なぜ打刻は必要なのか?打刻忘れによるリスクを知り、必要性を理解しよう
更新日: 2023.9.15
公開日: 2023.6.2
OHSUGI
本記事では、なぜ打刻が必要なのかその理由を詳しく説明します。
また、従業員が打刻を忘れることがもたらすリスクに焦点を当て、どのように対処すべきかも解説しています。
打刻の重要性を再確認し、適切な勤怠管理を行えるようにぜひご一読ください。
目次
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1. そもそも打刻とは
そもそも打刻という言葉には「金属など硬い材料に文字や模様を刻む行為の意味の打刻」と「時間や出勤・退勤などの記録を取るための行為を指す打刻」の2つの意味があります。
前者の打刻は、彫金や刻印といった技術の一部であり、金属の表面に文字やデザインを彫り込むことで、装飾や識別、記念品の制作などに使用されます。
後者の打刻は、労働者が出勤や退勤の時間を正確に記録するために行う行為です。職場では、出勤時間や退勤時間が正確に記録されることで、勤怠管理や給与計算などが行われます。
本記事では後者の勤怠管理という文脈での「打刻」について解説します。
2. 打刻はなぜ必要?
まず第一に、従業員の勤務時間を正確に記録することが、正確な給与計算のために必要です。出勤と退勤の時刻が正確に打刻されることで残業手当なども正確に算出でき、給与計算が適切に行われます。
また、打刻データ収集・分析することで従業員の勤務実績を把握することができます。本当に必要な残業であったのか、業務負荷が偏っていないかなど、客観的な情報から従業員のコンディションを推察することができます。従業員が健康な状態かつ安心した環境で労働を続けられるように整備するための材料とも言えます。
労働法の遵守も打刻の大きな目的のひとつです。労働時間や休憩時間など、従業員の権利を守るための法的要件を満たすために、正確な打刻が不可欠です。
最後に、打刻データは業務の進行状況やプロジェクトの管理にも役立ちます。従業員の出勤状況や勤務時間の記録を通じて、業務のスケジュール調整やリソースの適切な配分が可能です。これにより、生産性の向上や業務の効率化がはかれます。
関連記事:打刻忘れはなぜ起きるのか?打刻忘れ発生時の対応や防ぐための対策を徹底解説
3. 具体的な打刻の方法
打刻には以下の通り、さまざまな方法があります。
- タイムカードによる打刻
- エクセルなどの表計算ソフトを用いた打刻
- 無料打刻アプリの利用
- 勤怠管理システムの利用
それぞれ具体的にどのような違いがあるのか解説します。
3-1. タイムカードによる打刻
たとえば、タイムカードを使った打刻は一般的な方法として知られています。また、近年ではICカードを使った打刻や指の静脈認証を使った打刻、スマートフォンからの打刻といった方法を採り入れている企業もあります。
ICカードでの打刻には交通系ICカードを使用できるケースもあり、専用のカードを用意する必要はありません。指の静脈認証であれば、静脈のパターンを読み取るため、より的確な本人認証が可能です。
関連記事:タイムカードで打刻ミスをなくすために用意しておきたい打刻ルールの具体例
関連記事:タイムカードの正しい打刻方法とミスを起こさないための予防策
関連記事:最新のタイムカード機5選!買い替え時に一緒に見ておきたい勤怠管理システムもご紹介
3-2. エクセルなどの表計算ソフトを用いた打刻
エクセルなどの表計算ソフトでは、マクロをはじめとするプログラミング言語を用いることで、勤怠管理システムを構築することが可能です。
資料作成などを目的に元々エクセルを導入している企業が多いため、ソフトウェアの導入費用という意味合いではコストがかかりません。
一方で専門的なプログラミングの技術を求められるため、手軽に作成できるものではありません。また、社内セキュリティのルール上マクロの利用が禁止されている場合もあるため、もしこの方法を取る場合は事前に確認しておくことをお勧めします。
また、表計算ソフトに従業員が直接出退勤時間を入力するのは、客観的な勤怠時間の記録とはみなされないため、お勧めしません。
3-3. 無料打刻アプリの利用
スマートフォンにインストールして利用できる無料の打刻アプリがあります。スマートフォンから打刻できるため、場所にとらわれず打刻することができます。操作さえ覚えれば初期費用もかかりません。
