雇用保険被保険者資格取得届の加入要件や記入時の注意点について
企業には従業員を雇用保険へ加入させる義務があり、一定の要件を満たす従業員を雇用する場合は必ず雇用保険の加入申請を実施しなければなりません。その際に用いる書類が「雇用保険被保険者資格取得届」です。今回は雇用保険被保険者資格取得届の加入要件や、記入時の注意点について解説します。
関連記事:雇用保険とは?給付内容や適用される適用事業所について
目次
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社会保険料は従業員の給与から控除するため、ミスなく対応しなければなりません。
しかし、一定の加入条件があったり、従業員が入退社するたびに行う手続きには、申請期限や必要書類が細かく指示されており、大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。
さらに昨今では法改正によって適用範囲が変更されている背景もあり、対応に追われている労務担当者の方も多いのではないでしょうか。
当サイトでは社会保険の手続きをミスや遅滞なく完了させたい方に向け、最新の法改正に対応した「社会保険の手続きガイド」を無料配布しております。
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1. 雇用保険被保険者資格取得届とは?
雇用保険被保険者資格取得届は、自社の従業員を雇用保険へ加入させるために提出する書類です。事業規模や業態に関わらず、全ての事業者には従業員を雇用保険に加入させる義務があります。新規で従業員を雇入れる場合は、入社手続きの一環として雇用保険加入資格取得届を作成しましょう。
既存の従業員が雇用契約変更により、新たに要件を満たす場合も雇用保険の加入申請が必要です。
1-1. 雇用保険被保険者取得届の入手方法と提出期限
雇用保険被保険者取得届は、ハローワークインターネットサービスからダウンロードすることができます。
提出期限は、従業員を雇い入れた月の翌月10日までです。4月1日入社であれば、5月10日までに雇用保険被保険者取得届を作成し提出しなくてはいけません。
万が一、未提出のまま雇用保険に加入させなかった場合は、雇用保険法の罰則「6ヶ月以上の懲役または30万円以下の罰金」が課せられる恐れもあるため注意が必要です。
1-2. 雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票とは
雇用保険被保険者取得届と混同しやすい書類の一つに、雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票があります。この書類は、従業員が自身の雇用保険加入状況を確認する際に使用する書類です。
ハローワークインターネットサービス内の同じ場所に書類がそれぞれ格納されているため、誤ってダウンロードしないように気をつけましょう。
2. 被保険者の種類と雇用保険の加入要件
雇用保険の被保険者は雇用期間や雇用形態に応じて4つに区分されており、各区分で雇用保険の加入要件が異なります。ここでは4種類の雇用保険被保険者の区分と、それぞれの加入要件について見ていきましょう。
2-1. 一般被保険者
事業者が常時雇用する従業員の多くは「一般被保険者」に分類されます。一般被保険者における雇用保険の加入要件は以下4つです。
- 雇用保険が適用される事業所と雇用関係がある
- 31日以上の雇用見込みがある
- 週の所定労働時間が20時間以上である
- 学生ではない
「31日以上の雇用見込み」と「週の所定労働時間が20時間以上」の項目は雇用保険の基本的な加入要件のため、しっかり押さえておきましょう。この要件に該当する従業員は、パートタイマーやアルバイトであっても雇用保険被保険者となります。
なお、「31日以上の雇用見込みがある」とは以下のいずれかに該当する場合です。
- 雇用期間の定めなく雇用される場合
- 契約上の雇用期間が31日以上ある場合
- 雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇い止が明示されていない場合
- 雇用契約に更新規定はないが、同様の契約を締結した労働者に31日以上の雇用実績がある場合
2-2. 高年齢被保険者
平成29年の法改正により雇用保険の適用範囲が拡大され、現在では65歳以上の従業員に対しても雇用保険の加入申請が必要です。以下の要件を満たす従業員は「高年齢被保険者」に区分され、新規雇用時には雇用保険の加入手続きが必要です。
- 一般被保険者としての雇用保険加入要件を満たしている
- その年の4月1日の時点で満64歳以上である
また、2022年1月の法改正でマルチジョブホルダー制度が施行になり、雇用保険への加入条件が緩和されているので、65歳以上の労働者のいる企業では注意が必要です。
