住民税の特別徴収とは?普通徴収との違いや手続きの流れを解説
更新日: 2026.4.27 公開日: 2025.6.1 jinjer Blog 編集部
住民税の特別徴収とは、企業が従業員の住民税を毎月の給料から天引きして代わりに納める制度です。納付方法や徴収回数が普通徴収と異なります。企業側に納付する義務が発生するため、制度を正しく把握しておくことが重要です。
本記事では、住民税の特別徴収と普通徴収の違いや義務付けられる事業者を解説します。住民税を特別徴収する際の手続きや注意点も解説しているので、ぜひ参考にしてください。
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1. 住民税の特別徴収とは


住民税の特別徴収とは、従業員の住民税を事業者(企業など)が給与から天引きし、従業員に代わって市区町村へ納付する制度のことです。住民税は前年の所得をもとに課税されるため、通常は毎年6月から翌年5月までの12ヵ月に分けて給与から差し引かれます。
特別徴収を利用することで、従業員は自分で納付手続きをする必要がなくなり、納付忘れを防げるというメリットがあります。一方で、企業側には給与計算や納付管理といった実務が発生します。なお、住民税の徴収方法には「特別徴収」と「普通徴収」の2種類があり、原則として給与所得者の住民税は特別徴収で徴収することが法律により定められています。
関連記事:住民税とは?種類や計算方法・非課税になるケースを解説
1-1. 住民税の特別徴収と普通徴収の違い
住民税の特別徴収と普通徴収は、税額そのものに違いはなく、納付の仕組みが異なるだけです。特別徴収と普通徴収の主な違いは、次の表のとおりです。
| 項目 | 特別徴収 | 普通徴収 |
| 徴収・納付者 | 企業 | 個人 |
| 対象者 | 会社員やパート・アルバイトなどの給与所得者(原則) | 自営業者・フリーランス・退職者・休職者など |
| 納付方法 | 企業が給与から天引きして自治体へ納付 | 納税者本人が自治体へ直接納付 |
| 納付回数 | 年12回(毎月の給与から天引き) | 年4回(6月・8月・10月・翌年1月が一般的) |
| 納付の負担感 | 毎月少額ずつ支払うため負担が分散 | 1回あたりの納付額が大きくなりやすい |
特別徴収は、企業が給与から住民税を差し引いて納付するため、給与計算や納付手続きなどの事務負担が企業側に発生します。一方で、従業員は住民税を毎月の給与から分割して納められるので、一度に大きな金額を支払う必要がなく、納付漏れの防止にもつながります。
一方、普通徴収は、納税者本人が住民税を直接納付する方法です。居住している市区町村から納税通知書が送付され、その内容に基づいて金融機関やコンビニ、口座振替などで支払います。納付は一般的に年4回に分けておこなわれ、納期限の管理や支払い手続きは本人が行う必要があります。
関連記事:給与計算における住民税とは – 住民税の計算方法・納付・注意点について解説
1-2. 住民税の特別徴収が義務付けられる事業者
地方税法では、所得税を源泉徴収して国へ納付する義務がある給与支払者は、原則として従業員の住民税を特別徴収する義務があると定められています。つまり企業は、従業員の住民税を給与から天引きし、市区町村へ納付する「特別徴収義務者」となります。
なお、特別徴収の対象となるのは、前年中に給与の支払いを受けており、かつ当年の4月1日現在において給与の支払いを受けている従業員です。
企業は、市区町村から送付される「特別徴収税額決定通知書」に基づき、記載された住民税額を給与から天引きし、期限までに納付しなければなりません。そのため、人事・経理担当者は住民税の特別徴収制度の仕組みを正しく理解し、適切に手続きをおこなうことが重要です。
参考:地方税法第321条の3、第321条の4|e-Gov法令検索
関連記事:所得税と住民税の違いは?高いのは?計算方法の違いについても解説
1-3. 【注意】従業員から普通徴収への切り替えを求められたら?
従業員から「住民税を普通徴収にしてほしい」と相談されるケースがあります。例えば、副業などの理由で企業に所得状況を知られたくないといった理由で希望されることがあります。
しかし、会社員やパート・アルバイトなどの給与所得者の住民税は原則として特別徴収が義務付けられているので、従業員の希望や企業の判断だけで普通徴収へ変更することはできません。ただし、次のようなケースでは特別徴収が困難、事務負担が大きいと判断され、普通徴収への切り替えが認められる場合があります。
- 事業所の総従業員数が2人以下の場合
- 他の事業所で特別徴収がおこなわれている場合
- 給与額が少なく住民税を給与から天引きできない場合
- 給与の支払いが不定期の場合
- 従業員が事業専従者である場合(個人事業主の場合)
- 退職者、または退職予定者である場合(5月末日まで)
なお、具体的な取り扱いや基準は自治体によって異なる場合があります。対応に迷った場合は、該当する市区町村へ確認することが重要です。
また、普通徴収へ切り替える場合は、市区町村へ提出する「給与支払報告書」とあわせて「普通徴収切替理由書」を提出する必要があります。従業員から要望があった場合でも、制度の仕組みを説明したうえで、企業として適切な手続きをおこなうようにしましょう。
2. 住民税を特別徴収する際の手続きの流れ


