アルバイト採用でも雇用契約書や労働条件通知書は必要?4つの注意点を解説
更新日: 2025.12.24 公開日: 2020.11.16 jinjer Blog 編集部

アルバイトを雇用する際は、正規雇用と同様に雇用契約書を取り交わした方が推奨されています。
雇用契約は民法上「諾成契約」に該当するため、書面での締結が義務付けられておらず、口頭契約でも成立します。しかし、労働条件に関する食い違いなど、労使間のトラブルを回避するためには、口頭契約や労働条件通知書の交付のみでは不十分です。
雇用契約書を取り交わし、「労働者からの合意を得た」という証拠を確保することが大切です。
今回は、アルバイト採用であっても雇用契約書が必要な理由や契約書の書き方、注意点などを解説します。
関連記事:雇用契約書とは?法的要件や雇用形態別に作成時の注意点を解説!
「長年この方法でやってきたから大丈夫」と思っていても、気づかぬうちに法改正や判例の変更により、自社の雇用契約がリスクを抱えているケースがあります。
従業員との無用なトラブルを避けるためにも、一度立ち止まって自社の対応を見直しませんか?
◆貴社の対応は万全ですか?セルフチェックリスト
- □ 労働条件通知書の「絶対的明示事項」を全て記載できているか
- □ 有期契約社員への「無期転換申込機会」の明示を忘れていないか
- □ 解雇予告のルールや、解雇が制限されるケースを正しく理解しているか
- □ 口頭での約束など、後にトラブルの火種となりうる慣行はないか
一つでも不安な項目があれば、正しい手続きの参考になりますので、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. アルバイトに雇用契約書は必要?

アルバイトを雇用する際、雇用契約書と労働条件通知書のどちらが必要なのか、迷ってしまうこともあるかもしれません。
結論から述べると、「雇用契約書」は「絶対に必要な書類」ではありませんが、トラブル回避のためにも書面を作成し交付することが推奨されています。
一方、「労働条件通知書」は、労働基準法上で作成を義務付けられているため、企業側の必要性に関係なく作成しなければなりません。
ここでは、雇用契約書と労働条件通知書との違いや兼用できることについて解説します。
1-1. 雇用契約書と労働条件通知書の違いとは
雇用契約書というのは、従業員の労働に対して企業が報酬を支払う契約となる「雇用契約」の内容を書面にしたものです。これは、⺠法第623条において、企業と従業員の間で雇用契約の内容についての合意がなされたことを証明するものとされています。
しかし、民法第623条では、「雇用契約」だけでも効力があるとなっており、「雇用契約書」の交付に関する法的義務は明記されていません。
そのため、アルバイトやパートなどの非正規雇用の場合、企業によっては雇用契約書を取り交わさないケースもみられます。
ただし、雇用契約書の取り交わしは義務ではありませんが、労働法において「雇用主はアルバイトやパートのスタッフに対して労働条件を書面で明示すること」が義務付けられています。この書面が「労働条件通知書」というもので、労働条件通知書を交付すれば、アルバイトに対する労働法の規則をクリアできます。
しかし、労働条件通知書はあくまで企業側から労働条件を一方的に労働者へ通知しただけであって、労働者と雇用側の双方で合意をとったとはいえません。つまり、労働条件や契約内容に関して、アルバイトの理解や合意を得られたとはいえないのです。
これらの点を踏まえると、雇用契約書と労働条件通知書の違いは以下のようになります。
| 項目 | 雇用契約書 | 労働条件通知書 |
| 書面による締結 | 任意 | 義務 |
| 通知方法 | 事業主と労働者との合意のもとで交付 | 事業主から労働者へ一方的な交付 |
雇用契約書は任意なので、できれば作成しない方が楽というのが本音かもしれません。しかし、賃金や賞与、労働時間などについて労使間で食い違いが起きた際、雇用契約書を締結していないと、労働者の合意のもとで雇用契約が交わされたことを立証できず大きなトラブルに発展する可能性があります。
