有期雇用契約の雇用期間は何年?上限期間や契約時・変更の注意点を解説
雇用契約は、正社員やパートタイム労働者、アルバイトなどの雇用形態にかかわらず、労働者が雇用主に使用されて労働をし、雇用主がそれに対する対価を支払うことに合意することにより成立します。
雇用契約には、雇用期間に定めのある有期雇用契約と、雇用期間の定めがない無期雇用契約に分かれます。
有期雇用契約はあらかじめ契約期間が定められており、契約更新をおこなわなければ、期間満了とともに雇用契約も解消します。
一方、正社員にあたる無期雇用契約には契約期間に定めがなく、日系企業においては、特別な問題がない限り、定年まで雇用されることが多くなっています。
関連記事:雇用契約の定義や労働契約との違いなど基礎知識を解説
目次
有期雇用契約は労働基準法・労働契約法において様々なルールが設けられているため、法律に則って雇用契約を結ぶ必要がありますが、従業員とのトラブルになりやすい部分でもあります。
「法律に則って雇用契約を結ぶ方法を確認したい」「法的に正しい契約更新の対応を知りたい」という方に向け、当サイトでは「有期雇用契約の説明書」を無料で配布しております。
雇用契約の結び方から契約更新の方法、更新しない(雇止めをする)時の対応方法、無期転換ルールまで、有期雇用契約のルールを確認しておきたい方は、ぜひこちらからダウンロードしてご覧ください。
1. そもそも雇用期間とは?
雇用期間とは、労働者と雇用主との間で契約される労働関係の期間を指します。労働契約書や雇用契約書によって定められ、一般的には特定の期間が明確に記載されています。
先に述べた通り、雇用期間はいくつかのタイプに分けることができます。
- 有期雇用(定期雇用)
特定の期間を定めて雇用される形態で、契約期間が終了すると雇用関係が自動的に終わるものです。労働契約書や雇用契約書に「期間の定めあり」などと書かれていることが多く、契約更新の可否や条件は企業によって異なります。
契約更新がある場合は「期間の定めあり(原則更新)」などと書かれています。 - 無期雇用
期間の定めがなく、労働契約が当面の間継続される形態です。労働者が自己都合で退職するか、雇用主が解雇するまで続きます。 - 契約期間付き雇用
プロジェクトや季節的な需要に合わせて特定の期間だけ雇用される形態です。期間が明確に定められており、プロジェクト終了後に契約が終了します。有期雇用(定期雇用)とは異なり、期間(プロジェクト)が終了すると契約が更新されることはありません。
2. 期間の定めがある雇用契約「有期雇用契約」
雇用契約には、期間の定めのある雇用契約と期間に定めのない雇用契約があります。
期間の定めのある雇用契約は、有期雇用契約と呼ばれています。
労働基準法第14条では1回の契約期間について、「雇用契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年を超える期間の契約をすることはできない」と定めています。
しかし例外として、「高度の専門的知識を有する労働者」と「満60歳以上の労働者」との間に締結される雇用契約に関しては、1回の契約期間を最長5年に設定することが可能です。
2-1. 有期雇用契約の種類
有期雇用契約には、下記のような種類があります。
- 準社員型契約社員
- パートタイム・アルバイト型契約社員
- 定年後の再雇用の場合の嘱託型契約社員
- 高度専門職型契約社員
企業によっては、パート・アルバイト、臨時、非常勤、嘱託などという言い方をしている場合があり、呼び方はさまざまです。
また、アルバイトやパートなどの雇用形態で有期雇用契約を締結する場合は、雇用契約書を作成するなど、雇用形態に応じた対応方法が求められます。
関連記事:アルバイト採用でも雇用契約書は必要?書き方の基本や注意点
2-2. 試用期間と有期雇用契約の違い
有期雇用契約は、契約期間が満了したときに雇用契約も終了します。
そのため有期雇用契約期間中に、社員の能力を見極め、必要であれば改めて有期雇用契約や無期雇用契約として契約を結び直すことができます。
一方で、試用期間とは、正社員として採用された社員の能力や適応を図るために設けられる一定の期間を指します。
無期雇用を前提とした雇用契約のため、試用期間中も通常の正社員と同じ待遇です。したがって、試用期間後の本採用拒否は、会社都合による「解雇」扱いに該当します。
解雇するには正社員同様、「客観的・合理的な理由」「社会通年上の相当性」が要求されます。
例えば、「試用期間の勤務態度に明らかな問題があたっときの本採用拒否」や「社員としての適正があるかどうかの判断が難しい場合の試用期間延長」といった運用をするのであれば、就業規則として事前にルールを定めておく必要があります。
