就業規則を閲覧できないのは違法?企業の義務や拒否するリスクを解説 - ジンジャー(jinjer)|統合型人事システム

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就業規則を閲覧できないのは違法?企業の義務や拒否するリスクを解説

面談の様子

就業規則を従業員がいつでも閲覧できる状態にしておくことは、企業の法的義務です。周知を怠り閲覧を拒否し続けると、罰則の対象となるだけでなく、就業規則そのものの効力が否定され、大きな労使トラブルに発展するリスクがあります。

本記事では、就業規則の閲覧に関する企業の義務や適切な周知方法、閲覧を拒否した際のリスクをわかりやすく解説します。

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1. 就業規則の閲覧は労働者の権利であり企業の義務

書類と女性

就業規則とは、従業員の賃金や労働時間などの労働条件のほか、職場における服務規律や遵守すべきルールなどを定めた規則です。企業は作成した就業規則を従業員に周知し、いつでも内容を閲覧できる状態にしておかなければなりません。

就業規則を整備する目的は、労働条件や職場のルールを明確化し、組織運営の基準を統一することにあります。あらかじめルールを定めてきちんと周知することで、従業員と企業の認識のずれを防ぎ、労使間のトラブルの予防にもつながります。

関連記事:就業規則とは?人事担当者が知っておくべき基礎知識をわかりやすく解説

1-1. 労働基準法に定められた「就業規則の周知義務」

就業規則については、労働基準法第106条により従業員への周知が義務付けられています。この周知は、従業員全員が就業規則の内容を理解したり記憶したりしていることまで求めるものではありません。

重要なのは、従業員が必要なときにいつでも内容を確認できる状態にしておくことです。そのため、就業規則の閲覧を制限したり、保管場所や閲覧方法がわからず容易に確認できない状態にしたりすると、周知義務を十分に果たしているとは認められない可能性があるので注意しましょう。

参考:労働基準法第106条|e-Gov法令検索

参考:就業規則・書類の保存|厚生労働省

1-2. 就業規則の作成・届出義務がある企業の要件

労働基準法第89条に基づき、常時10人以上の労働者を使用する事業場は、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署へ届け出る義務があります。

この義務は事業場ごとに判断されるので、企業全体では10人以上の労働者を使用していても、各事業場の労働者数がいずれも10人未満であれば、就業規則の作成・届出義務は生じません。

また「常時10人以上」とは、一時的な在籍人数ではなく、通常の状態として10人以上の労働者を使用していることをいいます。そのため、短期間の繁忙期対応などによる一時的な増員のみであれば、一般的には作成・届出義務は生じません。

参考:労働基準法第89条|e-Gov法令検索
参考:就業規則作成・届出に関するFAQ|厚生労働省

関連記事:就業規則の労働基準監督署への届出を解説!届出義務や期限、必要書類とは

1-3. 従業員に周知されていない就業規則は無効

就業規則は、従業員に周知されて初めて労働契約の内容として効力を持ちます。そのため、従業員が自由に閲覧できない就業規則を根拠として降格や減給などの懲戒処分をおこなった場合、その有効性が否定される可能性があります。

なお、常時10人未満の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成しても労働基準監督署への届出は不要です。しかし、任意に作成した就業規則の内容を労働者に適用するためには、同様に従業員への周知が必要です。

関連記事:就業規則の変更手順とは?届出義務や提出・周知方法を解説

2. 就業規則の閲覧を求められた際の対応方法

書類の内容を確認する様子

就業規則の周知方法については、労働基準法第106条第1項および労働基準法施行規則第52条の2において、次のいずれかの方法によることとされています。

  • 常時作業場の見やすい場所に掲示し、または備え付ける
  • 書面を労働者に交付する
  • 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置する

ここからは、それぞれの周知方法について具体的に解説します。

参考:労働基準法第106条|e-Gov法令検索
参考:労働基準法施行規則第52条の2|e-Gov法令検索

2-1. 作業場などの確認しやすい場所に常に掲示する

就業規則を小冊子などでまとめている場合は、従業員が手に取り、自由に見られる場所に掲示しましょう。自由に閲覧できるのであれば、事務所内や事業所だけでなく、休憩場所などでも問題ありません。
また、本社以外に支店や工場など、別事業所がある場合は、事業所ごとに見やすい場所に備える必要があります。

