社会保険の随時改定とは?標準報酬月額を改定する条件やタイミング、手続き方法を解説 - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

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社会保険の随時改定とは?標準報酬月額を改定する条件やタイミング、手続き方法を解説

家族を守る様子

定期的な見直し以外で行う標準報酬月額の改定を「随時改定」といいます。
この社会保険の随時改定は誰でも実施できるわけではなく、3つの条件をすべて満たさなければなりません。
そこで本記事では、随時改定の基礎概要、実施するための条件、書き方や提出方法を解説します。

▼社会保険の概要や加入条件、雇用保険との違いなどを詳しく知りたい方はこちら
社会保険とは?雇用保険との違いや種類、加入するメリットを徹底解説

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年度更新定時決定随時改定と、労務担当者は給与の改定と並行して、年間業務として保険料の更新に関わる業務を行う必要があります。

一方でこのような手続きは、実際に従業員の給与から控除する社会保険料の金額にダイレクトに紐づくため、書類の記入内容や提出はミスなく確実に処理しなければなりません。しかし、書類の記入欄は項目が多く複雑で、さらに申請書や届出にはそれぞれ期限があり、提出が遅れた場合にはペナルティが課せられるケースもあります。

当サイトでは社会保険の手続きをミスなく確実に完了させたい方に向け、「各種保険料の更新・改定業務のマニュアル」を無料配布しております。

ガイドブックでは、年度更新の申請書から定時決定における算定基礎届随時改定時の月額変更届、さらには賞与を支給した場合の支払報告書書き方から、記入例、提出方法までまでを網羅的にわかりやすくまとめているため、「社会保険の更新・改定業務のマニュアルがほしい」という方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。

1. そもそも社会保険料はどうやって算出されるの?

仕事に打ち込む様子社会保険とは、医療や介護といった社会保険制度を維持運営するためのものです。それに伴い、社会保険料を従業員と事業主で労使折半をして収めるものですが、この社会保険料はどのように算出されているのでしょうか。まずは社会保険料の算出方法について説明します。

1-1. 社会保険料とは

社会保険料とは、健康保険、厚生年金保険、雇用保険、介護保険や労働者災害補償保険(労災保険)などの公共保険制度への拠出金を指します。これらの保険料は、被保険者の給与を基に計算され、企業と従業員が折半して納付します。正社員やフルタイム(週所定労働時間および月所定労働日数がフルタイムの4分の3以上の場合も含む)で働く方は、社会保険の加入対象となり、社会保険料を支払わなければなりません。また、一定規模の会社で働くパート・アルバイトの方も、要件を満たせば加入対象となります。社会保険料を払い続けることで、病気や怪我、老後の年金、失業した場合の支援など、さまざまなリスクに対する保障を受けることができます。

1-2. 標準報酬月額を用いて算出する

社会保険料は標準報酬月額を基に算出されます。各種社会保険のうち、医療(健康)保険や介護保険、厚生年金保険の社会保険料は、標準報酬月額を用いて計算します。標準報酬月額は、従業員の給与などの平均額を各等級で分類したもので、被保険者の報酬を等級別に分類し、その等級に対応する報酬額を設定したものです。具体的には、給与明細の基本給、役職手当、通勤手当など固定的な手当が含まれます。

標準報酬月額は対象年の9月から翌年の8月までを一単位として算出され、医療(健康)保険と介護保険の標準報酬月額は5万8千円(第1級)から139万円(第50級)の全50等級、厚生年金保険では8万8千円(第1級)から65万円(第32級)までの全32等級に分類されています。ただし、労働保険(雇用保険と労災保険)は標準報酬月額を用いません。

1-3. 標準報酬月額が確定するタイミング

この社会保険料を算出するにあたって重要な指標となる標準報酬月額が確定するタイミングは大きく分けて3つのタイミングがあります。

  • 資格取得時の決定
  • 定時決定
  • 随時改定

それぞれどのような内容なのか、詳しく説明します。

資格取得時の決定

資格取得時の決定として、従業員を雇った場合は労働契約に基づいて標準報酬月額を決定し、その年の8月まで使用します。しかし、6月1日から12月31日までに資格を取得した際には、翌年の8月までの使用となります。さらに資格取得者を把握する上で、加入対象者となる条件をおさえておくことが重要です。

具体的には所定労働時間や月額賃金をもとに判断されますが、このような加入対象者の条件や具体的な手続きを確認しておきたい方に向けて、当サイトではわかりやすい社会保険手続きに関するマニュアルを配布しています。

