社会保険の扶養から外れるとどうなる?タイミングや影響、手続きを解説
更新日: 2026.3.31 公開日: 2022.1.30 jinjer Blog 編集部

社会保険の扶養は、被保険者の年収が一定の「壁」を超えると外れることになります。この年収の壁は2024年に引き上げや適用の拡大が予定され、今後大きく変化していくことが予想されます。
人事担当者は社会保険の扶養が外れるタイミングや条件を十分に把握し、法改正に合わせて対応していかなければなりません。
本記事では社会保険の扶養が外れる条件や法改正の影響、年収の壁の種類など、企業と従業員双方が理解しておくべき部分を解説します。
▼社会保険の概要や加入条件、法改正の内容など、社会保険の基礎知識から詳しく知りたい方はこちら
社会保険とは?概要や手続き・必要書類、加入条件、法改正の内容を徹底解説
従業員の入退社、多様な雇用形態、そして相次ぐ法改正。社会保険手続きは年々複雑になり、担当者の負担は増すばかりです。
「これで合っているだろうか?」と不安になる瞬間もあるのではないでしょうか。
とくに、加入条件の適用拡大は2027年以降も段階的に実施されます。
◆この資料でわかること
- 最新の法改正に対応した、社会保険手続きのポイント
- 従業員の入退社時に必要な手続きと書類の一覧
- 複雑な加入条件をわかりやすく整理した解説
- 年金制度改正法成立によって、社会保険の適用条件はどう変わる?
この一冊で、担当者が押さえておくべき最新情報を網羅的に確認できます。煩雑な業務の効率化にぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 社会保険の「扶養」とは?


社会保険における「扶養」とは、健康保険や年金制度において、被保険者に生計を維持されている家族が、原則として社会保険料の自己負担なく制度の保障を受けられる仕組みを指します。
健康保険では、収入要件や同一生計要件を満たす配偶者や子、親などが被扶養者となり、保険料を納めることなく医療保険給付を受けられます。また、年金制度では配偶者が第3号被保険者に該当する場合、国民年金保険料の納付が不要となります。
扶養の可否は収入見込みや働き方によって判断されるため、社会保険料への影響を含めた理解が重要です。
1-1. 2024年10月法改正の影響
社会保険の知識として抑えておくべき要素には、 2024年10月より施行された社会保険の適用範囲の拡大があります。
これまで社会保険の加入要件は以下のように変化してきました。
|
|
2016年10月 |
2022年10月 |
2024年10月 |
|
社員数 |
500人以上 |
100人以上 |
50人以上 |
|
1週間の所定労働時間 |
20時間以上 |
変更なし |
変更なし |
|
雇用期間 |
1年以上の想定 |
2ヵ月以上の想定 |
変更なし |
|
毎月の賃金 |
8.8万円以上 |
変更なし |
変更なし |
|
適用除外 |
学生ではない |
変更なし |
変更なし |
|
その他 |
上記に該当しない場合でも一週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上である場合には加入 |
変更なし |
変更なし |
2016年から段階的に、社会保険加入義務が発生する企業の規模は拡大されてきました。これによって、より多くのパート・アルバイト従業員が社会保険に加入できるようになり、福利厚生が充実し、労働環境も改善したと考えられます。しかし、一方で前述した106万円の壁を越えたことで手取り額が減ってしまうケースも発生しています。
今後の法改正(2026年・106万円の壁撤廃)
2024年までに進んできた社会保険加入義務の拡大は、福利厚生や労働環境の面でメリットがある一方で、収入減につながってしまうケースがありました。そのため、106万円の壁を意識した働き控えが発生しており、これが労働力不足の一因になっていると考えられています。
厚生労働省は、2026年度から段階的に企業規模要件を撤廃し、最終的にすべての企業に適用する方針を示しています。
|
予定時期 |
変更点 |
|
3年以内に廃止予定※ |
106万円の壁の撤廃 |
|
2027年10月 |
企業規模(従業員数51人以上)の撤廃 |
|
2029年10月 |
5人以上の従業員がいる個人事業所も加入対象に |
※賃金要件の撤廃時期については、最低賃金の状況等を踏まえて判断するとされており、現時点で具体的な施行年月は明示されていません
106万円の壁の見直しを含め、社会保険の加入対象は段階的に拡大されていく予定です。将来的には、週の所定労働時間が20時間以上である短時間労働者について、賃金水準や企業規模にかかわらず、社会保険の加入対象となる制度が想定されています。
1-2. 税制度(所得税)の扶養との違い
もう一つの扶養として知っておきたいのが、税制度(所得税)の扶養です。社会保険の扶養と所得税の扶養は、しばしば混同されることがありますが、分けて考えなければなりません。
税制法上の扶養は、所得税法に基づいて扶養控除を受けるための扶養であり、社会保険制度上の扶養とは異なります。
税制法上の扶養控除を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 扶養親族の合計所得金額が48万円未満であること
- 納税者と生計を一にしていること、配偶者以外の親族であること(6親等内の血族及び3親等内の姻族)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと
これらの要件をすべて満たした場合、扶養控除が適用され、納税者の所得税負担が軽減されます。
一方で、社会保険制度上の扶養は、被扶養者が一定の年収以下であることが主な条件となり、社会保険料の支払い免除や医療費の補助などが受けられます。このように、扶養には税制法上と社会保険制度上の二種類があり、それぞれの要件が異なる点を理解しておくことが重要です。
2. 社会保険の扶養が外れるタイミングとは?


