給与計算の基礎を解説!初心者でもわかる給与の仕組みや計算方法
更新日: 2025.10.9 公開日: 2020.12.10 jinjer Blog 編集部

給与計算は、従業員に支給すべき給料を計算する業務で、人事労務・経理の中でも特に重要な業務です。
給与計算を間違えてしまうと、従業員との信頼関係が崩れるだけでなく、法令違反となり罰則を受けるおそれもあります。そのため、初めて業務に携わるときは、基本をしっかり押さえ、正確かつスピーディーな給与計算が求められるでしょう。
この記事では、初心者でもミスなく毎月の給与計算を進められるように、全体の流れや注意点を解説します。また、もし計算を間違えてしまった際の対応方法も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
【給与計算業務のまとめはコチラ▶給与計算方法を11ステップに分けて解説!注意点・効率化のポイントも】
目次
「自社の給与計算の方法があっているか不安」
「労働時間の集計や残業代の計算があっているか確認したい」
「社会保険や所得税・住民税などの計算方法があっているか不安」など給与計算に関して不安な方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向けて当サイトでは「給与計算パーフェクトマニュアル」という資料を無料配布しています。
本資料では労働時間の集計から給与明細の作成まで給与計算の一連の流れを詳細に解説しており、間違えやすい保険料率や計算方法についてもわかりやすく解説しています。
給与計算の担当者の方にとっては大変参考になる資料となっておりますので興味のある方は、ぜひこちらから資料をダウンロードの上、ご覧ください。
1. 給与計算の基本


給与計算とは、従業員に賃金を支払うために、勤怠情報をもとに給与を計算する業務のことです。
担当者は、毎月総支給額の計算をするだけでなく、社会保険料や所得税・住民税などの控除額の計算、時季によっては年末調整などの業務もおこないます。
ここでは、給与計算の基礎的な知識を解説していきます。
1-1. 給与に含まれる3つのお金
給与計算をスムーズにおこなうためには、まず給与に含まれるものを正しく把握します。
給与に含まれるのは主に基本給、各種手当、変動する給与の3つです。
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基本給 |
手当やインセンティブなどを含まない給与のベースになるものです。月による変動はありません。 |
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各種手当 |
通勤手当・役職手当・資格手当・家族手当・住宅手当など、会社や従業員によって支給の有無や支給額が異なる手当です。 |
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変動する給与 |
残業代・深夜割増賃金・休日割増賃金など、働いた時間や出勤した日数によって変動する給与分です。 |
基本給は言葉の通り給与の基本になるお金で、昇給や減給がない限り変動することはありません。
ただし、各種手当は従業員の家族構成や住まい、資格・役職によって変化するのが一般的です。さらに、残業代や割増賃金、各種手当などは月によって支給額が異なります。
これに加えて、賞与(いわゆるボーナスのこと)がある会社もあり、会社の利益に応じて増えたり減ったりします。
給与計算では、この変動する給与を間違いなく計算し、正確に支給することがとても重要といえるでしょう。
▼より詳しく割増賃金の計算方法が知りたい方はこちら
関連記事:割増賃金の基礎となる賃金とは?計算方法など労働基準法の規定から基本を解説
1-2. 給与計算の基礎的な仕組み
給与計算の仕組みは、前述した給与に含まれる3つのお金を合算し、そこから控除額を差し引きます。計算式は次の通りで、給与計算の業務を覚える第一歩として覚えておくとよいでしょう。
- 給与計算の基本的な計算式
- 【総支給額】-【控除額】=【差引支給額】
- 総支給額:基本給に残業代などの各種手当をプラスした金額で、額面とよばれるもの。前項の3つのお金を合算したもの)
- 控除額:給与から差し引く税金や社会保険料のこと(会社によって親睦会費などの特別な項目を設けていることもある)
- 差引支給額:総支給額から控除額を引き、従業員の銀行口座に振り込む金額で手取り額と表現されることもある
例えば、総支給額が23万円で控除額が2万円の場合を見てみましょう。手取りとなる差引支給額、つまり実際に従業員に振り込む給与は、次のようになります。
【総支給額:23万円】-【控除額:2万円】=【差引支給額:21万円】
2. 給与計算のやり方と全体の流れ


