給与計算は誰に頼む?税理士と社労士の違いや費用相場を解説!
更新日: 2025.6.13 公開日: 2020.12.14 jinjer Blog 編集部

従業員が1人でもいれば、毎月の給与計算業務が発生します。小規模な企業であれば自社で対応できる場合もありますが、従業員数が増えるにつれて作業は煩雑になり、業務負担も大きくなっていきます。
とくに給与計算には専門的な知識が求められるため、ミスの防止や効率化を図るには、外部への委託を検討する価値があります。外部委託の主な選択肢としては、税理士と社労士の2つが挙げられますが、「どちらに依頼すべきか迷っている」という方も少なくないでしょう。
本記事では、税理士と社労士の役割や違い、依頼する際のメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。
【給与計算のやり方について解説はコチラ▶【図解】給与計算ガイド!例を用いて給与計算のやり方を徹底解説!】
【給与計算業務のまとめはコチラ▶給与計算のやり方を11ステップで解説!効率化する方法や注意点も紹介!】
目次
労務担当者の実務の中で、給与計算は出勤簿を基に正確な計算が求められる一方で、Excelからの手入力や別システムからのデータ共有の際、毎月のミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
さらに、昇格や人事異動に伴う給与体系の変更や、給与計算に関連する法令改正があった場合、更新すべき情報も多く、管理方法とメンテナンスにお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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1. 給与計算は税理士や社労士に依頼できる?

結論からいうと、給与計算を税理士や社労士に依頼することは可能です。給与計算自体は法律で特定の資格者に限られていないため、アウトソーシングすることに問題はありません。
ただし、税理士と社労士では専門分野と業務範囲が異なります。社労士は労務管理や社会保険に強く、税理士は税務の専門家です。そのため、給与計算に関連する一部業務については、どちらか一方では対応できないことがあります。
例えば、年末調整は税務に該当し、税理士の独占業務とされており、社労士が年末調整を代行することは、税理士法違反に該当する可能性があります。
一方で、年末調整に必要な給与や社会保険料の計算といった業務は、社労士でも問題なく対応可能です。そのため、業務内容に応じて適切な専門家に依頼することをおすすめします。
2. 税理士と社労士の業務の違い


税理士や社労士、どちらも名前は耳にしたことがあっても、実際にどのような業務を専門としているのかまではよく知らないという方も多いかもしれません。ここでは、税理士と社労士がどのような業務を担当しているのかそれぞれ紹介します。
2-1. 税理士
税理士は、税務署の対応や税務書類の作成をおこなう専門家であり、「税務の代理」「税務書類の作成」「税務相談」などの項目が専門的な業務となっています。
税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼に応え、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命としています。
税理士制度は、このような公共的使命を負っている税理士が納税義務者の援助をすることによって、納税義務を適正に実現し、これによって、申告納税制度の適正かつ円滑な運営に資することを目的として設けられたものです。
昭和26年に税理士法が施行されて以来、税理士制度は時代の推移とともに変化する社会の要請に応えて、申告納税制度の定着と発展に寄与するとともに、納税義務の適正な実現、納税者に対する税知識の普及、国家財政の確保に大きな役割を果たしています。引用:税理士制度|国税庁
簡潔にまとめると、財務・税務処理の代理などの税金の管理や年末調整、税務署に提出する書類の作成手続きを中心におこなうのが税理士の仕事です。
2-2. 社労士
社労士は、労働法や社会保険に精通したプロフェッショナルであり、これらに関する書類(就業規則や社会保険の手続きなど)作成や提出を代行するのが業務となります。
労働・社会保険の問題の専門家として、
①書類等の作成代行、②書類等提出代行、③個別労働関係紛争の解決手続(調整、あっせん等)の代理、④労務管理や労働保険・社会保険に関する相談等を実施するのが、社会保険労務士です。
また、社労士がおこなう業務に関しては、下記のような記載もあります。
社会保険労務士でない者は、営利を目的として以下の業務を行ってはなりません。
① 申請書等の作成
② 提出代行
③ 事務代理
④ 紛争解決手続代理業務(特定社会保険労務士に限る)
⑤ 帳簿類の作成
つまり、社会保険に関する申告書の作成や提出、行政官庁による調査対応などを依頼者に代わっておこなうことは、社労士の独占業務とされています。そのため、社会保険に関連する各種手続きが、社労士の主な業務の一つとなっています。
【社労士について知りたい方はコチラ▶社労士の給与計算業務とは|相場ややり方、準備すべきことをご紹介】
3. 給与計算を税理士に依頼するメリットとデメリット

