タイムカード・出勤簿の手書きは違法?勤怠管理の必要性を理解しよう
更新日: 2023.9.1
公開日: 2020.1.28
NOMURA

近年、テレワークなどさまざまな働き方に対応するために、クラウドを利用した勤怠管理システムを導入する企業が増加傾向にあります。しかし、小規模の企業や個人経営の企業などは、タイムカードを手書きで管理しているケースも少なくありません。
本記事では、手書きで勤怠管理をおこなう際に注意するポイントについて解説します。
目次
1. 手書きのタイムカードや出勤簿は違法?
手書きの勤怠管理は、厚生労働省が労働時間を把握するための方法として定めている「客観的な記録」には該当しません。
手書きの記録は従業員自身で改ざんし、労務担当者が正確な実労働時間を把握できない可能性があるため「自己申告制」に該当します。
ただし、出勤簿に手書きで出退勤の時間を記入する勤怠管理がすべて違法となるわけではありません。外回りの営業など労働時間を客観的に把握する手段が場合に限り、自己申告制による勤怠管理が認められています。その場合は以下の措置を講じることが求められており、このルールを守れば手書きによる出勤簿の勤怠管理は違法ではありません。
(2) やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合
① 自己申告を行う労働者や、労働時間を管理する者に対しても自己申告制の適正な運用等ガイドラインに基づく措置等について、十分な説明を行うこと
② 自己申告により把握した労働時間と、入退場記録やパソコンの使用時間等から把握した在社時間との間に著しい乖離がある場合には実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること
③ 使用者は労働者が自己申告できる時間数の上限を設ける等適正な自己申告を阻害する措置を設けてはならないこと。さらに36協定の延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、労働者等において慣習的に行われていないか確認すること
とはいえ、客観的に労働時間を把握する手段があるにもかかわらず、手書きの出勤簿による勤怠管理をすることは違法となるため、注意しましょう。
なお、デジタル打刻であれば、従業員自身が後からの改ざんができないため、客観的な出勤簿となります。
具体例としては、ICカードへの打刻や入退室履歴、PCやタブレットを使用して打刻する勤怠管理システムを利用したものを指します。
関連記事:勤怠管理において客観的記録をつけるための方法やポイントとは
1-1. 適切な方法で勤怠管理をする必要性
適切な方法で勤怠管理をおこなうことで、労働時間の正確な把握による給与計算や、労働基準法などの法律順守にも繋がります。また、みなし残業として残業代を出さない、または低く見積もって計算してしまう不正を回避し、正確な勤怠状況を確保できる目的があります。
さらに、実際のトラブルを防止するだけでなく、勤怠管理をおこなうことで健全な経営管理を推進しているアピールにもなります。勤怠状況を一括で管理できる勤怠管理システムがあれば、人件費や時間を削減することができます。
2. タイムカード・勤務表に手書きで記載する場合の書き方
勤怠管理を手書きでおこなうことは、少人数であれば管理がしやすい反面、シフトと実績の照合作業や、打刻漏れの際に従業員へ確認の連絡など、タイムカードの管理にお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本項目では、勤怠管理をタイムカードに手書きでおこなう際、注意するポイントについて解説します。
2-1. 勤怠管理で把握する必要がある情報
企業は従業員の労働時間を正確に把握する必要があります。
出退勤の時間、欠勤、遅刻、休憩時間、休日の取得、有給取得などすべてを管理しなくてはいけません。
その理由は、労働基準法第32条に法定労働時間の記載があり「1日8時間、週40時間」という決まりがあります。この法律を企業が守れているのか、それに基づいた報酬を支払えているのかが勤怠管理になります。
