社会保険の加入手続きや必要書類、加入対象の従業員の範囲もあわせて解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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社会保険の加入手続きや必要書類、加入対象の従業員の範囲もあわせて解説

明るい家

近年、働く人の雇用環境を整えることや年金等の保障を厚くする観点から、短時間労働者に対する保険適用の拡大が進んでおり、2016年、2022年、2024年10月に法律が改正されました。

社会保険の適用事業所は、自社の従業員の加入要件と法改正を都度確認し、正しく加入手続きをおこなう必要があります。

本記事では、社会保険の加入手続きや必要書類、加入対象となる従業員の範囲などを詳しく説明します。

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1. 社会保険とは?

電卓

社会保険は、病気やケガ、出産、死亡、老齢、障害、失業などで生活が困難になった際に給付をおこない、国民の安心と生活安定を図る社会保障の制度です。

広い意味では、健康保険・厚生年金保険・介護保険・労災保険・雇用保険のことを指しますが、労災保険と雇用保険を「労働保険」、健康保険と介護保険、厚生年金保険を「社会保険」と分類することもあります。

本記事では、主に狭義の社会保険である健康保険と厚生年金保険について解説します。

関連記事:社会保険とは?企業や従業員の加入条件や手続き方法、適用拡大など注意点を解説

1-1. 会社設立時には社会保険への加入義務がある

法人においては、従業員の人数にかかわらず、すべての事業所が厚生年金保険・健康保険適用となります。法人は事業主のみの場合にも強制加入となり、法人でなくとも、従業員が常時5人以上いる個人の事業所(農林漁業、サービス業などの場合を除く)も適用事業所となります。

被保険者となるべき従業員を使用している場合は、必ず加入手続きをしなければいけません。従業員が常時5人以上いる個人事務所の業種は、令和4年10月「法律・会計にかかる業務を行う士業」が追加となる改正がなされました。その他詳細は日本年金機構のホームページにてご確認ください。

参考:事業所が健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき|日本年金機構

2. 社会保険の加入手続きの種類と必要書類

チェックリスト

社会保険である健康保険と厚生年金保険の加入にはどのような手続きが必要なのでしょうか。一つずつチェックしていきましょう。

2-1.新規適用届

事業所が厚生年金保険および健康保険に加入すべき要件を満たした場合、事業主は「新規適用届」を日本年金機構に提出しなければなりません。

事業所名称、所在地、法人番号、適用事業の種類・業種、適用開始年月日、従業員数や給与支払いに関する情報を記載するほか、添付書類として法人(商業)登記簿謄本、法人番号指定通知書等のコピー、個人事業所の場合には事業主の世帯全員の住民票が必要です。

2-2. 資格取得・喪失手続き

被保険者となる従業員の資格取得手続きとして「健康保険厚生年金保険被保険者資格取得届」を日本年金機構に提出します。

事業所の情報に加え、被保険者の氏名、生年月日、種別、個人番号、取得年月日、被扶養者の有無、報酬月額の記載が必要です。

一方、従業員が退職・死亡した際や、契約期間の変更により被保険者資格を失った場合には「被保険者資格喪失届」を日本年金機構へ提出しましょう。

2-3. 被扶養者の異動

雇用する従業員に被扶養者がいる場合には、「健康保険被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)」を日本年金機構に提出しましょう。被扶養者の削除、氏名変更などの場合にも同じ書式を使用します。

提出の際には、続柄や収入要件確認のための添付書類が必要となります。詳細は日本年金機構ホームページを参考に、従業員へ案内しましょう。

参考:家族を被扶養者にするとき、被扶養者となっている家族に異動があったとき、被扶養者の届出事項に変更があったとき|日本年金機構

2-4. 70歳の到達手続き

「健康保険厚生年金保険被保険者資格取得届」の書式は、「厚生年金保険70歳以上被用者該当届」と同一の書式となっています。

厚生年金保険は70歳になると被保険者資格を喪失します。一方、健康保険は75歳になるまで被保険者となります。そのため、70歳以上75歳未満の方は「年金の被保険者ではないが健康保険の被保険者である」という状態になります。

