社会保険の加入条件は?労働時間を満たさない場合の対応策まで説明!
更新日: 2025.1.14
公開日: 2022.1.27
OHSUGI
狭義の社会保険(健康保険と厚生年金保険)は、適用事業所で勤めていて、常に使用される従業員は必ず加入が必要です。また、パート従業員なども一定の条件を満たすと加入する必要があります。
さらに、2022年10月、2024年10月の法改正により社会保険への加入が義務化される従業員の範囲が広がります。この記事では、社会保険に加入が必要な会社・従業員の条件や、実際に必要な手続き、未加入の罰則を解説します。
▼社会保険の概要や加入条件、法改正の内容など、社会保険の基礎知識から詳しく知りたい方はこちら
社会保険とは?概要や手続き・必要書類、加入条件、法改正の内容を徹底解説
「パートやアルバイトの社会保険について加入条件が複雑でわからりづらい」
「従業員から社会保険の質問や相談がきても、自信をもって回答できないことがある」
「社会保険の加入条件を一時的に満たさない場合の対応がわからない」
このように社会保険の加入に関して、正しく理解できているか不安な方もいらっしゃるのではないでしょうか。
さらに2024年10月には法改正により適用条件が変更されます。そこで、当サイトでは最新の法改正に対応した「社会保険の加入条件ガイドブック」を無料配布しております。
社会保険の制度概要や加入手続きの解説はもちろん、加入条件をわかりやすく図解しています。
さらによくある細かい質問集をQ&A形式で紹介しているため、従業員への説明資料としても活用できる資料になっております。
適切に社会保険の加入を案内したい方は、こちらから無料でダウンロードしてご覧ください。
目次 [非表示]
1. 社会保険加入の基本条件
社会保険加入の基本条件は、従業員が安心して働ける環境を提供するために重要な制度です。社会保険には主に健康保険と厚生年金保険が含まれ、一定の要件を満たす場合には加入が義務付けられます。
まず、企業形態に関わらず、株式会社や合同会社、社会福祉法人などの法人事業主は、雇用する従業員の人数にかかわらず強制的に社会保険への加入義務があります。また、個人事業主も常時5人以上の従業員を雇用している場合、農林漁業やサービス業といった特定の業種を除いて、同様に加入義務が発生します。
加入条件として、週の労働時間と月の労働日数が基準になります。具体的には、一般従業員の所定労働時間の4分の3以上働くことが求められます。例えば、一般的に1週間の所定労働時間が40時間、1ヶ月の所定労働日数が20日であれば、社会保険の加入条件は週30時間以上かつ月15日以上働くことになります。この要件を満たす従業員は、パートタイマーやアルバイトであっても必ず社会保険に加入しなければなりません。
このように、具体的な条件を理解することが経営者や人事担当者の重要な責務となります。社会保険の加入は従業員の権利や雇用の安定に直結しますので、事業所での労働時間の設定や雇用形態を適切に考慮することが求められます。
関連記事:社会保険適用事務所とは?社会保険加入要件や遡及適用について解説
関連記事:社会保険の扶養条件とは?手続きや必要書類、扶養のメリットを解説!