社会保険の扶養が外れるのは、被扶養者の収入が継続して基準値を超えると見込まれた場合です。この基準値には106万円と130万円の2段階があり、これがいわゆる「106万円の壁」と「130万円の壁」と呼ばれるものです。
それぞれの壁の具体的な内容と、超えた場合の社会保険や年収の変化を解説していきます。
2-1. 106万円の壁を超えたとき
2022年10月から、社会保険の適用範囲が拡大されています。それに伴い、短時間勤務(パートやアルバイトなど)の従業員も、一定の要件を満たした場合は勤務先の社会保険に加入することが義務付けられました。2024年10月からは、社会保険の被保険者数が51人以上の企業も社会保険適用拡大の範囲に含まれ、さらに多くの従業員が加入要件を満たすことになりました。
社会保険加入要件は以下の通りです。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 所定内賃金が月額8.8万円以上
- 2ヶ月以上継続して雇用される見込みがある
- 学生ではない
- 勤務先の社会保険被保険者数が51人以上である
これらの条件をすべて満たしている従業員は、会社の社会保険に加入しなければなりません。
注目したいのは、「所定内賃金が月額8.8万円以上」という部分です。8.8万円×12ヶ月=105.6万円になり、年収106万円を超えた場合は勤務先の社会保険に加入することになるケースがあります。これが106万円の壁といわれているものです。
106万円の壁を超え、社会保険に加入する場合は社会保険料が給与から控除されることになります。この場合は、社会保険料の負担割合は労使間で折半になります。しかし、労使間で折半になったとしても年収が106万円以下の従業員よりも手取り額が減少してしまうことがあります。
2-2. 130万円の壁を超えたとき
年収が130万円を超えた場合は、社会保険の扶養に入る条件から完全に外れることになります。これが社会保険の壁の2つめです。106万円の壁に該当しない人には、こちらの130万円の壁が適用されます。
130万円÷12ヶ月=108,333円となり、月の収入が108,333円を超えると130万円の壁を超えることになります。この108,333円には、通勤手当や残業代なども含まれます。
しかし、繁忙期の残業などによって1ヶ月だけ108,333円を超えても、すぐに社会保険の扶養対象から外れてしまうわけではありません。月額108,333円以上の収入が継続的に発生すると見込まれる場合に、扶養から外れることになります。130万円の壁を越え、企業の社会保険に加入する場合は、106万円の壁と同様に社会保険料の負担額は労使間で折半です。しかし、個人事業主をはじめ、企業の社会保険に加入しない場合は、自分で国民健康保険と国民年金保険に加入しなければなりません。その場合は、社会保険料を全額負担することになります。
3. 社会保険と税制度の扶養に関する「壁」の種類