70歳到達前後で標準報酬月額に変動のあった場合、適正な保険料を算出するために「厚生年金保険70歳以上被用者該当届」の提出が必要です。標準報酬月額に変動の無い場合には提出を省略でき、70歳年齢到達により自動的に厚生年金保険の資格を喪失します。

2-5.算定基礎届・月額変更届

新規適用届には、「算定基礎届媒体作成」「昇給月」の記載欄があります。これらに関わる手続きが、「被保険者報酬月額算定基礎届算定基礎届」と「健康保険厚生年金被保険者月額変更届」です。

「算定基礎届」は、すでに被保険者となっている方の標準報酬月額を毎年1回見直すための届出です。毎年7月10日までに提出が必要で、4月・5月・6月の3ヵ月間の報酬を基に、その年の9月から翌年8月までの標準報酬月額を決定します(定時決定)。

なお、新規加入時には、被保険者資格取得届の提出により標準報酬月額が決定されるため、別途算定基礎届を提出する必要はありません。

新規適用届の記載事項の「算定基礎届媒体作成」の選択肢のうち「必要(紙媒体)」または「必要(社労士電子送付用)」のいずれかを選択することで、申請時期が近づく6月に必要書類を郵送で受け取ることができます。

関連記事:社会保険料の定時決定とは?算定基礎届の作成方法や提出時期を解説

「月額変更届」とは、固定的賃金に変動があり、標準報酬月額を変更する必要がある場合に、日本年金機構におこなう届出です。この届出によって、社会保険料の算定基礎となる標準報酬月額が見直されます。

月額変更届は、法律上「随時改定」と呼ばれ、要件に該当する月(昇給月)から3ヵ月後が申請時期の目安となっています。

新規加入時には、資格取得届の提出によって標準報酬月額が決定されるため、別途月額変更届を提出する必要はありません。

新規適用届においては、適切に標準報酬月額の改定(定時決定や随時改定)がおこなわれているかどうかを確認するため、参考情報として「昇給月」を記載します。

届出の作成の際には、「月額変更届」がどの時期に必要となるか、併せて確認しておくとその後の手続きがスムーズになるでしょう。

関連記事:社会保険の随時改定とは?標準報酬月額を改定する条件や月額変更届の手続きを解説

2-6.賞与支払届

新規適用届には、「賞与支払予定月」「賞与支払届媒体作成」の記載欄があります。

賞与に対しても健康保険料(介護保険料含む)と厚生年金保険料がかかります。賞与とは、名称を問わず、労働の対償として年3回以下で支給されるものをいいます。支給予定のある場合には「賞与支払予定月」を記載しましょう。

また、「賞与支払届媒体作成」の記入欄において、「必要(紙媒体)」または「必要(社労士電子送付用)」のいずれかを選択することで、「賞与支払届」の申請時期が近づいた際、必要書類を郵送で受け取ることができます。提出期限は賞与の支払いから5日以内と短い期限となっているため、必要なタイミングで書類が届くようにしておくと安心です。

参考記事:賞与支払届とは?手続きの方法や注意点、電子申請についても解説

3.社会保険加入手続きの期限はいつまで?

必要書類

社会保険の加入手続きには、どのような期限が設けられているのでしょうか。各手続きごとの具体的な締切を確認してみましょう。

3-1.5日以内

「新規適用届」は、事業所が厚生年金保険および健康保険に加入すべき要件を満たした場合に、その事実の発生から5日以内が提出期限となっています。

また、「被保険者資格取得届」は従業員を雇用したとき、その事実の発生から5日以内、「健康保険被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)」は、被扶養者にするとき、その事実の発生から5日以内が提出期限です。