一方で、会社携帯が支給されていない従業員は私物のスマートフォンにインストールしなければならない点や、一部のアプリでは利用人数に上限が設けられており一定数から有料化してしまうなどの懸念点も挙げられます。
3-4. 勤怠管理システムの利用
勤怠管理システムは、企業が専用のソフトウェアやクラウドベースのサービスを導入し、従業員の勤怠情報を一元管理する方法です。従業員は自身のアカウントにログインし、出勤と退勤の打刻を行います。管理者はリアルタイムで従業員の勤怠データを確認できるため、効率的な給与計算や業務の進行管理が可能です。
また、スマートフォンで利用できるアプリをリリースしている商品もあり、GPS機能と掛け合わせてどこから打刻しているのか位置情報も把握できるものもあります。不正打刻が心配なご担当者はGPS搭載タイプを探してみるといいでしょう。
勤怠管理システムは大規模な企業や複数の拠点を持つ企業にとって特に効果的ですが、導入にはシステムのカスタマイズや従業員のトレーニングが必要です。
関連記事:勤怠管理システムを導入する目的とは?メリット・デメリットも確認
4. 打刻に関する注意事項
打刻に関する3つの注意点を解説します。
4-1. 手書きのタイムカードは打刻としては扱われない可能性がある
手書きでタイムカードを記入する場合、打刻としては扱われない可能性があります。
働き方改革の一環で、2019年4月に労働安全衛生法が改正され、従業員の労働時間を客観的な記録によって把握することが義務付けられました。改正前までは、労働時間の把握について曖昧な部分が多く、その結果長時間労働による過労死問題や未払いの残業代問題など社会問題が多発していることが法改正の背景にあります。
これらの理由から、企業は従業員の労働時間を客観的に把握しなければなりません。今のところ罰則はありませんが、手書きのタイムカードでは労働時間を客観的に把握できるとは言い切れないため、手書きによる勤怠管理を導入している企業は別の方法に切り替えましょう。
関連記事:勤怠管理において客観的記録をつけるための方法やポイントとは
関連記事:タイムカードの改ざんは違法!正しい対処法や対策をご紹介
4-2. 打刻まるめは違法になる可能性が
打刻まるめとは、給与計算に必要な勤務時間の集計作業の負荷を軽減するために、出退勤の時刻などの端数を切り捨て・四捨五入することを意味します。5分単位・15分単位・30分単位などで数字をまるめる(整える、調整する)ケースが多いです。
勤務時間の計算業務を効率化できる一方で、正しく運用しなければ法律違反になる可能性があります。
具体的に、労働基準法の24条第1項の「賃金全額払いの原則」で考えれば、残業代を含め給与は1分単位で計算して支払う必要があり、まるめによって労働時間が実態よりも短くなる運用は違法になる可能性があります。
詳しい内容や、正しい打刻まるめの方法などは以下の記事で解説しています。気になる方はぜひご一読ください。
関連記事:打刻まるめとは?考え方やルールの設定方法について詳しく解説
4-3. 気づかないうちに労働時間の上限を超過し、罰則を受ける可能性も
正しく打刻が行われないことで、従業員の労働時間が把握できず、気づかないうちに労働時間の上限を超過してしまい法律に違反していた、ということが起きてしまうかもしれません。
そもそも従業員の労働時間は、「1日8時間、週40時間まで」と労働基準法で定められています。この時間を超えた労働は時間外労働となり、36協定と呼ばれる労使間の協定を結ばなければ時間外労働は行えません。
また、36協定を結ぶことにより原則月45時間、年360時間を上限とする時間外労働が許可されます。さらにこの時間を超えた労働が必要な場合は、特別条項付き36協定を締結しなければなりません。加えて、時間外労働に対しては決められた割増率を乗じた割増賃金の支払いが必要になります。
このように時間外労働は多数の観点で管理しなければならない事項があり、これらに対応するためには正確な労働時間の把握が必要です。
従業員が正確に打刻しないことにより、企業が法律に反してしまう可能性があるため、従業員にも打刻の重要性を理解してもらう必要があります。
関連記事:労働時間の上限は週40時間!法律違反にならないための基礎知識
関連記事:36協定における残業時間の上限を基本からわかりやすく解説!
5. 打刻漏れが発生するとどうなる?