給与計算業務を税理士または社労士に依頼する場合、自社に必要な業務を的確に対応できる専門家を選ぶことが重要です。しかし、給与計算業務のみを依頼するという場合は、どちらに依頼すべきか迷ってしまうかもしれません。
もしも決められないようであれば、双方のメリットとデメリットを比較し、自社にとってメリットがある方を選びましょう。ここでは、まず税理士に給与計算を依頼するメリット・デメリットについて詳しく紹介します。
3-1. 税理士のメリット
税理士に給与計算を依頼すると、年末調整までワンストップで業務を任せられるというメリットがあります。税理士は税務に関する専門家であり、年末調整や住民税申告、法定調書(支払調書・合計表)の作成・電子申請まで対応可能です。
また、税理士には「税務相談」という独占業務が認められており、法人税や消費税の取り扱いに関する会計処理や、合法的な節税対策についての助言を受けることができます。これらは、企業経営において非常に有益なサポートとなるでしょう。
3-2. 税理士のデメリット
税理士は税務の専門家であり、労務相談や雇用保険の手続き、助成金の申請といった労務関連業務を代行することはできません。そのため、従業員の入退社や社会保険の手続きを委託したい企業には不便かもしれません。また、税理士に依頼をすると、年末調整など税金関係の業務まで対応してもらえるメリットはありますが、税務業務までを依頼すると費用が高額になってしまうデメリットもあります。
多くの業務を一括で任せたいというニーズがある一方で、費用を抑えながら必要な範囲だけを外部委託したい企業にとっては、税理士に依頼する業務の範囲を慎重に検討することが重要です。社会保険関連の手続きが不要で、税務面に重点を置く場合には、税理士への委託が適しているといえるでしょう。
4. 給与計算を社労士に依頼するメリットとデメリット

次に、社労士に給与計算を依頼するメリット・デメリットについて詳しく紹介します。
4-1. 社労士のメリット
社労士は、労務管理や社会保険に関する手続きを専門とする国家資格者であり、入退社時の手続きや保険料の算定、労働保険料の申告など、企業が日常的に発生する煩雑な事務作業を代行してくれます。
会社の規模や従業員の人数によっては、給与計算以外に、労務管理の業務が追いつかないケースもあるでしょう。とくに従業員数が多い企業や、労務担当者が不足している企業では、社労士にアウトソーシングすることで、業務負担を大きく軽減することが可能です。
入退社手続きに加えて、社会保険の定時決定・随時改定、賞与支払届、労働保険料申告などの法定手続きも対応してもらえるため、給与計算とあわせて総合的な労務サポートを求める企業にとって、社労士への依頼は非常に有効な選択肢といえるでしょう。
4-2. 社労士のデメリット
社労士は、税理士と違い、税務に関する業務をおこなえないデメリットがあります。例えば、年末調整における法定調書や源泉徴収票の作成・提出といった税務書類の業務は、税理士の独占業務とされており、これを社労士がおこなうと税理士法違反となる可能性があります。
ただし、年末調整に必要な給与データの計算や、社会保険料の確定といった準備業務については、社労士が担当しても問題はありません。したがって、税務書類の作成や提出までを依頼する必要がない企業であれば、社労士に業務を委託することで、とくに大きなデメリットはないといえるでしょう。
5. 給与計算を税理士や社労士に依頼する際の費用相場

税理士に依頼するか、社労士に依頼するかは、費用で決めたいという方もいるのではないでしょうか。当然、それぞれの事務所で費用は異なりますが、ここでは相場を紹介するので、費用で比較する際の参考にしてみてください。
5-1. 税理士の相場
税理士に依頼する場合の相場は次のとおりです。
|
社員数 |
報酬相場 |
|
1人 |
1,000円〜2,000円 |
|
5〜9人 |
5,000円〜10,000円 |
|
10〜19人 |
10,000円〜30,000円 |
|
20〜29人 |
20,000円〜45,000円 |
|
30〜49人 |
40,000円〜70,000円 |
|
50人〜 |
50,000円〜 |
費用は、従業員数に応じて変動する形になっています。従業員1人あたり1,000~2,000円程度の値段になっていますが、規模感の大きい会社ほど依頼費用がかかる傾向にあるので注意が必要です。
また、確定申告や年末調整など、依頼する業務範囲を増やすと費用が加算されるため、具体的な料金プランについては、事前に税理士事務所に確認したうえで依頼すると安心です。
5-2. 社労士の相場
社労士に依頼する場合の相場は次のとおりです。
|
社員数 |
報酬相場 |
|
~4人 |
20,000円~ |
|
~10人 |
25,000円~ |
|
~20人 |
35,000円~ |
|
~30人 |
45,000円~ |
|
~50人 |
60000円~ |
社労士に給与計算を依頼する場合の費用も、税理士と同じく従業員数次第で変動するのが一般的です。
また、就業規則の作成や届出、従業員の入退社手続き、社会保険料変更手続きなどを依頼範囲に含めると、その分の費用が加算されます。
給与計算にかかる費用については、税理士と社労士で大きな差はありません。そのため、給与計算以外に依頼したい業務の内容も踏まえたうえで、どちらに依頼するかを判断するとよいでしょう。
6. 給与計算を税理士に依頼すべきケース

