雇用契約の条件は途中変更できる?契約期間内に変更する方法をご紹介 - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

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雇用契約の条件は途中変更できる?契約期間内に変更する方法をご紹介

「労働者と結んだ雇用契約の条件を途中で変更できるのか知りたい」と考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。契約期間内における雇用契約の途中変更は雇用主が勝手にできるものではなく、その変更内容や労働者の合意有無によって決まります。

今回は、労働条件の途中変更が可能なケースや認められないケース、変更方法の手順などをご紹介いたします。

関連記事:雇用契約の定義や労働契約との違いなど基礎知識を解説

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有期雇用契約は労働基準法・労働契約法において様々なルールが設けられているため、法律に則って雇用契約を結ぶ必要がありますが、従業員とのトラブルになりやすい部分でもあります。

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2024年4月に改正された「労働条件明示ルール」についても解説しており、変更点を確認したい方にもおすすめです。

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1. 雇用契約は途中変更できるのか?

原則として、雇用契約を結ぶ際に明示する労働条件は、以下のような決まりがあります。

①新たに雇用契約を締結する際に定める
②雇用契約を更新する場合に、最初に定めた労働条件をもとに雇用契約を継続する

ただし、労働契約法第8条により、「使用者は労働者との合意が取れれば、労働契約(雇用契約)の内容である労働条件を途中変更することは可能」です。

労働者にとって不利益となる変更は基本的には認められていませんが、変更内容が合理的なものであれば、「従業員から個別に同意を取る」または「就業規則内で労働条件の変更をする」ことができます。

労働者が10人以上いる会社の場合、労働条件や服務規律を定めた就業規則を作成し、すべての労働者がいつでも確認できるようにしておくことが義務付けられています。この就業規則は労働者の合意を得ることなく変更することが可能なため、現実として多くの会社が就業規則を変更することで労働条件を変更しています。

関連記事:雇用契約書と就業規則の内容が異なる場合の優先順位について解説

2. 不利益な雇用契約の途中変更は「許される場合」と「許されない場合」がある

雇用契約における雇用条件の途中変更に関して、より詳しく説明いたします。

雇用契約の途中変更は、まず労働者に不利益な条件ではないことが大事になりますが、経営不振などで会社が厳しい状況に陥った場合は、雇用条件を見直し、労働条件を切り下げなければならないケースもあることでしょう。

このように、労働者に不利益な労働条件に途中で変更するためには、どのような形で労働者の合意を取るべきなのでしょうか。

2-1. 不利益な労働条件に一方的に変更することはできない

雇用契約や就業規則は、たとえ雇用主であっても、従業員にとって不利益となる労働条件に一方的に変更することはできません。

もし一方的に変更した内容が従業員にとって不利益な場合、労働契約法第9条に違反となります。

そのため、雇用条件を変更する場合は必ず従業員に変更内容を周知し、合意を取っておく必要があるでしょう。

参考:労働契約法|e-Gov法令検索

2-2. 不利益な労働条件に変更する場合は「合理性」で判断する

雇用契約や就業規則の変更を従業員に対して周知した後、争点となるポイントが「その変更内容に合理性があるか」となります。

労働者に不利益な労働条件に変更する場合は、「変更することの合理性」を明確に説明できる必要があります。

この合理性の判断は、労働契約法第10条に基づき、次の8つの要素から総合的に判断することになります。

①就業規則を変更する必要性について、その内容と程度

②変更による労働者の不利益がどの程度のものか

③変更後の内容に相当性があるか

④代償措置など、そのほかの労働条件に改善があるか

⑤労働組合などとの交渉経緯

⑥ほかの労働組合、またはほかの従業員の対応について

⑦同種事項に関して、日本社会における一般的な状況について

⑧変更によって、とくに大きな不利益を被る労働者への経過処置(緩和処置)があるか

賃金や退職金など、労働者の生活に大きな影響を与える重要な事案については、必要性に基づいた合理的な要素が求められます。

また、合理性があると判断され、労働条件の切り下げが認められた場合でも、具体的な変更後の労働条件の内容は労働者に周知することが義務付けられています。

参考:労働契約法|e-Gov法令検索

2-3. 「合理性」のない途中変更は合意があっても認められない

雇用契約の労働条件の途中変更について、たとえ労働者から合意を得られとしても、次のようなケースは変更が認められないので注意しましょう。

①変更後の労働条件が就業規則を下回っている場合
②就業規則の変更に合理性がない場合

このようなケースは、合理性がないと判断される可能性もあるため注意しましょう。

たとえば、「人件費削減のため」「業績の見通しが悪化しそうなため」といった理由は、企業の一方的な都合であり合理的であるとはいえず、変更が認められない可能性が高いでしょう。

