年末調整のやり直しを税務署から通知された!原因や影響、必要な手続きを解説
更新日: 2025.12.11 公開日: 2021.2.17 jinjer Blog 編集部

年末調整が終了してしばらく経ってから、税務署から年末調整をやり直すよう指摘を受ける場合があります。
この記事では、税務署から年末調整のやり直しを通知される原因や、会社・従業員への影響、必要な手続きについて解説します。税務署から指摘を受けても慌てないよう、やるべきことを押さえて冷静に対応しましょう。
年末調整の概要が知りたい方はこちらをあわせてご確認ください。
目次
令和7年度の税制改正によって、令和7年12月の年末調整から変更が生じます。また、令和7年11月20日に施行された通勤手当の非課税限度額の改正によって、新たに年末調整の対応が必要となるケースもあります。
- 「令和7年分の年末調整で提出する書類は?」
- 「年収の壁の引き上げで年末調整はどう変わった?」
- 「通勤手当の非課税限度額の改正で年末調整が必要になる従業員は?」
このような疑問をお持ちの方に向けて、令和7年分の年末調整に必要な書類から対象者、計算の流れまで、年末調整に関する基本的な業務を図解でわかりやすくまとめた資料を無料で配布しております。
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1. 税務署から年末調整のやり直し連絡はくる?


年末調整の申告内容ミスや、添付書類の漏れ、支払額の変更などにより、年末調整のやり直しについて税務署から連絡がくることがあります。
はじめに、税務署から年末調整のやり直しについて連絡がくるケースを解説します。どのようなパターンがあるか事前に把握し、万が一のときに備えましょう。
関連記事:年末調整の再調整は可能!方法やポイントをわかりやすく解説
2. 税務署から年末調整のやり直し連絡がくる6つのケース


年末調整のやり直しは、必ずしも会社の重大なミスが原因とは限りません。税務署は、会社から申告された源泉徴収票や法定調書などを照合し、内容が税額に影響している場合にのみ会社へ確認を入れます。
ここでは、税務署から年末調整のやり直し(再調整)を求められる主な6つのケースを解説します。
2-1. 年末調整後に支払額の変更があった(追加払い・精算)
年末調整後に賞与や残業代などの追加支給がその年の12月31日までにおこなわれた場合、その分だけ給与総額が増え、源泉所得税の額と年末調整結果が一致しなくなります。そのため、税務署から確認が入ることがあります。
例えば、次のようなケースが考えられます。
- 支払日を誤って「翌年扱い」にしてしまい、本来当年に計上すべき追加支給が漏れている
- 年末調整後の追加支給により、還付額と納付額の整合が合わなくなっている
源泉徴収票など法定調書を作成した後に追加支給が発生した場合は、書類を作成し直す必要があります。なお、年内に払う予定だった追加給与を翌年に支払った場合、その給与は翌年分の所得として扱われるため、その年の年末調整をやり直す必要はありません。
2-2. 扶養家族の異動があり申告内容と一致しなくなった
扶養控除は、その年の「12月31日時点の家族状況」で判定されます。そのため、年末調整の申告書を提出した後に従業員の家族構成が変わると、申告内容と実際の状況が一致しなくなることがあります。例えば、子どもの結婚や独立によって扶養から外れたり、新たに扶養対象となる家族が増えたりするケースです。
これらは申告ミスではありませんが、会社が変動を把握しないまま年末調整を完了すると、税務署が保有する住民票情報や所得情報とのあいだにずれが生じます。よって、税務署から扶養控除や配偶者(特別)控除があっているかと確認される場合があります。
申告書の回収後も、扶養家族の異動があれば速やかに申し出てもらう運用を整えておくことが重要です。
2-3. 給与所得控除や基礎控除など年税額の計算ミスがあった
申告内容に問題がなくても、控除額や所得金額の計算を誤ると、法定調書と源泉徴収票、実際の納付額の整合が取れなくなります。給与計算システムで自動計算をおこなっていても、設定漏れや入力ミスがあると誤差が生じやすく、税務署から照会される場合があります。
給与所得控除や基礎控除、配偶者特別控除の計算違い、控除後所得の算出ミスは税務署が特にチェックする項目です。2025年(令和7年)分は基礎控除・給与所得控除が引き上げられているため、改正内容の反映漏れがあると指摘される可能性があるでしょう。
2-4. 保険料控除や住宅ローン控除の証明書確認ミスがあった
保険料控除証明書や住宅ローン控除の内容と源泉徴収票を税務署が照合した際に、証明書の金額と申告内容が一致していない、控除額の入力ミスがある、追加支払いの反映漏れがあるなど不整合が見つかると、会社へ確認が入ります。
なお、証明書を年末調整時に添付できなかった場合でも、翌年1月末までに提出すれば控除を適用できます。ただし、期限までに提出がなかった場合は控除できないため、控除を外した内容で年末調整のやり直しが必要になります。
2-5. 従業員本人や配偶者の年収見込みに誤りがあった
年末調整で使う「年収」は、申告書を提出した時点の見込み額です。ところが、実際には年末の賞与や残業代で金額が変わったり、配偶者の収入が当初の想定と違ったりすることがあります。副業収入やパート収入が後から判明するケースも少なくありません。
こうした見込みと実際の収入の差が大きいと、配偶者控除・配偶者特別控除の適用条件がずれるため、税務署から「控除の金額が正しいか確認してください」という照会が届くことがあります。
関連記事:年末調整を2箇所でしてしまったら?ダブルワークの注意点と正しい対処方法を解説
2-6. 従業員の申告書類に誤りがあり税務署が会社へ照会を求めた
従業員側の書類記入ミスや証明書類の添付漏れ、控除区分の誤りなどがある場合、税務署は確認のため会社へ照会をおこないます。また、従業員が「源泉徴収票の内容が間違っている」などと税務署に直接相談した場合も、会社へ事実確認をおこなう可能性があるでしょう。
このように、年末調整の業務は複雑なため、計算方法があっているか不安な方もいるのではないでしょうか。当サイトでは、年末調整の手順と計算方法をわかりやすく図で解説した資料を無料でお配りしています。年末調整の計算を正しくおこないたい方は、こちらから「年末調整ガイドブック」をダウンロードしてください。
3. 税務署からの年末調整やり直しに対応しないとどうなる?