企業が住民税を特別徴収する際の一般的な事務手順は次のとおりです。
- 1月末までに市区町村へ給与支払報告書を提出する
- 4月1日現在に在籍していない従業員(退職者など)がいる場合は、4月15日までに市区町村に届け出る
- 5月31日までに送付されてくる特別徴収税額決定通知書を受け取る
- 通知書に記載された住民税額を6月から翌年5月まで毎月の給与から天引きする
- 天引きした住民税を翌月の10日までに市区町村に納付する
なお、特別徴収の対象となっている従業員が退職や転職をした場合には、これらの手続きとは別に異動届出書の提出(異動月の翌月10日が期限)や残りの住民税の徴収といった対応が必要となることがあります。
特別徴収税額決定通知書は事業者用と納税義務者用の2種類が送られてきます。納税義務者用は従業員へ渡しましょう。
給与から天引きした住民税は、金融機関や自治体の窓口で納付します。ただし、普通徴収では口座振替を利用できますが、特別徴収では従業員の異動などにより毎月の納付額が変動するので、原則として口座振替に対応していません。
また、eLTAX(エルタックス)を利用すれば、ネットバンキングやクレジットカードなどによるキャッシュレス納付が可能となり、納付手続きの事務負担を軽減できます。なお、キャッシュレス納付では領収証書は発行されませんが、システム上の納付履歴で確認が可能です。紙の領収証書が必要な場合は窓口納付を利用しましょう。
参考:個人住民税(特別徴収)の納付フロー|eLTAX
参考:地方税共通納税システムによる特別徴収の納入|江東区
関連記事:給与支払報告書とは?書き方や提出先、期限、提出不要となる条件を解説
2-1. 住民税の特別徴収における納期の特例
住民税の特別徴収の納付期限は、原則として給与を支払った月の翌月10日です。つまり、従業員の給与から天引きした税額を毎月市区町村へ納付する必要があります。しかし「納期の特例」を利用すれば、納付を年2回にまとめることが可能です。
ただし、納期の特例はすべての企業が利用できる制度ではなく、給与の支払いを受ける従業員が常時10人未満の事業者が対象となります。なお、この人数には正社員だけでなく、パートやアルバイトなど給与の支払いを受けるすべての従業員が含まれます。
制度を利用するためには、市区町村へ「特別徴収税額の納期の特例に関する申請書」を提出し、承認を受けなければなりません。申請期限や手続きの詳細は自治体によって異なる場合があるので、事前に確認しておくと安心です。
なお、申請は住民税を納付する市区町村ごとにおこなう必要があります。納期の特例が承認された場合、納付期限は次のように変更されます。
- 6月分~11月分の税額:12月10日まで
- 12月分~翌年5月分の税額:翌年6月10日まで
なお、この特例はあくまで納付期限をまとめる制度です。従業員の給与から住民税を天引きする作業は、通常どおり毎月おこなう必要がある点に注意しましょう。
また、給与の支払いを受ける従業員が常時10人以上になると、「納期の特例」を利用できなくなるので、速やかに市区町村へその旨を届け出る必要があります。
2-2. 【入社等】普通徴収から特別徴収へ切り替える場合は?
普通徴収で住民税を納付していた新入社員が入社した場合などには、普通徴収から特別徴収へ切り替えが必要になることがあります。その際は「特別徴収切替届出書」を従業員の1月1日時点の住所地の市区町村へ提出します。
なお、普通徴収のうち納期限がすでに到来している税額や、すでに納付済みの税額については特別徴収へ切り替えることはできません。そのため、切替えができるのは、まだ納期限が到来していない残りの税額に限られます。
また、届出書を提出してから新しい税額通知書が企業へ送付されるまでには、通常数週間程度かかります。給与計算への反映が間に合わない場合もあるので、特別徴収への切り替えは余裕をもったスケジュールで手続きを進めることが大切です。
参考:入社等で個人住民税を普通徴収から特別徴収へ切り替える場合、どのような手続が必要ですか。|横浜市
3. 住民税を特別徴収する際の注意点