また、有期雇用契約が試用期間に相当する契約と判断されたされた場合、契約期間満了という理由では雇止めすることができなくなるので、契約する際には注意が必要です。
このように、有期雇用契約と試用期間では、前提となる雇用条件に大きな違いがあります。
2-3. 最短でどのくらいの期間を有期雇用として定められるのか
有期雇用契約は最長3年、条件付きでも最長5年の契約ということが分かりましたが、最短期間はあるのでしょうか?結論から言うと最短期間について法律で厳密な規定はありませんが、一般的には次のような目安の期間があります。
- 短期の場合
有期雇用契約の最短期間は1日から数日程度とされることがあります。特定の短期プロジェクトやイベントのスタッフ、季節的な需要の対応など、一時的な雇用のために利用されることが一般的です。 - 長期の場合
一般的な定期雇用契約の場合、6ヶ月、1年程度の期間を定めることが多いようです。ただし、企業の雇用主の方針によってはさらに長い期間を設定することもあります。
特に短期の場合は労働者側の不利益とならないように注意を払いましょう。
3. 有期雇用契約と無期雇用契約の違い
記事の冒頭でも解説した通り、有期雇用契約と無期雇用契約の違いは契約期間にあります。有期雇用契約はあらかじめ契約期間が定められており、無期雇用契約は契約期間に定めがなく、特別な問題がない限り、定年まで雇用されることも多いです。
加えて、雇用期間に定めのある有期雇用契約と、定年以外に雇用期間に定めのない無期雇用契約では、契約終了時に以下のような違いが挙げられます。
3-1. 退職の自由について
有期雇用契約の場合、就業規則等で労働者の退職の自由を定めていないと、期間中に「やむを得ない事由」がない限り、労働者が契約を一方的に終了させることはできません。
「やむを得ない事由」に該当するかどうかは、それぞれの事情によるため判断が難しいですが、労働者の身体に危険を及ぼすような業務の強制があったり、賃金の未払いがあったりした場合などが挙げられます。
なお、以下の条件を満たした場合には、上述したような事由がなくても、法律で退職の自由が認められています。
- 一年を超える雇用契約を結んでいて、契約開始日から一年が経過した場合
- 明示された労働条件と明らかに異なる場合(※即時解除が可能)
一方、無期雇用契約の場合は労働者は自由に退職することができ、退職の意思表示をしてから2週間後に雇用関係が終了することになります。しかし法律上での話であり、実際の業務内容や引継ぎを考慮して1か月前に申し出る等のルールを就業規則などに追加している企業がほとんどです。
3-2. 解雇の基準について
労働契約法17条において、有期雇用契約では「やむを得ない事由」がない限り、期間途中で雇用側が一方的に契約を終了させることはできないと定められています。具体的には解雇の4要件があり、このポイントの有効性がない限り適切な解雇とは認められないため注意が必要です。この解雇の4要件や解雇予告のルールについてわかりやすく解説した資料を当サイトでは無料配布しています。
雇入れから雇止め・解雇までの法律に関連する内容を解説したルールブックですので、法律に違反しないように雇用契約を締結したい方は、こちらからダウンロードの上参考にしてください。
4. 有期雇用契約を結ぶ際の4つの注意点
企業は有期雇用契約で社員を雇う際には、下記の4点に注意する必要があります。
- 雇用契約締結における明示事項を必ず記載する
- 雇止めをする場合、雇止め予告が必要
- 求められたら雇止めの理由を明示しなければならない
- 契約期間についての配慮
それぞれ詳細について解説していきます。
4-1. 雇用契約締結における明示事項を必ず記載する
雇用契約を締結する際、必ず記載しなければならないのが契約期間と契約更新の有無です。また、契約更新有りとした場合、判断基準が曖昧なままだと更新時にトラブルになりかねないため、どのような条件の場合に契約更新が可能なのか明示しなければなりません。
それぞれ具体的にどのような内容を記載すべきか解説します。
①更新の有無の明示
有期雇用契約をおこなう際には、「契約期間」と「契約更新の有無」についてを明示する必要があります。
明示すべき「更新の有無」の具体的な内容には、下記のような例が挙げられます。
- 自動的に更新する
- 更新する場合があり得る
- 契約の更新はしない
平成24年に成立した改正労働契約法では、有期雇用契約の更新がおこない、契約期間が通算5年を超えた場合、労働者が申し出ることによって、無期雇用契約への転換が可能になりました。
そのため、企業は有期契約労働者と合計で何年契約しているのか、今後も更新すべきかを把握しておくべきです。
関連記事:雇用契約を更新しない場合の正当な理由と社員への伝え方
②判断の基準の明示
