有給休暇の付与日数はこれで完璧!考え方・仕組みをわかりやすく解説
更新日: 2024.10.16
公開日: 2020.4.15
OHSUGI
2019年4月1日に労働基準法が改正され、より適切な有給休暇管理が求められるようになりました。
中途入社の従業員が多い企業や、従業員数が多い企業では、有給休暇が付与されるタイミングがばらばらで、労務管理業務が煩雑になる傾向にあります。
しかし、年5日の有給休暇取得は義務化されているので、正確に管理をしなければなりません。そのため、労働基準法に基づき、付与日数の考え方を理解したうえで有給休暇管理を効率化しましょう。
この記事では、有給休暇の付与日数の基礎知識や、有給休暇を付与するタイミングである「基準日」の考え方について、わかりやすく解説します。
関連記事:【図解付き】有給休暇付与日数の正しい計算方法をわかりやすく解説
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目次
1. 年次有給休暇の付与日数は労働基準法で決められている
年次有給休暇とは、正規雇用と非正規雇用を問わず、雇用時から6ヵ月以上経過し、全労働日の出勤率が8割を超える労働者に与えられる法定休暇です。
有給休暇の付与日数についても、労働基準法で定められています。2019年4月の労働基準法改正により、有給休暇取得が義務化されました。
有給休暇を付与しなければならない条件と対象者を確認して、適切に有給休暇を付与しましょう。
1-1. 年次有給休暇が発生する要件
年次有給休暇の付与日数は労働基準法第39条で定められており、規定の条件を満たしているすべての労働者が有給休暇を取得することができます。
- 雇い入れから6ヵ月以上が経過していること
- 全労働日数のうち8割以上勤務していること
【労働基準法第39条】
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
引用元:労働基準法|e-Gov
さらに、この基本日数に加えて、継続勤務年数に基づく追加の有給休暇が与えられます。
原則として雇用された日から6ヵ月が経過した日を起算日(基準日)として、毎年有給休暇が付与されます。具体的な付与日数は「 2. 【有給休暇取得義務化】法律で定められた有給休暇の付与日数」で解説します。
関連記事:有給休暇の労働基準法における定義|付与日数や取得義務化など法律を解説
1-2. 働き方改革によって5日間の有給休暇取得が義務化
有給休暇が10日以上付与される労働者であれば、正社員、派遣労働者、契約社員、パート・アルバイトを問わず、5日分の有給休暇を確実に取得させなければなりません。
パート・アルバイトなどの労働者の場合、条件によって年に10日以上付与される場合とされない場合があるため、労働者ごとに対象者かどうかを確認する必要があります。また、企業には取得義務化の対象となる労働者ごとに有給休暇管理簿を作成して、有給休暇の取得日数を管理することも義務付けられています。
有給休暇の年5日取得義務は罰則付きの規定であり、会社が必要な措置を取らなかった場合、違反者1人あたり最大30万円の罰金が発生します。
そのため、勤怠管理の担当者は「確実に」有給を消化してもらえるよう、対象の従業員に働きかけなければなりません。是正勧告や罰則を受けることがないよう、各従業員の有給休暇の日数の把握をはじめ、適切な有給休暇管理をおこなうことが大切です。
当サイトでは、正しく有給管理をおこなえているか確認できるように、有給休暇付与の条件や日数などの正しい知識・取得義務化の対応方法まで、表を用いながらわかりやすく解説した資料を無料で配布しております。自社の有給管理が法的に問題ないか確認したい方は、こちらのフォームから資料をダウンロードしてご確認ください。
関連記事:パート・アルバイトにも有給休暇はある!付与日数や発生条件について解説
関連記事:有給休暇年5日の取得義務化とは?企業がおこなうべき対応を解説
1-3.有給休暇の最大日数とは?