社会保険と税制度の扶養に関する「壁」には種類があります。この「壁」とは年収のことで、従業員の時給アップや労働時間の増加などによって、どのような変化が発生するのか人事担当者はしっかりと把握しておきましょう。
3-1. 100万円
100万円の壁は、住民税が発生するラインです。くっきりと100万円として分けられているわけではなく、明確には年収が93万円~100万円を超える人が住民税の課税対象になります。
住民税は自治体に納める税金であるため、住民税の課税対象となる年収は自治体によって異なります。従業員から質問があった場合は、事業所がある自治体の住民税が発生する条件を確認するようにしましょう。
3-2. 103万円
103万円の壁は、所得税と配偶者控除の壁です。年収が103万円を超えると所得税が課税されるようになり、配偶者控除から外れます。
103万円という金額は基礎控除(48万円)と給与所得控除(55万円)を合計したもので、年収が103万円以下であれば控除により課税所得が0となり、所得税が免除されます。これを超えると、扶養控除対象から外れ、所得税が発生します。
なお、この所得税の103万円の壁は、2025年度より123万円に引き上げる方針が示されました。123万円の内訳は「基礎控除額58万円+給与所得控除65万円=123万円」です。
配偶者控除も年収が103万円を超えると受けられなくなりますが、代わりに配偶者特別控除が適用されることになります。
3-3. 106万円(社会保険)
106万円の壁は「1. 社会保険の扶養が外れるタイミングとは?」で解説した社会保険加入義務の壁です。
年収が106万円を超えた場合は、勤務先の会社の社会保険に加入しなければなりません。社会保険料は会社と折半になりますが、手取り額が減少してしまうケースもあります。
なお、106万円の壁は勤務している企業の従業員数が50人以下である場合や、個人事業主などの場合は適用されません。しかし、この適用除外は今後段階的に狭められ、収入を得ている人の多くに社会保険の加入義務が広がっていくと考えられます。
3-4. 130万円(社会保険)
130万円の壁も、「1. 社会保険の扶養が外れるタイミングとは?」で解説した社会保険加入義務の壁です。
年収が130万円を超えると、健康保険と厚生年金の扶養から外れることを指します。この場合、個人で国民健康保険と国民年金に加入する必要があり、保険料や税負担が増えます。従業員数や勤務状況によって、106万円の壁が適用されなかった場合でも130万円の壁が適用されます。
3-5. 150万円
150万円の壁とは、配偶者特別控除の対象となる配偶者の所得上限を示すものです。
年収が150万円以下であれば配偶者特別控除を全額受けられますが、これを超えると控除額は段階的に減少します。納税者本人の所得が1,000万円を超えると、配偶者控除は適用されません。
3-6. 201万円
201万円の壁は配偶者特別控除が利用できなくなる壁です。
年収が150万円~200万円までは配偶者特別控除を受けられますが、約201万円を超えると配偶者特別控除額はゼロになります。
4-7. 被扶養者の年収以外の条件にも注意!
扶養が外れるその他の条件には、被保険者の年収の1/2を超える場合があります。年収が130万円未満でも、被保険者の年収の1/2を超えている、もしくは1月から6月に65万円以上の収入がある場合も注意が必要です。
また、社会保険の扶養判定では、年収要件が注目されがちですが、それ以外の条件にも注意が必要です。
健康保険の被扶養者認定では、原則として年収130万円未満であることに加え、「被保険者によって生計を維持されていること」が要件となります。具体的には、同居・別居の区分や仕送り額、就労実態などが総合的に判断されます。
さらに、年収は確定額ではなく「今後の収入見込み」で判定される点も重要です。短期間の収入増加や雇用契約の変更によって扶養要件を満たさなくなるケースもあるため、企業側は従業員からの申告内容を踏まえ、適切なタイミングで扶養状況を確認することが求められます。
4. 社会保険の扶養から外れた場合の手続き