2. 雇用形態別の社会保険の加入条件
健康保険・厚生年金保険の加入条件は以下の通りです。
- 常時雇用されている従業員
- 週の所定労働時間が常時雇用されている従業員の4分の3以上かつ1ヵ月の所定労働日数が常時雇用されている従業員の4分の3以上である者
このほか、パートやアルバイトの従業員なども条件に応じて加入対象となります。常時雇用されている従業員以外に対象となる条件をパート・アルバイト従業員と派遣社員に分けて解説します。
2-1. パート、アルバイトの社会保険加入条件
社会保険は正社員でなくとも、一定の条件を満たすパートやアルバイトの従業員に加入が義務付けられています。
「所定労働時間・所定労働日数が正社員の4分の3以上の者」に該当する労働者がいた場合、報酬額や雇用形態などに関係なく社会保険へ加入させましょう。
また、所定労働時間・所定労働日数が正社員の4分の3「未満」であっても、以下に該当すると社会保険への加入が必要になります。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 2ヵ月を超える雇用の見込みがある
- 月額賃金(所定)が8.8万円以上(年収約106万円)
- 学生以外(定時制や夜学等を除く)
- 従業員が101人以上の事業所に勤めている
令和4年10月より「1年以上の継続勤務が見込まれる」という条件がなくなりました。加えて、適用となる事業所規模が令和4年10月に501名以上から101名以上に変更、2024年(令和6年)10月にはさらに51名以上へ変更となるため、注意しましょう。50人以下であってもパートやアルバイトが希望して労使合意をすれば、加入可能です。現在雇用している従業員が50人以下であっても将来的に51人以上になる可能性があるため、事前に加入条件を把握しておきましょう。
参考:厚生労働省 | 従業員数500人以下の事業主のみなさまへ
参考:「令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」|厚生労働省
社会保険は複雑な制度となっているため、説明する際も伝わりづらいという問題が発生することが考えられます。そこで当サイトでは、社会保険の基礎知識から法改正の概要を解説した資料を無料で配布しております。手続き時に担当者がすべきことも解説しておりますので、社会保険について不安な点があるご担当者様は、こちらから「社会保険の加入条件ガイドブック」をダウンロードしてご確認ください。
2-2. 派遣労働者の社会保険加入条件
派遣労働者の社会保険の加入条件も、フルタイムやパート・アルバイト従業員と同じ加入条件となります。
フルタイムと同じ労働時間である場合、もしくは「1週間の所定労働時間が、正社員の4分の3以上(一般的に週30時間以上)であること」「契約期間が2ヵ月以上であること」を満たす場合は社会保険への加入が必要です。
この条件を満たさない場合に、先ほど解説したの5つの条件を満たしているか確認します。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 2ヵ月を超える雇用の見込みがある
- 月額賃金(所定)が8.8万円以上
- 学生以外(定時制や夜学等を除く)
- 従業員が101人以上の事業所に勤めている
法改正により社会保険の適用範囲が拡大されるため、法改正後に条件を満たす従業員には、あらかじめコミュニケーションを取っておきましょう。
とはいえ、社会保険の加入条件は、事業所規模や労働者の勤務状況によっても変わってくるので、文字だけで理解するのは難しく、間違った理解をしてしまう可能性もあります。
当サイトで無料配布している「社会保険の加入条件ガイドブック」では、加入条件を図を用いてわかりやすく解説しており、社会保険に加入するかしないかを容易に判断できます。また最近の法改正による加入条件の変更や、従業員からあがってくる質問とその答えもまとめているので担当者にとっては大変参考になる資料となっております。興味のある方はこちらから無料でダウンロードしてご覧ください。
関連記事:法改正による社会保険適用拡大で企業側が対応すべきポイントとは
3. 社会保険加入のメリットとデメリット
社会保険加入には、企業側と従業員側それぞれにメリットとデメリットがあります。
企業にとって、従業員を社会保険に加入させると保険料を負担する必要が出てきますし、従業員からは「労働時間は増やしたいが、社会保険には加入したくない」というような相談を受けることもあるでしょう。
このように、社会保険の加入には多くのメリットとデメリットがあり、企業と従業員双方が十分な理解を持った上で判断する必要があります。加入を促すかどうか、しっかりと検討するため、メリットとデメリットを理解しておきましょう。
