切にできていないと、サービス残業の常態化やタイムカード打刻後に仕事をするなど、隠れ残業が横行しやすいです。これらの行為は、実際の労働時間を正確に把握できなくなる原因となり、適正な勤怠管理を妨げる要因となります。

サービス残業は勤怠管理が正確になされていないことに問題があるほか、残業代未払いという大きな問題もはらんでいます。これは従業員による訴訟を起こされるリスクがあるほか、従業員が労基署へ相談すると臨検監督が入る場合もあり、企業の社会的信用を損なう可能性があるため、注意が必要です。

また、隠れ残業は前述した従業員の健康を守るという観点からもなくさなくてはなりません。適正な勤怠管理体制を整備し、実態に即した労働時間管理をおこなうためにも、残業対策は不可欠です。

【関連記事】残業代はタイムカードの打刻通りに支払おう!労働時間の把握が企業の義務

3.残業が減らない原因

残業をしている女性

残業対策を効果的に講じるためには、まず自社において残業が発生している原因を把握することが重要です。

残業時間が多い背景には、単純な業務量の問題だけでなく、組織体制や職場風土、評価制度など、さまざまな要因が複雑に関係している場合があります。表面的な対策のみを実施しても、根本的な原因が解消されなければ残業時間は減少しにくく、同様の問題が繰り返される可能性があります。ここでは、残業が減らない主な原因を3つご紹介します。

3-1. 業務量と人員配置のミスマッチ

残業が慢性的に発生している企業では、業務量と人員配置のバランスが適切でないケースが多く見られます。

特定の部署や担当者に業務が集中している場合、他の従業員に余力があっても業務の分担がおこなわれていなければ、結果として長時間労働が常態化する可能性があります。特に、属人化した業務が多い場合には、担当者が不在となることを避けるために一人に業務が固定され、残業が増加する要因となるのです。

また、業務量の実態を十分に把握しないまま人員配置がおこなわれている場合も、業務負荷の偏りが発生しやすくなるので注意しましょう。定期的に業務内容や作業時間を可視化し、各業務に必要な工数を把握することで、適切な人員配置や業務分担の見直しが可能となります。

残業削減を進めるためには、単に人員を増やすだけでなく、業務の内容と人員の配置を合わせて見直すことが重要です。

3-2. 退勤しづらい雰囲気がある

残業が減らない要因として、職場の雰囲気や慣習が影響している場合があります。

日本の企業の中には「遅くまで残業していることが偉い」という風潮が、未だに残っているところも少なくありません。特に、上司が遅くまで残っていたりすると、部下である自分たちが先に退社するのは後ろめたいという気持ちもあるでしょう。

また、残業を多くおこなうことが努力や貢献の表れとして評価される風土がある場合、従業員が意図的に長時間働く傾向が生じることもあります。こうした慣習が定着すると、効率的な働き方よりも長時間勤務が優先される状況となり、組織全体の生産性にも影響を及ぼすことがあります。

いつまでも退勤しづらい雰囲気があると、残業は一向に減りません。上司が声かけして退勤を促す、トップダウンで残業対策をするなど、退勤しやすい環境づくりが重要です。

3-3. 賃金制度が残業を助長しているケース

賃金制度の設計によっては、結果として残業を助長してしまう場合があります。

従業員の中には、残業代を得るため、意図的に残業していることがあるのも実情です。生活のために残業代を稼ぐ行為を「生活残業」と言います。この生活残業は、残業ありきで従業員の生活が成り立っていることで発生するため、まずは「残業をしないことが当たり前」であることを周知しなければなりません。

また、評価制度において勤務時間の長さが成果の一部として捉えられている場合、長時間働くことが評価につながるとの認識が生まれやすくなります。このような制度は、業務効率の向上よりも労働時間の増加を招く要因となる可能性があります。

残業の管理が従業員任せになっていると、自由に生活残業ができてしまいます。業務がないのにだらだらと残ることや、不要な残業がしやすくなるため、残業対策と勤怠管理の徹底を同時におこない、残業を許可制にするなどの対策が求められます。

