雇用保険被保険者離職証明書の書き方を記入例を用いて解説!添付書類の注意点まで
雇用保険被保険者離職証明書は、従業員が退職する際にハローワークに提出するもので、失業給付の手続きに必要な書類です。
今回は、雇用保険被保険者離職証明書の書き方や記入時に注意するポイント、また、紛失した際の再発行の方法について解説していきます。
目次
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社会保険料は従業員の給与から控除するため、ミスなく対応しなければなりません。
しかし、一定の加入条件があったり、従業員が入退社するたびに行う手続きには、申請期限や必要書類が細かく指示されており、大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。
さらに昨今では法改正によって適用範囲が変更されている背景もあり、対応に追われている労務担当者の方も多いのではないでしょうか。
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1. 雇用保険被保険者離職証明書とは
雇用保険被保険者離職証明書は、従業員が退職した際に失業給付の申請を行うため、離職票を発行する基礎となる書類です。この離職証明書は3枚綴りの複写式で、1枚目は事業主控え、2枚目はハローワーク提出用、3枚目は退職者に渡す離職票-2となっています。したがって、事業主はこの書類をウェブサイトからダウンロードすることはできず、ハローワークの窓口で受け取り記入・提出するか、電子申請(e-Gov)を利用して提出する必要があります。また、離職証明書の提出が必要な場合と不要な場合があり、具体的な状況によって対応が異なりますので、適切な手続きと記入方法を把握することが重要です。
1-1. 作成が必要なケース
雇用保険被保険者離職証明書は、従業員が退職した際に雇用保険の失業給付を受けるために必要な書類です。この証明書が必要な具体的なケースについて説明します。
①退職者が離職票の交付を請求した場合
退職者が失業給付を希望する場合、企業は退職日の翌々日から10日以内に、事業所を管轄するハローワークに雇用保険被保険者資格喪失届と雇用保険被保険者離職証明書を提出する必要があります。提出時には退職者の出勤簿、労働者名簿、賃金台帳など、退職日以前の勤務状況や賃金支払状況を証明する書類を添付することが求められます。もし企業が期日までに手続きを済ませなかったり、離職票発行を拒んだりした場合、雇用保険法施行規則第7条に違反することとなり、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。退職者も失業給付受給に支障をきたすため、適切な手続きを行うことが重要です。
②退職時の年齢が59歳以上の場合
改正高年齢者雇用安定法に従い、59歳以上の退職者には、失業給付や高年齢雇用継続給付の手続きを円滑に進めるため、離職証明書の提出が義務付けられています。この年齢層の従業員が退職する際には、雇用保険被保険者六十歳到達時賃金証明書など60歳時点の賃金を証明する書類も必要となるため、再就職後の手続きに備え、離職証明書の提出が欠かせません。企業側は退職者の賃金状況を正確に把握し、必要書類を適切に準備することが求められます。
1-2. 作成が不要なケース
退職日に雇用保険の被保険者でない場合や、退職者が雇用保険給付を希望しない場合は、雇用保険被保険者離職証明書の作成は不要です。
退職者が離職票の交付を請求しない場合、次の転職先が決まっていると失業給付の対象にならないため、離職証明書の提出は不要です。退職が決まったら、退職者本人に離職後すぐ転職できる先が決まっているかを確認しましょう。退職者が離職票-2の交付を希望しないのであれば、離職証明書は作成する必要はありません。ただし、雇用保険被保険者資格喪失届の提出は必要ですので、期限内に手続きを完了させましょう。
また、従業員が死亡した場合も離職証明書の提出は不要です。しかし、雇用保険被保険者資格喪失届の提出は必要ですので、忘れずに対応しましょう。
1-3. 手続きをしなかった場合は法令違反となる場合もある