税務署からやり直しの指摘を受けたからといって、すぐに何らかのペナルティが発生するわけではありません。
ここでは、やり直しを指示された際の、会社・従業員への影響について解説します。
3-1. 延滞税や加算税が課される場合がある
年末調整のやり直しで追加の納税が必要になると、延滞税や加算税が課される場合があります。
延滞税は納期限までに税金を納めなかったことで発生するペナルティです。納税が完了したタイミングによって、次の表のとおり割合が変わります。
|
納税した日 |
延滞税の割合 |
|
納期限の翌日から2ヵ月以前 |
7.3% |
|
納期限の翌日から2ヵ月より後 |
14.6% |
年末調整では、源泉徴収すべき税額が納期限までに完納されなかった場合に不納付加算税が課されます。原則として、税率は納税していなかった税額×10%です。
なお、これらは本則の税率であり、実際には特例により低い税率が適用される場合があります。
参考:延滞税の割合|国税庁
延滞税や加算税の詳細は関連記事をご覧ください。
関連記事:加算税とは?延滞税の違いや種類と税率、端数計算について詳しく解説!
関連記事:不納付加算税とは?課される要件や計算方法、免除されるケースを解説
3-2. 対象となる従業員から追加徴収が必要な可能性がある
適用できないはずの控除が適用されていたり、計算した税額が本来納める額より少なかったりした従業員からは、足りない分の追加徴収が必要です。税額訂正のために、申告書の再提出が必要な場合もあります。
人事担当者のミスがやり直しの原因だった場合、従業員からの信頼を損なう可能性も考えられます。きちんと事情を説明するなど、対象となる従業員には丁寧な対応を心がけましょう。
4. 年末調整のやり直し通知が届いた場合の手続き


年末調整のやり直し通知が届いた場合は、原則として会社で手続きをおこなう必要があります。
会社には源泉徴収義務があるため、たとえ従業員の間違いで納付金額が増加する場合でも対応しなければなりません。年末調整を再計算した結果、追加の納税額が判明した場合は速やかに納付が必要です。
年末調整のやり直しの通知が届くと、大きなミスをしたのではないかと心配になる方もいるかもしれません。しかし、通知の内容に従って適切に対処すれば、問題が深刻化する可能性は低いです。やり直しの原因を一つずつ確認して、冷静に対応を進めましょう。
4-1. 通知や該当者の申告内容、対応期限の確認
やり直しの通知は年末調整の完了後、何ヵ月か経ってから届きます。やり直しの通知が届いた場合は、最初に次の3点を確認しましょう。
- やり直しの対象となる従業員
- 該当の申告とやり直しの内容
- 対応の期限
通知に記載されている従業員の申告書で基本情報や申告内容、計算過程を確認し、どこに問題があったのか把握します。
通知の際は、報告期限も記載されているため、必ず確認して期限内に対応できるように進めましょう。
4-2. 従業員へのヒアリング
年末調整の計算が正しい場合は、従業員からの申告内容に誤りがないか確認します。
従業員の配偶者や扶養家族の収入が扶養の範囲を超えていないか、引っ越しなどで扶養に該当しなくなった人がいないかなど、従業員に聞かないとわからない部分を中心にヒアリングしましょう。
ヒアリングで確認した内容と申告書の記載に食い違いが見つかったら、修正内容を従業員に確認してもらいます。修正によって追加の納税が発生する場合がある点を説明し、了承を得ておきましょう。
4-3. 年末調整の再計算と納付
年末調整の内容を修正した場合は、修正内容にもとづいた再計算と追加の納付が必要です。計算を間違えると再度やり直しになる可能性があるため、期限を意識しつつも、慎重に計算しましょう。
計算のもとになる情報は、昨年度の収入や源泉徴収税額です。翌年の年末調整の時期にやり直しの通知がくるなど、混乱しやすい場合もあるため、修正が必要な情報や年度を誤らないよう注意が必要でしょう。
再計算後、追加の納付をおこなえば手続きは完了です。
関連記事:年末調整の書類で間違いに気づいたときの正しい訂正方法
5. 税務署からやり直し連絡を受ける前に誤りに気付いたら