また労働時間を正確に把握することで正しい給与計算をすることができます。給与や残業代も日々の労働時間の記載があるからこそ、計算することができます。さらに、勤怠管理を通して従業員が働き過ぎていないか、体の不調は訴えていないかなど、企業内の労働環境の見直しにもつながっていくでしょう。
従業員の勤怠管理を正しくおこなうことは、企業の健全な体質を維持していくことになります。
出勤簿に必要な項目の詳細は以下の記事で解説しています。
関連記事:出勤簿とは?役割や必要項目、自作する際の注意点を解説
36協定とは
36協定とは、企業が従業員に法定労働時間を超える時間外労働や休日出勤を命じる際に、労働組合などと書面による協定を結び、管轄地区の労働基準監督署に届け出る必要があることをいいます。以前は労使間の合意があれば労働時間を無制限に延長することができましたが、大幅に法改正がおこなわれた結果、時間外労働の上限が設けられました。
関連記事:36協定は全ての企業に義務が?対応する勤怠管理システムの選び方とは
2-2. タイムカードへの時間の書き方
タイムカードを手書きで管理するメリットとして、従業員が利用しやすいということが挙げられます。タイムカードを手書きで管理する場合、従業員数が少ない企業であれば、毎月発生する集計業務がそこまで負担にならない可能性があります。
勤怠管理をするには、下記の項目について記録する必要がありますが、タイムカードには労働日ごとに出退勤の時間、休憩時間、総労働時間などを最低限記載してもらうようにするとよいでしょう。
・出勤日 ・労働日数 ・出勤、退勤の時刻 ・日別の労働時間数 ・時間外労働をおこなった日付・時刻・時間数 ・休日労働をおこなった日付・時刻・時間数 ・深夜労働をおこなった日付・時刻・時間数 |
2-2-1. 鉛筆を使った記入は改ざんの可能性があるため法に適していない
厚生労働省のガイドラインでは、労働時間の把握を、原則として使用者による現認やタイムカードやパソコンの使用時間記録等の客観的な記録によっておこなうとされています。しかし、労働者の自己申告によって労働時間の管理自体が否定されていません。
ガイドラインでは、やむを得ず自己申告制により始業・終業時刻を把握する場合には、使用者が労働者に対して適正に自己申告をおこなうよう十分な説明をしたり、報告が適正におこなわれているか確認したりするなど、一定の措置をとるよう示しています。
しかし、自分で出退勤時刻を書き込む管理方法では、労働者が実際の労働時間よりも労働時間を多く申告したり、逆に、使用者によって労働者が実際の労働時間よりも少なく申告させられる可能性があるため、鉛筆書きでの自己申告は労働時間の把握・管理の方法として適切ではありません。情報の改ざんができないよう、ボールペンなどの使用を従業員に促していきましょう。
2-2-2. 間違えてしまった時の対処法は
まずは打刻ミスをした本人に話を聞いて、事実なのかどうかすぐに確認しましょう。すぐに確認しなければ、月末の給与計算でミスが発生します。そのようなことを起こさないためにも、早めに確認するのがおすすめです。確認する際にはミスをしてしまった理由や実際の勤務状況などについて聞きましょう。
また、ミスをしてしまった従業員には、始末書を出してもらいます。始末書を出してもらうという行為には、打刻ミス防止やルールの再確認などの効果があるだけではなく、労基署の監査で勤務実績を修正した時のエビデンスにもなります。
3. 勤怠を管理する上で注意すべきポイント
企業が従業員の勤怠管理をする上で注意するポイントをいくつかご紹介していきます。
3-1. 自社の勤務形態に合わせた勤怠管理をおこなう
正社員だけではなく契約社員、派遣社員、パート、アルバイト、また最近では自宅に居ながら仕事ができるテレワークという働き方も徐々に浸透しつつあります。柔軟な働き方が社会に浸透していく一方で、正しく処理できるということが課題となっている企業も少なくありません。
雇用形態が異なるだけであっても給与計算が煩雑になり、人数が多ければ集計に時間と工数がかかります。また、パートやアルバイトの場合はシフトで勤務している場合が多く、希望日を聞いて人員配置をする作業は、かなり面倒で煩雑な内容になります。