2-2. 就業規則のコピーを交付する

入社時などに就業規則のコピーを交付することは、就業規則の周知方法の一つとして有効です。また、労働基準法第15条に基づく労働条件の明示ともあわせておこなえば、従業員に労働条件や職場のルールを理解してもらいやすくなります。

ただし、就業規則のコピーの交付は、あくまで企業が周知義務を果たすための方法の一つにすぎません。労働基準法上、企業に就業規則のコピーの交付を義務付ける規定はなく、従業員が常にコピーの交付を請求できる権利が認められているわけでもありません。

そのため、従業員から就業規則のコピーの交付を求められた場合でも、必ずしも応じる必要はないのです。ただし、コピーを交付しない場合であっても、従業員が必要なときに就業規則の内容を確認できるよう、閲覧環境を整備しておくことが重要です。

2-3. デジタルデータは全員がアクセスできるようにする

就業規則は、パソコンなどで閲覧できる電子データによって周知することも可能です。例えば、共有フォルダに保存したり、社内イントラネットに掲載したりして、従業員がいつでも内容を閲覧できる状態にしておけば、周知義務を果たせます。

ただし、電子データによる周知が認められるためには、従業員に就業規則へアクセスする権限が与えられていることや、閲覧方法が周知されていることなどが必要です(平成9年10月20日基発第680号)。そのため、単にデータを保存しているだけでは不十分であり、就業規則の保存場所や閲覧手順についても、あらかじめ従業員に周知しておく必要があります。

参考:○労働基準法第一〇六条第一項に規定する就業規則等の電子機器による周知について|厚生労働省

2-4. 就業規則を周知したとみなされないケース

就業規則の周知とは、すべての従業員が必要なときにいつでも就業規則を閲覧できる状態にするものです。そのため、次のようなケースに該当する場合は、就業規則を周知したとはみなされません。

  • 就業規則の内容を口頭で説明するだけで書面や電子データを閲覧できない
  • 金庫や鍵付きキャビネットに保管されていて自由に閲覧できない
  • 正社員にしか配布されておらず他の従業員が閲覧できない
  • 閲覧に必要なパスワードを一部の従業員しか知らない

社内に掲示していても、一部の従業員しか自由に確認できない状態では、周知義務を果たしているとはいえません。雇用形態や役職を問わず、すべての労働者が容易に閲覧できる状態にしておく必要があります。

また、外国人労働者についても同様に周知しなければなりません。就業規則の外国語版を作成する法的義務はありませんが、内容を理解できるよう、必要に応じて翻訳版の提供や母国語による説明をおこなうことが望ましいでしょう。

参考:外国人雇用は ルールを守って適正に|厚生労働省

3. 就業規則を社内で周知(閲覧可)する際の注意点

就業規則

ここでは、就業規則の閲覧許可の範囲や取り扱いに関する注意点について解説します。

3-1. パート・アルバイトにも就業規則を閲覧できるようにする

就業規則の周知義務は、正社員だけでなく、パート・アルバイトや契約社員などを含むすべての労働者が対象です。そのため「正社員用の就業規則だから」「非正規雇用者には関係ないから」といった理由で閲覧を制限することはできません。

特に、パート・アルバイト向けの特別な規定を定めている場合はもちろん、服務規律や懲戒規定など共通して適用されるルールについても、対象となる労働者がいつでも確認できる状態にしておく必要があります。

3-2. 就業規則を紛失したら再作成して届出が必要になる

企業で保管している就業規則を紛失した場合は、まず労働基準監督署へ届け出た控えや社内の電子データ、顧問社労士が保管しているデータなどがないか確認しましょう。

就業規則の内容を確認できない場合は、従前の内容を復元するか、新たに就業規則を作成する必要があります。なお、就業規則の作成義務がある事業場では、新たに就業規則を作成した場合や内容を変更した場合、改めて労働基準監督署への届出が必要です。

また、労働基準監督署では、原則として届出済みの就業規則の再発行はおこなっていません。そのため、就業規則は適切に保管し、紙だけでなく電子データによるバックアップも残しておくことが望ましいでしょう。

4. 就業規則の閲覧を拒否するとどうなる?