社会保険手続きの教科書として、資格取得から喪失時の手続きを正しく理解したい方はこちらからダウンロードの上、参考としてお役立てください。

定時改定

毎年、7月1日になるまでの4〜6月に支払った報酬月額が事業主から提出され、このときの報酬総額を基にして標準報酬月額が決定されます。
このことを「定時改定」もしくは「定時決定」といい、原則として同年9月から翌年8月まで使用します。

なお、この定時改定の対象者は7月1日時点での被保険者の従業員すべてです。
育児休暇や介護休暇などで休業中の従業員も含まれるため注意しましょう。
ただし、すでに標準報酬月額が翌年8月まで決まっているという理由から、以下の従業員は対象外となります。

  • 6月1日以降に被保険者となった人
  • 6月30日以前に退職した人
  • 7月に月額変更届を提出する人

▼定時決定について詳しく確認したい方はこちらをご覧ください
社会保険の定時決定(算定基礎届)とは?必要な書類や作成時の注意点

随時改定

随時改定とは、上で説明した定時決定を待たずに給与が変動した際に標準報酬月額を変更することを言います。いつどのように行うものなのか、随時改定について、次の章で詳しく説明します。

2. 社会保険の随時改定とは

プランを変える様子

社会保険料は賃金に応じて負担額が決められているため、毎年4〜6月までの給与額をベースにして定期的な見直しが入ります。しかし、毎月支給される賃金の手当などに変更があった場合、定期的な見直しを待たずに標準報酬月額を改定することがあります。

この標準報酬月額の改定が「社会保険の随時改定」といい、標準報酬月額を変更する際の届出を「月額変更届」といいます。

2-1. 月額変更届とは

月額変更届とは、健康保険と厚生年金保険に関する書類で、「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」の略称です。この届出は、被保険者の昇給や雇用契約の変更による給与の変動など、報酬額が変わる際の手続きに使用されます。月額変更届は、この随時改定の手続きを行う際に必要な書類で、従業員の報酬変更が年金事務所に報告され、新しい標準報酬月額が設定されるために使用されます。

2-2. 社会保険の随時改定はいつおこなう?

資格取得時や定時改定では、決まった時期に標準報酬月額が確定しますが、「随時改定」は時期を問わず、固定的賃金が大きく変動する際に見直しが入ります。この「随時改定」で見直された標準報酬月額は次の定時改定まで有効です。

3. 社会保険において随時改定の対象となるための条件3つ

check list

ここまでにお話した社会保険の随時改定は、以下の条件をすべて満たした場合にのみ行われます。先に全体の流れを下記の画像を参考に確認しておきましょう。

月額変更届

出典:日本年金機構「随時改定と月額変更届

正しく随時改定を実施するためにも、本章にて理解しましょう。

3-1. 昇給・降給等により固定的賃金が変動する場合

随時改定を行うための条件1つ目は、昇給・降給等により固定的賃金が変動する場合です。
従業員の報酬は大きく分けて固定的賃金と非固定的賃金の2つがあります。

固定的賃金とは、従業員の労働時間や実績に関係なく、基本給や各種手当などの支給額が決まっているものです。
一方、非固定的賃金は労働時間や実績によって支給額が変動するものであり、残業手当や夜勤手当などが非固定的賃金に含まれます。

変動した理由が非固定的賃金のみである場合は、随時改定を行うための条件に該当しませんが、固定的賃金の金額が大きく変動するケースでは随時改定の検討が必要です。
固定的賃金の変動については以下のようなパターンがあります。

  • 基本給の昇給・降給
  • 給与体系の変更
  • 基礎単価の変更
  • 歩合率の変更
  • 各種手当における支給額の変更

関連記事:固定的賃金とは?非固定的賃金との違いや変更手続きの方法を詳しく解説

3-2. 3ヶ月間の支払基礎日数が17日以上である場合

随時改定を行うための条件2つ目として、3ヶ月間の支払基礎日数が17日以上である場合があげられます。

支払基礎日数とは、報酬を計算する際の基礎となる日数のことを指します。この支払基礎日数は賃金締日によって変動するものであり、有給休暇は含めるものの欠勤日は含めません。

例えば、定時決定を定める期間である4月~6月を例にとると、給与締め日により支払基礎日数は次のようになります。

● 毎月15日締めの会社

  • 4月の対象期間:3月16日~4月15日 = 支払基礎日数31日
  • 5月の対象期間:4月16日~5月15日 = 支払基礎日数30日
  • 6月の対象期間:5月16日~6月15日 = 支払基礎日数31日

