正社員でも雇用契約書は毎年の更新が必要?理由や注意点を解説
更新日: 2026.2.27 公開日: 2020.12.7 jinjer Blog 編集部

正社員・パート・アルバイトなどの雇用形態に関わらず、働き始めるときには全ての労働者と雇用契約書を交わすのが一般的です。
しかし、更新に関しては、正社員は契約期間が決められているわけではないため、「一度雇用契約書を交わしてしまえば更新の必要はない」と思っている担当者の方もいるかもしれません。
ただ、勘違いや見落としなどが原因で発生する従業員と企業の間のトラブルを避けるには、定期的に契約書の更新をおこなうのが望ましいといえます。
本記事では、正社員でも毎年雇用契約書を更新した方が良い理由や、雇用契約書を更新する際の注意点などについて解説します。
関連記事:雇用契約の法律上の定義や成立要件とは?労働契約との違いまでわかりやすく解説
関連記事:正社員の雇用契約書の書き方とは?【雛形・テンプレートあり】
目次
雇用契約の基本から、試用期間の運用、契約更新・変更、万が一のトラブル対応まで。人事労務担当者が押さえておくべきポイントを、これ一冊に凝縮しました。
法改正にも対応した最新の情報をQ&A形式でまとめているため、知識の再確認や実務のハンドブックとしてご活用いただけます。
◆押さえておくべきポイント
- 雇用契約の基本(労働条件通知書との違い、口頭契約のリスクなど)
- 試用期間の適切な設定(期間、給与、社会保険の扱い)
- 契約更新・変更時の適切な手続きと従業員への合意形成
- 法的トラブルに発展させないための具体的な解決策
いざという時に慌てないためにも、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 正社員の雇用契約書は毎年作成しなくてもよい


雇用契約の内容(労働条件)は「使用者が労働者を雇用するときに明示しなければならない」と定められています。
正社員は一般的には契約期間の定めがない無期雇用契約です。この原則に従うと、入社時に雇用契約書を取り交わせば、契約内容に変更がない限り毎年作成する必要はありません。
しかし、雇用契約書を自主的に見直す従業員や、契約内容を十分に意識しながら日々働いている人は決して多くないでしょう。そのため、時間の経過とともに雇用契約の内容を忘れてしまったり、意図せず契約書とは異なった認識になっていたりすることがあります。
それが原因でトラブルになる可能性もあるので、可能であれば正社員でも毎年雇用契約書を作成し、見直す機会を作るとよいでしょう。
雇用契約書の作成と見直しをおこなうことで従業員とのコミュニケーションも取りやすくなるほか、現場が抱えている問題や不満の早期発見につながる可能性もあります。
1-1. 雇用契約書とは
雇用契約書とは、雇用主(企業側)と労働者(従業員)の間でどのような労働契約が結ばれるのかを記載している契約書です。労働契約の主な内容には、次のような項目があります。
- 給与
- 就業時間
- 労働契約期間
- 業務内容
- 就業場所
- 昇給や退職
これらの労働条件を明文化し、企業と従業員が内容を確認したうえで署名・捺印することで、契約内容を双方で合意した証拠となります。
なお、労働契約自体は書面の有無にかかわらず、当事者間の合意によって成立します。しかし、雇用契約書を作成することで契約内容が明確になり、後のトラブル防止につながります。
雇用契約書は契約書である以上、法的な効力を持ちます。ただし、その内容が労働基準法などの法令に反する場合は無効となる点には注意が必要です。
関連記事:雇用契約とは?法的な位置付けと締結する際のポイントを解説
1-2. 雇用契約書と労働条件通知書の違い
雇用契約書と内容が近い書類として、「労働条件通知書」があります。労働条件通知書は、賃金や労働時間などの労働条件を労働者に明示するための書面で、企業には作成・交付が法律で義務付けられています。
この義務を怠ると、労働基準法違反として是正指導を受けたり、罰則の対象となったりするおそれがあります。なお、労働条件通知書の交付タイミングは「労働契約の締結時」とされており、入社時に交付していれば、契約内容に変更がない限り、毎年あらためて作成する必要はありません。
一方、雇用契約書は、労使双方が合意した契約内容を確認するための書類です。法令上、作成は必須ではありませんが、後のトラブルを防ぐ観点から、実務では作成されるのが一般的です。そのため、原則としては、労働条件通知書と雇用契約書をそれぞれ作成し、従業員に交付する対応が望ましいといえるでしょう。
もっとも、記載内容や形式が法令要件を満たしていれば、両者の役割を兼ねた「労働条件通知書兼雇用契約書」を作成・交付することもできます。書類を一本化すれば事務負担を軽減できますが、労働条件の明示事項や本人の合意確認が不十分な場合、無効と判断されるリスクもあるため、法令を遵守した取り扱いが必要です。
関連記事:雇用契約書と労働条件通知書の違いとは?兼用はできる?作成方法も解説
2. 有期契約の場合は雇用契約書の更新が必要