給与計算は、一見複雑な仕組みに思われがちですが、中身はとてもシンプルです。総支給額を計算したあと、控除額を差し引いて支給額を決定します。
【Step1】労働時間の集計と残業代・割増賃金の計算
【Step2】総支給額の計算
【Step3】社会保険料の計
【Step4】雇用保険料の計算
【Step5】住民税と所得税の計算
【Step6】その他控除の計算
【Step7】差引支給額の決定
【Step8】金融機関へ振り込み・明細書の準備
【Step9】社会保険料・税金の納付
計算方法の流れを9つのステップに分けて解説します。
2-1. 【Step1】労働時間の集計と残業代・割増賃金の計算
勤怠表やタイムカードなどをチェックし、従業員ごとに1ヵ月分の労働時間を集計します。
また、定時で働いた場合の給与は基本給に含まれていますが、定時を超えて働いた場合は残業代の支給が必要です。さらに、休日労働(法定休日の労働)や深夜労働(22時~翌5時の労働)には、割増賃金の支給も必要です。集計した勤怠をもとに、残業代や割増賃金を計算しましょう。
割増賃金の計算式は、次のとおりです。
割増賃金 = 対象となる労働時間 × 1時間あたりの基礎賃金 × 割増率
「1時間あたりの基礎賃金」は、「月給 ÷ 1ヵ月あたりの平均所定労働時間」で算出します。なお、ここでいう月給には、基本給だけでなく、役職手当や資格手当などの固定給(家族手当や通勤手当などの一部手当を除く)も含まれるので注意しましょう。
割増率については、労働基準法によって次のとおりの基準が設けられています。
|
労働時間 |
時間 |
割増率 |
|
時間外労働(法定内残業) |
1日8時間、週40時間を超えない範囲の残業時間 |
割増なし |
|
時間外労働(法定外残業) |
1日8時間、週40時間を超える残業時間 |
25% |
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1ヵ月に60時間超の時間外労働 |
月60時間を超える時間外労働(法定外残業)の時間 |
50% |
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休日労働 |
法定休日の労働時間 |
35% |
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深夜労働 |
22:00~翌5:00までの労働時間 |
25% |
割増労働は重複して発生するケースもあり、その場合は次のように合算して割増率を求めます。
|
労働時間 |
時間 |
割増率 |
|
時間外労働+深夜労働 |
時間外労働(25%)+深夜労働の時間(25%) |
50% |
|
休日労働+深夜労働 |
法定休日労働(35%)+深夜労働の時間(25%) |
60% |
|
時間外労働(1ヵ月に60時間超)+深夜労働 |
時間外労働(1ヵ月に60時間超)(50%)+深夜労働の時間(25%) |
75% |
例えば、残業が深夜(午後10時~翌午前5時)に及んだ場合、時間外労働の割増率25%と、深夜労働の割増率25%を合算し、合計50%の割増率が適用されます。同様に、法定休日の労働が深夜に及んだ場合は、休日労働の割増率35%と、深夜労働の割増率25%を合算し、合計60%の割増率が適用されることになります。
なお、労働基準法で定められている休日(法定休日)には、法定労働時間が適用されないため、休日労働と時間外労働の割増率が重複することはありません。
ただし、労働基準法で定められた割増率は、あくまで最低限のラインです。企業によっては、より高い割増率を適用しているところもあるので、事前に就業規則を確認しておくことをおすすめします。
2-2. 【Step2】総支給額の計算
最初に、従業員情報をもとに総支給額を計算します。
総支給額とは、ベースとなる基本給に、時間外手当や役職手当など、各種手当を含めた金額を表します。総支給額の具体的な計算方法は次の通りです。
【総支給額】=【基本給】+【各種手当】-【欠勤控除】
基本給は年齢や勤続年数、経験などを考慮し、企業ごとの規定に基づいて定められます。
一方、手当の種類は「固定」と「変動」の2つに分かれています。
- 固定手当(通勤手当、役職手当、資格手当、住宅手当など)
- 変動手当(残業手当、深夜手当、休日出勤手当など)
変動手当である残業手当や休日出勤手当は、それぞれ割増率が決められています。
労働基準法では時間外労働が25%(月60時間超えは50%)、休日労働が35%、深夜労働が25%と、割増率の最低基準が定められています。通常の労働時間だけでなく、残業や夜勤、休日出勤の時間も正しく管理し、給与計算をおこなうことが大切です。また、これらは従業員の勤怠に応じて毎月変動するため、常に勤怠データを確認し、間違いが起きないよう正確に計算をしましょう。
関連記事:労働基準法第37条における割増賃金規定の正しい計算方法