注意を促す図

就業規則の閲覧が従業員に十分に認められていない背景には、「就業規則の内容に不備がある可能性を懸念している」「実際の運用と就業規則の内容に相違がある」といった事情が存在する場合があります。

しかし、企業が就業規則の閲覧を認めなかったり、実質的に確認できない状態にしたりすると、法令違反となるおそれがあるほか、労使トラブルや就業規則の効力に関する問題が生じる可能性があります。ここでは、就業規則の閲覧を拒否した場合の主なリスクについて解説します。

4-1. 就業規則の効力が適用されないおそれがある

就業規則は、従業員に適切に周知されてはじめて労働条件としての効力が認められます。そのため、従業員が自由に閲覧できない状態では、就業規則に基づくルールの適用や運用について有効性を争われる可能性があります。その結果、次のような労使トラブルにつながるおそれがあります。

トラブル

概要

労働条件をめぐるトラブルにつながる

労働時間や休憩、休日、残業代の計算方法などのルールが十分に共有されず、労使間で認識の違いが生じるおそれがあります。

問題社員に対して懲戒処分ができない

懲戒事由や懲戒の種類が適切に周知されていない場合、懲戒解雇や減給などの懲戒処分の有効性が争われる可能性があります。

企業のルールが曖昧になり統率がとれない

服務規律や情報管理、ハラスメント防止などのルールが従業員に十分浸透せず、職場秩序の維持が難しくなるおそれがあります。

人事評価をめぐる不満やトラブルが生じる

昇給・賞与や評価基準に関するルールが共有されていないと、不公平感や不信感を招き、従業員とのトラブルにつながる可能性があります。

配置転換をめぐる紛争につながる

異動や配置転換に関するルールが明確に周知されていない場合、その合理性や運用をめぐって紛争が生じるおそれがあります。

私傷病休職者への対応でトラブルになる

休職期間や復職条件などの取扱いが十分に共有されていないと、休職・復職時の対応をめぐって労使間で認識の相違が生じる可能性があります。

定年退職をめぐるトラブルにつながる

定年に関する規定が適切に周知されていない場合、定年による雇用終了の有効性を争われるおそれがあります。

副業・兼業に関するトラブルが発生する

副業・兼業に関するルールが周知されていない場合、企業が規定の適用を主張しにくくなり、情報漏えいや業務への支障などの問題が発生するおそれがあります。

このように、就業規則の周知不足は、企業が定めたルールの実効性を低下させるだけでなく、さまざまな労使トラブルの原因にもなるので注意が必要です。

4-2. 労働基準法違反により罰則が課されるリスクがある

就業規則の周知は、労働基準法第106条により企業に義務付けられています。従業員が就業規則の内容を容易に確認できる状態にない場合には、周知義務を果たしていないと判断される可能性があります。

その場合、労働基準監督署による調査や是正指導の対象となることがあり、改善が図られない場合には、労働基準法第120条に基づき30万円以下の罰金が科される可能性もあります。企業としては法令遵守の観点から、従業員が就業規則をいつでも確認できる環境を整備しておくことが重要です。

参考:労働基準法第106条、第120条|e-Gov法令検索

4-3. 労働者が労働基準監督署で就業規則を閲覧できるケース

企業が就業規則の周知義務を適切に履行していない場合、従業員は申請により労働基準監督署において届出済みの就業規則の開示・閲覧が認められる可能性があります(平成13年4月10日基発354号)。

また、このような請求をきっかけとして労働基準監督署による調査が実施され、周知義務違反が確認された場合には、是正指導を受けることもあるでしょう。

就業規則は、職場におけるルールを明確にし、企業と従業員の双方が安心して働ける環境を整えるための重要なものです。不要なトラブルを防ぐためにも、法令に基づいて適切に周知することが求められます。

参考:労働相談Q&A 3.就業規則|日本労働組合総連合会

5. 就業規則の閲覧についてよくある質問

質問と回答

就業規則の閲覧に関して、企業からよく寄せられる質問をまとめました。適切に対応できるよう、ケースごとのポイントを確認しておきましょう。

5-1. 入社前から就業規則を閲覧できる?

