深夜労働の割増は何時から?会社側の義務や違反した場合の罰則も解説
更新日: 2025.12.1 公開日: 2025.8.28 jinjer Blog 編集部

深夜労働とは、労働基準法において午後10時から翌午前5時までの時間帯におこなわれる労働のことです。この時間帯に従業員が働く場合、法定の割増賃金(深夜手当)を支払う必要があります。そのため、正確な給与計算や勤怠管理が求められます。
本記事では、深夜労働の対象となる時間帯や割増賃金の計算方法を詳しく解説するとともに、深夜労働が制限される従業員の範囲や、会社が負う法的義務、さらには労働基準法違反時に考えられる罰則やリスクについても紹介します。
深夜残業など割増率が重なる際の割増計算は複雑になり分かりにくい部分ですが、割増賃金の支払いは労働基準法で定められているため、正確に計算する必要があります。
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1. 深夜労働とは?労働基準法で定められた時間帯と定義


深夜労働とは、午後10時から午前5時の間の労働のことです。なお、厚生労働大臣が必要と認める場合には、特定の地域や期間に限り、午後11時から午前6時の間の労働が深夜労働として扱われます。
深夜労働は企業により「夜勤」「準夜勤」などの呼び方があり、勤務の時間帯も異なることがあります。しかし、社内での名称や勤務時間の区切り方に関係なく、この時間帯の労働は法律上「深夜労働」です。
労働基準法では、深夜労働に対して割増賃金の支給が義務づけられています。
深夜労働は従業員の心身への負担が大きいため、25%以上の割増賃金の支給が必要です。一般的に「深夜手当」として支給されています。
④ 使用者が、午後十時から午前五時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、その定める地域又は期間については午後十一時から午前六時まで)の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
2. 深夜労働の割増賃金の計算方法


深夜労働の割増賃金は、以下の計算式で求められます。
1時間あたりの賃金 × 深夜割増賃金率 × 深夜労働時間数
月給制の場合、1時間あたりの賃金は、月給を1年間の月平均所定労働時間で割ることで計算可能です。
深夜割増賃金率は25%以上と定められています。例えば、1時間あたりの賃金を1,500円、深夜割増賃金率を25%、深夜労働時間を5時間とした場合、割増分は以下の式で計算可能です。
1,500円 ×0.25 ×5時間 = 1,875円
したがって、通常の賃金に加えて1,875円を深夜手当として支払います。
関連記事:深夜残業が出る時間は何時から何時まで?早朝分の処理の仕方を解説
2-1. 深夜労働と時間外労働が重なる場合
労働が複数の割増対象に該当する場合、割増率は原則として合算して計算します。深夜労働と時間外労働が重なる場合には、次のように割増率が適用されます。なお、時間外労働とは、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた労働のことです。
- 深夜労働と時間外労働(月60時間以内):50%以上
- 深夜労働と時間外労働(月60時間超え):75%以上
時間外労働の割増率は基本的に25%以上ですが、月60時間を超える場合には50%以上に引き上げられるので注意が必要です。
関連記事:時間外労働とは?定義や上限規制、割増賃金の計算など原則ルールを解説
2-2. 深夜労働と休日労働が重なる場合
賃金が割増になる労働として「休日労働」があります。休日労働とは、法定休日にする労働のことです。休日労働の割増率は35%以上です。そのため、深夜労働と休日労働が重なる場合、割増率は60%以上を適用し、賃金計算をおこなう必要があります。
なお、休日には大きく「法定休日」と「所定休日(法定外休日)」があります。休日労働の割増賃金が適用されるのはあくまでも法定休日の労働です。所定休日に勤務した場合は、原則として通常の勤務日と同じ扱いとなります。ただし、所定休日において法定労働時間を超える労働をした場合は、通常の勤務日と同じく時間外労働の対象となるため注意が必要です。
関連記事:法定休日とは?労働基準法のルールや法定外休日との違いを解説
3. 深夜労働に関する会社側の義務と注意点