また、退職や死亡等による資格喪失の際の「被保険者資格喪失届」も期限は資格喪失日から5日以内となっています。

3-2.10日以内

保険加入手続きの中には、提出期限が「10日以内」と定められているものもあります。

労働保険(労災保険・雇用保険)の適用事業となったときは、事業主は「保険関係成立届」を所轄の労働基準監督署に提出しなければなりません。保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内が期限です。

また、雇用保険の適用事業所を設置(または廃止)した際には、事業主はその設置の翌日から起算して10日以内に「適用事業所設置(廃止)届」を所轄公共職業安定所に提出しなければなりません。

参考:労働の保険成立手続き|厚生労働省

参考:雇用保険適用事業所を設置する場合の手続きについて|厚生労働省

3-3.その他

その他社会保険に関する手続きについて期限を確認します。

「賞与支払届」は、賞与支払日から5日以内が期限です。5日を過ぎてしまった場合にも手続きは可能ですが、登録された賞与支払予定月の翌月までに届出がない事業主の方には、翌々月に年金事務所から督促状が送付されます。万が一届出を忘れてしまった場合は、速やかに督促状に記載の期限までに提出しましょう。

その他、代表的な手続きの期限をまとめたので参考にしてください。

  • 算定基礎届:毎年7月10日が期限です。4月・5月・6月の3ヵ月間の報酬をもとに届出に記載します。
  • 月額変更届:固定的賃金の変動のあり、継続した3ヶ月の報酬平均額が、現在の標準報酬月月額と2等級以上の差が生じた時は速やかに提出します。4ヵ月目から標準報酬月額が変更となります。
  • 雇用保険被保険者資格取得届:雇い入れた労働者が雇用保険の被保険者となる場合に、その事実のあった日の属する月の翌月10日まで。
  • 概算保険料申告書:労働保険の保険料を申告・納付するための書類で、労働保険の保険関係の成立日の翌日から起算して50日以内が初回の提出期限です。
  • 労働保険の保険料:その保険年度分(4月1日から翌年3月31日まで)を「概算保険料」として申告・納付し、翌年度の年度更新と呼ばれる手続きで確定させて精算します。この手続きを労働保険の年度更新といい、毎年6月初旬から7月10日の期間内の提出が必要です。

関連記事:労働保険の年度更新とは?提出期限や電子申請手続きのやり方をわかりやすく解説!

4. 社会保険の加入手続き方法

従業員

これらの社会保険の手続きはどのようにおこなうのでしょうか。企業の担当者が自身で申請する場合と、外部に委託する方法をそれぞれ解説します。

4-1. e-GOVの申請方法

社会保険の多くの手続きは電子申請が可能となっています。「e-Gov電子申請」は、デジタル庁が運営する行政ポータルサイトです。年金事務所への各種申請手続きを24時間オンラインでおこなうことができます。

電子申請の際には電子証明書またはGビズIDが必要となり、発行までに2~3週間かかるので、利用の際には早めに手続きを進めましょう。

参考:電子申請(e-Gov)|厚生労働省

4-2. 管轄の年金事務所などで手続きする方法

電子申請ができない場合にも、指定の書式に手書きすることで紙媒体での提出もできます。

郵送の場合には、事務センターまたは管轄の年金事務所に送付、窓口への提出の場合には管轄の年金事務所へ持参することにより手続きが可能です。

4-3. 顧問社労士などに依頼する方法

顧問社労士などに手続きを依頼することもおすすめです。特に社会保険の新規適用手続きは、同時期に複数の届出が重なり、管理や確認が煩雑になり時間と労力がかかります。

社労士に依頼すると、適切な事業所情報の登録、必要書類の準備から申請、従業員の資格取得手続きも併せて対応します。法的なリスクを回避し、書類の不備による手戻りを防止できる安心感もメリットです。

5. 社会保険料の負担割合と支払方法

リスクをメモリが表している

これまで、社会保険加入手続きの種類や期限、方法について説明してきました。では実際に保険料を支払う際、企業および従業員の負担割合はどの程度か、また支払い方法にはどのような選択肢があるのでしょうか。