入社前の内定者であっても、労働契約が成立していると評価されるケースでは、労働条件の一部である就業規則のコピーを事前に交付する、または閲覧できる状態にしておくことが望ましいでしょう。

就業規則が適切に周知されていない場合、その内容を労働条件として当該労働者に適用することが認められない可能性があります。そのため、内定者を含め、必要な範囲で就業規則を確認できる環境を整備しておくことが重要です。

関連記事:労働条件とは?明示義務や必須項目、雇用契約書との違いなどを解説!

5-2. 休職中も就業規則を閲覧できる?

休職中であっても在職中である以上、企業は就業規則の閲覧を認める義務があります。周知方法としては、作業場の見やすい場所への掲示や、電子データでいつでも閲覧できる状態にしておくことなどが認められています。

そのため、休職者に対しても通常の周知方法で対応することで足り、自宅への個別送付や特別な閲覧対応まで求められるものではありません。

5-3. 退職後も就業規則を閲覧できる?

就業規則の周知義務は、あくまでも在職中の従業員に適用されます。そのため、退職者から就業規則の開示を求められた場合であっても、企業が周知義務に基づいて開示しなければならないとは限りません。

ただし、退職者であっても、企業との間で賃金や退職金などの権利義務関係に関する紛争が生じている場合には事情が異なります。このようなケースで企業が就業規則の閲覧を認めない場合、労働基準監督署に届け出られている就業規則について開示を受けられる可能性があります(平成13年4月10日基発第354号)。

参考:労働相談Q&A 3.就業規則|日本労働組合総連合会

5-4. 第三者も他社の就業規則を閲覧できる?

第三者が他社の就業規則を閲覧できるかどうかは、原則として企業の判断によります。企業には社外の第三者に対して就業規則を開示する法的義務はありません。

ただし、訴訟における文書提出命令などの法的手続きや、法令に基づく行政機関からの要請がある場合には、この限りではありません。また、Webサイトなどで就業規則を公開している場合には、第三者が閲覧できることもあるでしょう。

5-5. 法律に違反する就業規則の条項に効力はある?

労働基準法で定められた内容は、労働契約(雇用契約)における最低ラインとされています。そのため、就業規則に労働基準法に違反する内容が定められている場合、労働基準法の基準を下回る部分については無効となります(労働基準法第13条)。

また、そもそも就業規則は、法令および事業場に適用される労働協約に反してはならないと定められています(労働基準法第92条)。

つまり、労働基準法の最低基準を下回る労働条件を就業規則で定めても、その部分は労働契約の内容として効力を持たず、法律で定められた基準が適用されます。一方で、労働者にとって不利益な内容であっても、法令に違反せず、必要な要件を満たしている場合には有効と認められることがあります。

そのため、企業の人事担当者や法務担当者は、就業規則の策定および運用にあたり、労働基準法をはじめとする関係法令を十分に確認し、適正な内容となるよう管理することが重要です。

参考:労働基準法第13条、第92条|e-Gov法令検索

関連記事:雇用契約書と就業規則の優先順位とは?見直す際の2つのポイントを紹介

6. 就業規則は随時閲覧できるべき!確認できる場所や方法の周知をしよう

一緒に確認する様子

就業規則は、従業員が必要なときにいつでも確認できる状態にしておくことが法律上求められています。もし企業が閲覧を制限したり拒否したりしている場合には、就業規則の効力が否定されるおそれがあります。

その結果、懲戒処分や人事異動といった労務対応の適法性が争われるリスクが高まります。したがって、掲示や備え付け、電子データでの共有など、雇用形態を問わず従業員が容易に内容を確認できる環境を整備し、周知方法を明確にしておくことが重要です。

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