深夜労働が発生する場合、会社には割増賃金を支払う義務があります。さらに、深夜労働に伴う健康や安全への配慮、労働時間管理など、労働者の保護に関する義務もあります。ここでは、深夜労働に関する会社側の義務と注意点について詳しく解説します。
3-1. 健康診断は年2回おこなう
深夜業に従事する労働者は、労働安全衛生法における特定業務従事者に該当し、原則として年2回(半年ごと)の健康診断を受ける必要があります。深夜業に従事する労働者とは、過去6ヵ月間を平均して1ヵ月に4回以上、午後10時から午前5時までの勤務に従事する(した)労働者を指します。
深夜労働は生活リズムの乱れなど心身に対する負担が大きいため、定期的な健康状態の把握が欠かせません。早期に異常を発見し、必要な治療や休養を促すため、会社は対象者への年2回の健康診断を必ず実施しましょう。対象者の把握や健診スケジュールの管理には、リストの作成やスケジュール管理ソフトの活用が有効です。
参考:労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~|厚生労働省
参考:主な用語の定義|厚生労働省
関連記事:深夜残業が多い人に必要な健康診断とは?診断項目や基準、回数を解説
3-2. 準備や片付けの時間も深夜労働に該当する
深夜労働には、業務に従事している時間だけでなく、業務のための準備や片付けの時間も含まれます。労働時間には業務に必要な行動も含まれるため、準備や片付けが深夜帯におこなわれる場合も深夜手当の支払いが必要です。
例えば、午前5時からの業務開始に合わせて4時50分から業務に必要な道具を整備している場合、整備の10分間は深夜労働です。したがって、10分間に対して25%以上の深夜割増賃金が発生します。
事業主が労働時間に含まれる時間や深夜労働の割増賃金を正しく理解していないと、従業員とのトラブルに発展しかねません。実際の労働時間に対して正確な賃金が支払われるよう、ルールを理解して現場の働き方に合わせた勤怠管理や給与計算をしましょう。
関連記事:労働時間とは?定義や上限ルール、必要な休憩時間や計算方法を労働基準法の視点から解説
3-3. 管理監督者にも深夜手当が発生する
労働基準法上の「管理監督者」に該当する場合でも、深夜労働に対する割増賃金が発生します。
管理監督者には、残業手当や休日手当の支払い義務がありません。しかし、深夜労働は例外で、割増賃金の支払いが義務付けられています。
管理監督者であっても22時から翌5時の間に労働した場合は、25%以上の割増率で深夜手当を必ず支払いましょう。
関連記事:労働基準法第41条第2号に規定された管理監督者について詳しく解説
3-4. 固定残業制にも深夜手当が必要
固定残業制(みなし残業制)を導入している場合でも、あらかじめ深夜労働の割増賃金が含まれていない場合は、別途深夜手当を支払う必要があります。
例えば、月30時間分の残業代を固定で支給している場合でも、その内訳に深夜割増分が含まれていなければ、22時以降の労働に対して法定の深夜手当(25%以上の割増賃金)を追加で支給しなければなりません。
また、裁量労働制やフレックスタイム制、変形労働時間制など、労働時間の取り扱いが特殊な制度を採用している場合も、深夜労働に対する割増賃金の支払い義務は原則として残ります。制度の特性に応じて正しく賃金計算をおこなうことが重要です。
3-5. 深夜労働が日付をまたぐ場合は継続勤務になる
原則として「1日」は午前0時から午後12時までの暦日を指します。ただし、例えば22時から翌5時までの深夜労働のように日付をまたぐ場合でも、勤務は2日分とはみなされず、1日分として扱われます。このとき、勤務日は始業時刻の属する日(この例では22時の当日)として計上されます。
4. 深夜労働が制限される労働者


