1ヶ月単位の変形労働時間制とは?残業代・休日の考え方や導入フローを徹底解説
更新日: 2026.2.27 公開日: 2022.3.1 jinjer Blog 編集部

1ヶ月単位の変形労働時間制は、月内の業務量に合わせて労働時間を柔軟に配分できる制度です。導入により、繁忙期の残業代抑制や、閑散期の早期退社によるワークライフバランス向上といったメリットが期待できます。
一方で、この制度は「1日8時間、週40時間」という原則の例外を認めるものだからこそ、残業代の計算方法や休日出勤の扱いが複雑になりがちです。本記事では、1ヶ月単位の変形労働時間制の仕組みから、残業時間の算出方法、導入時の注意点までを詳しく解説します。
目次
変形労働時間制は、通常の労働形態と異なる部分が多く、労働時間・残業の考え方やシフト管理の方法など、複雑で理解が難しいとお悩みではありませんか?
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1. 1ヶ月単位の変形労働時間制とは

1ヶ月単位の変形労働時間制とは、就業規則や協定で定めることにより、1ヶ月以内の期間(変形期間という)の中で1週間あたりの平均労働時間が40時間を超えなければ、特定の週や特定の日に労働時間が1日8時間、週に40時間を超えても労働させることができる制度です。
そのため、1ヶ月単位の変形労働時間制では、1日の上限や1週間の上限は設けられていません。
1-1. そもそも変形労働時間制とは?簡単におさらい
そもそも変形労働時間制とは、一定期間(1ヶ月や1年など)を平均して、1週あたりの労働時間が法定労働時間(原則40時間)以内におさまることを条件に、特定の日や週において法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。変形労働時間制には、主に次の種類があります。
- 1ヶ月単位の変形労働時間制
- 1年単位の変形労働時間制
- 1週間単位の非定型的変形労働時間制
変形労働時間制を導入すると、企業は需要に応じた柔軟な人員配置ができます。かつ、従業員も業務量に合わせて効率的に働けて、休暇を取りやすくなります。
ただし、制度の運用を誤ると長時間労働につながるおそれもあるため、労働者の権利保護や適切な労働条件の確保に十分配慮することが重要です。
関連記事:変形労働時間制とは?1ヶ月・1年単位の違いや導入方法をわかりやすく解説
1-2. 1ヶ月単位の変形労働時間制の導入・運用方法
1ヶ月単位の変形労働時間制は、労使協定の締結により導入できます。具体的には、次の内容を定める必要があります。
- 対象労働者の範囲
- 対象期間および起算日(※対象期間は1ヶ月以内に限る)
- 対象期間における労働日および労働日ごとの労働時間
- 労使協定の有効期間(※3年以内程度とするのが望ましい)
なお、1ヶ月単位の変形労働時間制は、労使協定によらず、就業規則に定めることによって導入することもできます。この場合、就業規則の作成・変更時には、管轄の労働基準監督署への届出が必要です。
また、時間外労働や休日労働が生じる可能性がある場合には、36協定の締結・届出もあわせておこなっておく必要があります。さらに、労使協定や就業規則に定めた内容については、従業員に対して適切に周知しなければなりません。
実際に1ヶ月単位の変形労働時間制を運用する際には、シフト表や社内カレンダーなどにより、対象期間全体について労働日および労働日ごとの労働時間をあらかじめ特定しておく必要があります。
なお、特定した労働日・労働時間を使用者の裁量で任意に変更することはできません。月の途中でシフトを変更するなど、事前に特定された勤務スケジュールを守らない運用をおこなった場合には、変形労働時間制自体が無効と判断されるリスクがあるので注意しましょう。
参考:ダイレックス事件(長崎地判令3・2・26) 月200時間で1カ月変形、割増30時間のみ? 週40時間平均超え制度無効|労働新聞社
関連記事:変形労働時間制の労使協定の内容を期間別に詳しく解説
関連記事:変形労働時間制の届出に必要なものや書き方・記入例を解説
1-3. 1ヶ月単位の変形労働時間制の計算方法
1ヶ月単位の変形労働時間制を採用するにあたっては、1ヶ月あたりの週平均の労働時間を40時間以内に収めなくてはいけません。この条件を満たすには、次の計算式によって求めた月の上限時間を越えないようにする必要があります。
上限時間 = 1週間の法定労働時間(40時間※) × 対象期間の歴日数(1ヶ月以内) ÷ 7
※特別措置対象事業場の場合は、44時間
例えば4月の場合、暦日数は30日であるため、上記の計算式に基づいて計算すると、171.4時間となります。また、5月の場合は暦日数31日であるので、上限時間は177.1時間です。
月によって上限時間は変わるため、労働時間を決める際は注意しましょう。
なお、約40年ぶりとなる労働基準法の大幅改正が検討されています。現行の「法定労働時間を週44時間とする特例措置」は、厚生労働省の調査によると約87%の事業場で未利用となっており、実務上の役割を終えつつあると考えられています。そのため、撤廃に向けては業種ごとの実態を踏まえた慎重な検討が必要とされています。
なお、この改正案の2026年国会提出は見送られたと報じられていますが、今後も労働基準法の大幅改正がおこなわれる可能性は否定できません。最新の動向を注視していくことが重要です。
参考:「労働基準関係法制研究会」の報告書を公表します|厚生労働省
参考:労基法改正案、来年の通常国会提出見送り 労働時間規制の緩和検討|毎日新聞
関連記事:2026年の労働基準法の改正は見送りへ!施行時期や議論中のテーマを解説
2. 1ヶ月単位の変形労働時間制の残業時間