こういったトラブルを回避するためにも、アルバイトやパートというような雇用形態に関わらず、雇用契約書をできるだけ取り交わしましょう。
関連記事:雇用契約とは?法的な位置付けと雇用契約書を作成すべき理由を解説
関連記事:労働条件通知書と雇用契約書の違い|それぞれの役割と発行方法を解説
関連記事:雇用契約は口頭でも有効なのか?口頭で契約する際に注意すべき2つのリスク
1-2. 雇用契約書は労働条件通知書と兼ねることができる
雇用契約書と労働条件通知書は、交付の義務の有無や役割、目的が異なりますが、実際に記載する項目は重複するものが多くあります。
そのため、書類作成や契約手続きの手間を省略するために、雇用契約書と労働条件通知書を兼ねた「労働条件通知書兼雇用契約書」という書類を作成する企業が増えています。
労働条件通知書において絶対に記載しなければならない項目や、契約書として機能を果たすための署名捺印欄など、必要な項目を漏れなく設ければ正式な書類として成立します。
書面交付の方法は紙だけでなく、「労働者の同意」や「紙で抽出できる」という条件を満たせば電子的手段による交付も認められます。ただし、送付履歴の管理や保管などに関する規定は紙と同じなので、ルールをしっかり確認しておきましょう。
「雇用契約書 兼 労働条件通知書」の作り方や記載項目などは、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:雇用契約書と労働条件通知書の兼用が可能?メリットや作成方法を解説
2. 雇用契約書の記載事項

雇用契約書の作成に関しては、具体的な書き方やルールが示されているわけではありませんが、労働条件通知書は労働法で定められた内容を遵守しなければなりません。
そのため、雇用契約書と労働条件通知書を兼ねた「労働条件通知書兼雇用契約書」を作成する場合は、労働条件通知書で必ず記載しなければならない項目があるので注意が必要です。
アルバイトの雇用契約書を作成する際は、労働基準法で定められた絶対的明示事項と相対的明示事項に加え、パートタイム労働法によって定められた4つの通知事項を必ず記載しなければならないのでチェックしておきましょう。
2-1. 労働基準法によって定められた絶対明示事項
労働基準法で定められた記載事項(絶対明示事項)は、次のようなものがあります。
- 労働契約期間
- 就業の場所や従事する業務内容
- 始業開始・終業時刻
- 所定労働時間を超える労働の有無
- 休日や休暇、休憩時間(交替勤務の場合は就業時転換)
- 賃金の発生基準や計算方法、支払い方法、支払い時期に関する事項
- 退職に関する事項
これらの項目は、労働基準法によって記載が義務化されているため、不記載がないようにしましょう。
また、パートタイム労働者に対しては、上記に加え、下記の4の通知事項についても文書で明示しなくてはなりません。
- 昇給の有無
- 退職手当支給の有無
- 賞与制度の有無
- 相談窓口について
これらの項目は、パートタイム労働法により義務化されているので、記載してあるか必ず確認しましょう。
労働基準法改正により2024年4月以降は明示事項が増えた
2024年4月から改正された労働基準法が施行されました。それにより、労働条件明示のルールも変更されているため、注意しましょう。
変更点としては、以下のとおりです。
| 対象者 | 明示のタイミング | 追加される明示事項 |
| すべての労働者 | 契約締結・更新時 | 就業場所や業務内容が変更される可能性のある範囲 |
| 有期雇用契約者 | 契約締結・更新時 | 契約期間や更新回数の上限有無とその理由 |
| 無期転換申込権が発生する有期雇用契約者 | 契約更新時 | 無期転換申込権の説明と無期転換後の労働条件 |
無期転換ルールの施行とともに、一部の企業では無期転換権が発生する直前での雇止めがありました。今回の法改正では、そうした労働者に非のない雇止めやトラブルを防ぐ狙いがあると考えられます。