年末調整の誤りに自ら気付いて訂正すれば、税務署からやり直しの指示を受けずに済みます。
ミスに気付いたタイミングによって対応方法が異なるため、3つのシーンに分けて解説します。
5-1. 源泉徴収票を発行する前の対応方法
源泉徴収票を発行し従業員に交付する前、つまり原則として年末調整の翌年の1月末までは年末調整の訂正ができます。
誤りが見つかったら従業員に確認し、正しい情報にもとづいて税額を再計算しましょう。必要な場合は従業員から訂正後の申告書や追加の添付書類を提出してもらいます。
なお、誤りに気づいたのが翌年1月末より前でも、すでに源泉徴収票を発行している場合は年末調整のやり直しはできないため注意しましょう。
関連記事:年末調整の再調整は可能!方法やポイントをわかりやすく解説
5-2. 源泉徴収票の発行後〜確定申告の期限までの対応方法
源泉徴収票の発行後は年末調整でのやり直しはできないため、従業員自身に確定申告をしてもらう必要があります。
確定申告は年末調整より申告内容が多く、申告期間も翌年2月16日から3月15日までと決まっているため、申告に不慣れな従業員には大きな負担です。確定申告をする必要がないよう、申告後に誤りが見つかったらすぐに人事担当者に連絡するよう、職場内に周知しましょう。
5-3. 確定申告の期限を過ぎた後の対応方法
年末調整ができず、従業員が確定申告をした場合も注意が必要です。従業員が誤った内容で申告してしまい、確定申告の期限(3月15日)を過ぎた場合は、修正申告か更生の請求をおこなう必要があります。
いずれの場合も、従業員に確定申告の負担をかけてしまうため、年末調整でミスをしないことがもっとも重要でしょう。
参考:確定申告が間違っていたとき・確定申告を忘れていたとき|国税庁
6. 過年度分のやり直しはいつまで?対応方法を解説


年末調整の誤りは、当年度中だけでなく翌年以降に発覚することも多いです。過去の年度分に関して、税務署から源泉所得税の内容照会を求められたり控除適用に関する確認をされたりするケースがあります。
特に、配偶者(特別)控除・扶養控除・基礎控除などの誤りは、税務署の照合で発見されやすい項目です。ここでは「税務署から指摘された場合」と「会社が自主的に申し出る場合」 の2つに分けて対応方法を解説します。
6-1. 過年度分の誤りを税務署に指摘された
税務署は、提出された「源泉徴収票」「法定調書」「源泉所得税の納付額」を突き合わせて、控除の適用要件や所得金額との不一致が見つかれば、会社に照会をおこないます。
指摘されやすい代表例は次のとおりです。
- 配偶者控除や扶養控除の内容が実際の状況と合っていない
- 生命保険料控除や住宅ローン控除の証明書が提出されていない
- 従業員や配偶者の実際の年収が申告時点の見込みと大きく異なる
税務署から通知が届いた場合、会社には源泉徴収義務があるため、従業員に確定申告を丸投げすることはできません。まずは従業員に状況を確認し、申告内容を補正した上で、会社側で不足税額を再計算しましょう。再計算の後、不足分の源泉所得税を会社が納付します。
なお、給与以外の所得を従業員が申告していなかった場合(副業所得など)は、追加納税に加えて無申告加算税が発生することもあります。税務署からの照会を放置すると、延滞税の負荷が増すため、通知が届いたら速やかに対応することが重要です。
6-2. 過年度分の誤りを税務署に申告したい場合
会社が自ら年末調整の誤りに気付いた場合は、速やかに税務署へ申し出て修正手続きを行います。
源泉所得税を納め過ぎていた場合は、「源泉所得税及び復興特別所得税の誤納額還付請求書」を納税地の所轄税務署に提出し、過誤納の還付または今後の源泉税への充当を申請します。
一方、源泉所得税が不足していた場合は、会社が不足分を追加で納付します。
参考:源泉所得税及び復興特別所得税の誤納額還付請求書|国税庁
申告するケースの代表例は次のとおりです。
- 年末調整後に給与の追加支給が判明した
- 年末調整後に扶養親族の異動が確定した
- 本人または配偶者の年収(所得)が見込みと大きく異なっていた
- 保険料控除の証明書を1月末までに受領できず、本来控除が適用できなかった
- 年末調整後に住宅借入金等特別控除申告書が提出された
過年度の誤りが判明した場合、すでに翌年1月末のやり直し期限を過ぎているため、年末調整そのものを再実施することはできません。誤りによって源泉所得税が不足していた場合には、会社が不足分を追加で納付し、逆に税額を多く控除していた場合には、過誤納として還付請求をおこなうかたちで調整します。
会社側から自主的に修正申告をおこなえば、税務署からの指摘を待つ必要がなく、延滞税や加算税が増えるリスクを減らすことができるでしょう。
7. 年末調整のやり直しを発生させないためのポイント