有給休暇の付与日数は、最高で20日間となっています。
ただし、20日間うち5日間は1年以内に確実に取得させる義務があるので、1年後の有給休暇の残日数は15日です。では、最大日数は15日と思ってしまうかもしれませんが、有給休暇の有効期限は2年間あります。
そのため、「年5日の年次有給休暇の取得」以外に有休を取らず、新たに20日間の有給休暇が付与されると、最大日数は15日+20日=35日になります。
有効期限を長く規定している会社であれば、最大日数は変わってきますが、基本的には35日が最大日数です。といっても、いきなり1ヵ月以上有給休暇を取得されてしまうと業務に支障がでる可能性もあるので、最大日数となっている従業員がいる場合は、できる限り取得を促しましょう。
2. 【有給休暇取得義務化】法律で定められた有給休暇の付与日数
2019年4月の労働基準法改正によって、有給休暇の年5日取得が義務化されました。
企業は有給休暇を年10日以上付与した労働者に5日以上確実に取得させなければなりません。
そのため、どの労働者が有給休暇を何日付与されるのかを把握したうえで、有給休暇を年5日取得できているかを確認する必要があります。
2-1. 正社員・契約社員(フルタイム労働者)の有給休暇の付与日数
正社員や契約社員のようなフルタイム労働者は、勤続年数に応じて有給休暇を付与します。
具体的な年数と日数は以下の表をご確認ください。
勤続年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
フルタイム労働者の有給休暇は雇い入れから半年を経過した日に10日付与され、その後継続勤務年数に応じて有給休暇が増えていきます。
有給休暇の取得条件を満たしたフルタイム労働者であれば、基本的に年5日取得義務化の対象となります。
有給休暇日数の上限
上記の表でもわかるとおり、有給休暇は年間で最高20日間付与されます。
また有給休暇は1年以内に使かわなかった日数を翌年に繰り越すことができますが、有給休暇は付与日から2年間有効で、2年たってしまうと時効で消滅してしまいます。
そのため有給休暇日数の把握を常に意識しておきましょう。
2-2. パート・アルバイト労働者の有給休暇の付与日数
パートやアルバイトの労働者の場合、正社員のようなフルタイム労働者とは異なり、週所定労働日数と継続勤務年数によって付与する有給休暇日数が変動します。
勤続年数ごとの具体的な付与日数は、以下の表をご確認ください。
週所定労働日数 | 1年間の所定労働日数 | 継続勤務年数 | |||||||
0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 | |||
付与日数 | 5日以上 | 217日以上 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
4日 | 169~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 | |
3日 | 121~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 | |
2日 | 73~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 | |
1日 | 48~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
付与日数と同時に確認しておかなければならないのが、有給休暇の年5日取得義務の対象者です。
上の表で、年10日以上有給休暇が付与されている部分が、年5日取得義務の対象者となります。10日以上有給休暇が付与されている労働者はパート・アルバイトの労働者であっても年5日の有給休暇を確実に取得させなければなりません。
2-3.育児・介護休業中の労働者の有給休暇の付与日数
育児や介護で休業中の場合、実際に出勤していなくても出勤とみなします。
そのため、育児・介護休業から復帰した場合、前年度に一回も出勤していないとしても有給休暇を付与しなければなりません。
有給休暇の付与日数は、正社員と同じ継続勤務年数によって決まります。例えば、勤続年数3年半の社員が復帰するのであれば、14日間の有給休暇を付与しなければなりません。
ちなみに、業務中の病気やケガによる休職も、出勤しているとみなされるので、復職した際には同じように有給休暇が付与されます。