雇用保険被保険者離職証明書の提出期日は、退職日の翌々日から10日以内とされています。何らかの事情で手続きを行わなかった場合には法令違反となり、6カ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金となることがあります。本記事では雇用保険について解説しましたが、健康保険や厚生年金保険は離職日の翌日から5日以内に喪失届を提出しなければなりません。同じ社会保険でも届出の期限が異なることを忘れないようにしましょう。当サイトでは、社会保険の届出期限などの基礎知識から手続き時に担当者がすべきことなどを解説した資料を無料で配布しております。資格喪失の内容だけでなく資格取得時に関しても解説しているため、社会保険の手続きの漏れに不安があるご担当者様は、こちらから「社会保険の手続きガイド」をダウンロードしてご確認ください。
2. 雇用保険被保険者離職証明書の書き方・記入例
雇用保険被保険者離職証明書に記載する内容には、次の16項目があります。以下、記載すべき内容について具体的に解説します。
2-1. 被保険者番号
雇用保険被保険者番号は、退職者の雇用保険被保険者証に11桁で記載されていますので、こちらをそのまま転記します。1981年7月6日より前に雇用保険に加入した場合には、16桁の番号となっているため、最後の10桁の番号のみを記載し、11桁目は空欄にしておきます。
2-2. 事業所番号
雇用保険の事業所番号には、雇用保険適用事業所設置届事業主控などに記載されている自社の事業所番号を記載します。
2-3. 離職者氏名/離職年月日
離職者氏名には退職する従業員の名前を記載します。
離職年月日退職した年月日を記載します。こちらに記載する日付は、「雇用保険被保険者資格喪失届」と同様の日付となります。
2-4. 事業所名・所在地・電話番号/離職者の住所または居所
事業所・事業主事業所の名称と所在地・電話番号、また事業主の住所と氏名を記載します。
離職者の住所または居所退職者の住所と電話番号を記載します。
2-5. 離職理由
離職理由は、具体的な退職理由に基づいて正確に記載することが重要です。まず、雇用保険被保険者離職証明書には19種類の離職理由が記載されていますので、該当するものを選び、○を記入してください。続いて、具体的事情記載欄には、事業縮小による解雇など、詳細な退職理由を記載します。
離職理由によって失業給付の条件が異なります。例えば、会社都合の場合、離職日の翌日から1年以内に給付を受けられるのに対し、自己都合の退職では3か月間の給付制限があります。しかし、令和2年10月以降、自己都合退職でも5年間に2回まで給付制限が2か月に短縮されるようになりました。
なお、申し込みから通算7日間は待機期間が設けられており、この期間以降に給付が始まります。正確かつ具体的な情報を記載し、認識にズレが生じないよう注意することが大切です。
2-6. 被保険者期間算定対象期間
被保険者期間算定対象期間は離職日を起点に1ヶ月ずつさかのぼり、記載をしていきます。一般被保険者と高年齢被保険者はA欄に、短期雇用特例被保険者はB欄に記載します。
2-7. 被保険者期間算定対象期間における賃金支払基礎日数
被保険者期間算定対象期間における賃金支払基礎日数は被保険者期間算定対象期間をもとに、賃金の支払いを行った日数を記載します。月給制の従業員は1ヶ月の全日数を記載し、時給制もしくは日給制の従業員は、実働日数で記載します。
2-8. 賃金支払対象期間・賃金支払対象期間における基礎日数
賃金支払対象期間は賃金締切日から1ヶ月ずつさかのぼり、期間を記載します。賃金支払対象期間における基礎日数は賃金支払対象期間に対して、実際に賃金支払いの基礎となる日数を記載します。この日数には、有給休暇の取得日や休業手当の対象日も含めます。
2-9. 賃金額
賃金額は月ごとに支払われる賃金額を記載します。月給制ではA欄に、日給制もしくは時給制の場合にはB欄に記載します。記載しない欄には斜線を引きます。
2-10. 備考/賃金に関する特記事項
備考については未払い賃金の有無等について記載します。