● 毎月末締めの会社

  • 4月の対象期間:4月1日~4月30日 = 支払基礎日数30日
  • 5月の対象期間:5月1日~5月31日 = 支払基礎日数31日
  • 6月の対象期間:6月1日~6月30日 = 支払基礎日数30日

ただし、特定適用事業所などによる短時間労働者の場合は11日以上が条件となります。

なお、短時間労働者の定義は以下の通りです。

「特定適用事業所」「任意特定適用事業所」または「国・地方公共団体に属する事業所」に勤務する、通常の労働者の1週間の所定労働時間または、1月の所定労働日数が4分の3未満である方で、以下の(1)から(3)のすべてに該当する方が対象です。
(1)週の所定労働時間が20時間以上あること
(2)賃金の月額が8.8万円以上であること
(3)学生でないこと

引用:定時決定(算定基礎届)|日本年金機構

3-3. 変更前後で2等級以上の差がある場合

随時改定を行うための条件3つ目は、変更前後で2等級以上の差がある場合です(例外として最高等級、最低等級の場合には1等級の差でも該当する場合があります)。
固定的賃金が変動したことにより、標準報酬月額が改定前と改定後で2等級以上の差が生じる場合は対象となります。
ただし、あくまで固定的賃金の差であるため、非固定的賃金は対象にはなりません。

4. 随時改定をおこなう上での注意点

ビックリマーク

随時改定を行う条件は先ほど3つあると解説しましたが、一定の条件を満たせば随時改定の対象外になるケースが存在します。また、固定的賃金と言っても具体的にはどのような項目が含まれ、非固定的賃金にはどのような項目が含まれるのかなど、随時改定の条件を満たすか考える際に勘違いしやすい注意点がありますので、本章ではそちらを解説します。

4-1. 随時改定の対象にならない被保険者

随時改定の対象にならない被保険者としては、以下のケースが挙げられます。

  • 休職しており、休職給を受けている場合
  • 固定的賃金は増加したが、残業手当等の非固定的賃金が減少したことで、2等級以上の差が生じている場合

このようなケースで随時改定の対象外となります。

さらに、注意しなければいけないのが逆に固定的賃金は減少したが、非固定的賃金が増加したことで、2等級以上の差が生じている場合も対象外です。これらのケースでは、保険料が適正に反映されないため、慎重な判断が求められます。

4-2. 固定的賃金には通勤手当などの一部手当を含む

また固定的賃金においても注意が必要です。固定的賃金と言っても、具体的には自社の場合どの手当や支給項目を含むのかわからなくなってしまう担当の方は多いのではないでしょうか。固定的賃金は、ある給与計算期間において、毎月必ず同じ金額や単価が支払われる支給項目のことを言います。具体的には、以下のようなものが含まれます。

  • 基本給
  • 家族手当
  • 通勤手当

などの給与支給項目が固定的賃金に含まれます。

4-3. 残業代などの非固定的賃金の変動は対象外

上述したように、標準報酬月額の算出には固定的賃金を用います。そのため、非固定的賃金は含まないということを覚えておきましょう。

非固定的賃金の具体的な項目は、

  • 残業代
  • 精皆勤手当て
  • 育児・介護休業手当
    などがあります。

定時決定の期間外において、あからさまに所得が増えた時期がありましたら、それが昇格や降格などが要因なのか、それとも残業時間が長くなったことが要因なのかなどの理由を明らかにしたのちに、随時改定に該当するのか確認しましょう。

5. 随時改定後に標準報酬月額が反映されるタイミングはいつから?

書類随時改定とは別に定時決定という標準報酬月額の決め方があり、原則として年1回、4月から6月の3ヶ月の報酬額をもとに算出します。

このことから、随時改定で決まった標準報酬月額は、届出を提出した月の4か月後から変更されます。

また、随時改定で決まった標準報酬月額は、変更した月によって採用される期間が異なります。

  1. 1月から6月の間に随時改定された場合:改定された月から同年8月まで採用
  2. 7月から12月の間に随時改定された場合:改定された月から翌年の8月まで採用

上記のように、定時決定の更新時期に合わせて随時改定の反映時期が決められております。

随時改定が反映されるまで3か月あるという点と、適用される期間が事ある点を忘れないようにしましょう。

6. 随時改定における「月額変更届」の書き方と手続方法

書類を確認する様子

最後に、社会保険の随時改定の手続き方法をみていきましょう。
これから手続きする予定の方は、ぜひ参考にしてみてください。

6-1. 月額変更届の入手方法

社会保険の随時改定は「月額変更届」の必要事項を記入して提出します。
この月額変更届の正式名称は「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届/厚生年金保険 70歳以上被用者月額変更届」であり、「月変(げっぺん)」ともいわれています。
月額変更届が手元にない場合は年金事務所や健康保険組合で入手できるほか、日本年金機構の公式サイトからダウンロード可能です。