ただし、本人都合の怪我や病気による休職は、会社の規定によって異なるので、規定に従って判定しましょう。
2-4.時短勤務者の有給休暇の付与日数
時短勤務者であっても、条件を満たしているのであれば有給休暇を付与しなければなりません。
時短勤務者の付与条件は他の雇用形態と同じく、「雇い入れから6か月が経過している」と「6か月間の労働日の8割以上出勤していること」です。これらの条件を満たしている従業員であれば、「パート・アルバイト労働者の有給休暇の付与日数」と同じ計算方法になります。
時短勤務だと、イメージ的に有休がないと思ってしまうかもしれませんが、週所定労働日数や継続勤務年数がパート・アルバイトの付与日数の表に合致している場合は有休が発生するので、間違えないように注意しましょう。
3. 有給休暇を付与するタイミングとは
有給休暇が付与されるタイミングを有給休暇の「基準日」といいます。基準日は労働基準法で決められていますが、労働基準法はあくまでも最低基準を設けたものです。
そのため、最低基準を上回り、労働者にとって有利になる扱いであれば、有給休暇に関する規則を企業ごとに定めても問題ありません。有給休暇の基準日に関しては、労働基準法の施行規則によって、基準日を前倒しで変更することが認められています。
3-1. 有給休暇が付与される基準日(タイミング)は雇入れから半年後の日
労働基準法第39条によれば、有給休暇が新たに付与される基準日(タイミング)は、雇入れの日から6ヵ月が経過した日です。その後も、この基準日が毎年の有給休暇の付与日となります。例えば、4月1日入社の従業員の基準日は半年後の10月1日となり、毎年この日に有給休暇が新しく付与されます。
ただし、基準日は法定よりも早い日に設定する分には問題ないため、企業によっては上記で解説した法定通りではない付与タイミングを設けていることもあります。
例えば、法定通りのタイミングで有給休暇を付与すると、従業員によって入社した日が異なるため、ばらばらの日に有給休暇を付与しなくてはならず、労務管理業務が煩雑になってしまいます。
そのため、雇い入れ日の6ヵ月後よりも前に有給休暇を付与するなど、基準日を前倒して設定し全従業員で統一のタイミングに有給休暇を付与する企業も少なくありません。自社の基準日がいつに定められているかは、就業規則などを確認しましょう。
3-2. 有給休暇を前倒しで付与する場合の基準日
有給休暇を入社後すぐに数日付与し、その数ヵ月後に残りの有給休暇の日数を付与する運用をおこなっている企業もあるでしょう。雇い入れ日から6ヵ月が経過するまでに前倒して有給休暇を付与することは可能です。
例えば、入社日に5日間の有給休暇を付与し、6ヵ月経過後に残りの5日間を付与する「分割付与」も可能です。
ただし、その場合、基準日はすべての有給休暇を付与した日ではなく、前倒して付与した日になります。
例えば入社日が4月1日で、入社と同時に5日付与し、10月1日に残りの5日を付与します。この場合、基準日は10月1日ではなく4月1日に前倒しになるため、次回有給休暇を付与するのは翌年の4月1日になります。
関連記事:有給休暇の前借りは可能?従業員から依頼された場合の対応
3-3. 有給休暇の基準日をそろえる場合
月途中に入社した労働者がいた場合や、ほかの労働者と入社月が異なる労働者が中と入社した場合は、有給付与の基準日を原則通り雇い入れ日から半年後とすると、基準日がバラバラになってしまい、有給休暇の管理が煩雑になってしまいます。そのため、労務管理業務の簡略化を目的に、全労働者の有給休暇の基準日を統一したい企業もあるでしょう。
労働基準法の規定よりも、労働者にとって有利な条件であれば、基準日の統一が可能です。そのため、前倒しする場合であれば、基準日は変更することが可能です。
例えば、中途入社した日が2020年6月13日だった場合、通常通りの基準日だと、初回の有給が付与されるのは2020年12月13日となります。このような場合、有給休暇を付与する日が年に何回も生じてしまい、管理が煩雑になってしまいます。そのため、初回の付与を2020年12月13日におこなった後、次回の付与日を2021年4月1日にそろえることで管理を楽にする場合があります。
注意しておきたいことは、基準日を変更する際は必ず本来の基準日よりも前倒した日付にすることです。上記の例だと、新たな基準日を2021年12月13日よりも前にすることは前倒し付与になるため問題ありませんが、新たな基準日を2021年12月13日よりも後にすることは労働者が不利益を被るため、不可能です。