5-1. 社会保険料の計算式

社会保険料(健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料)のそれぞれの計算式をご説明します。

(1)健康保険料

健康保険料=標準報酬月額×健康保険料率÷2(折半額)

(2)介護保険料(※40歳以上65歳未満の方のみ)
介護保険料=標準報酬月額×介護保険料率÷2(折半額)

(3)厚生年金保険料
厚生年金保険料=標準報酬月額×厚生年金保険料率÷2(折半額)

※標準報酬月額とは、社会保険料を計算しやすくするため、報酬月額の区分ごとに設定されている基準額で、現在58,000円(第1級)から1,390,000円(第50級)までの全50等級に区分されています(健康保険)

※賞与に関しては、標準賞与額をもとに計算します。

健康保険料率は都道府県ごとに異なり、全国一律ではありません。一方、介護保険料率と厚生年金保険料率は全国一律となっています。

参考:厚生年金保険料額表|日本年金機構

参考:保険料率|全国健康保険協会

参考:協会けんぽの介護保険料率について|全国健康保険協会

保険料の端数処理は、原則として50銭以下切り捨て、50銭超は切り上げです。ただし、会社と従業員の間で「端数は会社負担」などの特約がある場合は、その特約に基づいて処理できます。

標準報酬月額の決定は、資格取得時決定、定時決定、随時改定、育児休業等終了時の改定、産前産後休業終了時の改定の5種類があります。給与計算の際には正しい標準報酬月額であるかの確認も必要です。

社会保険料の計算は、原則として事業主が毎月の給与計算時におこないます。

保険料は、上記の計算式で算出した金額を事業主と従業員で折半し、従業員負担分は毎月の給与から控除されます。このとき、当月支給する給与から差し引かれるのは、原則として、前月分の保険料です。

例えば、5月の給与からは4月分の保険料が差し引かれることになります。

5-2. 支払方法

健康保険・厚生年金保険の保険料の徴収は、日本年金機構(年金事務所)がおこなっています。事業主は毎月の給料および賞与から被保険者負担分の保険料を差し引いて、事業主負担分の保険料とあわせて、納付期限までに納めます。

納付期限は、納付対象月の翌月末日です。例えば4月分保険料は5月末日が納付期限となり、末日が休日の場合は翌日以降の最初の営業日となります。

支払い方法には、口座振替、金融機関の窓口での納付、電子納付(Pay-easy)があります。

参考:厚生年金保険料等の納付|日本年金機構

5-3. 口座振替を希望する場合

口座振替で納付する場合には、まず、「厚生年金保険料等・国民年金保険料の口座振替可能金融機関一覧表」に該当の金融機関があるか確認しましょう。

参考:厚生年金保険料等・国民年金保険料の口座振替可能金融機関一覧表(PDF)|日本年金機構

口座振替を希望する場合には、「保険料口座振替納付(変更)申出書」の提出が必要です。

必要事項を記入したのち、利用する金融機関の確認を受けましょう。所在地を管轄する事務センターもしくは年金事務所へ郵送、または年金事務所の窓口に提出することで申込みが完了します。

参考:厚生年金保険料等の納付|日本年金機構

6. 必ずおさえよう!社会保険の加入手続きの対象者

男性

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入対象となる従業員は、以下の条件に該当する方です。

まず、一般的な加入要件は、1週間の所定労働時間および1ヵ月の所定労働日数が正社員の3/4以上である従業員です。例えば正社員の労働時間が週40時間の場合、週30時間以上勤務する従業員は加入対象となります。

また、従業員数51人以上の事業所は短時間労働者の加入要件が定められており、以下の4つの要件をすべて満たす従業員は加入対象となります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金が88,000円以上(基本給および諸手当含む)
  • 2ヵ月を超える雇用見込みがある
  • 学生ではない(休学中、夜間学生、通信制課程の学生等は除く)