2-3. 【Step3】社会保険料の計算
次に、社会保険料の計算をします。
社会保険料は「厚生年金保険」「健康保険」「介護保険」の総称です。
これらの保険料は、以下の計算式で求められます。
社会保険料:【各保険料】=【標準報酬月額】×【保険料率】
標準報酬月額とは、従業員が事業主から受け取る毎月の報酬を区切りの良い幅で区分したものです。毎年4月~6月に支払った給与を基に、7月に定時決定をして、標準報酬月額の改定をしなければならないので注意しましょう。
厚生年金保険料率は、2017年9月より一律(18.3%)に固定されています。健康保険料率や介護保険料率は、加入する健康保険組合によって異なるのでよく確認することをおすすめします。
なお、40歳以上の従業員は介護保険にも加入する義務があり、健康保険料に上乗せして介護保険料も支払う必要があります。
また、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料)は、労使折半で負担します。そのため、算出された保険料のうち、従業員負担分(半額)を給与から控除しなければなりません。
【社会保険料の計算について知りたい方はコチラ▶社会保険料の計算方法とは?給与計算や社会保険料率についても解説】
社会保険料の計算方法について「具体的なイメージがつかない」と不安をお持ちの方もいるのではないでしょうか。図表で視覚的にわかりやすく理解したいという方に向けて、当サイトでは、社会保険料の考え方や計算方法をまとめた資料を無料で配布しています。
正しい給与計算をするために社会保険料の計算方法を知りたい方は、ぜひこちらから「社会保険料の給与計算マニュアル」をダウンロードしてお役立てください。
2-4. 【Step4】雇用保険料の計算
雇用保険料は、従業員と事業主で分けて負担しているため、総支給額から従業員負担分の雇用保険料を控除する必要があります。雇用保険料の計算式は次のとおりです。
雇用保険:【雇用保険料】=【総支給額】×【保険料率】
雇用保険料率は厚生労働省から毎年発表されており、業種や年度によって異なります。2025年4月からは雇用保険料率が引き下げられるので、最新の雇用保険料率を給与計算に反映させて、正しく雇用保険料の控除をおこないましょう。
社会保険料は労使折半である一方、雇用保険料は事業の種類や雇用形態によって負担割合が異なり、労使で一定の割合に基づき按分して納めます。正しい雇用保険料率を確認したうえで給与から天引きしましょう。
関連記事:【最新版】65歳以上の雇用保険料の改正内容とは?給与計算ルールについても解説
2-5. 【Step5】住民税と所得税の計算
保険料のほかに、源泉徴収する「住民税」と「所得税」の計算も必要です。
住民税は、「特別徴収」が適用されている場合、企業が給与から天引きし、自治体へ納付します。企業は、毎年、各自治体から送付される「住民税通知決定書」をもとに、給与からあらかじめ指定された住民税額を控除します。そのため、特に計算は必要ありません。
毎月の給与から控除すべき所得税(源泉所得税)額は、源泉徴収税額表を基に計算します。課税対象額の計算式は次のとおりです。
【課税対象額】=【総支給額】-【非課税対象の諸手当】-【社会保険料/雇用保険料】
源泉徴収税額表は毎年国税庁から公表されており、令和7年分の源泉徴収税額表は、次のページから確認できます。
関連記事:所得税とは?|源泉所得税の計算方法や税額表の見方を解説
関連記事:給与計算における住民税とは|住民税の計算・納付・注意点について解説
2-6. 【Step6】その他控除の計算
保険料や税金以外にも、社員会費や昼食代など、賃金の控除に関する協定を労働者と企業の間で合意された条件に基づいて結ぶことで、給与から天引きできます。
例えば、企業が提供する福利厚生の一環として昼食を社員に提供する場合、一定の料金を給与から控除するという形が一般的です。このような控除項目は、従業員がより良い環境で働くための援助となるので、労使双方にとってメリットがあります。
また、社員会費などの控除も同様に従業員の参画意識を高められるため、控除項目を明確に定め、双方の理解を得ることが重要です。
さらに、労使協定の内容は、就業規則に沿ってしっかりと文書化され、適切に管理される必要があります。その結果、企業は従業員との信頼関係を築き、労働環境の改善を図ることができます。
2-7. 【Step7】差引支給額の決定
Step3~Step6までの控除額が計算できたら、総支給額から各種控除額を差し引き、実際に従業員の口座に支給される最終的な差引支給額(手取り)を計算します。
【差引支給額(手取り)】=【総支給額】-【各種控除額】
給料として支給されている「総支給額(全ての金額)」から、「控除額(保険料・税金など)」を差し引けば、実際に従業員が手にする支給額を決定できます。
関連記事:給与計算業務の流れ|月間と年間のスケジュールも紹介!