打刻は従業員の勤務状況を把握するために、必要な作業です。しかし、毎日勤務しているとついつい打刻漏れが発生してしまう可能性があります。このような打刻漏れが発生してしまうと、人事労務担当者への負担増加や未払い残業代の発生が考えられます。
関連記事:労働時間を正しく理解してタイムカード打刻のミスをなくそう
5-1. 人事労務担当者の業務負担が増える
打刻漏れが発生してしまうと、該当の従業員に修正や確認を依頼しなければなりません。従業員への修正、確認依頼を怠ってしまうとその後の給与計算に影響を及ぼしてしまい、人事労務担当者の業務負担が増えてしまいます。
また、打刻漏れによって長時間残業が重なっている従業員の場合、人事労務担当者の確認が漏れてしまうと離職につながりかねません。従業員が離職してしまうと、退職手続き、新規採用の手続きなど人事労務担当者に負担が発生してしまいます。
5-2. 未払いの残業代が発生してしまう
従業員の勤務状況を管理できていないと、未払いの残業代が発生する可能性があります。このような未払いの残業代は、支払った後であっても企業のブランドイメージを損なう恐れがあります。企業のブランドに傷がつくと、採用活動に影響が出かねません。
6. 打刻漏れを防止する方法
打刻漏れは人事労務担当者に負担が発生してしまう、未払いの残業代が発生してしまうというデメリットにつながってしまいます。そのため、次のような工夫を凝らして打刻漏れを防止しましょう。
- 打刻しやすい場所にタイムレコーダーを設置する
- 打刻を啓発するポスターを設置する
- 従業員が打刻漏れがないかを確認してもらう
- ペナルティを設ける
- 勤怠管理システムを導入する
関連記事:従業員のタイムカード打刻忘れ対策として企業がおこなうべき3つのこと
関連記事:打刻忘れが起きてしまう原因とは?対策方法も合わせて解説
6-1. 打刻しやすい場所にタイムレコーダーを設置する
打刻漏れを防止するには、打刻しやすい場所にタイムレコーダーを設置しましょう。普段の業務では通らないような場所にタイムレコーダーを設置してしまうと、従業員が億劫になり打刻をしなくなってしまうかもしれません。そのため、従業員の動線に沿ってタイムレコーダーを設置するのがおすすめです。たとえば従業員の出入口や部署の出入口などにタイムレコーダーを設置しましょう。
6-2. 打刻を啓発するポスターを設置する
打刻漏れを防ぐために、打刻の重要性を啓発するポスターを設置するのもポイントです。たとえば更衣室やロッカーの壁といった、従業員の目につく場所に設置しましょう。また、同じポスターを貼っていると効果が薄れてきてしまうので、定期的に変化を加えるのがおすすめです。
6-3. 従業員が打刻漏れがないかを確認してもらう
人事労務担当者だけで打刻漏れを確認していると、負担がかかってしまいます。そのため、従業員自身に打刻状況を確認してもらいましょう。具体的には部署やグループで打刻状況を確認してもらいます。従業員自身が状況を確認することで、打刻への意識の高まりが期待できます。
6-4. ペナルティを設ける
タイムレコーダーの設置場所や打刻の啓蒙などを行っても改善がみられないのであれば、多少のペナルティを設けることも検討してみましょう。打刻を忘れた場合は反省文の提出、繰り返し打刻を忘れている場合は始末書の提出などがペナルティとして挙げられます。
なお、ペナルティで減給処分を科すのであれば懲戒処分にあたるため、事前に従業員に周知しておく必要があります。また、いきなり減給処分を科すのではなく、戒告処分などを経てから科すのが一般的です。また、1度のペナルティで減給できる上限は、1日の平均賃金の半分です。また、減給される総額は月の賃金の10分の1を越えられません。
6-5. 勤怠管理システムを導入する
勤怠管理システム導入も、打刻漏れにつながります。勤怠管理システムのなかには打刻漏れを防ぐためにアラートが鳴るシステムがあります。このようなシステムであれば、打刻漏れを早い段階で把握できるでしょう。
また、スマホやタブレットから打刻できるシステムであれば、忙しい始業時であってもスムーズに打刻可能です。
関連記事:タイムカード打刻を電子化!勤怠管理システムとの比較やシステム導入のメリットを解説
6-6. 労働者の状況に合わせた打刻方法を導入する
従業員にとって、打刻は毎日行わなければならない業務です。しかし、職種や業務内容によっては外出が多く、打刻のためにわざわざオフィスに立ち寄らなければならない従業員もいるかもしれません。必要性を理解していても、不便な環境では継続が難しいものです。
そこで、オフィス勤務の従業員は従来の打刻方法を継続しつつ、建設業で現場に出勤する従業員や直行直帰が多い営業職の従業員に関しては、スマートフォンで打刻できるシステムや打刻機を営業所に別途配置するなどの方法があります。
無理なく継続して打刻してもらえる環境作りをするのも打刻忘れを防止する手段のひとつです。
関連記事:外出先からでも正確な打刻を可能にする勤怠管理の3つのポイント
関連記事:建設業従業員の打刻に勤怠管理システムを活用する2つのメリット
7. 打刻漏れを防いで人事労務作業を効率的に進めよう
打刻は給与を正しく計算するため、従業員の適切な労務管理をするために欠かせません。打刻漏れが発生してしまうと、人事労務担当者の負担増加や未払いの残業代の発生につながる可能性があります。
打刻漏れを防ぐにはタイムレコーダーをわかりやすい場所に設置する、ペナルティを設けるといった工夫を凝らしましょう。また、勤怠管理システムを導入することもおすすめです。打刻漏れがあればアラートが鳴る、スマホやタブレットから打刻できるといった勤怠管理システムなら打刻漏れの防止が期待できます。
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