このように法改正によって雇用契約手続きのルールは変わります。 当サイトでは、雇用契約書において法改正に対応した手続き方法をいち早くキャッチアップできる「雇用契約手続きマニュアル」を無料で配布しております。法改正に対応したアルバイトの雇入れ手続きについて、今一度正しく理解しておきたい方は、ぜひこちらからダウンロードしてご覧ください。
参考:令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます|厚生労働省
2-2. 労働条件通知書の相対的明示事項
相対的明示事項とは、該当する項目がある場合、労働者へは口頭で明示すれば労働条件通知書に記載しなくても問題ない項目のことをいいます。
相対的明示事項には、次のようなものが挙げられます。
- 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算、支払方法、支払日
- 労働者の費用負担が発生するもの(食費、作業用品など)
- 安全衛生に関するもの
- 職業訓練に関するもの
- 災害補償及び業務外の傷病扶助
- 表彰及び制裁
- 休職に関する事項
- 賞与や各種手当
また、労働法によって義務付けされた事項だけでなく、雇用側の職種や業種によって必要な項目を精査し、「相対的明示事項」の項目に加えることも重要なポイントです。
例えば、懲戒処分や減給などの服務規程、業種によっては情報漏洩対策としての秘密保持義務、スマートフォンやSNSの利用規制など、自社で必要な項目はしっかり盛り込んでください。
ただし、雇用側が定めた独自のルールを記載する際は、労働基準法に違反しない範囲であるかどうか、細心の注意を図りましょう。
ここまで記載すべき事項を押さえたところで、実際に労働条件通知書(兼雇用契約書)を作成する際に参考にできるサンプルがほしいという方向けに、当サイトでは社労士が監修した労働条件通知書のフォーマットを配布しています。
令和6年に労働条件の明示ルールが変更された点も反映した最新のフォーマットで、雇用契約書として兼用することもできる雛形です。「これから作る雇用契約書の土台にしたい」「労働条件通知書を更新する際の参考にしたい」という方は、ぜひこちらからダウンロードの上、お役立てください。
3. アルバイトの雇用契約書を作成する際の注意点

アルバイトスタッフとの雇用上のトラブルを回避するために、アルバイトの雇用契約書を作成する際は、主に4つの注意点が挙げられます。
- 雇用契約書の控えをアルバイトスタッフに渡しておく
- 試用期間での雇用であっても雇用契約書を作成する
- 記載項目の確認を徹底する
- 解雇ルールを確認する
ここでは、これらの注意点について解説します。
関連記事:アルバイト採用でも雇用契約書は必要?作成するための4つのポイント
3-1. 雇用契約書の控えをアルバイトスタッフに渡しておく
雇用契約書は必ず2部作成し、1部は雇用主が保管、控えはアルバイトスタッフに渡しておきましょう。控えを渡すのは、雇用主側だけでなく、労働者側がいつでも労働条件や規則について確認できるようにするためです。
双方で保管することで、小さな食い違いやトラブルを回避できるのはもちろん、労働者からの信頼も高まるでしょう。
しかし、パート・アルバイトの従業員が多い企業では、パート・アルバイト従業員を採用するたびに雇用契約書や労働条件通知書を手渡すというのは、担当者への業務負担が大きくなります。この負担を軽減して業務効率を上げる方法として、雇用契約書を電子化することが推奨されています。
2019年の法改正で労働条件通知書のペーパーレス化が認められたことにより、パート・アルバイト従業員の入社にかかる業務や手続きの工数を削減できる雇用契約書の電子化が注目を集めています。
電子化に興味のある方は、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
関連記事:雇用契約書・労働条件通知書を電子化する方法や課題点とは?