2-8. 【Step8】金融機関へ振り込み・明細書の準備
支給額が確定したら、金融機関への振り込み依頼をおこない、同時に給与明細書も発行します。
労働基準法では給与明細書の提供について定められていませんが、所得税法において従業員に給与明細書を渡す義務が規定されているため、必ず作成して給与支払い時に渡す必要があります。
さらに、賃金台帳に必要な情報を記録します。労働基準法において、賃金台帳は原則最後に書き込んだ日から5年間(当面の間は3年間)保管することが義務付けられています。
関連記事:賃金台帳とは?記載事項や作成方法、給与明細との違い・代用できるかを解説
2-9. 【Step9】社会保険料・税金の納付
給与の支払いが完了したら、各種社会保険料や所得税、住民税を支払います。
社会保険料については、日本年金機構や健康保険組合などから送付される「保険料納付書」に基づき、月末までに納付をおこないます。また、給与から源泉徴収した所得税は翌月10日までに税務署へ、住民税は同じく翌月10日までに各自治体へ納付します。
以上が給与計算業務の一連の流れで、これは給与を支給するたびにおこなう業務です。
関連記事:【最新版】65歳以上の雇用保険料の改正内容とは?給与計算ルールについても解説
3. パート・アルバイトの給与計算の方法


月給制が中心の正規雇用者に対し、パートやアルバイト従業員は時給や日給で計算することが多いです。
また、手当の有無や金額にも差があることも多いため、正しい計算方法を知っておきましょう。ここでは、パート・アルバイトの給与計算方法について解説します。
3-1. 給与計算の基本は正社員と同じ
パートやアルバイト従業員の給与計算においても、【総支給額】-【控除額】=【差引支給額】という基本の計算式は変わりません。
ただし、総支給額の計算方法や控除が正規社員とは取り扱いが異なるため、この点にだけ注意して計算するようにしましょう。
3-2. 給与形態の違いで計算方法が変化する
給与形態が時給や日給の場合は、その形態に合わせて総支給額を計算することになります。
例えば、時給1,200円の従業員が通常労働を70時間した場合は、【時給1,200円】×【労働時間70時間】=支給額84,000円という計算ができます。
さらに、時間外労働や休日労働があった場合は、基本給に各種手当を加算して総支給額を算出します。月給制の正社員と比べて、パート・アルバイト従業員は勤務時間や日数の変動により毎月の支給額が変わりやすく、その分、細かい計算が多くなるので十分に注意して給与計算をおこないましょう。
また、パート・アルバイト従業員でも年収や労働時間によっては、雇用保険や社会保険への加入義務が発生します。加入義務が発生する従業員の給与計算では、保険料も正確に控除することを忘れないようにしてください。
関連記事:社会保険の加入手続きや必要書類、加入対象の従業員の範囲もあわせて解説
3-3. 就業規則に則って計算をする
就業規則を正規雇用者とパート・アルバイト従業員で分けている場合は、パート・アルバイト従業員に向けた就業規則に則って給与計算することも重要です。
就業規則が異なると、控除が正規雇用者と変わることがあるため、パート・アルバイト用のルールに則って計算できているか必ず確認しましょう。
4. 給与計算をする際の注意点


給与計算は毎月発生する定型的な業務であり、経験を積むことでスムーズに対応できるようになります。しかし、従業員の生活に直結する重要な業務であるため、ミスが発生しないよう細心の注意が必要です。
誤った対応をしてしまうと、従業員とのトラブルや信頼関係の悪化につながる可能性もあるので、十分に注意しましょう。ここでは、給与計算において注意すべきポイントについて詳しく紹介します。
4-1. 最低賃金ルールを守る
最低賃金は、都道府県ごとに決められています。時間額で決められているものですが、月給や日給制の場合でも無視はできません。給与計算をする際は必ずこの最低賃金ルールを守り、時給換算をした場合に最低賃金を下回っていないか確認するようにしましょう。
この確認は特に重要で、年度ごとに最低賃金が変更される可能性があるため、最新情報を常にチェックする必要があります。もしも最低賃金を下回る支給額になっている場合は、雇用者側が罰せられる可能性が出てきます。
また、最低賃金を下回る給与支払いが発覚した場合、従業員との信頼関係も損なわれるので、正確な把握が求められます。