関連記事:有給休暇義務化における「基準日」とは?従業員管理の重要性を解説
4. 有給休暇の日数は条件によって変わる?繰り越しに注意
年次有給休暇の付与日数を計算する際に注意したいことは、有給休暇の繰り越しと基準日の変更、出勤率が8割に満たなかった時の対応の3点です。
年内に消化されなかった有給休暇は、付与されてから最大2年間保有ことができるため、未消化分も忘れずに計算する必要があります。また、労働者全体で有給休暇の付与日を統一することや、法定の基準日を途中で変更する場合は、次回分の有給休暇を前倒しで付与する必要があります。
4-1. 有給休暇の有効期限は2年間で、翌年に繰り越すことができる
有給休暇の請求権には時効があり、労働基準法第115条*において有効期間は2年と定められていることから、労働者に付与された有給休暇のうち、未消化分は翌年度に繰り越すことが可能です。そのため、未消化分の有給休暇を計算し、翌年度の付与日数に加算することを忘れないようにしましょう。
【労働基準法第115条】
この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。
引用元:労働基準法|e-Gov
企業独自に定めた就業規則などで、「有給休暇は1年で消滅する」などと定めても無効となるため、注意しましょう。
有給休暇には2年の有効期限があるため、2年連続20日有給休暇が付与された労働者が有給休暇を1日も使わなかった場合、保有できる有給休暇の最大日数は40日になります。
なお、事例を用いた有給休暇繰り越し日数の計算方法の紹介や、繰り越した有給休暇の消化順などは、以下の記事で詳しく説明していますので、是非ご覧ください。
関連記事:有給休暇の繰越とは?その仕組みや最大保有日数を解説
4-2. 基準日を途中で変更する場合は「前倒し」での付与が必要
労働基準法上、基準日を後から変更する場合は、短縮された期間をすべて出勤したとみなし、次回の有給休暇を前倒しで与える必要があります。
例えば、2020年4月1日に入社した従業員の法定基準日は2020年10月1日ですが、これを次回から全労働者と統一するとします。本来、次回の11日分の有給休暇は2021年10月1日に与えられますが、基準日を変更する場合は本来の基準日よりも前倒して付与しなければならないため、2021年10月1日よりも前に付与することになります。
有給休暇の付与日数の計算が大きく異なってきますので、法定基準日を変更する場合は注意が必要です。
4-3. 出勤率が8割に満たなかった年も継続勤務年数に含まれる
有給休暇は出勤率8割以上が発生要件であるため、出勤率が8割に満たなかった年は有給休暇が付与されません。ただし、出勤率が8割未満の年も勤務継続年数には含まれるため、有給休暇の日数を計算する際には注意しましょう。
例えば、勤務継続年数が1年6ヵ月の年に出勤率が8割未満で有給休暇が11日分付与されなくても、翌年に出勤率が8割以上であった場合は勤務継続年数は2年6ヵ月となるため、11日分ではなく12日分が新たに付与されます。
5. 有給休暇の付与日数の仕組みを理解し、取得率向上で働き方改革に対応を
今回は、有給休暇の付与日数の考え方や仕組みを解説しました。
有給休暇は労働基準法で定められており、雇い入れ日から6ヵ月継続勤務し、出勤率が8割以上の労働者に付与されます。初回付与は入社から半年後におこなわれ、それ以降は最初に付与された日(基準日)から1年経つごとに日数を増やして有給休暇を付与しなければなりません。
また、有給休暇を付与するタイミングは、労働者の不利益とならない範囲で前倒しすることができます。その場合、有給休暇の基準日も変わる点に注意しましょう。
有給休暇を適切に付与しないと、違法となり罰則を科される場合もあるため、付与すべき日数と基準日を正しく把握しておきましょう。
関連記事:年次有給休暇とは?付与日数や取得義務化など法律をまとめて解説
煩雑な有休管理を効率化させる方法とは?
有給休暇を付与するタイミングは入社日によって異なるうえ、前倒し付与をおこなうと基準日がずれ、付与日数の計算や、きちんと有休を取得ができているかの管理が煩雑になります。
特に紙の申請書で有給休暇を管理している場合は、従業員から残日数の問い合わせがあった際に確認の手間がかかるだけでなく、年5日の取得が確実にできているかの管理をおこなうことが難しくなります。
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