3-1. 社会保険加入のメリット
社会保険に加入することは、企業と労働者双方に多くのメリットがあります。まず、企業側のメリットとして、従業員の健康と安心が確保されることが挙げられます。健康管理が行き届くことで、労働者のモチベーションが向上し、仕事の効率も上がります。また、社会保険を充実させた企業は、従業員にとって安心できる職場環境を提供することができ、結果的に企業の信頼性も向上します。
離職率の低下も期待できます。社会保険によって、従業員は自分の健康や将来に対する不安を軽減でき、長期的な雇用関係の維持につながります。企業は優秀な人材を確保しやすくなり、経営の安定化にも寄与します。
一方で、労働者にとっても社会保険には重要なメリットがあります。まず、健康保険によって、病気やけがをした際の医療費の負担が軽減されます。自己負担が少なく、必要な医療を受けやすくなるため、健康な生活を維持しやすくなります。
また、厚生年金保険に加入することで、将来の年金受給額が増加します。これは老後の生活資金をより安定させる要素となり、安心して将来を迎える手助けとなります。さらに、雇用保険に加入することで、万が一失業した場合でも生活支援が受けられるため、経済的な不安を和らげることができます。
このように、社会保険への加入は、企業と労働者にとって相互に利益をもたらす重要な制度です。各自の立場から、しっかりとこの制度を活用することが望ましいと言えます。
3-2. 社会保険加入のデメリット
社会保険加入には、企業と労働者双方にさまざまなデメリットがあります。
まず、企業側のデメリットとして、社会保険料の負担が増加する点が挙げられます。企業は、労働者一人当たりの社会保険料を半分負担する必要があります。このため、従業員数が増えると、その分コストが上昇します。特に中小企業にとっては、この負担が経済的に厳しい状況を生む可能性があります。例えば、従業員10人の企業が社会保険に加入した場合、年々上昇していく保険料によって、年数斤で数十万円の負担が増えることも珍しくありません。
次に、労働者側のデメリットについて考えましょう。社会保険料は、手取り給与から控除されるため、実際に手元に残る給与が減少することになります。特に短時間労働者やパートタイムで働く人々にとって、保険料負担が相対的に大きく感じられる場合があります。具体的には、週に20時間働くパート労働者が加入する場合、その社会保険料が給与に占める割合が高く、生活が圧迫されることがあります。
このように、社会保険への加入は企業と労働者にとって重要な問題であり、双方の負担をよく理解し、労働条件を整理しておくことが求められます。社会保険制度自体は、安心して働ける環境を整えるための重要な仕組みですが、その加入によるデメリットも十分考慮すべきです。
関連記事:社会保険未加入での罰則とは?加入が義務付けられている企業や従業員の条件も解説
4. 社会保険の加入条件を満たさない場合の対応
社会保険の加入条件を満たさない場合には、いくつかの対応策があります。ケースごとに対応方法を押さえておきましょう。
4-1. 30時間未満でも社会保険に加入したい場合の対応
まず、30時間未満であっても加入を希望する従業員には、任意特定適用事業所の利用を提案できます。これにより、パートタイマーでも加入が可能となります。また、個別契約の見直しを通じて、労働時間の調整を図ることも選択肢の一つです。それぞれ詳しく説明します。
任意特定適用事業所の利用
任意特定適用事業所の利用は、短時間労働者が社会保険に加入するための重要な選択肢です。この制度は、厚生年金保険の被保険者数が100人以下(令和6年10月以降は50人以下)である事業所に適用され、労使の合意に基づいて申し出を行うことで対象となります。
具体的には、労働時間が30時間未満である短時間労働者が、社会保険に加入するためには、1週間の所定労働時間が20時間以上であること、及び月額8.8万円以上の賃金を得ている必要があります。また、学生でないことも条件の一つです。
この制度を利用することで、例えば、週20時間働くパートタイマーが月に8.8万円以上の賃金を受け取っている場合、通常ならば社会保険に加入できませんが、任意特定適用事業所として手続きを行うことで社会保険に加入可能になります。これにより、就業者は将来の年金受給権や医療保険などの社会保障を確保することができるのです。
申請手続きについては、日本年金機構のウェブサイトから申請書類をダウンロードし、必要事項を記入の上、提出することで開始できます。このプロセスを円滑に進めるためには、事前に労使間での合意をしっかりと行うことが重要です。任意特定適用事業所を利用することは、短時間労働者の社会保険加入の道を開く有効な方法です。