労働基準法では「1日8時間、週40時間」を超えた時間外労働に対し、割増賃金の支払いを義務付けています。ただし、1ヶ月単位の変形労働時間制の場合、特定の日や週に法定労働時間を超えて働かせても、必ずしも時間外労働とはみなされません。そのため、固定労働時間制とは異なり、時間外労働の管理方法にも違いがあります。
1ヶ月単位の変形労働時間制では、日ごと、週ごと、変形期間内の全体でそれぞれチェックするのがポイントです。なお、ここでいう残業とは、法定労働時間を超えて働く(法定外残業)ことを指し、法定労働時間内の残業(法定内残業)は含まれません。
参考:1か月単位の変形労働時間制をとる場合の時間外労働の考え方|厚生労働省
2-1. 日ごとの残業時間の確認
日ごとの残業時間の確認では、所定労働時間が8時間を超えているか否かで、残業のカウントの仕方が変わります。
①所定労働時間が8時間を超える日はその時間を超えた分が残業
例:1日の所定労働時間が9時間で、10時間働いた場合、1時間が残業となる
②所定労働時間が8時間以下なら、8時間を超えた時間が残業
例:1日の所定労働時間が6時間で、8時間働いた場合、法定労働時間は超えていないので残業とはならない。
2-2. 週ごとの残業時間の確認
週ごとの残業時間の確認も、40時間を超えているか否かで残業時間の確認の仕方が違います。なお、週ごとで確認する際はカウントの重複をさけるため、日ごとで確認した際の残業時間は含めません。
①所定労働時間が40時間を超える週はその時間を超えた分が残業
例:週の所定労働時間が42時間で、44時間働いた場合、2時間が残業となる
②所定労働時間が40時間以下の週は、40時間を超えた時間が残業
例:週の所定労働時間が38時間で、42時間働いた場合、40時間を超えた2時間が残業
2-3. 変形期間内の残業時間の確認
変形期間全体での残業時間を確認します。先と同じように重複を避けるため、日ごと、週ごとで確認した残業時間は含めずに確認しましょう。
例えば、変形期間が30日であった場合、月の法定労働時間の上限は171.4となるので、この時間を超えた分が残業となります。
ただし、変形期間内の事前に設定する総労働時間が月の法定労働時間の上限を超えた場合、1ヶ月単位の変形労働時間制の条件を満たさなくなるため、変形労働時間制の適用から外れる点に注意が必要です。
2-4. 【具体例】1ヶ月単位の変形労働時間制の残業代計算
1ヶ月単位の変形労働時間制においては、日ごと、週ごと、月ごと、それぞれで確認した残業時間の合計が時間外労働となり、割増賃金の支払いが必要となります。割増賃金の計算式は、次のとおりです。
割増賃金 = 1時間あたりの基礎賃金 × 時間外労働の時間数 × 割増率
割増率は、月60時間以下の時間外労働では25%以上、月60時間を超える場合は50%以上が適用されます。さらに、深夜労働(午後10時~翌午前5時)が含まれる場合は、深夜割増(25%以上)が加算されます。
割増賃金を適正に支払わないことは労働基準法違反となるため、残業時間を正確に把握し、法定の割増率に基づいて計算することが重要です。
関連記事:変形労働制でも残業代は出さないとダメ!残業時間の計算ルールも解説
3. 1ヶ月単位の変形労働時間制と休日出勤の関係

1ヶ月単位の変形労働時間制を採用している場合でも、休日出勤の取り扱いがすべて柔軟になるわけではありません。休日が法定休日か所定休日(法定外休日)かによって、割増賃金の要否や計算方法が異なるため、正確な区分と理解が必要です。
3-1. 法定休日の労働には休日労働の割増賃金の支払いが必要
1ヶ月単位の変形労働時間制を採用している場合でも、法定休日の考え方は通常の労働時間制と同様であり、労働基準法に定められた「週1回または4週に4回」の付与ルールを遵守する必要があります。
この法定休日に労働させた場合は「休日労働」となり、35%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
例えば、法定休日に10時間労働させた場合には、10時間すべてが休日労働となり、該当時間分について休日労働の割増賃金を支払う必要があります。法定休日における労働時間は、時間外労働の時間数には含まれない点にも注意が必要です。
1ヶ月単位の変形労働時間制では勤務日や休日が変則的になりやすく、法定休日が不明確になりがちです。そのため、シフト作成時には、どの日が法定休日に該当するのかを明確にしておくことが大切です。
関連記事:法定休日とは?労働基準法のルールや法定外休日との違いを解説
3-2. 所定休日(法定外休日)の労働は通常の出勤日と同様の扱いとなる
1ヶ月単位の変形労働時間制において、企業が独自に定める所定休日(法定外休日)に従業員を勤務させた場合、その労働は法定休日労働には該当せず、通常の勤務日と同様に扱われます。
ただし、所定休日の労働も含めて、週の労働時間が40時間を超えたり、変形期間内の法定労働時間の総枠を超えたりする場合には、時間外労働として割増賃金の支払いが必要となる可能性があります。
現行の法令では、法定休日と所定休日の明確な特定義務は定められていません。しかし、給与計算や従業員とのトラブル防止や将来的な法改正の観点から、就業規則などであらかじめ法定休日と所定休日を明確に定めておくことが望ましいでしょう。
関連記事:所定休日と法定休日の違いとは?休日出勤時の割増賃金の考え方も解説
4. 1ヶ月単位の変形労働時間制を採用するメリット・デメリット