4. 今すぐ取り組むべき残業対策5選

シルバーの5

残業時間を削減するためには、単に業務量を減らすだけではなく、評価制度や労働時間制度、業務体制など、組織全体の仕組みを見直すことが重要です。

残業が常態化している企業では、長時間労働が前提となった制度設計や運用が定着している場合があり、個別の努力だけでは改善が難しいケースも少なくありません。そのため、残業削減を実現するには、制度面と運用面の両方から改善策を講じることが求められます。無理のない目標を段階的に設けながら、次の5つのポイントを改善していきましょう。

4-1. 評価制度と目標管理制度の見直し

残業時間の削減を進めるうえでは、従業員の評価制度や目標管理制度の見直しが重要です。評価制度の内容によっては、長時間働くことが暗黙の評価要素となり、残業を助長する要因となる場合があります。

例えば、成果よりも業務への従事時間や対応量が重視される制度では、効率的に業務を終えた場合でも評価につながりにくく、結果として長時間労働が常態化するおそれがあるのです。

目標管理制度(MBO:Management by Objectives)は、従業員ごとに目標を設定し、その達成度によって評価をおこなう仕組みです。この制度を適切に運用することで、業務の優先順位が明確になり、限られた時間内で成果を上げる意識が醸成されやすくなります。

評価制度や目標管理制度を見直し、業務効率や成果を重視する仕組みに転換することは、残業削減を進めるうえで有効な施策の一つです。

成果基準の明確化

成果基準を明確に定義することは、評価制度を見直すうえで重要な取り組みの一つです。

成果基準が曖昧な状態では、評価者によって判断基準にばらつきが生じやすくなり、結果として業務量の多さや対応時間の長さが評価の指標として用いられる可能性があります。

成果基準を設定する際には、業務内容に応じて具体的な数値や達成条件を明示することが有効です。例えば、営業部門では受注件数や売上高、管理部門では処理件数や対応期限の遵守率など、業務の性質に応じた指標を設定すれば成果の判断がしやすくなるでしょう。

また、評価基準を文書として整備し、従業員へ周知することにより、評価の透明性を高めることができます。成果基準を明確化することで、長時間働くことではなく、限られた時間内で成果を上げる行動が評価されやすい環境を整えることにつながります。

さらに、管理監督者や管理職の人事考課の項目に、残業対策や勤怠管理を盛り込むのも効果的です。残業が少ないことや、適切に勤怠管理がおこなわれていることを評価すれば、意識も大きく変わるでしょう。

労働時間を評価指標から切り離す

残業削減を推進するためには、労働時間の長さを評価指標として扱わない制度設計が重要です。

労働時間が評価に影響する仕組みがある場合、従業員は評価を維持するために長時間働くことを選択しやすくなり、結果として残業時間が増加する要因となる可能性があります。

評価制度を見直す際には、勤務時間の長さではなく、業務の成果や効率性、業務改善への取り組みなどを評価対象とすることが有効です。例えば、同じ成果を短時間で達成した場合には効率性の観点から評価する仕組みを導入することで、時間内に業務を完結させる意識を高めることができます。

また、管理職に対しても、部門全体の労働時間管理状況や業務改善への取り組みを評価項目として設定することで、組織全体で残業削減を推進する体制づくりにつながります。

4-2. 労働時間制度や管理体制の見直し

残業時間を適切に管理するためには、労働時間制度や管理体制そのものを見直すことが重要です。

残業が常態化している企業では、残業の必要性を十分に確認しないまま業務が継続されている場合や、管理職による労働時間の把握が不十分である場合があります。このような状況では、個別の注意喚起だけでは十分な改善効果を得ることは難しいので、制度面からの対応が不可欠です。

労働時間制度を見直す際には、残業の実施に関するルールを明確にし、業務の進め方を可視化することが重要です。また、勤怠情報を正確に把握し、管理職が適切に確認できる体制を整備することで、長時間労働の兆候を早期に把握しやすくなります。

制度の整備とあわせて運用方法を明確にし、全従業員へ周知することで、残業時間の適正化につながります。

残業の事前申請制度の導入

「いつ・どれくらい残業するのか」をすべて従業員の意思に委ねる体制では、ムダな残業を減らしていくことは困難でしょう。

そこで有効なのが、残業の事前申請制度です。定められた申請書に、従業員自身が残業の時間や業務内容、残業の必要性を記載して上司に提出し、上司が申請内容を確認・許可したうえで残業をするという仕組みです。