雇用保険以外にも、2022年10月の法改正により、健康保険や厚生年金保険の適用範囲が拡大されるため、漏れなく対応しなくてはなりません。
そこで当サイトでは、社会保険手続きの詳細や法改正の内容、担当者が気を付けるポイントなどをまとめた資料を無料で配布しております。雇用保険や社会保険について不安な点があるご担当者様は、こちらから「社会保険手続きの教科書」をダウンロードしてご確認ください。
2-3. 短期雇用特例被保険者
「短期雇用特例被保険者」は季節労働者など特定の短期労働者を対象とする区分です。変則的な雇用形態であることから、雇用保険の加入要件も一般被保険者と異なります。短期雇用特例被保険者として雇用保険に加入する要件は以下の通りです。
- 季節的に雇用される従業員、または短期雇用を常態とする従業員である
- 4ヶ月を超え1年以内の期間を定めて雇用されている
- 週の所定労働時間が30時間以上である
「季節的に雇用される従業員」とは季節的な要因に応じて入職・離職する労働者を指し、雇用期間が1年未満であることが原則です。例として、海の家やスキー場など特定の季節のみ営業する施設で働く従業員が挙げられます。
「短期雇用を常態とする従業員」は異なる会社で1年未満の期間での入職・離職を繰り返し、以降も同様の雇用形態を希望する労働者のことです。転職を繰り返していても、本人が長期雇用を希望する場合は該当しません。
なお、同一の事業所で継続雇用され、雇用期間が1年を超えた場合は一般被保険者に区分されます。
2-4. 日雇労働被保険者
日雇労働者であってもハローワークの認可を受ければ雇用保険に加入できます。日雇労働者のうち日雇労働被保険者として認定されるのは以下のいずれかに該当する者です。
- 適用区域内に居住し、適用事業に雇用される者
- 適用区域外の地域に居住し、適用区域内にある適用事業に雇用される者
- 上記以外の者であってハローワークの認可を受けた者
事業者は賃金支払い時に従業員が持つ日雇労働被保険者手帳に雇用保険印紙を貼付し、あらかじめ届出した印影の消印をもって保険料を納付します。なお、雇用保険印紙の購入は事前にハローワークへの届出が必要です。
日雇労働被保険者手帳を所持していない労働者を雇用した場合は、該当の労働者の居住地を管轄するハローワークに雇用保険被保険者資格取得届を提出するとともに、労働者に対して被保険者手帳の交付を受けるよう指導しましょう。
関連記事:雇用保険の加入条件とは?雇用形態ごとのケースや手続き方法について
3. 雇用保険被保険者資格取得届の書き方・記入例
雇用保険被保険者資格取得届は、様式が定期的に更新されます。本章では、2024年5月現在ハローワークで受け取ることができる資格取得届を参考に、項目をご紹介します。
[1]個人番号
[2]被保険者番号
[3]取得区分
[4]被保険者氏名
[5]変更後の氏名
[6]性別
[7]生年月日
[8]事業所番号
[9]被保険者となったことの原因
[10]賃金
[11]資格取得年月日
[12]雇用形態
[13]職種
[14]就職経路
[15]1週間の所定労働時間
[16]契約期間の定め
[17~23]「17欄から23欄までは、被保険者が外国人の場合のみ記入してください。」の箇所
このように記載する必要のある項目は一見多く見えますが、内容に不備があると再提出になってしまいますのでご注意ください。
各項目の詳しい記載内容は、以下の関連記事に記載しておりますのでご確認ください。
関連記事:雇用保険被保険者資格取得届の記入例・書き方や提出先を分かりやすく解説
関連記事:雇用保険被保険者資格取得届の職種欄の書き方
関連記事:雇用保険被保険者資格取得届の賃金欄に記入する内容について
4. 雇用保険被保険者資格取得届の記入時の注意点
雇用保険被保険者資格取得届は記入項目が多いものの、書式自体は複雑なものではありません。ここでは、雇用保険被保険者資格取得届の記入で注意すべきポイントをピックアップして解説します。
4-1. 被保険者のマイナンバーが必要
雇用保険被保険者資格取得届には、被保険者の個人番号(マイナンバー)を記入する欄があります。被保険者本人に使用目的を明らかにしたうえで、マイナンバーカードのコピーや個人番号記載の住民票等を提出してもらいましょう。
4-2. 資格取得年月日の記載に注意する
雇用保険の資格取得年月日には、雇用契約期間の初日を記載するのがルールです。雇用契約期間の初日が土日・祝日など会社の所定休日に該当していても、日付をずらさずに記入します。
また、試用期間を設けている場合にも注意が必要です。本採用日を書いてしまいがちですが、試用期間中であっても雇用保険の資格条件を満たしていれば、試用期間の開始日を記載しなくてはいけません。
4-3. 資格喪失から7年以上経過した場合の取得区分は「新規」
取得区分は、初めて雇用保険に加入する場合は「新規」、以前に加入履歴がある場合は「再取得」にチェックを入れてください。なお、前回の雇用保険資格喪失から7年以上経過している場合は「新規」にチェックを入れましょう。