収入が増えたことで社会保険の扶養から外れる従業員がいる場合は、企業と従業員それぞれにおこなうべき手続きがあります。企業側は手続きを進めると同時に、従業員にも案内できるように知っておくとスムーズです。
ここでは、事業主と従業員に分けて必要な手続きを解説します。
4-1. 従業員本人が扶養から外れる場合
従業員本人が扶養から外れる場合は、事業主と従業員それぞれが手続きをする必要があります。それぞれの手続き内容を確認しておきましょう。
事業主がおこなう手続き
扶養から外れる旨を従業員から伝えられた場合、企業は以下の手続きが必要になります。
- 対象となる従業員の社会保険加入手続き
- 扶養から抜ける手続き
扶養から外れる従業員が会社の社会保険に加入する場合は、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を管轄の年金事務所に提出します。「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」は扶養を外れてから5日以内の提出が求められているため、迅速に進めましょう。
扶養から抜ける手続きは、今までの健康保険証を返却して「健康保険被扶養者(異動)届」を管轄の年金事務所に提出します。これも5日以内の提出が必要です。
関連記事:社会保険被保険者資格取得届とは?必要になる事業所や手続きについて
▼社会保険の加入条件を確認したい方はこちらをご覧ください
社会保険の加入条件とは?2022年の法改定の内容や手続きなどを解説
従業員がおこなう手続き
扶養から外れることになる従業員は、家族の扶養から抜ける手続きと、自分が社会保険に加入する手続きをする必要があります。
- 被保険者は被扶養者の勤務先へ扶養から外れることを申し出る
- 被扶養者の勤務先に扶養者(異動)届の作成と提出をする
- 提出した書類が承認されたら、社会保険に加入する
被保険者と被扶養者はこの3つの手続きをしなければなりません。3つ目の社会保険への加入は、会社の従業員であれば勤務先の社会保険に加入するだけです。自営業やフリーランスなどの場合は、国民年金と国民健康保険に加入することになります。
少し複雑な手続きになるため、扶養から抜けることがわかったら手続きの内容や流れを説明しておくとトラブルを防止できます。
関連記事:社会保険と国民健康保険の違いとは?切り替え時の手続きや任意継続について解説!
4-2. 従業員が扶養している家族が扶養から外れる場合
従業員が扶養している家族が就職したり、収入が増えたりするなどして、扶養から外れるケースがあります。そのような場合は、事業主を経由して手続きをしなければなりません。
事業主がおこなう手続き
従業員が扶養している家族が扶養から外れることを伝えられた場合、企業側は「被扶養者異動届」の提出が必要です。被扶養者異動届は、扶養から外れるとき以外にも扶養に入れる場合や、氏名の変更が必要になった場合にも提出する書類です。
被扶養者異動届の提出先は、管轄の年金事務所や健康保険組合です。扶養から抜けることがわかってから5日以内に提出しなければなりません。
従業員がおこなう手続き
従業員は家族が扶養から外れることがわかったら、迅速に被保険者の勤務先にその旨を伝えて健康保険証を返却します。
扶養から外れることは従業員にしかわからないため、企業側は従業員に扶養条件についての説明や、手続きの案内をして対応をしてもらえるように準備しておくとよいでしょう。
5. 社会保険の扶養から外れるメリット