時間管理を意識的におこなうことで、管理者は従業員一人ひとりの時間外労働状況を細かく把握できるでしょう。

ノー残業デーの導入

「特定の曜日は残業をしない」とルール化するノー残業デーの導入も、残業の事前申請制度と合わせてよく見かける取り組みです。

従業員の中には他の人が残っている手前、自分だけが退勤しづらいと感じている人も少なくありません。ノー残業デーを取り入れることで、退勤しやすい環境づくりを推進できます。

実施するにあたっては、ノー残業デー当日の朝礼で上長が声かけする、終業時間がきたらPCをシャットダウンするなど、形だけのルールとならないよう適切な運用が必要です。

また、ノー残業デーを一律ではなく、個々の自由に設定できる方法も有効です。人によって業務の進捗度合いが異なるため、無理のない適切なタイミングでノー残業デーを取り入れられるメリットがあります。

勤怠管理システムの導入

勤怠管理システムの導入は、労働時間の正確な把握と管理をおこなううえで重要な施策の一つです。

法定労働時間の上限に近づいたときにはアラートが表示されるなど、残業状況の可視化も可能です。可視化させることで、残業が増えた原因や残業時間を調整するための話し合いにつながり、残業削減への意識がより高まります。
また、残業が超過してしまう主な理由である、「月単位の集計時などでしか残業時間数がわからない」ということを防ぐことも可能です。

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4-3. 最適な人材配置や労働の平準化

部署ごとに時期的な業務量の偏りや属人化している業務があると、一部の従業員に長時間労働が集中してしまうことがあります。

特定の部署や個人に業務が集中している場合、担当者の残業時間が慢性的に増加しやすくなります。このような状況は、業務の属人化や人員配置の偏り、繁忙期への対応不足などが原因となっている場合があります。

人材配置を見直す際には、各業務にどの程度の時間が必要であるかを把握するために、業務ごとの工数を可視化することが有効です。工数とは、特定の業務を完了するために必要な作業時間のことを指します。工数を把握することで、業務量と人員数のバランスを客観的に確認できるようになり、過不足のある部署への人員調整を検討しやすくなります。

また、繁忙期と閑散期が明確な業務においては、業務スケジュールの見直しや、他部署からの応援体制の整備なども有効です。こうした取り組みによって業務負荷を分散させることができ、特定の時期や担当者に残業が集中する状況を防ぎやすくなります。人材配置と業務量のバランスを継続的に見直すことは、長時間労働の防止と安定した業務運営の両立につながります。

4-4. IT化・DXによる業務効率化

業務の効率化を図るためには、ITツールの活用やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が重要です。DXとは、デジタル技術を活用して業務プロセスや組織の在り方を見直し、業務の効率化や生産性向上を図る取り組みを指します。

紙や手作業による処理が多い業務では、入力や確認に多くの時間がかかり、残業時間の増加につながる場合があります。

例えば、申請業務や承認業務においてワークフローシステムを導入することで、書類の回覧や押印のための移動時間を削減できる可能性があります。

業務効率の向上に役立つITツールには、次のようなものもあります。

  • 営業支援システム(SFA)
  • WEB会議システム
  • タレントマネジメントシステム
  • ワークフローシステム

また、定型的なデータ入力作業については、RPA(Robotic Process Automation)を活用することで、自動処理が可能となり、作業時間の短縮が期待できます。

さらに、勤怠管理や給与計算などのバックオフィス業務についても、クラウド型のシステムを導入することで、作業の効率化や入力ミスの防止につながります。

【関連記事】残業削減対策の具体的な方法・対策と期待できる効果について解説

4-5. 管理職主導のマネジメント改革

長時間労働の要因として、管理職の意識の低さやマネジメント不足が要因として挙げられます。

具体的には、労働時間が長い従業員を高く評価したり、優秀な人材に仕事量が偏ったりなど、管理者層やリーダーのマネジメント不足が長時間労働を引き起こす原因となっています。そのため、管理側と現場の従業員がともに協力しながら残業削減に向けて取り組んでいくことが大切です。

さらに、企業文化として「残業がよい」という価値観を見直し、定時で業務を終えることが評価される風土を醸成する必要があります。これは、管理職が自ら率先して定時に帰ることで、部下にもその流れが伝わります。また、業務プロセスの簡素化や効率化を図ることで、業務の負担を軽減し、残業を減らす効果が期待できます。