4-4. 書式をダウンロードする場合はルール厳守
雇用保険被保険者資格取得届の書式はハローワークで入手するほか、ハローワークのホームページからダウンロードして印刷もできます。ただし、規定のルールで印刷されていない書類は無効となるため、必ず以下のポイントが守られているかを確認してください。
- 用紙はA4サイズで印刷する
- 印刷倍率は等倍(100%)とする
- 書式の左上・右上・右下の端にある■マークが印刷されている
- 印刷が傾いていない
- 印刷が2重にぶれていない
4-5. 記入内容を間違えた場合は訂正してハローワークに再申請
雇用保険被保険者資格取得(喪失)届の申請中、あるいは受理後に「雇用保険被保険者証」などを従業員に渡しときに記載の誤りを見つけた場合は、「雇用保険被保険者資格取得・喪失等届訂正願」とよばれる申請書で訂正手続きをおこなう必要があります。
こちらの訂正願については、各管轄のハローワークによって項目が異なる場合がありますので、まずは事業所のある管轄のハローワークに連絡して、書類の入手方法を確認した上で書類を用意し、必要な項目を記載の上ハローワークで申請をおこないましょう。
関連記事:雇用保険被保険者資格取得届の記入を間違えたときの訂正方法
4-6. 期限を大幅に遅れた場合は遅延証明書の提出が必要
雇用保険被保険者資格取得届は、事実発生翌日から翌月10日を提出期限として、管轄のハローワークまで提出する必要があります。
もしこの期限を大幅に遅れてしまった場合、雇用保険被保険者資格取得届の遅延証明書を作成し、雇用保険被保険者資格取得届と一緒に提出する必要があります。遅延証明書を提出すべき遅延の期限は、管轄のハローワークごとに異なりますが、原則、半年以上遅れた場合に提出が必要だと覚えておきましょう。
関連記事:雇用保険被保険者資格取得届の遅延理由書の書き方や例文を紹介
5. 雇用保険被保険者資格取得届の添付書類
雇用保険の新規加入申請は、原則として雇用保険被保険者資格取得届の提出のみで完了します。ハローワークから特別な求めがない限り、他の書類を添付する必要はありません。
ハローワークが添付書類の提出を求めるケースとしては「事業者として初めて雇用保険の加入申請をする場合」や「保険料の支払いを滞納している場合」、「提出した雇用保険被保険者加入資格取得届の内容に矛盾点がある場合」などが挙げられます。
この場合、提出を求められる主な書類は以下の通りです。
- 賃金台帳
- 労働者名簿
- 出勤簿やタイムカード
- 雇用契約書や就業規則
- 従業員の雇い入れ事実を確認できるもの(社会保険の資格取得に関する書類など)
6. 雇用保険被保険者資格取得届の提出方法
雇用保険被保険者資格取得届の提出方法はハローワークの窓口に持参するほか、郵送も可能です。近年では手続き簡略化のための電子申請も推奨されています。
ここでは、持参・郵送・電子申請の3つの提出方法についてご紹介します。
6-1. 管轄のハローワークに持参する・郵送する
ハローワークは事業所の所在地により管轄が異なるため、自社の管轄となるハローワークはあらかじめ確認しておきましょう。
窓口へ直接持参する場合は受付時間内でなければ提出できません。また、時期によっては窓口が込み合っており、受付に時間が掛かる場合もあります。
提出を手短に済ませたいのであれば管轄のハローワークへの郵送も可能です。申請期日に間に合うよう、余裕のあるスケジュールで発送しましょう。
関連記事:雇用保険被保険者資格取得届の郵送方法や他の申請方法について
6-2. 電子申請を利用する
現在、政府は行政手続きの電子申請を推奨しています。雇用保険被保険者資格取得届の申請についても政府のポータルサイトである「e-GOV」から電子申請が可能です。
電子申請を利用するメリットとして以下の点が挙げられます。
- 24時間いつでも申請できる
- ペーパーレスで書類の作成が不要
- マイページで申請状況を確認できる
- パソコン上で申請手続きが完了する
- 申請コスト(用紙代、交通費、郵送代など)が削減できる
なお、雇用保険被保険者資格取得届の電子申請は、e-GOVのアカウント登録のほか電子証明書が必要です。電子証明書はe-Govでの動作が保証されている認証局に発行を依頼しましょう。
関連記事:雇用保険被保険者資格取得届の電子申請のメリットや手続きの流れ
7. 電子契約で雇用保険被保険者資格届の申請効率化を図ろう
雇用保険は要件を満たす全ての従業員に加入が義務付けられており、事業者は適切に加入申請を実施しなければなりません。特に従業員数が多い事業所では雇用保険被保険者資格取得届を作成・提出する機会が増大します。電子申請を有効活用し、申請業務の効率化を図りましょう。
関連記事:雇用保険被保険者資格喪失届が必要になるケースや書き方を解説
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