また、途中変更した就業規則や労働協約が、労働基準法に反した内容の場合は、 強行規定である労働基準法の規定が優先されます。労働規約に反した就業規則や雇用契約(労働契約)を設定してしまった場合は、違反した部分の内容が無効となります。

さらに、有期雇用と無期雇用の社員の間で不合理な労働条件の違いが生じることは、改正労働契約法によって禁止されています。途中変更をおこなった結果、雇用形態ごとに就業規則や雇用契約の内容を分けた場合には、違法となっている可能性があるため注意が必要です。

3. 雇用契約の途中変更をする具体的な方法

前述したように、雇用契約の労働条件を途中変更するためには、「従業員から個別に同意を取る」または「就業規則内で労働条件の変更をする」という2つの方法を取る必要があります。

それでは、各方法について具体的に説明していきます。

3-1. 労働者から個別に合意をもらう

雇用契約の条件を途中で変更する際には、労働者から個別に合意を得ることが重要です。この合意は、書面で明確に記録することが望ましいです。口頭での合意だと、後々トラブルになる可能性があるため、文書で双方の意思を確認することが推奨されます。さらに、労働者が不利益を被るような変更がある場合は、その合意が「自由な意思」に基づいていることを確認する必要があります。労働者が心から納得していない場合、その合意は無効となる可能性があります。

企業の意向を労働者に強制することなく、変更の理由や内容について丁寧に説明し、労働者が納得した上で合意に至るよう努めることが重要です。

3-2. 雇用契約書か覚書を作成する

特定の労働者に対してのみ労働条件を変更する場合は、個別面談などを実施して変更理由や内容を説明し、個別に合意してもらう必要があり、合意が成立した

場合は、新たに雇用契約書を取り交わすか、「覚書」を作成しましょう。

覚書とは、双方の合意した事項を書面にしたもので、契約書を作成する前や契約変更の際、契約内容の補足や変更事項を文書として残しておくために作成されるものです。雇用契約書を再度作り直すことに手間が掛かる場合は、変更した部分のみ記載すれば良い覚書で代用することが可能です。契約書の補助的な役割が大きい覚書ですが、内容によっては法的拘束力を持った契約書類になり、労使間でのトラブルを防ぐことができます。

「覚書」の構成内容

労働条件の途中変更にともなう覚書は、法的に有効な書面にするためには、次のような構成で作成するようにしてください。

表題 「覚書」「労働契約変更に関する覚書」などと記載
前文 ・変更前の雇用契約書の締結日

・雇用契約内容の要約

本文 ・雇用契約書の変更についての合意内容
後文 ・当事者同士が合意したことを証明する宣誓文

・覚書の部数

・覚書の所持者

・覚書の効力発生日

覚書作成日 覚書を作成した年月日
当事者名 当事者双方の署名・住所・捺印

3-3. 就業規則内で労働条件の変更をする

すでに労働者に周知済みの就業規則を変更することで労働条件を変更する際は、次の手順でおこないます。

①変更内容をまとめ、就業規則に反映する
②「就業規則変更届」を作成する
③変更に対する労働者代表の意見を書面にした「意見書」を作成する
④就業規則・変更届・意見書を労働基準監督署へ届け出る
⑤変更後の就業規則を社内に周知する

事業所や支店など会社が複数ある場合は、変更を適用する場所ごとに手続きをおこないます。変更内容が同一であれば、本社で一括届出が可能です。

関連記事:雇用契約書と就業規則の優先順位とは?見直す際の2つのポイントをご紹介

4. 雇用契約を途中で変更する場合の注意点

ビックリマークがブロックに描かれている

労働者の権利は、労働基準法によって守られています。そのため、雇用主が決めたことであっても、変更出来ない可能性があります。変更方法や内容によっては従業員とのトラブルに発展するリスクもあり、大切な労働力を失ってしまうこともあるので、雇用契約を途中で変更する場合の注意点をチェックしておきましょう。

4-1. 個別の同意は全従業員から得る

就業規則の変更によらないで個別の同意をとる場合には全従業員から同意をとりましょう。企業によっては正社員だけでなくパートやアルバイト、契約社員などさまざまな雇用形態の従業員がいます。合意は雇用形態に関わらず、雇用契約を結んでいるすべての従業員から得る必要があるので注意してください。

4-2. 労働基準法に則って変更すること

労働者は、労働基準法によって権利が守られているので、雇用契約の変更内容が労働基準法に違反していないか、一つひとつ確認しなければなりません。

契約内容が労働基準法に違反していた場合は、たとえ労働者の合意を得ていたとしても無効となります。また、労働基準法は改正されることも多く、故意じゃなくても違反になってしまう可能性があるため定期的に確認しましょう。

