36協定の届出とは?作成の方法や変更点など基本ポイントを解説
更新日: 2025.12.1 公開日: 2021.9.2 jinjer Blog 編集部

残業や休日出勤は原則避けるべきですが、業務の都合上、やむを得ず規定時間を超えて働く場合もあります。その際に必要となるのが「36協定」です。労働基準監督署に届出をおこなうことで、時間外労働や休日労働が合法的に認められます。
本記事では、36協定の届出のポイントをわかりやすく解説するとともに、届出業務を効率化する方法も紹介します。届出を怠ると重い罰則の対象となる可能性があるため、正しく手続きをおこないましょう。
関連記事:36協定における残業時間の上限を基本からわかりやすく解説!
目次
毎年対応が必要な36協定の届出。しかし、働き方改革関連法による上限規制の変更や複雑な特別条項など、正確な知識が求められる場面は増え続けています。
36協定届の対応に不安な点がある方は、今のうちに正しい手順と注意点を確認しませんか。
◆この資料でわかること
- 働き方改革関連法による上限規制の変更点
- 罰則を避けるための「特別条項」の正しい知識と運用
- ミスなく進めるための締結・届出の具体的な手順
- 【記入例付き】新しい届出様式の書き方
本資料では、届出作成~提出の流れまで36協定の届出について網羅的に解説しており、毎年発生する煩雑な業務の効率化に役立ちます。ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 36協定の届出の種類


36協定とは、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えた時間外労働や、法定休日における休日労働を可能にするため、労働基準法第36条に基づき事業主と労働者代表との間で締結する協定のことです。36協定を締結しても、所轄の労働基準監督署へ届出をしなければ効力をもちません。
36協定には、主に限度時間の範囲内で定める「一般条項」と、臨時的に限度時間を超える労働を認める「特別条項」があります。締結内容に応じて届出様式が異なるので注意が必要です。
参考:時間外・休日労働に関する協定届(36協定届)|厚生労働省
1-1. 一般条項
36協定の一般条項とは、通常の時間外労働や休日労働に関する基本的な取り決め部分のことを指します。一般条項のみの届出の場合、時間外労働は「月45時間・年360時間(1年単位の変形労働時間制の場合は月42時間・年320時間)」が上限となります。
1-2. 特別条項
一般条項で定められた上限を超えて時間外労働をさせる場合には、特別条項付き36協定の締結が必要です。ただし、この特別条項付き36協定を結ぶ場合でも、次の上限を必ず守らなければなりません。
- 時間外労働:年720時間以内
- 時間外労働と休日労働:月100時間未満、2ヵ月~6ヵ月平均80時間以内
- 月45時間(1年単位の変形労働時間制の場合は月42時間)を超える時間外労働の回数:年6回以内
なお、特別条項付き36協定は、臨時的かつ特別な事情がある場合にのみ認められます。例えば、決算期における一時的な業務量の増加や、機械の故障などによる突発的な対応が必要なケースなどが該当します。
関連記事:36協定の特別条項とは?働き方改革関連法との関係や時間外労働の上限に関する注意点
1-3.主な記載事項と書き方・記入例
36協定を締結したら、36協定届を所轄の労働基準監督署へ提出する必要があります。その際の主な記載事項は次の通りです。
- 労働者の範囲
- 対象期間
- 条件
- 上限(時間や日数)
- 時間外・休日労働を適正にするために厚生労働省令で定める事項
また、特別条項を付ける場合は、「臨時的に限度時間を超えて労働させることができる場合」など、さらに細かく記載する必要があります。
なお、36協定届の記入例は、厚生労働省の公式サイトに公開されています。必要に応じて確認しながら作成することで、記載漏れを防ぎ、適正な届出ができるでしょう。
関連記事:36協定とは?残業上限規制・特別条項や罰則、協定書の基本を解説
2. 36協定の届出に必要な手続き


