従業員の残業対策で企業が今すぐ取りかかるべき4つのこと
更新日: 2024.10.30
公開日: 2020.6.8
OHSUGI
働き方改革の推進により、残業削減への意識はますます高まっています。
強制退社時刻や残業条件の厳格化といった取り組みを実施している企業も増えていますが、業務量の従業員の数や能力のバランスが崩れていると、なかなか上手くいかないのが現実です。
従業員の意識改革や労働時間に関する制度や体制の見直し、労働の平準化やIT化推進などによる業務改善をおこなうことで、「残業の原因」を排除していきましょう。
この記事では、残業対策として取り組むべき4つポイントや残業対策に関する法律、具体的な成功事例などをご紹介いたします。
目次
残業管理や残業代の計算では、労働基準法で「時間外労働」と定められている時間を理解し、従業員がどれくらい残業したかを正確に把握する必要があります。
しかし、どの部分が「時間外労働」にあたるかを正確に理解するのは、意外に難しいものです。
当サイトでは、時間外労働の定義や「法定外残業」と「法定内残業」の違いをわかりやすく図解した資料を無料で配布しております。
資料では時間外労働の上限や効率的な残業管理の方法も解説しているため、法に則った残業管理をしたい方はこちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
1. 残業対策が必要な理由
はじめに、残業対策が企業において必要である理由について確認しておきましょう。
1-1. 働き方改革によって改正された労働基準法遵守のため
働き方改革関連法案によって、残業時間に罰則付きの上限規制が設けられました。36協定を結んでいる場合は月45時間、年360時間以内、特別条項を結んでいたとしても月100時間未満、年720時間以内が上限となっています。この上限時間を超えて労働させた場合は、法律違反となり処罰される可能性があります。
処罰されなかったとしても、労働基準監督署による監査が入った場合は世間的に「長時間労働な会社」というイメージをもたれることになり、社会的信用を損なうリスクがあります。
1-2. 働きやすい環境を作り、従業員のエンゲージメントを高めたり採用を有利にするため
残業時間の上限を守っていたとしても、そもそも残業時間が40時間あるのは1日あたり2時間ほどの残業をしていることになり、残業が少ないとは言えないでしょう。
残業時間を削減することは、従業員のエンゲージメントを高めるほか、採用でも有利にはたらきます。採用をおこなうには、応募者を集めるために様々な角度から自社の魅力を訴求する必要がありますが、残業が少ないことや、長時間労働を防ぐためのユニークな制度がある企業は、数ある競合企業の中でも求職者からの目を引く可能性が高いでしょう。
特に、近年ではワーク・ライフバランスを保ちながらやりがいのある仕事をしたいという層が増えているため、残業が少なく、私生活と仕事のバランスがとりやすい企業は、求職者から良いイメージをもたれやすくなっています。
1-3. 従業員の心身の健康を守るため
長時間労働が続くと過度に心身のストレスを感じ、睡眠に悪影響を及ぼします。人の身体は睡眠中に身体のメンテナンスだけでなく、記憶の整理や脳内の余分なストレス物質の除去をおこないます。
そのため、十分な睡眠がとれなくなるとストレスが蓄積していき、不健康のスパイラルにはまってしまうのです。
しかし、人の脳は本能的に身体の危険を察知しますので、身体は自ら休憩を欲します。それでも真面目な人ほど、仕事をがんばろうとするでしょう。
限界を超えてがんばりすぎている人の脳は、強制的に身体を休めようとして鬱(うつ)になり、「仕事に行きたくない」「朝起き上がれない」「朝、身体が動かない」という状態になることで、強制的に身体を休めようとしています。
その結果、脳梗塞や心疾患を引き起こし、本人の意思に反して自殺してしまうことさえあるのです。
1-4. 適正な勤怠管理によってサービス残業や残業代未払いを防ぐため
勤怠管理をしていない企業が特に注意したいことが、サービス残業です。また、出勤簿を用いて従業員の自己申告によって勤怠管理をしている場合も、実際よりも短い労働時間を記入してサービス残業が発生している場合があります。