タスクの優先順位を明確にし、チーム全体で業務を見直すことで、適切なスケジュール管理がされ、結果として残業の削減につながります。このような取り組みを通じて、労働環境を改善し、働きやすい職場作りを実現することが可能です。

5. 残業対策をおこなうと税金や社会保険料はどう変わるか

吹き出しのはてな

残業対策を実施する際には、労働時間の削減だけでなく、税金や社会保険料への影響についても理解しておくことが重要です。

残業代は給与の一部として扱われるため、残業時間が減少すると支給される賃金総額が変動し、それに伴って企業が負担する社会保険料や従業員の税負担などにも影響が及ぶ可能性があることを知っておかなければなりません。

ただし、残業代の増減があった場合でも、税金や社会保険料が直ちに変動するとは限らず、制度上の仕組みに基づいて一定のタイミングで見直しがおこなわれます。

ここでは、残業対策をおこなった際に想定される税金や社会保険料への主な影響について解説します。

5-1. 残業代削減と企業の社会保険料負担

企業が負担する社会保険料は、従業員に支払う給与額を基に算定されるため、残業代の削減は社会保険料負担に影響を与える可能性があります。

社会保険料とは、主に健康保険料や厚生年金保険料などを指し、これらは従業員と企業がそれぞれ一定割合を負担する仕組みとなっています。残業代は給与の一部として取り扱われるため、残業時間が減少し支給額が減った場合には、結果として社会保険料の算定基礎となる報酬額が変わることがあります。

ただし、残業代が減少したからといって、直ちに社会保険料が減額されるわけではありません。社会保険料は、毎年一定時期におこなわれる「定時決定(算定基礎届)」や、報酬額に一定以上の変動があった場合に実施される「随時改定(月額変更届)」などの仕組みに基づいて見直されます。

そのため、残業削減の効果が社会保険料の負担額に反映されるまでには一定の期間が生じることがあります。企業としては、残業対策によるコスト変動を検討する際に、こうした制度上の反映タイミングを踏まえて試算をおこなうことが重要です。

5-2. 標準報酬月額への影響

残業対策によって残業代が減少した場合、社会保険料の算定基準となる標準報酬月額に影響が及ぶことがあります。

標準報酬月額とは、一定期間に支払われた給与額を基に区分された等級であり、この等級に応じて健康保険料や厚生年金保険料の金額が決定される仕組みです。

標準報酬月額は、毎年1回実施される定時決定において見直されるほか、固定的賃金に大きな変動が生じた場合には随時改定がおこなわれることがあります。ここでいう固定的賃金とは、基本給や役職手当など、毎月一定額が支払われる賃金です。

一方、残業代は勤務状況によって変動する「非固定的賃金」に分類されるため、残業時間の増減のみでは直ちに随時改定の対象とならない場合があります。

ただし、残業代の減少が継続し、一定期間の平均報酬額が大きく変動した場合には、次回の定時決定において標準報酬月額が見直される可能性があるため、社会保険料の金額にも変動が生じることがあります。

残業削減の影響を検討する際には、短期的な変動だけでなく、年間を通じた給与水準の変化を踏まえて判断しましょう。

5-3. 従業員の手取り額と税負担の関係

残業対策によって残業時間が減少すると、従業員の給与総額が減少する場合があり、それに伴って手取り額や税負担にも一定の影響が生じる可能性があります。残業代は給与所得として扱われるため、支給額が減少した場合には所得税や住民税の課税対象となる所得額にも影響することがあるのです。

所得税は、給与額に応じて源泉徴収される仕組みとなっているため、残業代が減少すると源泉徴収額が減少します。また、住民税は前年の所得に基づいて算定されるため、残業削減の影響が住民税額に反映されるまでには一定の期間が生じます。

このように、税負担の変動は即時に反映されるものと翌年度以降に反映されるものがあるため、制度上のタイミングを理解しておくことが重要です。

さらに、社会保険料の金額は標準報酬月額に基づいて算定されるため、報酬額の変動が継続した場合には、保険料負担の金額を見直す必要があります。その結果、給与の総支給額だけでなく、控除される金額にも変化が生じるかもしれません。

残業対策を実施する際には、従業員に対して給与や控除の仕組みについて適切に説明し、制度への理解を深めることが円滑な運用につながります。

6. 残業対策の具体的な事例

書類データと虫眼鏡

残業対策を検討する際には、制度や理論だけでなく、実際にどのような取り組みがおこなわれているのかを把握することが重要です。業種や業務内容によって残業が発生する要因は異なるため、それぞれの実態に応じた対策が求められます。

