雇用保険料の計算方法は?保険加入後の計算時期や計算するときの注意点
雇用保険は、「失業や育児・介護などで働けなくなった人」や「新しい職に就こうとしている人」に対して給付金を支払う公的保険制度です。加入要件を満たしていて企業に所属する人は、必ず雇用保険に加入して保険料を支払う必要があります。
この記事では、雇用保険料の計算方法や計算開始時期、計算する際の注意点について解説します。適切な計算方法を知って、正しく保険料を納付しましょう。
正しい計算方法と加入条件をくわしく解説
雇用保険への加入は、従業員が離職した時の手当だけでなく、出産や労災による補償など、会社と従業員を守るための公的保険です。
健康保険など「ほかの社会保険」と同様に加入が義務付けられていますが、雇用保険だけ計算方法や負担割合が異なるため、注意しなければなりません。
万が一、誤って納付してしまった場合、未納分の保険料だけでなく、追徴金もまとめて徴収される可能性があります。
労働局から指摘を受けることがないよう、事前に確認しておきましょう。
「計算方法に不安がある」
「いつまでに加入させなければいけないの?」
「雇用保険料が毎月変わる理由を知りたい」
という方に向けた解説資料も用意しています。
賃金支給総額に含まれる範囲や⼊社・退職⽉の日割り計算など、併せて知っておきたい基礎知識もわかりやすく紹介しているので、ぜひこちらから無料でダウンロードしてご覧ください。
1. 雇用保険料の計算方法
1-1. 雇用保険料の計算対象となる賃金を確認する
雇用保険料は給与に保険料率をかけ合わせて算出するため、まずは計算対象となる賃金を確認しなくてはいけません。
対象となる賃金には労働賃金だけではなく、さまざまな手当が含まれます。また、社会保険料や税金を差し引く前の額面金額で計算される点にも注意しましょう。
【計算対象となる賃金】[注1]
- 基本給・固定給等基本賃金
- 賞与
- 超過勤務手当・深夜手当・休日出勤手当等
- 残業手当・深夜手当
- 宿、日直手当
- 奨励手当
- 扶養手当・子供手当・家族手当等
- 資格手当・技能手当・教育手当
- 住宅手当・転勤手当・単身赴任手当
- 休業手当
- 創立記念日等の祝金 など
【計算の対象にならない賃金】
- 役員報酬
- 休業補償費
- 退職金
- 慶弔手当
- 災害見舞金・私傷病見舞金
- 年功慰労金
- 出張旅費・宿泊費等
- 会社が全額負担する生命保険の掛金
- 財産形成貯蓄のため使用者が負担する奨励金 など
計算の対象となる賃金・ならない賃金は、税金や社会保険料の計算と異なる項目もあるため、計算時は注意が必要です。基本的に、労働対価としての賃金は計算の対象となり、役員報酬やイレギュラーな賃金、恩恵的な意味で支払われる賃金は計算の対象にならないと考えておくと、ひとつの判断基準になるでしょう。
[注1]労働保険料の算定基礎となる賃金早見表(例示)|愛媛労働局(厚生労働省)
1-2.事業ごとの雇用保険料率を確認する
次に、雇用保険料率を確認しましょう。保険料率は毎年見直しが行われており、年度によって改定がある場合があります。
また、事業の種類ごとに保険料率は異なります。業種によって保険料率が異なるのは、「失業手当や助成金を受ける割合が多い業種」と「そうでない業種」の公平性を保つ必要があるためです。
保険料率は厚生労働省や都道府県労働局、ハローワークのホームページや事務所などで確認できるので、自社が該当する事業の保険料率についてしっかりと把握しておきましょう。令和6年度の雇用保険料率は以下のとおりで、昨年度と変更ありません。
(1)失業等給付・育児休業給付の保険料率
(2)雇用保険二事業の保険料率
なお、以下については一般の事業に該当します。
- 園芸サービス
- 牛馬の育成
- 酪農
- 養鶏
- 養豚
- 内水面養殖および特定の船員を雇用する事業
関連記事:雇用保険料の引き上げ内容は?背景・理由や影響について解説
関連記事:雇用保険料率とは?業種によって異なる理由や2022年度の雇用保険料率
1-3. 賃金と雇用保険料率をかけ合わせる
最後に、保険料の計算対象となる賃金と保険料率をかけ合わせます。
雇用保険料=給与総額×雇用保険料率
たとえば、販売職のAさんの計算対象賃金が30万円であったときは、以下のように保険料が計算できます。
- Aさんが支払う金額:30万円×0.6%=1,800円
- 会社が支払う金額:30万円×0.95%=2,850円
このように、計算対象となる賃金と保険料率が明確になれば、計算方法自体は決して難しくありません。
関連記事:雇用保険料に関して会社側の負担額はいくら?社会保険への加入事情も解説
2. 雇用保険料の計算は保険に加入後いつから始まる?