サービス残業は勤怠管理が正確になされていないことに問題があるほか、残業代未払いという大きな問題もはらんでいます。これは従業員による訴訟を起こされるリスクがあるほか、従業員が労基署相談すると監査が入る場合もあり、企業の社会的信用を損なう可能性があるため、注意が必要です。
長時間労働を減らすほかに、打刻した時間と実際の労働時間に乖離が起きないような正確な勤怠管理が求められます。
【関連記事】残業代はタイムカードの打刻通りに支払おう!労働時間の把握が企業の義務
2.残業が減らない原因
残業対策を有効的に講じるためにも、自社の残業が減らない原因を把握しておくことも必要です。ここでは、残業が減らない主な原因を3つご紹介します。
2-1. 業務分担ができていない
残業が減らない原因の一つに、特定の人に業務が偏っているケースが挙げられます。これは、多忙のため教育や育成に時間が回らない、本人が業務を抱え込んでしまっていることなどが理由として想定できます。
適切に業務分担せずにこのまま放置しておけば、残業はますます増える一方です。特定の人に業務が集中しないよう、早急に対処する必要があるでしょう。
2-2. 退勤しづらい雰囲気がある
日本の企業の中には「遅くまで残業していることが偉い」という風潮が、未だに残っているところも少なくありません。特に、上司が遅くまで残っていたりすると、部下である自分たちが先に退社するのは後ろめたいという気持ちもあるでしょう。
いつまでも退勤しづらい雰囲気があると、残業は一向に減りません。上司が声かけして退勤を促すなど、退勤しやすい環境づくりが重要です。
2-3. 残業代が欲しい
残業代欲しさから意図的に残っている従業員も中にはいます。残業の管理が従業員任せとなっていると、厳しくチェックされないことをいいことに、このような不要な残業が横行してしまいます。企業の経営を圧迫しかねる事態にもつながる可能性もあるため、残業の管理体制から見直さなくてはいけません。
3. 残業対策の方法4つ
残業対策を成功させるには、経営トップが強い意思を持ち、経営トップ主導で残業削減を推進することが重要です。無理のない目標を段階的に設えながら、次の3つのポイントを改善していきましょう。
3-1. 残業に対する意識の改革
ただ残業削減に向けた取り組みを施すだけでは、成果を上げることは難しいでしょう。まずは管理職や社員が「不要な残業」に対する理解や意識を高めることが大切です。
特に管理監督者は、自らの役割や働き方をあらためて見直してみましょう。
管理職の仕事はチームが最大限の成果を上げられるよう、部下を束ねることです。そのなかには、部下が仕事をしやすい環境を作り上げることも含まれます。
管理監督者自身ができるだけ定時で帰る、年次有給休暇を積極的に取得するといった働き方を続けていれば、部下にも「仕事は定時で終わらせるもの」という意識が広がっていくでしょう。
残業を削減できた社員に対して手当を支給するなど、時間管理を評価するインセンティブを設ける方法も有効です。
3-1-1. 残業をしない人を評価し賞与を与える
評価制度を整えて残業しない人に賞与を出すことで、残業時間の削減によって減った分の残業手当を還元することが可能です。残業申請のルールをきちんと明文化し、従業員に浸透させることができると、無駄な残業を削減することが期待できます。
残業申請の方法の見直しと同時に、社内で「定時内にきっちり業務を終わらせて長時間残業をしない」という風潮を作ることで、残業抑制にもつながるでしょう。
3-2. 労働時間制度や管理体制の見直し
繁忙期と閑散期で稼働率に差がある業種では、変形労働時間制やフレックスタイム制の導入を考えましょう。
月単位や年単位で労働時間を調整することで残業代削減につながります。
3-2-1. 残業の事前申請制度の導入
「いつ・どれくらい残業するのか」をすべて従業員の意思に委ねる体制では、ムダな残業をできるだけ減らしていくことは困難でしょう。
そこで有効なのが、残業の事前申請制度です。定められた申請書に、従業員自身が残業の時間や業務内容、残業の必要性を記載して上司に提出し、上司が申請内容を確認・許可したうえで残業をおこなえる、という仕組みです。
従業員は時間管理を意識的におこなうことで、管理者は一人従業員ひとりの時間外労働状況を細かく把握できるでしょう。
3-2-2. ノー残業デーの導入