3-2. 試用期間での雇用であっても雇用契約書を作成する
アルバイトを採用する際に試用期間を設け、雇用基準を満たしているかどうかを確認するという企業もあるでしょう。本採用でなければ契約は不要と思うかもしれませんが、試用期間であっても雇用契約が締結されてることには変わりないため、労働条件を書面で明示しなければなりません。
そのため、試用期間がスタートする時点で雇用契約書を作成し、労働者に合意してもらう必要があります。
試用期間を運用する場合の雇用契約書には、試用期間の開始日と終了日、試用期間中の賃金ほか、無断欠勤や度重なる遅刻、経歴詐称、情報漏えいなど就業規則によって定められた解雇事由に該当した場合は、正式採用しない可能性があることも明示しておきましょう。
関連記事:雇用契約における試用期間の意味とよくあるトラブルを紹介
3-3. 記載項目の確認を徹底する
雇用契約書の作成が終了したら、時間外手当の計算方法や通勤手当の支給基準、欠勤時の賃金扱い、最低賃金対応や社会保険適用基準などの記載事項に漏れがないか、労働法を遵守した就業規則を記載しているかを再度確認しましょう。
特に、雇用主側が定めた就業規則に関しては徹底したチェックが必要なので、給与担当者や人事担当者でチェックリストを作成し、二重チェック体制を運用に組み込むことをおすすめします。
万が一、就業規則の内容が労働法の範囲を超えていた場合、法律違反として罰則を科せられてしまう可能性があります。また、企業に対する不信感を抱かせることにもなり、離職やモチベーション低下のリスクも高くなるので、記載項目の確認は徹底してください。
3-4. 解雇ルールを確認する
正社員と同じようにアルバイトの解雇にもルールが明確に定義されています。
そのため雇用主は、アルバイトを解雇しようとするときは次のポイントをチェックして、解雇理由・手続きが適切かどうかを十分に検討してください。
①解雇事由は適切かどうか
雇用主は、労働者に対して就業規則や労働契約書に解雇事由を明示する必要があります。
雇用主は、労働者が請求した際に解雇理由を記載した書面を交付することが義務付けられています。そのため、解雇事由が適切かどうか確認しなければなりません。
正当とみなされる「解雇事由」には、下記のようなものが挙げられます。
- 就業規則に定められた休職期間を経過ても復職ができる状態にならなかった
- 休職期間経過後、短時間勤務や負担の軽い業務につけるなどの配慮をしても復職できる可能性がない
- 必要な指導や適切な配置転換をしても勤務成績が不良
- 会社の正当な業務命令に従わず、今後も従わない意思を明確にしており改善が期待できない
- 過去にもパワハラによる懲戒処分歴がある従業員が再度パワハラをおこなった
- 事業活動の縮小などでやむを得ず人員整理をおこなうとき
上記以外でも、業種によって「解雇事由」は異なるので、自社で起こりえる「解雇」を把握し明示しておきましょう。
②解雇予告をしているか
解雇をおこなう場合は30日前までにその予告をするか、最低30日分の平均賃金を解雇予告手当として支払う必要があります。
例え、週1日出勤の従業員であっても、解雇予告をしない場合は最低30日分の解雇予告手当が必要となるので注意が必要です。
③更新の有無
アルバイトの場合、一定の期間を定めて契約する「有期労働契約」で契約するケースが多く、契約期間終了の前に更新をおこなうのが一般的です。しかし、アルバイトの労働状況や人財確保の必要性によっては、更新をしないという選択をすることもあるかもしれません。
こういった場合、更新の有無が記載されていないと、トラブルに発展する可能性があります。
期間を定めて契約する場合は、契約更新に関するトラブルを防ぐためにも「更新の有無」と「判断の基準」を明示することが求められます。そのため、雇用契約書を作成する際には、更新の有無と判断の基準を含めて作成するとよいでしょう。
関連記事:有期雇用契約の雇用期間は何年?上限期間や契約時・変更の注意点を解説
4. アルバイト・パート採用でも雇用契約書は締結しておこう

アルバイト採用にあたって、雇用契約書を取り交わすことは、法律上義務付けされていません。しかし、労働条件通知書を一方的に交付するだけでは、労働条件に関して労働者から完全な理解と同意を得たことにはならないので注意しましょう。
また、雇用契約書を取り交わさなかったために、労使間でのトラブルが発生し、裁判に発展してしまうケースもあります。そのため、アルバイトやパート採用においても雇用契約書と労働条件通知書の締結、控えの保存などを徹底することも重要です。
雇用契約書を作成したり交付したりするのは手間と感じるかもしれませんが、トラブルの抑止や雇用側と従業員側の信頼関係を結ぶためにも、労働者が労働条件について理解・同意した上での雇用契約である証拠を確保しておきましょう。
「長年この方法でやってきたから大丈夫」と思っていても、気づかぬうちに法改正や判例の変更により、自社の雇用契約がリスクを抱えているケースがあります。
従業員との無用なトラブルを避けるためにも、一度立ち止まって自社の対応を見直しませんか?
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- □ 有期契約社員への「無期転換申込機会」の明示を忘れていないか
- □ 解雇予告のルールや、解雇が制限されるケースを正しく理解しているか
- □ 口頭での約束など、後にトラブルの火種となりうる慣行はないか
一つでも不安な項目があれば、正しい手続きの参考になりますので、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
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