企業には「特別徴収義務者」としての責任が生じるため、制度の仕組みや手続き上の注意点を理解しておくことが重要です。ここでは、特別徴収をおこなう際に企業が押さえておきたい主なポイントを解説します。
3-1. 滞納は企業の責任になる
特別徴収では、企業が従業員の給与から住民税を天引きし、その税額を自治体へ納付します。そのため、天引きした住民税を期限までに納付しなかった場合の納付責任は、従業員ではなく企業にあります。
納付が遅れると延滞金が発生する可能性があり、自治体から督促や指導を受けることもあります。そのため、納付期限の管理を徹底することが重要です。所得税や社会保険料の納付期限とあわせて確認し、給与計算のスケジュールと連動させて納付管理をおこなうようにしましょう。
関連記事:源泉所得税の納付方法は?おすすめの選び方・納付期限を解説
関連記事:社会保険料の納付方法は?仕組みや納付期限、納付書について解説
3-2. 税額や徴収回数が変更になる場合がある
特別徴収により毎月給与から天引きする住民税の額は、年の途中で変更されることがあります。税額決定後に従業員が確定申告をしたり自治体の調査により所得控除額が変わったりした場合などに、税額が再計算されるためです。
税額が変更されると、市区町村から企業に「特別徴収税額の変更通知書」が送られてきます。企業は変更通知を見落とさずに正しい金額を給与計算に反映させなくてはなりません。
誤って変更前の税額で徴収をおこなうと税額の徴収不足や過徴収が発生するため、変更があった場合は適切に対応しましょう。
3-3. 従業員が転職や退職する際は「異動届出書」の提出が必要
従業員が年の途中で退職する場合は、住民税の特別徴収に関する手続きを企業側でおこなう必要があります。退職により給与の支払いがなくなるので、これまでのように給与から住民税を天引きできなくなるためです。
従業員が転職や退職などで異動した場合には、「特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を市区町村へ提出します。なお、異動の時期によっては、残りの住民税を「普通徴収へ切り替えるのか」「退職時に一括徴収するのか」など、徴収方法が変わる点にも注意が必要です。
また、転職先がすでに決まっている場合は、退職時に「給与所得者異動届出書」を従業員へ渡し、転職先に提出してもらう方法もあります。転職先の企業が必要事項を記入して市区町村へ提出すれば、住民税の特別徴収を継続できます。
参考:給与所得者(サラリーマン)の方を対象とした特別徴収|大田区
関連記事:転職で住民税の支払いはどうなる?納付方法や時期について解説
3-4. 複数の勤務先がある場合は「主たる勤務先」が特別徴収をする
従業員が複数の勤務先で働いている場合、住民税の特別徴収をおこなうのは原則として「主たる勤務先」です。主たる勤務先は、各勤務先が提出する給与支払報告書や年末調整の状況などをもとに、市区町村が判断します。
市区町村は、主たる勤務先へ特別徴収税額決定通知書を送付します。そのため、副業先の企業では住民税を特別徴収せず、給与から住民税を天引きしないケースがある点に注意しましょう。
参考:給与や所得が複数ある場合の住民税の徴収方法について|足立区
参考:2ヵ所以上のお勤め先から給与をもらっている場合の住民税徴収方法の変更について【令和9年度(令和8年分の所得)以降】|川口市
関連記事:年末調整のやり方とは?必要書類や手順、従業員への周知方法をわかりやすく解説!
3-5. 確定申告と住民税(特別徴収・普通徴収)の関係
確定申告の内容は、翌年度の住民税額に反映されます。例えば、副業収入や事業所得を確定申告した場合、その所得に対する住民税が新たに課税されることがあります。
確定申告書の「給与・公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」で「自分で納付」を選択すると、給与以外の所得に対する住民税(所得割)を普通徴収にすることが可能です。一方、この項目で特に選択をしない場合は、原則として、すべての住民税が給与からの特別徴収となります。
参考:給与や所得が複数ある場合の住民税の徴収方法について|中野区
4. 住民税の制度を理解して特別徴収を適切におこなおう


従業員の住民税を特別徴収することは、企業の義務です。原則として、パートやアルバイトを含むすべての従業員の住民税を給与から天引きし、企業が取りまとめて納付する必要があります。
納付が遅れた場合には、企業に延滞金が課される可能性があります。また、従業員の信用問題につながるなど、従業員に迷惑をかけてしまうおそれもあります。そのため、特別徴収の制度を正しく理解し、適切に手続きを行うことが大切です。



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