「特定の曜日は残業をしない」とルール化するノー残業デーの導入も、残業の事前申請制度と合わせてよく見かける取り組みです。従業員の中には他の人が残っている手前、自分だけが退勤しづらいと感じている人も少なくありません。ノー残業デーを取り入れることで、退勤しやすい環境づくりを推進することができるでしょう。
ノー残業デーを実施するにあたっては、ノー残業デー当日の朝礼で上長が声かけする、終業時間がきたらPCをシャットダウンするなど、形だけのルールとならないよう適切な運用が必要です。
3-2-3. 勤怠管理システムの導入
労働時間の管理体制を見直すことも重要です。各部署や従業員それぞれの勤怠状況や実績をリアルタイムで確認するためには、就業管理システムを導入が必須でしょう。
法定労働時間の上限に近づいたときにはアラートが表示されるなど、残業状況の可視化も可能です。可視化させるとで、残業が増えた原因や残業時間を調整するための話し合いにつながり、残業削減への意識がより高まります。
また、残業が超過してしまう主な理由である、「月単位の集計時などでしか残業時間数がわからない」ということを防ぐことも可能です。
当サイトでは、それらの機能を搭載した勤怠管理システムである「ジンジャー勤怠」を参考に、システムでどのように残業対策するか管理画面の画像付きで解説した資料を無料で配布しております。システムの導入により残業への意識が変わりそうだと感じた方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
3-3. 業務の改善
残業をせず、所定労働時間内に業務を成し遂げるための重要なポイントは、業務上でのムダや負荷を省いて効率化を図ることです。
3-3-1. 労働の平準化
部署ごとに時期的な業務量の偏りや特定の従業員しかこなせない業務があると、一部の従業員に長時間労働が集中してしまうことがあります。
この問題は、多能工社員を増やすことで業務を平準化します。多能工従業員は日常的な業務ローテーションによって計画的に育成していきましょう。
各部署に必要な技術や資格、能力など明確にし、業務仕様書をまとめておくことで育成指導がおこないやすくなります。
3-3-2. IT化による業務効率化
オンラインストレージを導入することで書類の作成・管理や資料の共有などをペーパーレス化し、業務の効率化を図りましょう。昨今ではRPAの導入による定型作業の自動化なども注目されています。
【関連記事】残業削減対策の具体的な方法・対策と期待できる効果について解説
3-4. 残業対策をおこない、労働時間の見直しをする
長時間労働の要因として、管理職の意識の低さやマネジメント不足が要因として挙げられます。具体的には、労働時間が長い社員を高く評価したり、優秀な人材に仕事量が偏ったりなど、管理者層やリーダーのマネジメント不足が長時間労働を引き起こす原因となっています。そのため、管理側と現場社員がともに協力しながら残業削減に向けて取り組んでいくことが大切です。
4. 働き方改革関連法による「時間外労働の上限規制」について
日本の少子高齢化による働き手の減少や働き方に対するニーズの多様化に対応するため、生産効率の向上や労働時間の短縮化は大きな課題となっています。
働き方改革関連法により、大企業は2019年4月、中小企業は2020年4月から、時間外労働の上限規制の導入が義務付けられました。
これは過度な長期間労働を規制することで社員のワーク・ライフ・バランスの改善し、長時間労働が困難な女性や高齢者の労働参加率を向上させることや、過度な長時間労働による過労死を防ぐことを目的としています。
これまで、時間外労働の上限は厚生労働大臣の告示により定められていました。
また、臨時的で特別な事情があり、36協定の特別条項によって労使間での合意があった場合には、年6ヵ月までは上限なしの時間外労働が可能でした。
この法改正によって時間外労働の上限は月に45時間・年360日が原則となり、特別条項がない場合はこれを厳守しなければならなくなりました。
特別条項があったとしても、以下の上限が定められています。
- 年720時間以内
- 月100時間未満(休日出勤を含む)
- 2~6ヶ月の平均80時間以内(休日出勤を含む)
- 45時間を超えられるのは年6ヶ月まで