4-3. 労働条件通知書の内容によっては変更できないことがある

労働条件通知書に、「業務内容は変更する可能性がある」などの文言が記載されていなかった場合は、原則として変更を求めることはできません。労働者側が、会社の意向を無視できず合意したとしても、これは「自由意志に基づく合意」ではないので、無効になる可能性があります。

どうしても変更する必要がある場合は、「給与の引き上げ」や「特別手当の項目を増やす」など、従業員が変更を納得できる条件を追加し、自由意思に基づいた合意を得られるような対策を取りましょう。

5. 雇用契約を途中で変更する場合によくある質問

はてなマークをもつ女性
それでは雇用契約の途中変更について基本知識を解説してきました。ここからはより実務の中で役立つ具体的な知識として、実際の変更に伴いよくある質問のケースをまとめました。ぜひ参考にしましょう。

5-1. 雇用契約書の変更を拒否されたらどうする?

雇用契約書の変更を労働者から拒否された場合は、まず冷静に対処し、再度説明と交渉を行いましょう。変更理由の再説明や、労働者の意見を聞き、合理的な対策を考えることが重要です。

労働契約法第8条により、労働者からの合意が得られない場合、雇用契約の途中変更はできません。そのため、これまでと同じ労働条件を継続して適用する必要があります。場合によっては、変更の必要性を再度検討するか、別の方法で妥協点を見つけることも考えられます。

ただし、労働契約法第9条、第10条により、合理的な理由があれば、就業規則を変更することで、労働条件の変更に対応できる可能性があります。それでも合意に至らない場合は、法律相談を受けることが推奨されます。

5-2. 労働条件の変更により一方的な解約はできる?

労働条件の変更を理由に、会社が一方的に契約を解約することは原則として認められません。

解約には、正当な理由が必要であり、それは労働基準法で厳しく規定されています。退職合意や解雇手続きが適切に行われなければ、違法行為とみなされる可能性があります。そのため、労働条件の変更が必要な場合は、労働者との合意をしっかりと取り付けることが不可欠です。

法律で明確に定義されていないため、不可能と言い切れるわけではありませんが、「労働条件の変更が経営上必要不可欠である」「労働条件の変更の必要性が労働者の不利益を上回る」「労働条件の変更による解約を正当化できるだけの理由がある」といった厳しい要件を満たす必要があります。労働条件の変更による解約が必要な場合、まずは専門家に相談してみましょう。

5-3. 雇用契約の途中解約や途中退職はできる?

雇用契約の途中解約や途中退職は、特定の条件下で可能です。ただし、その際には法的な手続きを経る必要があります。たとえば、解約条項が契約書に含まれている場合、その条件に従うことが求められます。また、労働者が正当な理由で退職を希望する場合も、労働基準法に基づいた手続きを踏むことが重要です。適切な手続きを守ることで、トラブルを未然に防ぐことができます。

会社の都合だけで従業員を一方的に解雇することは基本的に認められません。ただし、有期雇用の契約満了による解約は、正しい手続きを踏めば可能です。また、民法第627条により、無期雇用契約の場合、各当事者はいつでも退職・解約の申し入れができます。申し入れ日から2週間経過することで、契約は終了します。さらに、労働基準法第137条により、有期雇用労働者(1年を超える契約)は1年経過すればいつでも途中退職することが可能です。なお、民法第628条により、やむを得ない事由がある場合、各当事者は直ちに途中退職や途中解約ができます。

例えば、健康上の問題や家庭の事情などのやむを得ない事由がある場合、直ちに契約を解除することが認められています。これにより、労働者は迅速に職場を離れることができ、雇用主も適切な対応を取ることが求められます。このように、法律に基づく適切な手続きを踏むことで、両者の権利や利益を守ることができます。

6. 雇用契約の途中変更は労働者の自由な意思が尊重される

雇用契約の途中変更に関しては、多くの企業が就業規則の労働条件を変更することで対応しているのが実態です。

しかし、労働者にとって不利益な内容に変更する場合は、必ず労働者の合意を取らなければならないため、覚書を作成するなどで対応するようにしましょう。また、たとえ労働者にとって有益な内容に変更する場合であっても、変更手続きをおこなう前には、労働者へきちんと説明するべきです。

労働者の合意が必要無い就業規則の変更であっても、労働条件の変更は労働者の生活に関わる大事な案件ですので、労使間の信頼関係のためにも、変更前の説明・変更後の周知は必ずおこなうようにしましょう。

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有期雇用契約は労働基準法・労働契約法において様々なルールが設けられているため、法律に則って雇用契約を結ぶ必要がありますが、従業員とのトラブルになりやすい部分でもあります。

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