上記のように、雇用主が有期雇用契約を更新する場合があることを明示したとき、労働者に対して更新する場合と更新しない場合の判断基準を明示しなければなりません。
明示すべき「判断の基準」の具体的な内容には、下記のような例が挙げられます。
- 契約期間満了時の業務量により判断する
- 労働者の勤怠状況によって判断する
- 労働者の能力によって判断する
- 労働者が従事している業務の進捗状況により判断する
- 会社の経営状況により判断する
労使間のトラブル防止のためにも、「契約期間」「契約更新の有無」「判断の基準」について、書面やメール、システム上で明示しておいた方がよいでしょう。
4-2. 雇止めをする場合、雇止め予告が必要
雇用主は、一定条件を満たした有期雇用契約を更新しない場合は、少なくとも契約の期間が終了する日の30日前までに、更新しない旨を伝える予告をしなければなりません。
ここで対象となる有期雇用契約は、次の3つになります。
- 有期雇用契約を3回以上更新している場合
- 1年以下の契約期間の労働契約が更新または反復更新され、最初に労働契約を締結してから継続して継続して通算1年を超える場合
- 1年を超える契約期間の労働契約を締結している場合
4-3. 求められたら雇止めの理由を明示しなければならない
雇用主は、雇止めの予告後や雇止め後、労働者によって雇止めの理由について証明書を請求された場合は、遅滞なく交付しなければなりません。
明示すべき「雇止め理由」には、下記のような例が挙げられます。
- 前回の契約更新時に、本契約を更新しないことに合意したため
- 契約締結時に更新回数の上限を設けており、更新回数が上限に達したため
- 従事していた業務が終了・中止したため
- 事業縮小のため
- 業務を遂行する能力が十分でないと認められるため
- 違反行為や無断欠勤など勤務不良のため
4-4. 契約期間についての配慮
雇用主は、一定条件を満たした有期雇用契約を更新しようとする場合には、契約の実態と労働者の希望に応じて、契約期間をできるだけ長くするように努める義務があります。
ここで対象となる有期雇用契約は、次の2点を満たしている場合です。
- 契約を1回以上更新していること
- 1年を超えて継続して雇用している
なお、契約期間には原則3年、「高度の専門的知識等を有する労働者」や「満60歳以上の労働者」など特例に限り5年という上限が設けられていることも認識しておきましょう。
5. 雇用契約書への必須記載事項
雇用契約書への必須記載事項は、以下の通りです。
- 労働契約の期間
- 就業場所
- 従事する業務の内容
- 始業、終業時刻
- 所定時間を超える労働の有無
- 休憩時間、休日、休暇
- 交代制勤務がある場合のルール
- 賃金の決定、計算、支払方法、締切日、支払日
- 退職に関する事項
有期雇用契約をおこなう場合、上記に加えて、「昇給・退職手当・賞与の有無」と、「相談窓口についての詳細」を明示する必要があります。これは、パートタイム労働法で定められている内容なので、しっかり押さえておきましょう。
このように、雇用契約には注意しなければならない点が数多く存在します。万が一、必要な項目が抜けた状態で締結してしまうと、従業員とのトラブルに発展してしまうかもしれません。今一度、雇用契約の基本や遵守すべき5原則について確認したい方は、こちらから当サイトで無料配布している「雇用契約手続きマニュアル」をご確認ください。締結だけでなく、雇止めや解雇についてもまとめているので、人員を見直したい方にもおすすめです。
参照:パートタイム・有期雇用労働法の概要|厚生労働省
6. 労働契約法における有期雇用契約の新ルールと注意点
平成24年8月に成立した改正労働契約法により、有期雇用契約を利用する際の新たなルールが設けられました。
6-1. 有期雇用契約から無期雇用契約への転換
有期雇用契約が何度も更新され契約期間が通算5年を超えた場合、労働者が申し出ることで、無期雇用契約への転換が可能です。これを無期転換申込権と呼びます。申し出をするかどうかは労働者の自由です。
申し込みは口頭でも法律上有効となりますが、トラブル防止のためにも可能な限り書面で申し込みを実施することを推奨します。
申込みがおこなわれると、自動的に使用者が承諾をしたものとみなされ有期雇用期間終了日の翌日から無期雇用契約に転換します。ここで注意したいのは、あくまで雇用期間が有期から無期に変更になるのであり、雇用区分が契約社員から正社員になるという訳ではありません。雇用区分の変更については企業ごとに異なるため、どのような場合に正社員転換となるのか就業規則を確認しましょう。
なお、契約更新の条件として、無期転換の申込みを放棄させるのは違反行為です。