個別契約の見直し
個別契約の見直しは、社会保険の加入条件を満たすための重要な対応策です。労働時間が週30時間未満の場合、社会保険に加入することができませんが、個別契約を見直すことでこの条件をクリアすることが可能になります。
具体的には、現在の労働条件を再評価し、従業員と企業間で合意の上、労働時間を増加させることが考えられます。例えば、月曜から金曜までの週5日勤務を基にしている場合、時間の調整を行い、例えば曜日や時間の配分を見直して、週30時間以上を働くことができるようにすることが一つの方法です。
また、労働条件の見直しには従業員のライフスタイルや他の業務との兼ね合いを踏まえることが大切です。従業員が時間外勤務の希望に基づいて働く意欲を持っている場合、労働時間を調整することで、双方にとってメリットのある条件にすることが可能です。こうした意見交換を行うことで、合意を得やすくなります。
ただし、個別契約の見直しを行う際は、労働法や規則に従わなければなりません。また、企業が労働時間を引き上げることで、業務負担が従業員にかかりすぎないように配慮することも必要です。適切な見直しを行うことで、会社全体の生産性も向上させることが期待できます。
このように、個別契約を見直すことで、ただ労働時間を増やすだけでなく、働きやすい環境を整えることにもつながるため、企業と従業員の双方にとって良い結果をもたらすことができるでしょう。
4-2. 週30時間を超える月があったりなかったりする場合の対応
週30時間を超える月があったりなかったりする場合、社会保険の加入条件についての考え方が重要です。このような状況においては、まず雇用契約書の内容を確認することが基本となります。具体的には、契約書に記載された労働条件が社会保険の加入要件を満たしているかどうかを判断します。
月によって稼働時間が変動する場合でも、社会保険加入に関する手続きは、その時点での労働状況だけではないことを理解しておく必要があります。たとえば、月のうち数週間は30時間を超え、他の週では30時間未満であっても、契約書上で社会保険の適用が明記されている場合、従業員は社会保険の被保険者としての資格を持ち続けます。このような場合、一貫した加入条件が求められるため、契約内容が安定的に保たれることが求められます。
さらに、社会保険の加入条件には、労働時間だけでなく、雇用形態や職種も影響を与えます。例えば、パートタイムの従業員であっても、契約上で定められた労働時間が30時間を超えるように設定されている場合、社会保険への加入は必要です。そのため、経営者側でも労働時間の把握や契約内容の見直しが求められます。
また、労働者側も自己の働き方を見直し、安定した雇用環境を確保することが重要です。どちらの立場でも、社会保険の内容について理解し、必要に応じた対応を協議することが必要です。このような取り組みを通じて、両者の信頼関係を築き、労働環境を改善するための一歩となります。
参考:日本年金機構 | 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集
5. 社会保険は従業員個別の条件を把握し、正しく加入しよう
社会保険は、正社員のみ加入すればよいものではなく、パートやアルバイトも条件を満たすのであれば加入させる必要があります。
また、2022年10月、2024年10月の法改正では、今まで加入が必要なかった従業員を社会保険に加入させる必要が出てきます。
未加入のままの場合、罰則が設けられているため、従業員一人ひとりの雇用状況を把握して適切な社会保険の手続きをしましょう。
「パートやアルバイトの社会保険について加入条件が複雑でわからりづらい」
「従業員から社会保険の質問や相談がきても、自信をもって回答できないことがある」
「社会保険の加入条件を一時的に満たさない場合の対応がわからない」
このように社会保険の加入に関して、正しく理解できているか不安な方もいらっしゃるのではないでしょうか。
さらに2024年10月には法改正により適用条件が変更されます。そこで、当サイトでは最新の法改正に対応した「社会保険の加入条件ガイドブック」を無料配布しております。
社会保険の制度概要や加入手続きの解説はもちろん、加入条件をわかりやすく図解しています。
さらによくある細かい質問集をQ&A形式で紹介しているため、従業員への説明資料としても活用できる資料になっております。
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