従業員の年齢や事情によっては深夜労働が制限される場合や配慮が必要な場合があります。深夜労働に制限や配慮が必要な従業員は次のとおりです。
- 18歳未満の従業員
- 妊産婦の従業員
- 育児中の従業員
- 介護中の従業員
4-1. 18歳未満の従業員
18歳未満の従業員は、原則深夜労働をさせてはいけません。ただし、次の場合は例外として18歳未満でも深夜労働が可能です。
- 交替制勤務で働く16歳以上の男性の場合
- 災害など非常事由による臨時の必要性があり、労働基準監督署の許可を得ている場合
- 農林畜水産業・保健衛生業・電話通信業務の場合
参考:最低年齢、深夜業の禁止、年少者・妊産婦等の就業制限 ほか|厚生労働省
本人の希望があった場合でも、原則として18歳未満の従業員に深夜労働はさせられません。例外に該当するかわからず、深夜労働させてよいか迷った場合は、労働基準監督署に相談してみるとよいでしょう。
関連記事:深夜労働が許される年齢は?労働基準法に関わる注意点
4-2. 妊産婦の従業員
妊産婦から深夜労働の免除の希望があった場合、企業は希望を受け入れなければいけません。妊産婦とは妊娠中または産後1年以内の女性を指し、深夜労働に加え、時間外労働や休日労働も同様に制限されます。
妊産婦の深夜労働の免除は労働基準法第66条で保障された権利です。深夜労働の免除を理由に不当な扱いをしてはいけません。
妊産婦の従業員から免除の希望があった場合は、深夜労働させないよう配慮しましょう。
4-3. 育児中の従業員
小学校入学前の子どもを育児中の従業員から請求があった場合、企業は深夜労働を免除しなければなりません。育児中の従業員への配慮義務は育児・介護休業法で定められており、深夜労働もその配慮対象に含まれます。
ただし、入社1年未満の従業員や週の所定労働日数が2日以下の従業員などは適用対象外です。また、事業の通常運営に支障をきたす場合には、従業員からの請求を拒否できるケースもあります。
育児中の従業員の深夜労働に関する詳細は、以下の厚生労働省のサイトを参考にしてください。
4-4. 介護中の従業員
従業員が要介護状態にある家族(負傷、疾病、身体・精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護が必要な家族)を介護する場合、企業は育児・介護休業法に基づき、深夜労働を免除する義務があります。これは、従業員が仕事と介護を両立できる環境を整えるための法的措置です。
企業は、従業員からの申請に応じて、勤務時間の調整やシフトの変更など、可能な範囲で配慮・支援を行う必要があります。なお、育児中の従業員の場合と同様に、深夜労働の免除の対象外となる従業員や、業務上著しい支障がある場合には請求を拒否できるケースも定められているため、事前に制度の内容を確認しておくことが重要です。
介護中の従業員に対する制限や支援の詳細は、厚生労働省のホームページを参考にしてください。
5. 深夜労働に違反した場合の罰則とリスク


法律では深夜労働に関してさまざまな規定があります。ここでは、深夜労働のルールに違反した場合に生じるリスクについて詳しく解説します。
5-1. 法律に基づき拘禁刑や罰金が科せられる
深夜労働に関する法律を遵守しない場合、労働基準法違反として罰則の対象となる可能性があります。ただし、違反が判明したからといって、すぐに刑事罰が科されるわけではありません。まずは、労働基準監督署による調査や是正勧告がおこなわれます。
是正勧告を受けた後は、企業は速やかに違反を改善する義務があります。もし是正勧告にもかかわらず違反が改善されない場合には、労働基準法に基づき罰金や拘禁刑などの刑事罰が科されるおそれがあります。
5-2. 会社名が公表され社会的信用を損なう
労働基準法に違反した企業は、厚生労働省の公式ホームページで公表される場合があります。また、深夜労働に関して未払い賃金が生じると、従業員のモチベーション低下や不満の増大につながり、結果として早期離職者の増加を招くおそれもあるでしょう。
さらに、企業のブランドイメージにも直接的な影響を及ぼします。法令違反や労務管理上の問題が公になれば、求職者や既存従業員、取引先からの信頼が損なわれ、人材確保や取引関係の維持にも悪影響を与える可能性があります。
5-3. 従業員に健康被害が生じて労災認定を受ける
深夜労働に従事する従業員に対して健康診断を適切に実施しなかったり、法律上深夜労働が制限される従業員を無理に深夜勤務させたりすると、健康被害が発生し、場合によっては労災認定を受ける可能性があります。
労災が認定されると、企業は従業員から損害賠償を請求される可能性があり、経済的負担が生じるおそれがあります。また、労働安全衛生法違反として、労働基準監督署から是正勧告や改善命令を受け、安全管理体制の強化を求められることもあります。
さらに、労災の発生や行政指導が公になることで、既存従業員の不安や離職、新規採用の難化といった企業イメージへの影響も懸念されます。このようなリスクを回避するためには、法令に基づき従業員に深夜労働を適正におこなわせるとともに、健康診断や安全管理など事前の対策を徹底することが重要です。
6. 深夜労働のリスクを回避するための対策