ここでは、具体的に税理士に依頼をした方がよいケースについて詳しく紹介します。
6-1. 年末調整をアウトソーシングしたい場合
毎月の給与計算業務だけでなく、年末調整業務もアウトソーシングしたい場合、税理士に依頼することがおすすめです。年末調整は税務に該当し、税理士以外の者が代行することは法律上認められていません。
仮に給与計算を社労士や外部の事務代行業者に委託していたとしても、年末調整に関しては、必ず税理士の関与が必要となります。法令を遵守し、正確かつ安心して手続きを進めるためにも、年末調整については専門知識と実務経験の豊富な税理士への依頼が最適です。
6-2. 税務の取り扱いに不安がある場合
会社を設立したばかりのタイミングや、売上の増加により会社の規模が拡大した場合などには、税務上の取り扱いに変化が生じる可能性があります。
例えば、原則、前々事業年度の課税売上が1,000万円を超えると、それまで免税事業者であったとしても、課税事業者となり消費税を納める義務が生じます。この納税義務を正しく認識せず、本来納めるべき消費税を申告・納付しなかった場合、違法とみなされ、延滞税や加算税などの罰則が課されるリスクもあるのです。
このように、会社の成長に伴って発生する税務上の義務は複雑で、専門的な知識が求められます。したがって、給与計算業務だけでなく、税務に関しても不安や不明点がある場合は、税務相談に対応できる税理士に依頼することをおすすめします。
参考:消費税のしくみ|国税庁
6-3. 社労士に依頼するのがおすすめの場合は?
給与計算だけでなく、社会保険・労働保険の手続きや、従業員の入退社対応、就業規則の作成・見直しなど、労務関連の業務もあわせて依頼したい場合は、社労士に依頼するのがおすすめです。これらの労務業務は社労士の独占業務に該当し、税理士が代行することはできません。
なお、税務と労務の両方をまとめて依頼したい場合は、税理士と社労士の両方が在籍している事務所に依頼することも検討しましょう。別々の事務所に依頼するよりも、業務の連携がスムーズになり、時間や手間、コストの削減につながる可能性があります。
関連サイト:税理士・社労士が揃う総合型事務所【税理士法人松本】
7. 給与計算を税理士や社労士に任せる場合の注意点


給与計算を税理士や社労士に依頼する場合でも、気を付けるべき点があります。ここでは、給与計算を税理士や社労士に任せる場合の注意点について詳しく紹介します。
7-1. 依頼内容・範囲を明確化する
税理士・社労士に給与計算をアウトソーシングする場合、費用がかかります。依頼する業務が増えるほど、料金は高くなる傾向にあります。
事前に依頼内容や範囲を明確にし、依頼する業務を限定することで、コストを抑えることが可能です。まずは自社の給与計算の課題を洗い出し、アウトソーシングすべき業務を明確にしましょう。
7-2. 実績や信頼性をチェックする
給与計算は、従業員の手取りに関わる問題で、ミスが生じれば大きなトラブルにつながる恐れがあります。そのため、税理士や社労士に依頼する場合でも、事前に実績・信頼性をきちんとチェックすることが大切です。
税理士事務所・社会保険労務士事務所のホームページや案内資料を調べ、過去にどのような実績があるのか、どこに得意分野があるのかなどを確認しましょう。そのほか、口コミ・評判サイトをチェックしたり、初回無料相談を活用したりするのも一つの手です。
7-3. 自社で対応する場合とアウトソーシングする場合を比較する
税理士や社労士に給与計算を依頼することで、自社担当者の業務負担を軽減できます。また、専門家に任せることで、法改正などの変化にも柔軟かつ正確に対応してもらえるため、安心感があります。
一方で、自社で対応する場合に比べて費用がかかる点や、自社内にノウハウが蓄積されにくい点、個人情報漏えいのリスクなど、注意すべきデメリットもあります。
このように、自社対応と外部委託のメリット・デメリットを比較検討することが重要です。
最近では、給与計算ソフトの導入も一般的になってきており、税理士や社労士への委託だけでなく、ソフトを活用して業務の効率化を図る方法も選択肢の一つとして検討する価値があります。
8. 給与計算の業務負担は専門家に任せよう


給与計算を税理士や社労士に委託することで、費用は発生するものの、煩雑な労務手続きや税務処理を専門家に任せられるという大きなメリットがあります。また、近年ではテクノロジーの進化により、給与計算ソフトの導入も進んでおり、選択肢は広がっています。
自社の人員体制や業務負担を見直し、会社の規模やニーズに合った最適な方法を選ぶことが重要です。それぞれのメリット・デメリットを十分に理解したうえで、自社にとって最も効果的な給与計算の方法を検討していきましょう。
【給与計算をアウトソーシングする際のポイントと費用相場はコチラ▶給与計算の代行・アウトソーシングのメリット・デメリットと料金相場を紹介!】
【自動で給与計算してくれる勤怠管理システムについて知りたい方はコチラ▶勤怠管理システムと給与計算を連携させるには?選定ポイントを解説】



労務担当者の実務の中で、給与計算は出勤簿を基に正確な計算が求められる一方で、Excelからの手入力や別システムからのデータ共有の際、毎月のミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
さらに、昇格や人事異動に伴う給与体系の変更や、給与計算に関連する法令改正があった場合、更新すべき情報も多く、管理方法とメンテナンスにお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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