社会保険の加入は従業員の希望で選択できるものではなく、要件に該当する場合は必ず加入する必要があるので注意が必要です。また、正社員、パート、アルバイト等の雇用形態に関わらず、加入要件を満たせば加入義務があり、試用期間中も2ヵ月以上の雇用が見込まれる場合には入社日から加入します。

加入要件に該当するかどうか不明な場合は、管轄の年金事務所に相談されることをおすすめめします。

参考:適用事業所と被保険者|日本年金機構

関連記事:社会保険の加入条件をやさしく解説|短時間労働や例外パターン、よくある質問も紹介

6-1.社会保険適用拡大とは

社会保険適用拡大は、パート・アルバイト等の短時間労働者に対する厚生年金保険・健康保険の適用範囲を段階的に広げてきた制度改革です。適用拡大には主に以下の3つの目的があります

  • 短時間労働者に対して、保険による適切な保障を確保すること
  • どのような働き方でも、社会保険制度が働き方の選択を妨げたり、不公平が生じたりしないようにすること
  • 厚生年金加入により財源を増やすことで社会保障を強化すること

参考:短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大|日本年金機構

社会保険の適用拡大はこれまで段階的に進められてきました。従来はフルタイムの従業員や週の所定労働時間および1ヵ月カ月の所定労働日数がフルタイムの従業員の3/4以上のパート・アルバイトのみが社会保険の適用対象でした。

その後、一定規模以上の会社(特定適用事業所)で働く短時間労働者に対して、4つの要件(週所定労働時間20時間以上、月額賃金88,000円以上、2ヵ月カ月を超える雇用見込み・学生ではない)を満たす場合に社会保険の適用を拡大しました。

特定適用事業所の対象範囲は以下のように段階的に拡大されています。

  • 2016年10月:従業員数501人以上の企業
  • 2017年4月:従業員数500人以下の企業でも労使合意があれば適用可能に
  • 2022年10月:従業員数101人以上の企業に拡大
  • 2024年10月:従業員数51人以上の企業に拡大、従業員数50人以下の企業でも労使合意があれば適用可能に

政府は全ての働く人が将来に安心感を持てるよう、被用者保険のさらなる適用拡大を進めるという方針を示しており、将来的には適用事業所の規模要件のさらなる引き下げ(51人未満の企業への拡大)や、適用要件の緩和(週20時間以上の要件や月額88,000円以上の要件の見直し)、学生アルバイトへの適用拡大の可能性もあります。

参考:被用者保険の適用拡大及びいわゆる「年収の壁」への対応について|厚生労働省

6-2. 社会保険の加入手続きが不要となるケース

社会保険(健康保険・厚生年金保険)は原則として、法人の事業所や一定規模以上の個人事業所に強制適用されますが、例外的に適用事業所とならないケースがあります。

個人事業所であって、以下の業種に該当する場合は、常時5人以上の従業員を雇用していても強制適用事業所となりません。

  • 飲食業
  • サービス業(美容室など)
  • 農業、林業、漁業
  • 宿泊業

また、個人事業所で常時使用する従業員が5人未満の場合は、業種を問わず強制適用事業所とはなりません。ただし、任意適用事業所として社会保険に加入することは可能です。

さらに、従業員を雇用しておらず、代表取締役が1人のみの法人で、その代表者に報酬が支払われていない(報酬0円)場合は、社会保険に加入しなくても差し支えありません。

なお、強制適用事業所となっていない場合でも、従業員の2分の1以上の同意を得て申請することにより、「任意適用事業所」として社会保険に加入することができます。この場合、事業所の事業実態や安定した使用関係が確認できることが条件となります。

7. 社会保険の加入手続きに関するよくある質問

はてな

社会保険の加入手続きに関するよくある質問をいくつか紹介します。

7-1. 社会保険に加入手続きをしていない場合はどうなるの?