賃金に関する特記事項は毎月の賃金以外に発生した賃金が3ヶ月の期間ごとにある場合は記載します。記載内容は、賃金の支払日・名称・支給額となります。
3. 雇用保険被保険者離職証明書の記入時に注意するポイント
3-1. 失業給付金の算定のため署名が必要になる際の注意点
雇用保険被保険者離職証明書に記載されている内容が、そのまま失業給付金の算定内容に関係します。そのため、書類に記載されている内容を退職者本人にあらかじめ確認してもらわなければなりません。退職者本人の確認がとれるのであれば、必ず退職手続きと併せて署名をもらうようにしましょう。有休消化等にはいってしまうとうまく連絡がつかなくなる場合もありますので、事前の把握しておくことが大切です。
3-2. 退職者に休業手当を支払ったケースの注意点
「賃金支払対象期間」のうちにのうちに退職者に休業手当を支払った場合には、備考欄に記入する必要があります。支払いをした日数と手当について確認しておくとよいでしょう。
3-3. 育児・介護等の理由で時短勤務をしていたケースの注意点
雇用保険被保険者離職証明書では、実際の賃金に基づき失業給付の基本手当が決定されるため、育児や介護のために時短勤務を行っていた従業員が退職する場合、その勤務形態や期間、賃金や勤務時間の記録を正確に記入することが重要です。倒産や解雇により退職した特定受給資格者の場合、時短勤務の期間があると、特例として休業開始前や勤務時間短縮措置を講じる以前の賃金日額に基づいて基本手当の日額が算定されます。この特例を適用するためには、雇用保険被保険者短縮措置等適用時賃金証明書の提出が必要です。
3-4. 1枚では足りず離職証明書に記載しきれないケースの注意点
離職証明書に賃金支払状況等を記載する際、記入欄が不足することがあります。退職日からさかのぼる2年間のうち、賃金支払基礎日数11日以上の月を12カ月分記入する必要がありますが、証明書の様式には13行しかありません。この場合、もう1枚の書類を続紙として用意し、表題右の空きスペースに続紙と書き入れます。そして、被保険者番号、事業所番号、離職者氏名、離職年月日、事業主の住所、氏名を記載した上で、賃金支払状況等の続きを記載します。e-Govでは、画面をスクロールすると続紙と表示された用紙が準備されているので、特に記入することがない場合は白紙のままで問題ありません。
3-5. 「短期雇用特例被保険者」に該当するケースの注意点
「短期雇用特例被保険者」とは、季節雇用のうち、特定の雇用状況に該当しない労働者を指します。具体的には、4カ月以内の期間で雇用される者、または1週間の所定労働時間が30時間未満である者です。この場合、雇用保険被保険者離職証明書の記入時には、退職日を含む月からさかのぼって被保険者期間算定対象期間を記載する必要があります。
さらに、短期雇用特例被保険者が1年以上雇用された場合、その日以降は当該労働者を一般被保険者(65歳未満)または高年齢被保険者(65歳以上)に区分します。しかし、在籍期間が1年未満で頻繁に転職を繰り返し、その度に特例一時金を受け取るようなケースは、特例被保険者とは見なさず一般被保険者として扱います。
3-6. 「高年齢被保険者」に該当するケースの注意点
「高年齢被保険者」に該当する場合、まず対象者が65歳以上であることを確認し、その詳細を正確に記入することが重要です。退職者が「高年齢被保険者」に該当する場合、失業給付の条件に影響するため、特に注意が必要です。この場合、「被保険者期間算定対象期間」と「当該期間における賃金支払基礎日数」について、退職前の6か月以上に当たるデータを正確に1か月ずつ遡って記載します。
また、退職者が「高年齢被保険者」の場合、雇用保険被保険者離職証明書の記入において、従来の「高年齢継続被保険者」や「短期雇用特例被保険者」および「日雇労働被保険者」には該当しないことを明記する必要があります。これにより、正確な給付条件の適用を確保し、トラブルを未然に防ぐことができます。
特に企業の人事担当者や経理担当者にとって、雇用保険被保険者離職証明書の記入は間接的に従業員の生活に大きな影響を与えるため、慎重に対応しましょう。
3-7. 被保険者期間が月11日未満のケースの注意点