年末調整のやり直し通知を受けると、さまざまな対応が必要になり人事担当者にも従業員にも負担がかかります。
やり直しの指摘を受けないためには、正しく年末調整をおこなうことが重要です。次年度以降の再発防止のためにも、年末調整のミスを防ぐためのポイントを解説します。
関連記事:年末調整がめんどくさい4つの理由と楽にするコツを解説
7-1. 余裕をもったスケジュールを立てる
申告書の回収や従業員一人ひとりの税額計算など、年末調整では手間や時間がかかる作業が多々あります。年末調整の期間中は12月支給の給与計算など、通常業務も並行して進める必要があるため、早めに作業を始めないと十分な時間の確保は難しくなります。
作業時間の確保には余裕を持ったスケジュールが重要です。作業に入る前に申告書の回収や作業に必要な期間を見積もり、十分な作業時間を確保できるようスケジュールを立てましょう。
7-2. ダブルチェック体制を整える
年末調整では申告書の内容を細かく確認する必要があります。人事担当者が異動したてなど、手続きに不慣れな場合もあるでしょう。
ミスの防止には複数人でのチェック体制が有効です。単純な計算ミスのほか、制度改正による変更点の対応漏れも防ぎやすくなります。
単純な記載漏れをほかの担当者に確認してもらう、申告前の書類を上長がチェックするなど、ダブルチェックの体制を整えておきましょう。
7-3. ツールやシステムを導入する
年末調整の計算を手作業でおこなうと、作業に時間がかかり計算ミスも起こりがちです。Excelなどの汎用的な表計算ソフトを使用している場合も、制度改正のたびに修正が必要になるため、効率化には限界があります。変更点が反映しきれず、ミスにつながる場合もあるでしょう。
年末調整用のツールやシステムを導入すれば計算ミスを防げるだけでなく、クラウド上で申告書の提出や確認ができるため、大幅な業務効率化が見込めます。年末調整システムと連動した給与計算システムも併用すれば、毎月の給与計算業務の効率化が期待できます。
手計算やExcelで年末調整の作業をおこなっている場合は、ツールやシステムの導入も検討してみましょう。
関連記事:年末調整の電子化は義務?令和3年からの改正内容と電子申請のやり方を解説
関連記事:年末調整のペーパーレス化とは?その背景や課題を詳しく解説
8. 年末調整のやり直しが発生しても慌てず冷静に対処しよう


年末調整のやり直しの通知が税務署から届いても、慌てる必要はありません。会社や従業員への影響を最小限に抑えるには、通知の内容に従った対応が大切です。
やり直しの通知は翌年8月以降に届くことが多く、唐突な連絡のように感じるかもしれません。従業員へのヒアリングなどで事実関係を把握し、適切に対応しましょう。



令和7年度の税制改正によって、令和7年12月の年末調整から変更が生じます。また、令和7年11月20日に施行された通勤手当の非課税限度額の改正によって、新たに年末調整の対応が必要となるケースもあります。
- 「令和7年分の年末調整で提出する書類は?」
- 「年収の壁の引き上げで年末調整はどう変わった?」
- 「通勤手当の非課税限度額の改正で年末調整が必要になる従業員は?」
このような疑問をお持ちの方に向けて、令和7年分の年末調整に必要な書類から対象者、計算の流れまで、年末調整に関する基本的な業務を図解でわかりやすくまとめた資料を無料で配布しております。
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