また、無期転換申込権が発生する前に雇止めを行うことも違反行為と見なされる場合があるため、推奨しません。
6-2. 「雇止め法理」の法定化
「雇止め法理」の法定化により、以下のような待遇を受けている有期雇用労働者の雇止めが、法律的に無効と判断されるようになりました。
- 更新手続きが正常におこなわれておらず、実質無期雇用契約と同じ状態にある場合
- 契約の更新をほのめかすような言動が取られていた場合
有期雇用契約を締結する際には、更新期間の対応を確実におこない、更新の有無や判断基準についてしっかりと記載し、労働者の合意を得たという証拠を残しておくことが大切です。
6-3. 有期雇用契約への不合理な労働条件の禁止
有期雇用契約と無期雇用契約の間で、不合理な労働条件の相違があった場合、これを禁止するルールです。
たとえば、有期雇用契約の労働者には通勤手当を支給しない、社員食堂の利用不可などの就業規則は「合理的でない」と判断され、無効となります。
雇用契約は口頭でも有効であるため、雇用主は労働条件について適切な対応が求められます。
関連記事:雇用契約は口頭でも有効なのか?口頭で契約する際に注意すべき2つのリスク
6-4. 2024年4月からの変更点
政府は「労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令等の公布等について」において、有期雇用契約の際の労働条件明示ルールに新たな条件を3つ追加しました。これらは、2024年4月より適用となります。
企業はそれまでに労働条件通知書のフォーマットを見直さなければなりません。
具体的なルールは以下の3点です。
- 更新上限の明示
- 無期転換申込機会の明示
- 無期転換後の労働条件の明示
また、すべての労働者に対してもルールが追加され、以下の内容を労働条件通知書へ反映しなければなりません。
- 就業場所・業務の変更の範囲の明示
厚生労働省から詳細についてまとめられた資料も出ています。本記事とあわせてぜひご覧ください。
関連記事:2024年4月から労働条件明示のルールが変わります|厚生労働省
7. 雇用契約の内容を変更したい場合の注意点
ここまで雇用契約の締結について説明してきましたが、それでは実際に雇用契約を締結したあとに、その契約内容を変更したいというケースが発生した場合はどのように対応すべきなのでしょうか。押さえておくべき注意点を解説します。
7-1. 押さえておきべき労働契約法のポイント
雇用契約の内容を変更する際には、労働者との十分な協議が不可欠です。契約法に基づき、以下の原則に従うことが求められます。
- 労使の対等の立場によること
- 就業の実態に応じて均衡を考慮すること
- 仕事と生活の調和に配慮すること
- 信義に従い誠実に行動し、権利を濫用しないこと
特に有期雇用契約の場合は、契約期間中に一方的な条件変更は法的問題を引き起こす可能性があります。具体的に説明します。
7-2. 労働者の同意の上で不利益でない変更のみ可能
まず、変更内容を明確に説明し、労働者の同意を得ることが不可欠です。合意に基づく変更であっても、就業規則に定められた労働条件を下回ることは許されません。また、使用者が一方的に就業規則を変更しても、労働者の不利益になるような労働条件の変更はできません。就業規則による変更の場合は、(1)内容が合理的であること、(2)労働者に周知されることが条件となります。
さらに、変更内容を文書で明示し、双方で署名を行うことが望ましいです。これにより、後日トラブルが発生するリスクを軽減できます。労働者との信頼関係を損なわないよう、慎重に対応することが重要です。
8. 有期雇用契約を締結する際には契約期間の更新を慎重におこなおう
有期雇用契約には、契約期間中に社員の能力を見極め、必要であれば契約更新や無期雇用契約として契約を結び直すことができるというメリットがあります。
活躍次第で正社員になる可能性があることが分かれば、有期雇用労働者はモチベーションを高く保った状態で雇用することができます。
しかしながら、有期雇用契約は雇止めなどで法律上、雇用主が気をつけなければならないポイントが無期雇用契約よりも多いという特徴があります。有期雇用契約をおこなう場合には、法改正の内容を細かく理解して、労使間でトラブルを生まないことが重要です。
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パートタイマーの雇用契約書を発行する際に確認すべき4つのポイント
有期雇用契約は労働基準法・労働契約法において様々なルールが設けられているため、法律に則って雇用契約を結ぶ必要がありますが、従業員とのトラブルになりやすい部分でもあります。
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