被保険者期間が月11日未満の場合、その月は計算に含まれないため注意が必要です。しかし、労働日数が11日に満たない月でも、労働時間が80時間以上あるか確認することが重要です。具体例を挙げると、労働日数が10日で1日の労働時間が8時間の場合、10日×8時間=80時間となり、この場合賃金支払基礎日数は10日となります。よって、たとえ労働日数が11日未満でも、この場合は被保険者期間1カ月として計算されます。こうした計算方法に誤りがあると、被保険者の雇用保険受給資格に影響を与える可能性があるため、正確な期間を計算することが不可欠です。
4. 雇用保険被保険者離職証明書の提出時の添付書類とは
雇用保険被保険者離職証明書を提出する際には、離職理由に応じた書類を添付する必要があります。詳しく説明します。
4-1. 離職理由に応じた添付書類一覧
雇用保険被保険者離職証明書の作成においては、離職理由に応じて適切な添付書類を準備することが必要です。これにより、ハローワークは失業給付の所定給付日数等を最終的に判断するため、正確な資料の提出が求められます。以下に、主な離職理由別の添付書類を一覧にまとめましたので、適切な書類を準備しておきましょう。
事業所の倒産の場合、裁判所で倒産手続きの申立てを受理したことを証明する書類が必要です。労働契約期間満了の場合は、労働契約書、雇入通知書、契約更新の通知書、タイムカードなどを準備します。早期退職優遇制度や選択定年制の場合は、各制度の内容がわかる資料が必要です。
また、移籍出向の場合は移籍出向の事実がわかる資料、解雇の場合は解雇予告通知書、退職証明書、就業規則などが必要です。職場事情を基に労働者自身が判断した場合は、労働条件がわかる労働契約書や賃金台帳を準備します。労働者の個人的な事情(一身上の都合、転職)での離職の場合は、退職願などその内容を確認できる資料を用意してください。いずれにも該当しない理由の場合も、内容を確認できる資料が求められます。
正確な書類をしっかりと準備して、スムーズな手続きを目指しましょう。
5. 離職票を無くしたら再発行することは可能
離職票の再発行はハローワークで受け付けていますので、再発行の依頼をする場合には必要書類を準備した上で申請手続きを行いましょう。
最もスムーズに手続きを進められるのは会社を管轄するハローワークとなりますが、会社の管轄外のハローワークでも手続きを行うことができます。
ただし、会社の管轄外のハローワークでは、再発行までに1週間程度の期間が必要となりますので注意が必要です。
5-1. 離職票の再発行に必要な書類
離職票の再発行を行う際には、次の3つの書類を準備しましょう。
*雇用保険被保険者離職票再交付申請書
*顔写真付きの身分証明書(運転免許証など)
*離職票を損傷した場合は、損傷した離職票
ハローワークに行って再発行を申請する場合には、印鑑と雇用保険被保険者証を準備のうえ、手続きを行いましょう。
関連記事:離職票と離職証明書の違いや交付されるまでの流れも解説
5-2. 離職票の再発行は郵送や電子申請でも可能
離職票の再発行は、郵送および電子申請でも可能です。
郵送で申請する場合は、書類のほかに返信用封筒(離職票返送先の住所と宛名を記載し、切手を貼付したもの)を同封の上、会社を管轄するハローワーク宛てに郵送しましょう。
電子申請の場合には、「e-Gov」(電子政府の総合窓口)から、必要事項を記載した申請書をアップロードして手続きします。
6. 従業員退職時は雇用保険被保険者離職証明書の作成および申請が必要
雇用保険被保険者離職証明書の申請をする場合には、退職者とのトラブルを避けるためにも、書類提出前には退職者本人からの署名・捺印をもらうようにしましょう。
また、退職者が離職票を紛失もしくは損傷してしまったときには、ハローワークへ申請を行うことで再発行が可能です。スムーズな再発行を依頼するのであれば、会社を管轄するハローワークへ直接申請を行うのが近道となります。
関連記事:雇用保険被保険者資格喪失届が必要になるケースや書き方を解説
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