各事例は、制度導入だけでなく、運用方法や評価制度の見直しといった要素を組み合わせて実施されている点が特徴です。自社の状況に近い事例を参考にしながら、実行可能な施策の検討につなげてみてください。

ここでは、長時間労働の削減に成功した企業の好事例を4つ紹介します。

6-1. 商社:朝方勤務と申請制度の導入

ある商社では、9時から17時15分の所定労働時間を基本とした「朝方勤務」を残業対策として導入しました。20時から22時の労働を原則禁止、22時以降の深夜勤務は禁止とし、20時〜22時の残業がやむを得ない場合は事前申請が必要です。

推進している5時から8時の早朝時間勤務には、深夜勤務と同じ50%(※管理監督者は25%)の割増賃金を支給しています。また、8時前に出勤した従業員には朝食が無料で配布されます。

結果、20時以降に退社する従業員は導入前の30%から7%になり、時間外労働勤務時間が大幅に削減されました。

6-2. システム会社:意識改革と業務改善

某システム会社では、働き方改革として2013年から独自の取り組みを実施し、従業員の意識改革や業務改善を定着化させ、働きやすい職場作りを目指しています。

具体的な施策としては、浮いた残業代を従業員に還元するインセンティブ制度の導入(2014年まで)、月80時間以上の残業は社長の承認が必要な長時間労働の是正による残業対策です。

そのほか、フレックスタイム制の適用やノー残業デーの推進、17時以降の会議の禁止など、さまざまな取り組みをおこなっています。結果、2008年当時は35時間だった月間平均残業時間が、2016年には17.8時間にまで減少しました。

6-3.建設業:労働時間の適正管理を評価項目に起用

サービス残業の増加が問題だった建設業の取り組み事例です。従業員へヒアリングを実施したところ、残業を正しく申請すると評価に影響が及ぶと感じ、過少申請となっていたことがわかりました。

そこで、労働時間を適切に管理することを人事考課に加え、管理者からも従業員へ正しく残業時間の申請をおこなうことを継続的に指導しています。また、勤怠を管理する専任者を配置し、労働時間に乖離がないか逐一チェックしてサービス残業撲滅の推進を図っています。

6-4. その他の事業:残業申請がないPCは強制的にシャットダウン

勤怠管理システムを使って労働時間を管理していた某企業では、退勤の打刻後にパソコンの使用履歴が残されていたことがわかり、労働時間を適切に管理するための対策に乗り出しました。

まずは、全従業員に残業する際は必ず申請するように指導し、それでも改善されない場合は、該当の従業員に直接面談をおこなうなどして、事前に残業理由を明確にするよう徹底させています。

加えて、残業申請のない従業員のパソコンは退勤時間後に、強制的にシャットダウンされる仕組みを構築し、残業時間の適切な管理を実現しました。

このほかにも厚生労働省によって「時間外労働削減の好事例集」が掲載されています。さまざまな企業の取り組みを見て、自社に適した残業対策をしていきましょう。

関連記事:ノー残業デーを導入するメリット・デメリットと継続のコツ

7. 残業対策の成功の鍵は「残業の原因」を突き止めて対策すること

対話する男女

残業対策を効果的に進めるためには、単一の施策に依存するのではなく、制度設計と日々の運用の両面から継続的に取り組むことが重要です。

残業が発生する背景には、業務量の偏りや人員配置の問題、評価制度のあり方、労働時間管理の方法など、複数の要因が関係している場合が多くあります。そのため、現状の労働時間や業務内容を正確に把握した上で、評価制度の見直しや業務効率化、適切な人材配置などを段階的に進めることが求められます。

「時間を削る」ことばかりに焦点を当てた施策では、残業対策は成功しません。従業員の意識改革や労働体制の見直し、業務上の負荷や非効率を排除することで、「残業の原因」をつぶしていくことが重要です。

さまざまな残業対策からどれを導入するかは、企業の業種や規模によって変わります。他企業の成功事例などを参考に、自社にあった取り組みをしていきましょう。

【関連記事】残業時間の定義とは?正しい知識で思わぬトラブルを回避!
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勤務間インターバル制度の「義務化」が検討されています
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