社会保険の加入義務がある事業所が未加入であると、年金事務所から電話や文書、訪問などで加入指導がおこなわれ、最大2年分遡って手続きと保険料の納付を求められます。未加入期間中に不正に利用した場合には医療費が返還請求されたり、手当や年金額に影響が出る可能性もあります。悪質な場合は罰則が科されることもあるため、加入漏れに気づいたら速やかに「被保険者資格取得届」を提出しましょう。

参考:e-GOV法令検索|健康保険法

関連記事:社会保険未加入での罰則とは?加入が義務付けられている企業や従業員の条件も解説

7-2. 社会保険の加入手続きの期限は?

社会保険の加入手続きは、事業所が厚生年金保険および健康保険に加入すべき要件を満たした場合に、その事実の発生から5日以内におこなう必要があります。

手続き方法は、電子申請、郵送、窓口のいずれかから選択が可能です。必要書類を日本年金機構に提出することで、手続きが完了します。

資本金が1億円を超える特定の法人や投資法人などには、オンラインによる電子申請が義務付けられているため、注意しましょう。

7-3. 60歳以上で退職後1日も空けず再雇用された場合どうなる?

定年退職と再雇用が同日に行われる場合など、60歳以上の方が同一企業内で退職後1日も空けずに再雇用された場合(同日得喪と呼ばれる状態)、以下の手続きが必要となります。

  • 「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」の提出
  • 「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」の提出

これらの届出を、退職日・再雇用日から5日以内に日本年金機構へ提出する必要があります。

通常の資格取得届では添付書類は原則不要ですが、本事例の場合は例外として再雇用契約書のコピーなど雇用関係を証明できる書類の添付が必要です。給与体系や雇用条件が変わる場合には、新たな給与に基づいて標準報酬月額が変更となります。

参考:60歳以上の厚生年金の被保険者が退職し、継続して再雇用される場合、どのような手続きが必要ですか。|日本年金機構

7-4. 退職後も健康保険に引き続き加入したい場合の手続きは?

退職後の健康保険の選択肢としては、主に以下の3つがあります。

  • 任意継続健康保険
  • 国民健康保険
  • ご家族の健康保険(被扶養者)

関連記事:社会保険と国民健康保険の切り替え手続きとは?タイミングや注意点を解説

任意継続健康保険とは、退職や労働時間の減少などにより健康保険の資格を喪失した方が、引き続き同じ保険者の健康保険に最長2年間加入できる制度です。原則として、資格喪失前と同じ保険給付を受けることができますが、傷病手当金および出産手当金は支給されません。

任意継続被保険者となるためには、資格喪失日の前日(退職日)までに継続して2ヵ月以上の被保険者期間があることが要件となります。

加入手続きは原則本人がおこなうこととなっており、資格喪失日(退職日の翌日)から20日以内に「健康保険任意継続被保険者資格取得申出書」を自身の居住する都道府県の協会けんぽまたは加入していた健康保険組合に提出する必要があります。

参考:健康保険任意継続制度(退職後の健康保険)について|全国健康保険協会

8. まとめ社会保険の要件を理解して正しい手続きを

PC

社会保険は、法人や常時5人以上の従業員を雇用する個人事業所など法律で定める「適用事業所」に加入義務があります。事業主は従業員が要件を満たすか確認し、新規適用届・資格取得届等を期限内に電子申請または書面で提出しなければなりません。

保険料は原則、健康保険・厚生年金とも会社と従業員が折半負担で、毎月の給与から控除し翌月末までに納付します。

要件を誤って認識したり届出を遅らせた場合は指導の対象となるため、入社時や雇用契約の変更時には必ず併せて社会保険の加入要件に該当するかを確認しましょう。パートやアルバイトも今後も社会保険適用拡大の可能性もあり法改正には注意が必要です。

手続きにおいては、従業員に提出してもらわなくてはならない書類も多いため、間に合うようにあらかじめ伝えておくと加入手続きがスムーズにおこなえます。

手続き期限を守った適正な運用で、従業員が安心して働ける環境をつくりましょう。

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