雇用保険料は、給与を支払う都度控除しなくてはいけません。つまり、雇用保険に加入後1回目の給与から控除が必要になるので、計算を忘れないように気をつける必要があります。
たとえば、月末締め翌月15日支給の会社で4月1日に雇用保険に加入した社員がいるときは、4月1日から月末までの賃金をもとに保険料を計算し、翌月15日には保険料を控除した給与を支払います。
なお、雇用保険料には日割りが適用されるので、4月15日に加入となったときは、4月1日から14日までの賃金は計算の対象外となる点に注意しましょう。この場合は、4月15日から月末までの賃金から保険料を計算することになります。
適切に加入させるためには、雇用保険の加入条件についても理解しておく必要があります。万が一、加入漏れや計算ミスがあった場合は重い追徴金も請求される可能性があるため、注意が必要です。当サイトでは、雇用保険の加入条件や計算方法、イレギュラー対応についてまとめた資料を無料配布しております。ほかの社会保険との違いも解説しているので、雇用保険料の計算に不安がある方はもちろん、社会保険の種類が多く違いがわからなくなっている方にもおすすめです。適切に雇用保険の加入や計算をおこないたい方は、ぜひこちらからダウンロードしてご覧ください。
3. 雇用保険料を計算する際の注意点
3-1. 賞与からも雇用保険料を控除する
雇用保険料は、賞与からも控除する必要があります。保険料の計算方法は給与と同様で、「雇用保険料=額面賞与×雇用保険料率」です。
なお退職後の賞与であっても、雇用保険に加入していた期間分の保険料は控除する必要があります。雇用保険は、賃金が支払われる都度控除しなくてはいけないためです。
関連記事:雇用保険料は賞与から引かれる?退職後の雇用保険料や社会保険料の種類
3-2. 端数を正しく処理する
雇用保険料を計算していて1円未満の端数が発生したときは、正しいルールに則って処理を行わなくてはいけません。厚生労働省によると、保険料の端数は以下のように処理することが義務付けられています。[注2]
- 被保険者負担分を賃金から源泉控除するとき
→端数が50銭以下は切り捨て、50銭1厘以上は切り上げ - 被保険者負担分を被保険者が使用者へ現金で支払うとき
→端数が50銭未満は切り捨て、50銭以上は切り上げ
ただし「端数はすべて切り捨てる」など、労使の間に慣習的な特約が存在しているときは、そちらを採用することも可能です。
[注2]雇用保険被保険者からの雇用保険料の控除方法|厚生労働省
関連記事:雇用保険料の端数処理方法と端数が出たときの雇用保険料を解説
3-3. 65歳以上の就業者の取り扱い
従来、65歳以上の雇用保険の被保険者に関しては保険料の徴収が免除されていました。しかし、令和2年4月1日以降からは65歳以上の就業者に関しても、保険料の支払いが義務付けられています。そのため現在は、年齢にかかわらず雇用保険料を計算し、徴収する必要があるのです。[注3]
また65歳以上の人であっても、以下の条件を満たせば新たに雇用保険へ加入できるようになった点に注意しましょう。[注4]
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
- 31日以上の雇用見込みがある
法改正に対応できず、未徴収となっている企業もなかには存在しているかもしれません。高齢労働者の保険料の計算・徴収が漏れていないか、今一度確認してみましょう。
[注3]令和2年4月1日から、すべての雇用保険被保険者について雇用保険料の納付が必要となります|厚生労働省
[注4]雇用保険の適用拡大等について|厚⽣労働省・都道府県労働局・ハローワーク
関連記事:【2020年4月改正】65歳以上の雇用保険料に関する給与計算ルール
4. 雇用保険料の正しい計算方法を押さえて、適切に納付しましょう
雇用保険料の計算方法にミスがあると、修正に手間がかかったり就業者からの信頼を失ってしまったりする原因となるため注意が必要です。給与計算システムを使用して計算を自動化するなど、ミスを防ぐ工夫を取り入れながら運用することが大切です。
関連記事:雇用保険料の基本的・例外的な納付方法と納付時の仕訳について解説
正しい計算方法と加入条件をくわしく解説
雇用保険への加入は、従業員が離職した時の手当だけでなく、出産や労災による補償など、会社と従業員を守るための公的保険です。
健康保険など「ほかの社会保険」と同様に加入が義務付けられていますが、雇用保険だけ計算方法や負担割合が異なるため、注意しなければなりません。
万が一、誤って納付してしまった場合、未納分の保険料だけでなく、追徴金もまとめて徴収される可能性があります。
労働局から指摘を受けることがないよう、事前に確認しておきましょう。
「計算方法に不安がある」
「いつまでに加入させなければいけないの?」
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