雇用契約書に記載される労働条件のひとつに「労働契約の期間」があります。契約社員や派遣社員の場合は、あらかじめ契約期間が定められた「有期労働契約」として雇用されるケースが多く、契約期間の満了をもって契約は原則として終了します。
有期労働契約では、例えば契約期間が3年間と定められている場合、契約満了後に引き続き雇用されるかどうかは、企業と労働者の合意によって決まります。契約期間の終了後も引き続き働いてもらう場合は、労働契約を更新することになり、更新をおこなわない場合は契約満了をもって雇用関係は終了します。
そのため、有期労働契約を締結していて雇用契約を更新する場合、再び労働条件を明示し、雇用契約書を交わすことが望ましいです。なお、有期労働契約の更新時も、新たな労働契約の締結と同様に扱われるので、労働条件通知書の交付義務が生じます。
また、令和6年4月から労働条件明示に関するルールが見直され、雇入れ時および有期労働契約の更新時には、就業場所や業務内容に加え、それらの「変更の範囲」についても明示することが義務化されました。制度改正の内容を正しく理解し、労働条件の明示に漏れがないよう注意しましょう。
関連記事:正社員に雇用契約書は必要?記載必須事項や作成方法を解説
関連記事:有期雇用契約書に正社員登用についての条件記載は必須?作成ポイントも解説!
参考:令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます|厚生労働省
2-1. 契約満了後に雇用契約書を更新をせず就労させる場合のリスク
有期雇用契約の契約期間が満了した後に、雇用契約書をあらためて取り交わさずに契約を更新したとしても、それだけで直ちに違法となるわけではありません。
しかし、契約更新の手続きをおこなわないまま、契約期間満了後も有期雇用労働者が継続して就労している場合には、民法第629条に基づき、従前と同一の労働条件で契約が更新されたものと推定される可能性があります。
このような状態が続くと、無期転換ルールとの関係でトラブルが生じたり、雇止めをおこなった場合にその有効性が否定されたりするおそれがあります。また、労働条件の内容が不明確なまま就労が継続されることで、認識の食い違いによる労使トラブルに発展するリスクも高まるでしょう。
状況によっては、労働条件の明示義務違反として、労働基準法に基づく是正指導や罰則の対象となる可能性も否定できません。そのため、有期雇用契約を更新する際には、雇用契約書を作成・交付し、労働条件を明確にしたうえで、適切に契約更新の手続きをおこなうことが重要です。
関連記事:労働条件の明示とは?労働条件の明示義務や法改正による明示ルールの変更内容を解説
3. 正社員でも雇用契約書の更新が必要なケース


無期雇用である正社員は雇用契約書の更新が必須ではありませんでした。しかし、労働条件に変更があった場合は、契約書の内容を見直す必要があります。
3-1. 労働条件に変更があった場合
無期雇用の正社員の場合、契約期間の定めがないため、毎年雇用契約書を更新する必要はありません。しかし、労働条件に変更が生じ、雇用契約の内容が変わった場合には、その内容を反映した最新の書面を作成し、従業員に交付することが望まれます。
古い雇用契約書のまま放置してしまうと、実際の労働実態と契約書の内容に不一致が生じ、後に賃金や業務内容をめぐるトラブルに発展するおそれがあります。また、労働条件がどのように変更されたのか、雇用契約の内容が現在の条件に沿っているのかを従業員自身にも確認してもらうことは、認識のずれを防ぐうえでも重要です。
そのため、変更内容が些細なものであっても、労働条件に変更があった場合には、雇用契約書を更新し、内容を明確にしておくことが望ましいといえるでしょう。
関連記事:雇用契約の条件は途中で変更できる?契約期間内に変更する方法をご紹介
3-2. 可能であれば毎年更新することが望ましい
労働条件に変更がない場合でも雇用契約書は毎年の更新が望ましいです。毎年雇用契約書を更新することで、現在適用されている労働条件を労使双方があらためて共有でき、認識の食い違いや将来的な労務トラブルの予防につながります。
とはいえ、従業員数の多い大企業ともなると、すべての正社員に対して毎年契約書の更新をおこなうのは、手間やコストのことを考えるとなかなか難しいかもしれません。
そのため、すべての従業員に対して毎年雇用契約書の更新をするのではなく、一定の授業員にのみ雇用契約書の更新をするという選択肢も考えられます。例えば、昇進や昇給などで毎月の給料に変化があった場合、本来であれば給与辞令を交付するだけで十分ですが、その際に契約書の更新もする形にするのです。
こうすることで、毎年すべての従業員に対して契約書の更新をする手間を避けながら、定期的に労働条件の再確認や突き合わせをすることが可能になります。労働条件に特段の変化がない従業員に対しては、その年は雇用契約書の更新手続きを取らなくてもよいでしょう。
関連記事:雇用契約の更新とは?契約書の作り方や更新手続きの手順を解説
4. 正社員の雇用契約書を更新する場合の注意点