社会保険の扶養から外れることは一定のデメリットもありますが、もちろんメリットもあります。
- 保障が手厚くなることがある
- 年金額や収入増加が見込まれる
ここでは、これらのメリットを解説します。
5-1. 保障が手厚くなることがある
前項でも少し触れましたが、被扶養者としてではなく、自分が社会保険の被保険者になると補償が手厚くなります。
協会けんぽや健康保険組合には、病気や怪我によって休業した場合に支給される「傷病手当」があります。また、出産で休業した場合には出産手当金の制度も利用できます。これらの手当は被保険者のみを対象にしているため、被扶養者として社会保険に加入していた場合は適用されません。自分が被保険者になったことで受けられる恩恵です。
5-2. 年金額や収入増加が見込まれる
被保険者の扶養に入っている人は、第3号被保険者と呼ばれます。第3号被保険者が受け取れる年金は、国民年金のみです。被保険者の扶養に入っている場合でも、厚生年金は受け取れません。
扶養から抜けて社会保険料を自ら負担することになれば、自らの年金が積み立てられます。これにより、将来的に受け取る年金額が増加し、老後の生活基盤が安定します。納付年数が長いほど受取額も増えるため、長期的なメリットがあります。
厚生年金の加入期間による年金額(国民年金満額(令和7年度予定額)+厚生年金額)は以下のように変化します。なお、厚生年金額は標準報酬月額×0.005481×加入月数で計算しています。
|
加入期間 |
5年 |
10年 |
15年 |
20年 |
25年 |
30年 |
35年 |
40年 |
|
年収200万円 |
99万円 |
104万円 |
110万円 |
116万円 |
121万円 |
127万円 |
132万円 |
138万円 |
|
年収300万円 |
102万円 |
110万円 |
119万円 |
127万円 |
136万円 |
144万円 |
153万円 |
162万円 |
|
年収400万円 |
104万円 |
116万円 |
127万円 |
138万円 |
149万円 |
160万円 |
171万円 |
183万円 |
|
年収500万円 |
107万円 |
120万円 |
134万円 |
147万円 |
161万円 |
174万円 |
188万円 |
201万円 |
|
年収600万円 |
110万円 |
126万円 |
142万円 |
159万円 |
175万円 |
192万円 |
208万円 |
225万円 |
|
年収700万円 |
113万円 |
132万円 |
151万円 |
171万円 |
190万円 |
210万円 |
229万円 |
248万円 |
第3号被保険者として国民年金のみを受け取る場合、令和7年度の場合は月額76,810 円の年金を受け取ることになります。年間92万円ほどの年金額になるため、自分で社会保険に加入することで大幅な年金額の増加が見込めます。
6. 社会保険の扶養から外れるデメリット


社会保険の扶養から外れるとメリットもありますが、下記のようなデメリットもあります。
- 社会保険料の支払いが発生する
- 補償内容や受け取る年金額が変わる
- 世帯単位で支払う税金が増える
従業員はデメリットを完全に理解していないこともあるので、ここではこれらのデメリットについて詳しく解説します。
6-1. 社会保険料の支払いが発生
税法上では、年収103万円を超えると所得税の支払いが必要となり、社会保険上では年収130万円を超えると社会保険料の支払いが必要となります。
扶養に入っている間は払う必要のなかった社会保険料ですが、扶養を外れたら本人に支払いの義務が発生します。企業の社会保険に新たに加入する場合は、労使間で折半になりますが、加入しない場合は国民健康保険料と国民年金保険料を全額自分で負担しなければなりません。必然的に世帯支出が増えることになります。
家計の足しにするために働き始めたとしても、かえって負担額を増やしてしまう可能性もあるため、扶養を外れるか慎重に検討してもらいましょう。
6-2. 補償内容や受け取る年金額が変わる
企業の社会保険に加入する場合、傷病手当や出産手当などの支給対象になります。被扶養者として社会保険に加入していた場合は、これらの手当は受けられません。
また、厚生年金保険では、平均標準報酬月額に応じて年金額が変化するため、将来的に受け取れる年金が増えることになります。扶養から抜けることによって社会保険料の負担が発生しますが、受けられる補償や将来の年金は手厚くなります。
ただし、国民健康保険や国民年金には傷病手当や出産手当はなく、年金も老齢基礎年金額のみです。
6-3. 世帯単位で支払う税金が増える
自分の年収が増えると、扶養から外れるだけでなく、世帯単位で支払う税金が増える可能性があります。特に注意が必要なのが、年収が150万円を超える場合で、これは「150万円の壁」と呼ばれています。この壁を越えると、配偶者特別控除の額が減少し、家族全体の税負担が増すことがあります。
年収が106万円や130万円で扶養から外れた後に、さらに150万円を超えると、世帯の手取り額が思ったより増えない場合もあります。つまり、自己の収入増加がそのまま家族にプラスになるとは限らず、税金の影響を十分に考慮する必要があります。このような状況に備え、収入の変化をしっかりと把握しておくことが重要です。
7. 扶養に関する相談が来たときの実務対応フロー