深夜労働は、法令違反のリスクにとどまらず、従業員の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、企業は深夜労働に伴うリスクを正しく把握し、適切な対策を講じることが重要です。ここでは、深夜労働のリスクを軽減する具体的な方法について詳しく解説します。
6-1. 勤怠管理システムで正確に労働時間を把握する
深夜労働は、労働基準法により原則として午後10時から午前5時までと定められています。そのため、企業にとって従業員がこの時間帯に勤務しているかどうかを正確に把握することは、深夜労働リスク管理の基本です。
勤怠管理システムを活用すれば、出勤・退勤時刻を自動で記録し、勤務実態をデータとして可視化できます。これにより、過度な深夜勤務の傾向を早期に把握し、従業員の健康に配慮した適切な対応が可能となります。
さらに、勤怠データを給与計算ソフトと連携させれば、深夜労働時間の集計や割増賃金の計算を自動化することが可能です。この仕組みにより、人的ミスや計算漏れを防止できるだけでなく、未払い賃金のリスクも軽減されます。結果として、法令遵守体制の強化と従業員からの信頼向上を同時に実現し、企業の健全な労務管理体制の構築に大きく貢献します。
6-2. 勤務シフトを見直す
過度な深夜労働は、従業員の健康に悪影響を及ぼすリスクが高まります。具体的には、睡眠不足や疲労蓄積、心血管系の負荷増加などが指摘されています。そのため、必要に迫られて深夜勤務をさせる際にも、勤務シフトの工夫が重要です。
例えば、深夜勤務を特定の従業員に集中させず、複数の従業員で分担することで個人への負荷を軽減できます。また、夜勤明けの翌日は昼勤に入れないなど、勤務間隔を調整することも疲労回復には欠かせないでしょう。
さらに、勤務間インターバル制度を活用して一定時間の休息を確保することで、心身の回復を促し、健康リスクを低減できます。このように、勤務シフトを適切に設計・調整することで、従業員の健康と安全に配慮した深夜労働環境を実現することが可能です。
関連記事:勤務間インターバル制度とは?義務化のポイントや導入方法をわかりやすく解説
6-3. 従業員の健康管理を強化する
深夜労働が避けられない場合でも、従業員の健康への影響を最小限に抑える取り組みは不可欠です。深夜労働に従事する従業員に対しては、定期的な医師による健康診断や面接指導を実施し、生活習慣や睡眠、血圧や心拍などの健康指標を早期に確認することで、異常の兆候を迅速に把握し、健康への悪影響を軽減できます。
さらに、定期的なストレスチェックやパルスサーベイなどを用いて体調や心理的負担のモニタリングをおこない、疲労やストレスが蓄積している従業員には、速やかに医師の診断や専門相談を受けるよう案内することが有効です。
加えて、従業員が気軽に相談できる窓口の整備や、福利厚生としてカウンセリング制度を導入するなど、メンタルヘルス支援を強化することは、深夜労働による心身の負荷を軽減し、労働災害や健康障害の予防にもつながります。このような多角的な取り組みにより、深夜労働による健康上の影響を包括的に管理することが可能です。
関連記事:パルスサーベイとは?目的や実施するメリットをわかりやすく解説
7. 深夜労働に関連するよくある質問


ここでは、深夜労働に関連するよくある質問への回答を紹介します。
7-1. 夜勤中の仮眠時間は深夜労働に含まれる?
夜勤中の仮眠時間が「深夜労働」に含まれるかどうかは、使用者の指揮命令下にあるかどうか(拘束性)が基準となります。仮眠中でも、緊急対応など業務上の指示に応じる必要がある場合は、労働時間として扱われます。
一方で、仮眠中に完全に業務から解放され、場所や時間の拘束がなく、業務対応の義務もない場合は「休憩」とみなされ、労働時間には含まれません。仮眠時間を労働時間として扱うかどうかは賃金計算にも影響するため、ルールを明確にし、適切に管理することが重要です。
関連記事:労働時間とは?定義や上限ルール、必要な休憩時間や計算方法を労働基準法の視点から解説
7-2. 深夜労働が生じる場合は36協定の締結・届出が必要?
深夜労働のみが発生し、時間外労働や休日労働が一切生じないのであれば、36協定の締結や届出は不要です。36協定は時間外労働・休日労働が生じる場合に義務付けられているためです。
しかし、原則として36協定を締結・届出をしていない場合、1度でも時間外労働や休日労働をさせると違法となります。労働基準法における36協定の取り扱いをよく理解し、正しく手続きをおこなうことが大切です。
関連記事:36協定における残業時間の上限を基本からわかりやすく解説!
8. 法律をしっかり理解して深夜労働を管理しよう


深夜労働とは、原則として午後10時から翌午前5時までの時間帯におこなわれる労働を指します。この時間帯に働く場合、通常賃金に加えて25%以上の割増賃金(深夜手当)を支払う必要があります。なお、管理監督者であっても、深夜労働には深夜手当が適用されます。
従業員の健康や安全を守り、深夜労働を適正に管理するためには、就業規則で深夜労働のルールを明確化し、勤怠管理システムで出勤・退勤時間を正確に把握することが重要です。これにより、割増賃金の適正支払いと健康管理の両立が可能となり、企業としての法令遵守と従業員保護を両立できるでしょう。
深夜残業など割増率が重なる際の割増計算は複雑になり分かりにくい部分ですが、割増賃金の支払いは労働基準法で定められているため、正確に計算する必要があります。
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