違反した場合は、罰則として6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課される可能性があります。法律上の観点からも、長時間労働の是正対策は企業が継続的に取り組まなければならないものといえるでしょう。
5. 残業対策の具体的な事例
長時間労働の削減に成功した企業の取り組みを、具体的な事例として4つご紹介します。
5-1. 商社:朝方勤務や20時以降勤務申請制で残業削減
ある商社では、9時から17時15分の所定労働時間を基本とした「朝方勤務」を推進。20時から22時の労働を原則禁止、22時以降の深夜勤務は禁止とし、20時〜22時の残業がやむを得ない場合は事前申請が必要です。
推進している5時から8時の早朝時間勤務には、深夜勤務と同じ50%(※管理監督者は25%)の割増賃金を支給しています。また、8時前に出勤した従業員には朝食が無料で配布されます。
結果、20時以降に退社する従業員は導入前の30%から7%になり、時間外労働勤務時間が大幅に削減されました。
5-2. システム会社:長期的な働き方改革で月間平均残業時間を大幅削減
某システム会社では、働き方改革として2013年から独自の取り組みを導入、社員の意識改革や業務改善を定着化させ、働きやすい職場作りを目指しています。
具体的な施策としては、浮いた残業代を社員に還元するインセンティブ制度の導入(2014年まで)、月80時間以上の残業は社長の承認が必要な長時間労働の是正による残業対策です。
そのほか、フレックスタイム制の適用、ノー残業デーの推進、17時以降の会議禁止のなど、さまざまな取り組みをおこなっています。結果、2008年当時は35時間だった月間平均残業時間が、2016年には17.8時間にまで減少しました。
5-3.建設業:労働時間の適正管理を評価項目に起用
サービス残業の増加が問題となっていた建設業の取り組み事例です。従業員へヒアリングを実施したところ、残業を正しく申請すると評価に影響が及ぶと感じ、過少申請となっていたことが分かりました。
そこで、労働時間を適切に管理することを人事考課にくわえ、管理者からも従業員へ正しく残業時間の申請をおこなうことを継続的に指導しています。また、勤怠を管理する専任者を配置し、労働時間に乖離がないか逐一チェックし、サービス残業撲滅の推進を図っています。
5-4. その他の事業:残業申請がないPCは強制的にシャットダウン
勤怠管理システムを使って労働時間を管理していた某企業では、退勤の打刻後にパソコンの使用履歴が残されていたことが分かり、労働時間を適切に管理するための対策に乗り出しました。
まずは、全従業員に残業する際は必ず申請をあげるように指導し、それでも改善されない場合は、該当の従業員に直接面談をおこなうなどして、事前に残業理由を明確にするよう徹底させています。
くわえて、残業申請のない従業員のパソコンは退勤時間後に、強制的にシャットダウンされる仕組みを構築し、残業時間の適切な管理を実現しました。
関連記事:ノー残業デーを導入するメリット・デメリットと継続のコツ | jinjerBlog
6. 残業対策の成功の鍵は「残業の原因」を排除すること
「時間を削る」ことばかりに焦点を当てた施策では、残業対策は成功しません。社員の意識改革や労働体制の見直し、業務上の負荷や非効率を排除することで、「残業の原因」をつぶしていくことが重要です。
さまざまな残業対策からどれを導入するかは、企業の業種や規模によって変わります。他企業の成功事例などを参考に、自社にあった取り組みをしていきましょう。
【関連記事】残業時間の定義とは?正しい知識で思わぬトラブルを回避!
【関連記事】勤怠管理をペーパーレス化するには?電子化のメリット・デメリットも解説
残業管理や残業代の計算では、労働基準法で「時間外労働」と定められている時間を理解し、従業員がどれくらい残業したかを正確に把握する必要があります。
しかし、どの部分が「時間外労働」にあたるかを正確に理解するのは、意外に難しいものです。
当サイトでは、時間外労働の定義や「法定外残業」と「法定内残業」の違いをわかりやすく図解した資料を無料で配布しております。
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