従業員から扶養に関する相談が寄せられた場合、人事・総務担当者には制度を正しく整理したうえで、的確かつ一貫性のある対応が求められます。扶養は税制度と社会保険制度で判定基準や影響が異なるため、説明の仕方を誤ると誤解やトラブルにつながりかねません。
ここでは、実務担当者が相談を受けた際に押さえるべき対応の流れと、説明時の注意点を解説します。
7-1. 対応前に人事が押さえるべきポイント
扶養に関する相談対応に入る前に、人事担当者はいくつかの前提事項を整理しておく必要があります。
まず確認すべきなのは、相談内容が「税の扶養」と「社会保険の扶養」のどちらに関するものか、または両方に関係するものかという点です。そのうえで、対象となる家族の就労形態、雇用契約内容、収入の種類や今後の収入見込みを把握します。
特に社会保険の扶養判定では、確定年収ではなく将来の収入見込みで判断されるため、勤務時間の変更や契約更新の有無も重要な判断材料となります。
事実関係を整理せずに回答すると誤案内につながるため、事前確認を徹底することが重要です。
7-2. 「税」と「社会保険」の扶養を混同させない説明のコツ
従業員対応で特に注意すべきなのが、税制度と社会保険制度の扶養を明確に切り分けて説明することです。
税の扶養は所得税や住民税の控除に影響する制度であり、年末調整や確定申告を通じて調整されます。一方、社会保険の扶養は健康保険料や年金制度に直結し、要件を満たさなくなった時点で速やかな資格変更手続きが必要です。
説明の際は、「税金の負担」と「社会保険料の負担」を分けて伝え、それぞれの判定基準と影響を整理して説明することが重要です。制度の違いを明確にすることで、従業員の理解を促し、不要な誤解や手続き漏れを防ぐことにつながります。
8. 社会保険の扶養に関する注意点


社会保険の扶養は、被扶養者の収入によって外れるものであることがあります。この収入には給与以外のものが含まれ、さらに扶養要件から外れているにも関わらず扶養に入っていると、遡って徴収されることがあります。
ここでは、社会保険の扶養に関する注意しておきたい2つのポイントを解説します。
8-1. 配当金や非課税の収入も計算に含める
社会保険の扶養から外れるのは、130万円の壁を越えた時です。この被扶養者の収入は、継続して得られるものすべてが該当し、課税・非課税を問いません。
また、給与だけでなく、投資による配当金や失業給付、障害年金や遺族年金、労災給付や傷病手当金なども含む点に注意しましょう。
従業員の社会保険における収入の壁を計算する際は、こうした自社から支給する給与以外の収入の有無も確認すると安心です。
8-2. 社会保険の扶養が外れる手続きを忘れた場合は追加徴収の可能性もある
被扶養者の年収が増え、社会保険の扶養要件から外れた場合は迅速に扶養から抜ける手続きをしなければなりません。
扶養要件から外れているにもかかわらず被扶養者のままでいた場合、その期間に支払うべきだった社会保険料を遡って徴収される可能性があります。社会保険の扶養が外れるのは、見込み年収が基準値を超えると判断されたタイミングからです。協会けんぽや健康保険組合が判断することになるため、どこから遡及徴収されるかはその時にならないとわかりません。
企業は従業員にこうした遡及徴収の可能性があることを周知し、本人や配偶者の年収と年収の壁に十分に注意してもらうようにしましょう。
9. 社会保険の扶養が外れる条件やタイミングを正しく理解しておこう


社会保険の扶養は、1月から12月までの年間収入が130万円を超えると外れますが、働き方や収入見込み、雇用形態の変更などをきっかけに外れる場合もあります。
また、税制度上の扶養とは判定基準が異なるため、両者を混同すると、想定外の社会保険料負担や手続き漏れにつながりかねません。特に社会保険の扶養は、要件を満たさなくなった時点で速やかな手続きが必要となる点が重要です。
人事・総務担当者は、従業員からの相談があった際には、制度の違いや手続きなどを説明できる体制を整えることが求められます。その際に、間違った説明にならないよう、社会保険の扶養が外れる条件やタイミングを正しく理解しておきましょう。



従業員の入退社、多様な雇用形態、そして相次ぐ法改正。社会保険手続きは年々複雑になり、担当者の負担は増すばかりです。
「これで合っているだろうか?」と不安になる瞬間もあるのではないでしょうか。
とくに、加入条件の適用拡大は2027年以降も段階的に実施されます。
◆この資料でわかること
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- 従業員の入退社時に必要な手続きと書類の一覧
- 複雑な加入条件をわかりやすく整理した解説
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