月内の業務量が一定でない職種では、1ヶ月単位の変形労働時間制を導入することで、企業は繁閑に応じて事前に労働時間を調整でき、残業代の発生を抑えやすくなります。
従業員にとっても、繁閑に合わせて勤務時間を調整できるので、閑散期には早く帰るなど、働く時間にメリハリをつけやすくなり、ワークライフバランスの向上につながるでしょう。
ただし、変形労働時間制は労働時間の管理が複雑になりやすく、計画通りに運用できない場合は残業が増え、人件費削減の効果が限定的になることもあります。
また、1ヶ月単位の変形労働時間制では、事前に働く日と時間を設定し、労働日より前に従業員へ通知する必要があります。そのため、正当な理由もなく、当日の業務状況に応じて自由に勤務時間を変更し、残業代を削減できる制度ではないので注意しましょう。
関連記事:変形労働時間制で従業員のシフト変更は可能?注意点を解説
4-1. 1年単位の変形労働時間制との違い
1年単位の変形労働時間制とは、1ヶ月を超え1年以内の一定期間における労働時間を平均して、週の労働時間が40時間以内になるよう調整する制度です。1ヶ月単位の変形労働時間制とは対象期間が異なるので、季節や繁忙期によって業務量が大きく変動する業種に適しています。
ただし、1年単位の変形労働時間制では、連続勤務日数や1日・1週間の労働時間の上限が定められており、労使協定の締結も必須です。そのため、導入や運用にあたっては、手続きやルールの違いに注意する必要があります。
関連記事:1年単位の変形労働時間制とは?残業の計算方法や休日の考え方もわかりやすく解説
4-2. フレックスタイム制との違い
フレックスタイム制とは、清算期間(最長3ヶ月)内であらかじめ定められた総労働時間の範囲内で、労働者自身が始業・終業の時間を自由に決められる制度です。これに対し、1ヶ月単位の変形労働時間制では、企業が労働日や労働時間を指定するため、従業員の裁量はフレックスタイム制より小さくなります。
ただし、フレックスタイム制でも清算期間における法定労働時間の総枠を超えると時間外労働となり、割増賃金の支払いが必要です。また、業務量の繁閑差が大きい場合は、変形労働時間制を導入することで従業員の労働時間を調整し、残業代を抑制できる可能性があります。
参考:フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き|厚生労働省
関連記事:フレックスタイム制とは?導入手順や企業が知っておくべきメリット・デメリット
5. 1ヶ月単位の変形労働時間制の採用事例を紹介

1ヶ月単位の変形労働時間制は、休日日数が少ない企業や、1日の労働時間が長くなる業種で導入されることが多い制度です。厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査」によると、特に次の業界で採用される傾向が強くみられます。
- 宿泊業、飲食サービス業
- 医療、福祉
- 金融業、保険業
- 電気・ガス・熱供給・水道業
このほか、運輸業、不動産業、卸・小売業など、季節や繁忙期による業務量の変動が大きい業界でも広く活用されています。
さらに、「令和6年就労条件総合調査」によると、変形労働時間制を導入している企業の割合は全体で60.9%に上ります。従業員数が多い企業ほど導入率が高く、1,000人以上の企業では82.8%、30~99人規模の企業では56.9%となっており、従業員数の多い企業での導入傾向がうかがえます。
6. 1ヶ月単位の変形労働時間制は月の繁忙差が激しい業種で有効

1ヶ月単位の変形労働時間制では、1ヶ月以内の一定期間を平均して週の労働時間が40時間を超えないように設定すれば、あらかじめ決めた特定の週や日においては、週40時間や1日8時間を超えて働かせることができます。そのため、月内で繁忙差が激しい業種や職種で取り入れれば、残業代の削減にもつながります。
ただし、労働時間の管理は煩雑になるので、実際に運用する際は勤怠管理システムなども合わせて導入するとよいでしょう。
次のページでは、変形労働時間制を導入している企業における勤怠管理システムの活用方法を解説しています。
勤怠管理システムを導入しようか検討されている方や現状の勤怠管理に課題を感じる方はぜひご覧ください。
関連サイト:勤怠管理システムを用いた変形労働時間制の運用|ジンジャー勤怠
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