正社員の雇用契約書を更新する場合は、労働条件の記載内容に漏れがないかを確認し、従業員にもその内容を確認してもらうことが大切です。
4-1. 労働条件が網羅されているかを確認する
近年、働き方改革などの影響により多様な働き方が推進されるようになり、従来の働き方以外にフレックスタイム制や裁量労働制のような働き方を採用している企業も増えてきました。
また、企業に出社せずに在宅やリモートで仕事をしている従業員も増えてきています。
そのため、雇用契約書を作成した当時には、こうした働き方を想定していなかったというケースも少なくありません。以前に雇用契約書を更新して以降、働き方が大きく変化している場合には、現状に即した内容となるよう、雇用契約書を見直し・更新することが重要です。
雇用契約書を初めて取り交わしたときから労働条件に関する何らかの変化が起きる可能性は、今後ますます高くなっていくと考えられるため、雇用契約書を更新する際は労働条件がきちんと網羅されていることを、しっかり確認する必要があります。また、雇用契約の見直し・修正をする際には、就業規則と労働条件通知書、法律の優先順位には気を付けながら実施し、雇用契約にも反映させるようにしましょう。
当サイトでは、上述したような雇用契約を考えるうえでの優先順位や禁止事項などを解説した資料を無料で配布しております。見直しをしていく中で、雇用契約に関して不安な点を見つけた方は、こちらから資料をダウンロードして、問題ないかご確認ください。
有期雇用の場合は労働条件明示のルール変更に注意しよう
有期雇用の場合は、労働条件明示のルール変更に注意しましょう。ルール改正は令和6年4月に施行されていますが、有期雇用に関する変更事項は今一度確認しておくことが重要です。
有期雇用へのルール変更は次の2点です。
- 更新上限の有無と内容
- 無期転換申込機会と無期転換後の労働条件
更新上限は単に有無を記載するだけでなく、新設したり短縮したりする場合は、その理由を必ず明示する必要があります。また、「無期転換申込機会と無期転換後の労働条件」では、正社員の労働条件とのバランスをしっかり考慮しなければなりません。
明確な理由がなかったり、有期雇用が不当な労働条件だったりすると労働基準法違反となることもあるため注意してください。
参考:令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます|厚生労働省
4-2. 提出期限を設けて雇用契約書の内容を確認してもらう
従業員に雇用契約書の内容について説明をおこなった後は、一旦持ち帰ってもらい、内容をじっくり確認してもらうようにしましょう。
その場でサインや捺印を求めてしまうと、従業員から「内容を確認する時間を与えられなかった」と主張され、後々トラブルになる可能性があります。
そもそも雇用契約の更新は、労働条件の認識のずれを埋める目的もあるので、労働者に雇用契約の内容をしっかり理解してもらわなくてはいけません。
そのためには、翌日や2日後など提出期限を設けて、雇用契約書の内容を確認する時間を与えることが大切です。
5. 雇用契約書の作成・交付を効率化する方法