給与計算においては法令遵守が主な責務となり、特に最低賃金の厳守は訴訟リスクを回避するためにも不可欠です。適正な給与支給は企業の信頼性を高め、従業員のモチベーション向上にも寄与します。
関連記事:労働基準法に基づく最低賃金とは?その基準や違反への罰則を解説
4-2. 賃金支払いの5原則を遵守する
給与は計算方法だけでなく、支払方法にもルールがあります。とくに、労働基準法第24条の賃金支払いの5原則を遵守することが大切です。
- 全額払いの原則:給与は全額支払う必要がある
- 通貨払いの原則:給与は通貨(現金)で支払わなければならない
- 直接払いの原則:給与は直接労働者本人に支払う必要がある
- 毎月1回以上払いの原則:給与は毎月1回以上支払わなければならない
- 一定期日払いの原則:給与は期日を定めて支払われる必要がある
例えば、給与支給額が少ないからといって、3ヵ月分をまとめて支給するのは違法となります。なお、社会保険料・税金の控除や、銀行口座への振込など、例外もあるので、正しくルールを確認しておきましょう。
関連記事:賃金支払いの5原則とは?例外や守られないときの罰則について
4-3. 残業代・割増賃金を正しく算出する
所定労働時間を超えて働かせる場合、残業代が発生します。また、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働や、法定休日の労働、深夜帯(22時~翌5時)の労働には、通常の賃金に加えて、割増賃金も支給しなければなりません。
例えば、法定休日に夜勤をおこなうことになれば、休日労働と深夜労働の割増率を合算して、割増賃金を計算する必要があります。このように、残業代や割増賃金の計算は複雑になるケースもあるので、ミスが起きないよう、給与計算ソフトを導入するなど、あらかじめ対策をおこなっておきましょう。
関連記事:休日手当とは?割増賃金率の種類や計算方法、休日出勤でも手当が発生しない場合を解説
4-4. 各種手当の計算の仕方に気を付ける
通勤手当や家族手当、住宅手当、資格手当など、各種手当の計算にも注意が必要です。例えば、通勤手当の場合、電車やバスなどの交通機関を利用するのであれば、月15万円までが非課税となります。ただし、社会保険料や雇用保険料の計算の基礎には、全額含めなければなりません。
このように、手当の種類によって、課税対象かどうか、社会保険料への影響などが異なり、給与計算に大きな影響を与えることもあります。また、従業員によって支給条件・支給額を変えている場合、ミスが起きないよう、就業規則をよく確認し、慎重に計算をおこないましょう。
4-5. 法改正にきちんと対応する
社会保険や税金に関連する法律(雇用保険法や所得税法など)や、労働に関連する法律(労働基準法や労働契約法など)は、社会の変化や時代のニーズに応じて、定期的に見直し・改正がおこなわれます。
例えば、昨今の社会保険の適用拡大の影響により、パート・アルバイトなどの短時間労働者でも、一定の条件を満たすことで社会保険に加入するケースが増えています。該当者には、加入手続きに加え、給与からの適切な社会保険料の控除処理が必要です。
このように、法改正は給与計算に大きな影響を与えることがあります。常に最新の法令を確認し、適切に給与計算に反映させることが重要です。
5. 給与計算ミスが発覚したときの対応方法


給与計算は人間が担当するため、間違いが起きてしまうことも少なくありません。ここでは、給与計算ミスが発覚したときの対応方法について詳しく紹介します。
5-1. すぐに謝罪をする
給与計算のミスによって、本来よりも少ない金額が支給された場合、従業員の生活に直接的な影響を与える可能性があります。このようなミスは、従業員の会社に対する信頼を損ね、不満を生む要因となり、最悪の場合は離職につながる恐れもあります。
そのため、万が一ミスが発覚した場合には、まずは誠実な謝罪をし、従業員の信頼回復に努めることが最優先です。原因の追及や再発防止策はもちろん重要ですが、最初の対応における誠意が、今後の信頼関係を大きく左右します。
関連記事:給与計算ミスに気づいた時のお詫びの方法や注意点を文例とともに解説
5-2. 明細を訂正して過不足分を精算する
従業員に謝罪をしたら、必ず同意を得たうえで、給与明細を正しく訂正し、過不足分の精算をおこないましょう。もしも本来よりも低く給与を支給していた場合、労働基準法の「賃金全額払いの原則」に抵触する可能性があり、できる限り当月中に精算を完了させることが重要です。