36協定の届出をするには、労働者代表の選出や労使間の協議など、いくつかの手続きを経る必要があります。ここでは、36協定の届出までの具体的な流れを詳しく解説します。
2-1. 残業や休日出勤などの労働実態を把握する
適切な時間外労働や休日労働の上限を設定するには、まず従業員の残業や休日出勤の実績を確認し、労働状況を正確に把握することが重要です。実態を把握せずに36協定を締結すると、例えば現場から「この上限では業務が回らない」と反発される可能性もあるため注意が必要です。
2-2. 労働者代表を選出する
36協定は、労働者の過半数で組織される労働組合(過半数組合)がある場合は、その組合と締結する必要があります。組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者(労働者代表)を選出し、その代表と36協定を結ばなければなりません。
労働者代表は、正社員に限らず、パートやアルバイトなど事業場に所属するすべての労働者の過半数を代表する立場である必要があります。選出にあたっては、投票や挙手などの民主的な手続きによって決めなければならず、使用者が一方的に指名することは認められません。また、管理監督者は労働者代表に選出できない点にも注意が必要です。
関連記事:36協定の労働者代表とは?役割・選出方法や決め方も紹介!
2-3. 労使間で協議して36協定を締結する
使用者は、過半数組合または労働者代表と十分に協議をおこない、労使双方が合意した内容にもとづいて36協定を締結します。協議を円滑に進めるためには、あらかじめ協定案を作成し、労働時間の実態や業務の繁忙期などを踏まえたうえで検討を進めることが重要です。締結の際には、協定書に労使双方の署名・押印が必要となるため、手続きの漏れがないよう注意しましょう。
関連記事:36協定届の押印・署名が廃止に!その背景や企業の対応を紹介
2-4. 36協定届を作成して労働基準監督署に提出をする
36協定を締結したら、36協定届を作成し、労働基準監督署へ届出をおこないます。届出をおこなわなければ、36協定は有効とならず、そのまま時間外労働や休日労働をおこなわせた場合に違法となる可能性があるので注意が必要です。
2-5. 36協定の内容を従業員に周知する
36協定の内容は、労働基準法第106条に基づき、従業員に周知する義務があります。周知は、次のいずれかの方法でおこなう必要があります。
- 各作業場の見やすい場所に掲示する、または備え付けておく
- 書面で労働者に交付する
- 磁気テープ・磁気ディスクなどに記録し、各作業場で労働者が常時内容を確認できる機器を設置する
従業員に適切に周知されていない場合、36協定の効力が認められず、その状態で時間外労働・休日労働をおこなわせると労働基準法違反となるリスクがあるので注意が必要です。
3. 36協定の届出方法


36協定の届出方法には「窓口」「郵送」「電子申請」の3種類があります。ここでは、それぞれの届出方法について詳しく解説します。
3-1. 窓口に持参する
36協定届は、所轄の労働基準監督署の窓口に直接持参して届出ができます。窓口で提出すれば、窓口で書類の内容を確認してもらえるため、手続きの確実性が高い点が特徴です。
一方で、届出のたびに窓口に出向く必要があるので、担当者の業務負担につながりやすいです。また、窓口は平日の営業時間に限られており、混雑している場合には手続きに時間を要することもあるため、余裕をもって提出することが大切です。
3-2. 郵送する
36協定届は郵送でも届出が可能です。封筒には「36協定在中」と明記し、内容物が一目でわかるようにしましょう。届出書類の控えが必要な場合は、返送先を記載し、切手を貼った返信用封筒を同封してください。郵送トラブルを避けるため、配達記録が残る方法での送付がおすすめです。
郵送のメリットは、窓口に出向く手間や待ち時間を気にせず提出できる点です。一方で、原則として労働基準監督署に到着した日が受理日となるので、提出期限ギリギリの投函は避けけるのがよいでしょう。また、書類に不備があると差し戻される場合もあるため、事前に内容をきちんと確認することが重要です。
参考:36協定・就業規則等の届出にあたってのお願い|厚生労働省
3-3. 電子申請する
36協定届は、e-Govを使った電子申請で届出ができます。電子申請なら、PCとインターネット環境があれば、時間や場所を問わず手続きが可能で、窓口に出向く手間や郵送コストも削減できます。
ただし、電子申請には事前にアカウント作成やブラウザ設定、必要なアプリのインストールなどの準備が必要です。36協定を締結後、すぐに届出できるよう、早めに準備しておくことをおすすめします。
参考:労働基準法等の規定に基づく届出等の電子申請について|厚生労働省
関連記事:36協定届の提出方法とは?電子申請のやり方や注意点までわかりやすく解説
4. 36協定の届出に関する注意点やポイント