したがって、パート・アルバイトの人の勤怠管理をどのように正確にデータを吸い上げて、ミスなく給与計算につなげられるかが重要なポイントになってくるでしょう。
3-2. 正確に把握することでコスト削減につながる
従業員の勤怠の状態を正確に把握することは、コスト削減につながっていきます。その理由は、給与計算が正しくおこなわれるからです。残業代、保険料、税金などの計算も給与計算が正しく処理されていないと正しく処理できません。
日頃から勤怠管理をしっかりとおこない、それに基づいて勤務時間などの情報を正しく吸い上げることで、余計な時間や工数を使わなくて済みますので、最終的にコスト削減につながっていきます。
4. タイムカードを手書きするデメリット・メリット
勤怠管理は企業にとって重要な業務の1つです。勤怠を管理する方法は、手書きからシステムまで形態はさまざまです。今後はさらに働き方が多様化され、処理が煩雑になり管理が難しくなるでしょう。
また、勤怠管理システムに入力を依頼することで、入力ミスや転記ミスがなくなる等、正確に勤務時間を把握することができるメリットもあります。
システムを導入してペーパーレス化を進める方法については下記の記事でも詳しく解説しています。
関連記事:勤怠管理をペーパーレス化するには?電子化のメリット・デメリットも解説
4-1. タイムカードを手書きするデメリット
手書きのタイムカードは作業の手間もかかり、後から内容を書き換えても、他人が見破るのは困難なケースもあります。
4-1-1. 勤怠情報の改ざん
タイムカードを手書きで管理するデメリットとして、勤怠情報の改ざんが挙げられます。例えば、遅刻をした従業員が、本人はオフィスに到着していない場合であっても、タイムカードへの代筆を同僚に頼むことができます。
すると、本人は遅刻をした場合であっても、タイムカード上の記録では定時前に出社していることになるため、遅刻と扱われないという事象が発生します。正確な勤怠情報を管理することは企業の義務です。
関連記事:勤怠の改ざんが発覚!不正予防と対処法について徹底解説
4-1-2. 保管する手間がかかる
労働基準法では、タイムカード等の書類につき、5年間の保管義務が定められています。 しかし5年分ものタイムカードを保管するのは場所を取るうえ、管理が大変です。 また火災や紛失などによって、記録を失ってしまうリスクもあります。
関連記事:タイムカードの保管期間は5年!タイムカードの保管について徹底解説!
4-2. タイムカードを手書きするメリット
手書きのタイムカードは従業員の少ない企業にとって、安価なコストで勤怠管理を円滑にする利点があります。 また、フォーマットによっては個々の従業員の残業時間まで管理できるので、部署ごとで毎日の勤怠管理が容易になります。
導入費用や維持費が抑えられるため、会社全体の従業員数が少なかったり、今期・来季以降の予算を抑えたいと考えている労務担当者様におすすめです。
5. まとめ
勤怠管理において、手書きでの運用は違法ではありませんでした。手書きであろうと、他の手法であろうと、勤怠管理を正しくおこなっていればコンプライアンスを遵守していることになります。また正しい報酬の支払いにもつながります。
タイムカードや出勤簿などで勤怠管理をしてる場合、以下のような課題はないでしょうか。
・打刻漏れの確認や労働時間の集計だけで数日かかってしまう
・有給休暇の残日数確認の問い合わせ対応が業務を圧迫している
・シフトの収集や作成に時間がかかって他の業務ができない
そのようなお悩みをお持ちの方におすすめなのが、勤怠管理システムの導入です。システムであれば打刻漏れを減らせるほか、労働時間は自動集計されるため、ミスと工数を減らすことが可能です。
このほかにも便利な機能で勤怠管理の工数削減ができるため、勤怠管理システムで何ができるか気になる方は、以下のボタンからクラウド型勤怠管理システム「ジンジャー勤怠」の紹介ページをご覧ください。
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