一方、本来よりも多く支給していた場合でも、翌月の給与から控除をおこなう際は、必ず本人の同意を得る必要があります。このように対応することで、従業員の手続き負担を減らし、円滑に精算することが可能です。また、給与計算ミスの影響を受けた従業員には、謝罪の意を丁寧に伝えるとともに、必要に応じて金銭的補償などのフォローも検討すると、信頼回復につながります。
5-3. ミス発生の原因を追究する
給与計算ミスへの対応が一通り終わったら、同じミスを繰り返さないためにも、その原因をしっかりと追究することが大切です。ミスの発生原因は、計算ルールの理解不足や人為的な入力ミス、社内のチェック体制の不備など、さまざまな要因が考えられます。どの段階で、どのようなミスが起きたのかを具体的に洗い出し、再発防止に向けた改善策を検討することが、信頼性の高い給与計算につながります。
5-4. ミス防止に向けた対策をする
なぜ給与計算ミスが起きてしまったのか原因を把握できたら、それに対する対策を検討し、確実に実行に移しましょう。例えば、次のような対策が考えられます。
- 保険料率の改定を把握するために年間スケジュールを作成
- 扶養変更・異動などの入力忘れを防止するためにダブルチェックを採用
- 控除項目の変更忘れを防止するためにチェックリストを活用
- 月額変更届の届出忘れを防ぐためにマニュアルを作成
会社の規模が小さく、従業員が数人程度であれば、手計算や表計算ソフトを使ったアナログな給与計算でも対応できるかもしれません。しかし、従業員が10人・20人と増えていくと、給与計算業務も複雑になり、時間的負担が大きくなるだけでなく、ミスが発生するリスクも高まります。
そのため、必要に応じて給与計算システムの導入やアウトソーシングの活用を検討し、会社の規模に合った効率的な運用を整えることが重要です。
6. 給与計算の効率を上げてミスを減らすには

給与計算の煩雑な業務負担を減らし、正確な計算をするには専門家や専用システムの力を借りる方法が確実です。
ここでは、多くの企業で取り入れられている方法を3つ紹介します。
6-1. エクセルの自動計算を活用する
エクセルを使った給与計算は、すでにエクセルが導入されていれば追加コストなしで始められるため、手軽に取り組める方法です。導入のハードルが低く、小規模の事業所などでは特に取り入れやすいでしょう。
エクセルで給与計算をする方法には、自分で給与計算用のシートを作成する方法と、インターネットなどで配布されているテンプレートを活用する方法の2つがあります。デザインや関数の使い方などは作成者によって異なりますが、基本的な給与計算機能はおおむね網羅されています。
ただし、エクセルを用いた方法では、他のシステムとの連携が難しいことや、税率や保険料率などの最新法令に自動で対応できないというデメリットがあります。そのため、小規模事業所や、できるだけ費用を抑えて業務を効率化したい場合に適した選択肢といえるでしょう。
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給与計算をエクセルでおこなう方法とは?4つのメリットと注意点を解説
6-2. アウトソーシング(代行)を使う
従業員数が増え、アナログな方法やエクセルのみでの対応が難しくなった場合は、給与計算業務のアウトソーシングを検討するのも一つの手です。アウトソーシングを活用することで、法改正や税制改正への対応も専門業者に任せられるため、運用の負担が大きく軽減され、社内の人的リソースをコア業務に集中させることができます。
ただし、従業員情報の漏洩リスクや、自社に給与計算のノウハウが蓄積されにくいといったデメリットもあります。そのため、アウトソーシングを検討する際は、コストだけでなく、業者の実績やセキュリティ体制、対応範囲などをしっかりと確認することが重要です。
関連記事:給与計算のアウトソーシング・代行のメリット・デメリットと相場をご紹介
6-3. 労務管理システムや給与計算ソフトを導入する
エクセルによる給与計算に限界を感じていて、アウトソーシングを使わずに、業務を効率化させたいのであれば、労務管理システムや給与計算ソフトといったITツールを導入するのがおすすめです。
これらのシステムを取り入れれば、給与計算業務を自動化し、人的ミスを防止しながら、業務を効率化することができます。また、勤怠管理システムや会計ソフトなどと連携させれば、勤怠の集計から給与の計算・支払までの業務をワンストップでおこなえるようになり、より生産性を高めることが可能です。