36協定を届出する際には、法定要件や手続き上の注意点があります。ここでは、届出にあたって確認すべきポイントや実務上の留意事項について詳しく解説します。
4-1. 届出が必要になるケースを理解する
36協定を締結・届出する前に、どのような場合に36協定が必要となるかを理解しておくことが重要です。36協定は、時間外労働や休日労働が発生する場合に必要となります。例えば、次のような場合には36協定は不要です。
- 所定労働時間を超えるが、法定労働時間内に収まる残業
- 法定休日ではなく所定休日に出勤し、法定労働時間内に労働が収まる場合
- 深夜労働のみが発生する場合
一方で、36協定を締結・届出していない状態で、1回でも時間外労働や休日労働を命じると労働基準法違反となるため、注意が必要です。
4-2. 対象範囲を明確にする
36協定では、時間外労働や休日労働の対象となる労働者の範囲を明確に定める必要があります。また、届出の際には「時間外・休日労働が必要となる具体的な理由」「業務の種類」「対象となる労働者の人数」などの項目を記載しなければなりません。
これらの項目を具体的に示すことで、36協定の運用が明確になり、労使間の誤解やトラブルを防止できます。逆に、対象範囲を曖昧にしたままにすると、誰がどのような場合に時間外労働や休日労働をおこなうのかが不明瞭になり、協定が十分に機能しなくなるおそれがあります。
場合によっては、不要な時間外・休日労働を命じてしまうことになり、行政から指導や改善勧告を受ける可能性もあります。そのため、36協定を締結・届出する際には、対象範囲を具体的かつ明確に定め、実務上も適切に運用することが重要です。
4-3. 協定書と協定届は兼用できる
36協定を締結する際に作成する36協定書と、労働基準監督署に提出する36協定届は別の書類ですが、協定届を協定書として兼用することも可能です。この場合、労使双方の署名・押印が必須となります。
なお、36協定届のみの提出の場合は、押印・署名は不要です。また、36協定書や36協定届の写しは、労働関係に関する重要な書類に該当するため、労働基準法第109条に基づき原則5年間(当分の間は3年間)保存する必要があります。
関連記事:36協定の協定書とは?書くべき項目や記載例・協定届との違いを解説
4-4. 届出期限と有効期間を確実に守る
36協定の届出は、協定で定めた効力発生日の前日までにおこなう必要があります。前回の36協定の有効期間が終了し効力を失う前に、再度協定を締結し、届出をすることが重要です。
時間外労働に関する36協定では、協定で定める延長時間は必ず1年間を単位としなければなりません。そのため、有効期間は短くても1年間となります。
さらに、定期的な見直しの必要性を考慮すると、通常は有効期間を1年とするのが望ましいとされています。ただし、事業や業務の完了までの期間が1年未満である場合は、その期間に応じて協定を締結できます。
なお、労働協約に基づく36協定の場合は、有効期間を必ずしも定める必要はありません。
参考:時間外労働・休日労働に関する協定届 労使協定締結と届出の手引|厚生労働省
関連記事:36協定の提出期限とは?いつまでに更新が必要?提出忘れの罰則も紹介
4-5. 正しく届出をしなければ罰則の可能性もある
36協定は、労働基準監督署に届出が受理されて初めて法的効力を持ちます。届出する前や受理される前に、時間外労働や休日労働を命じることは、労働基準法違反となります。
労働基準法第119条により、違反した場合は6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が課せられるおそれがあります。また、違反企業の名称が公表されることにより、社会的信用の低下にもつながりかねません。
このように、36協定の届出は極めて重要であり、届出漏れや手続き不備が生じないよう、慎重に対応することが求められます。
関連記事:36協定に違反したらどうなる?違反時の罰則や対象者、対処法を解説
5. 36協定の届出を効率化する方法


ここでは、36協定の届出のミスを減らし、業務を効率化する方法について紹介します。
5-1. 労務管理システムを導入する
36協定書の作成や届出業務は、従業員の人数や事業所の規模によっては膨大な作業量となります。労務管理システムによっては、協定に必要な情報の入力や管理をデジタル化できるものもあります。前年に登録した内容を参考資料として用いることができれば、作業量を大幅に削減できるでしょう。
さらに、36協定の届出後には、その内容に基づいた勤怠管理が求められます。労務管理システムを活用すれば、締結・届出済みの協定内容をあらかじめ登録でき、残業時間が上限に達しそうな従業員に自動でアラートを通知することも可能です。これにより、人事担当者の負担を軽減しながら長時間労働を抑制し、法令遵守の徹底につなげられます。
関連記事:36協定に対応した勤怠管理システムとは?必要な機能を紹介
5-2. 本社一括届出を検討する
本社と各事業場の36協定について、次の事項以外が同一であれば、本社が一括して届出をおこなえます。
- 労働保険番号
- 事業の種類
- 事業の名称
- 事業の所在地・電話番号
- 労働者数
- 協定成立年月日
- 労働者側協定当事者(※電子申請の場合に限り労働者代表が事業場ごとに異なっていても本社一括届出が可能)
参考:「36協定届」や「就業規則(変更)届」など労働基準法などの電子申請がさらに便利になりました!|厚生労働省
複数事業場がある場合、本社で情報をまとめて一括届出をおこなうことで、書類の不備や提出漏れを防ぎ、届出業務を効率化できます。
なお、2025年3月より、労働条件ポータルサイト「確かめよう労働条件」から電子申請が可能になりました。このポータルサイトを活用すれば、内容が同一の事業場をまとめて届出できます。さらに複数の異なる協定内容も一括で届出をすることが可能です。
参考:労働条件ポータルサイト「確かめよう労働条件」から電子申請ができるようになりました!!|厚生労働省
関連記事:36協定の本社一括届出が法改正による要件緩和で可能に!電子申請する方法を解説
6. 36協定の届出は効力が切れる前に確実におこなう


36協定は、労働者が時間外労働や休日労働をおこなう場合に必要な労使間の協定ですが、締結しただけでは法的効力は発生せず、労働基準監督署への届出があって初めて有効となります。したがって、36協定の有効期限が切れる前に、必ず新しい協定を締結し、届出手続きをおこなうことが不可欠です。
適切な36協定の締結・届出は、労働時間の上限や対象者を明確にすることで、過重労働の防止に役立ちます。これにより、労働者一人ひとりが安心して働ける環境を整え、法令に則った健全な職場づくりにつながります。



毎年対応が必要な36協定の届出。しかし、働き方改革関連法による上限規制の変更や複雑な特別条項など、正確な知識が求められる場面は増え続けています。
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