なお、対象者が複数いる場合は1枚に5名までまとめて記載できます。

6-2. 月額変更届の書き方

月額変更届を入手したら、必要箇所に記入していきます。
月額変更届の書き方は下記をご参考ください。

  1. 提出日を記入する
  2. 提出者記入欄に届出事業所の情報を記入する
  3. 個人別記入欄の各項目にそれぞれ記入する

個人別記入欄は具体的に、被保険者の整理番号、氏名、生年月日、改定年月などを記入します。以下に例をあげます。

個人別記入欄の記載例

改定年月:標準報酬月額が改定される月を指し、変動後の「賃金を支払った月」から4カ月目を記載
給与支給月:変動後の賃金を支払った月から3カ月間を記載
通貨によるものの額:給与や手当など、名前を問わず対象の月に労働の報酬として金銭で支払われたすべての金額を記載
現物によるものの額:労働報酬として金銭以外で支払われるもの、たとえば食事、住宅、被服、定期券などを記載
修正平均額:昇給がさかのぼるため、対象月に差額分が含まれている場合、その差額を引いた平均額を記載
以上の手順に従って正確に月額変更届を作成することで、随時改定の手続きをスムーズに進行することができます。

なお、日本年金機構のホームページに記入例が用意されているため、はじめて記入する方は記入例を参考にしましょう。
参考:日本年金機構「随時改定と月額変更届

6-3. 月額変更届の提出方法

月額変更届の記入が終わったあとは、提出先を確認して提出しましょう。提出先は管轄の年金事務所や事務センターであり、提出方法は窓口に直接持参するほか、郵送や電子申請などがあげられます。

なお、2020年の4月から、特定の法人を対象に電子申請の義務化が始まっているので、自社が当てはまっているか確認したのちに申請方法を決めるようにしましょう。

上記の特定の法人とは、

  • 資本金、出資金または銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人
  • 相互会社
  • 投資法人
  • 特定目的会社
    のいずれかを指しています。

随時改定に該当している場合は速やかに提出する必要があるため、できるだけ早めに月額変更届を所定の場所に提出しましょう。

また、通常の随時改定であれば添付書類は不要ですが、「年間平均の保険者算定」を申請するときは以下の書類が追加で必要です。

・年間報酬の平均で算定することの申立書(随時改定用)
・健康保険厚生年金保険被保険者報酬月額変更届・保険者算定申立に係る例年の状況、標準報酬月額の比較及び被保険者の同意書(随時改定用)

これら書類は日本年金機構のホームページでダウンロードできます。

参考:日本年金機構「主な届書様式の一覧

6-4. 月額変更届を出さなかったらどうなる?遡及は?

月額変更届を提出しなかった場合、その後の影響は非常に大きいです。

提出漏れが発覚した際には、該当する月から差額を遡って支払う必要があり、従業員の等級が上がった場合は保険料の不足分が徴収されます。一方、等級が下がった場合には過払いが発生し、翌月以降の給与で調整が必要となります。

特に、長期間未提出である場合、年金事務所から催告状が届く可能性が高まり、応じなければ6か月以下の懲役または50万円の罰金が科されるリスクがあります。さらに、長期間の未提出や虚偽の届出が行われた場合には、年金事務所による立ち入り調査が実施されることも考えられます。

これは事業所だけでなく、被保険者である従業員にも大きな負担となるため、注意が必要です。

そのため、固定的賃金や契約内容の変更が生じた際には、随時改定に該当するかを速やかに確認し、必要に応じて月額変更届を迅速に提出することが重要です。

参考:厚生年金保険法|e-Gov法令検索

参考:健康保険法|e-Gov法令検索

7. 随時改定は定時決定を待たずに社会保険料を計算しなおすこと

書類を提出する様子

本記事では、随時改定の基礎概要、実施するための条件、書き方や提出方法を解説しました。
社会保険の随時改定は全員が実施できるわけではなく、3つの条件をすべて満たす必要があります。
また、月額変更届は早めの提出が推奨されているほか、複数書類を用意する場合もあるため注意が必要です。
そのため社会保険の随時改定に該当している方は、本記事の内容を参考にして速やかに手続きを行いましょう。

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