雇用契約書の作成や交付は、従業員の入社・契約更新のたびに発生するため、属人化や手作業が多いと大きな負担になります。
しかし、あらかじめ仕組みを整えておくことで、作業時間の短縮だけでなく、記載漏れや法令違反のリスク低減にもつながります。ここでは、雇用契約書業務を効率化する方法を紹介します。
5-1. 雇用契約書のひな形(テンプレート)を整備する
雇用契約書を効率よく作成するためには、まず自社用のひな形(テンプレート)を整備することが重要です。毎回ゼロから作成するのではなく、基本的な構成をあらかじめ統一しておくことで、作成にかかる手間や時間を大幅に削減できます。
雇用契約書のテンプレートはインターネット上にも数多く公開されています。また、厚生労働省が提供している労働条件通知書のフォーマットを参考にしつつ、労使双方の合意内容を反映させた雇用契約書用のテンプレートを作成する方法も有効です。
テンプレートを作成する際には、労働基準法などの法的要件を満たしているかを必ず確認することが欠かせません。さらに、正社員・契約社員・パート・アルバイトなど、雇用形態ごとにテンプレートを分けておくことで、それぞれの契約内容の違いにも柔軟に対応できます。
テンプレートは一度作って終わりにするのではなく、法改正や就業規則の変更に応じて定期的に見直し、常に最新の内容に更新していくことが、労務トラブルの防止につながります。
参考:主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)|厚生労働省
5-2. 雇用契約書の電子化を進める
雇用契約書の作成・交付をさらに効率化したい場合は、電子化の導入が有効です。近年では、労働条件通知書や雇用契約書を電子データで交付・締結することも認められており、一定の要件を満たせば紙での交付は必須ではありません。
ただし、電子化をおこなう際には、本人の同意を得ることや、内容を確実に確認できる仕組みを整えることが必要です。電子契約サービスを利用すれば、これらの要件を満たしつつ、安全かつスムーズに雇用契約書の作成・締結をおこなうことができます。
関連記事:雇用契約の電子化とは?電子化のメリットや方法を解説
6. 正社員と雇用契約書に関連するよくある質問


6-1. 正社員なのに有期雇用契約に該当するケースはある?
正社員は一般的に無期雇用とされるケースが多いものの、例外的に有期雇用契約となる場合もあります。一般に正社員とは、次のような要件を満たす労働者を指すことが多いとされています。
- 雇用契約の期間に定めがない
- フルタイムの所定労働時間で勤務する
- 直接雇用されている
参考:概要|職務・勤務地・時間を限定した多様な正社員|厚生労働省
しかし、「正社員」は法律上で定義された用語ではありません。そのため、雇用契約期間を1年や3年などと定めた有期雇用契約であっても、企業が正社員として位置付けて処遇すること自体は差し支えありません。
ただし、正社員を有期雇用として取り扱う場合には、契約更新の都度、労働条件通知書や雇用契約書をあらためて作成・交付する必要があります。さらに、有期労働契約が反復更新され、一定の要件を満たした場合には、無期転換ルールが適用される点にも注意が必要です。
6-2. パートやアルバイトは毎年雇用契約書を更新すべき?
パートやアルバイトについても、現在適用されている労働条件を双方で共有し、認識のずれを防ぐため、可能な限り毎年雇用契約書を更新することが望ましいです。
ただし、パート・アルバイトであっても無期雇用で働く場合は、労働条件に変更がなければ雇用契約書の更新は必須ではありません。
一方で、有期雇用で働くパート・アルバイトの場合、毎年同じ条件で働いていたとしても契約書を作成・更新せずに雇用を続けると、「期間の定めがない契約」とみなされたり、雇止めに関するトラブルが発生したりする可能性があるため注意が必要です。
7. 雇用契約書を毎年更新して認識のずれを防ぐことを心がけよう


もしも、毎年の更新がコストや手間がかかるなどの問題で難しいという場合は、昇給したタイミングに限定するなどでもよいため、定期的に雇用契約書の更新をおこなうことを心がけましょう。
なお、更新作業による業務負担が課題であれば、雇用契約書の電子化を検討するのも有効です。システムを活用すれば、メールでの送付だけで手続きが完了するので、効率的に更新作業を進められます。
関連記事:飲食店で正社員を採用する際の雇用契約書の作成方法・必要な手続き



雇用契約の基本から、試用期間の運用、契約更新・変更、万が一のトラブル対応まで。人事労務担当者が押さえておくべきポイントを、これ一冊に凝縮しました。
法改正にも対応した最新の情報をQ&A形式でまとめているため、知識の再確認や実務のハンドブックとしてご活用いただけます。
◆押さえておくべきポイント
- 雇用契約の基本(労働条件通知書との違い、口頭契約のリスクなど)
- 試用期間の適切な設定(期間、給与、社会保険の扱い)
- 契約更新・変更時の適切な手続きと従業員への合意形成
- 法的トラブルに発展させないための具体的な解決策
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