ただし、システム導入には、初期費用や運用費用がかかります。事前に費用対効果も検証したうえで、複数のツールを比較し、自社業務に最適なシステムを導入しましょう。
関連記事:勤怠管理システムと給与計算を連携させるには?選定ポイントを解説
関連記事:給与計算を自動化するメリット・デメリット、具体的な方法や手順も紹介
7. 給与計算システムの選び方


ここでは、給与計算システムの選び方について詳しく紹介します。
7-1. コストが見合っているか
給与計算システムを利用する場合、導入・運用コストがかかります。自社の予算に見合った給与計算システムを選ばなければ、コストがかさみ、運用途中で解約しなければならなくなる可能性もあります。
まずは目的を明確化し、費用対効果を検証したうえで、導入するシステムを選ぶことが大切です。また、複数の料金プランが用意されているシステムもあります。その場合、どのような給与計算を実現したいのか、自社の規模にあっているか、といった観点から最適なプランを選択することが重要です。
7-2. どのような業務ができるか
給与計算システムを選ぶ際は、どのような業務に対応しているかを確認しましょう。一般的に給与計算システムは給与の自動計算が可能なシステムです。しかし、システムによってはそれ以外の業務が可能なケースもあります。
例えば、給与計算に限らず、採用管理やタレントマネジメントなど、人事についての業務を効率化できるシステムもあります。そのため、導入しようとしているシステムが給与計算機能以外に、どのような機能が搭載されているかもチェックすることが大切です。
7-3. 作成できる帳簿の範囲
給与計算システムのなかには給与明細や賞与明細はもちろん、源泉徴収票や社会保険提出書類、給与支払報告書などの帳簿を作成できるシステムもあります。帳簿をシステム上で作成できれば、スピーディーにデータを共有できるだけでなく、ペーパーレス化も促進できます。
まずは自社でどのような帳簿が必要なのかを把握して、それにあったシステムを選ぶことが大切です。また、自社の採用する帳簿に合わせてカスタマイズできるかも確認しておきましょう。
7-4. 他のシステムと連携できるか
給与計算システムは他のシステムと連携できるかどうかも大きなチェックポイントです。給与計算システムを勤怠管理システムや会計システム、経費精算システムなどと連携させることで、データ入力・出力などを自動化し、給与計算以外の業務も効率的に進められます。
ただし、システムの種類によって連携できるツールが限定されていることもあります。そのため、自社の既存のシステムと、新たに採用する給与計算システムが連携できるかをきちんと確認しておくことが大切です。
7-5. サポート体制は十分か
給与計算システムを導入したあとは、従業員情報の登録などの初期設定が必要です。初めて給与計算システムを利用する場合など、導入に不安がある場合は、サポート体制が充実しているシステムを選ぶとよいでしょう。
また、予期せぬエラーやトラブルが生じた際に備えて、どのような方法でサポートを受けられるのかも事前にチェックしておくのがおすすめです。
8. 基礎知識を押さえて正しい給与計算をしよう


給与計算には、計算方法や労務知識など、正確に把握しておくべき重要な項目が多数ありますが、基礎をしっかり押さえれば、経理初心者でも十分に業務をこなすことが可能です。
しかし、事業規模が大きくなると、短期間で全従業員分の給与をミスなく計算することが難しくなります。手計算での負担が大きいと感じた場合は、給与計算システムやアウトソーシングの導入を検討するなど、業務効率化のための工夫をおこないましょう。
「自社の給与計算の方法があっているか不安」
「労働時間の集計や残業代の計算があっているか確認したい」
「社会保険や所得税・住民税などの計算方法があっているか不安」など給与計算に関して不安な方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向けて当サイトでは「給与計算パーフェクトマニュアル」という資料を無料配布しています。
本資料では労働時間の集計から給与明細の作成まで給与計算の一連の流れを詳細に解説しており、間違えやすい保険料率や計算方法についてもわかりやすく解説しています。
給与計算の担当者の方にとっては大変参考になる資料となっておりますので興味のある方は、ぜひこちらから資料をダウンロードの上、ご覧ください。
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