給与計算の初心者がこれだけは押さえるべき3つのポイント
更新日: 2024.11.15
公開日: 2020.12.11
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給与計算は従業員を雇う場合、必ずおこなう必要があります。経験と知識が求められる上に、さまざまなリスクを含んだ業務です。
今回は、給与計算の初心者の方向けに、給与計算の正しい方法や注意点についてご紹介していきます。
【給与計算業務のまとめはコチラ▶給与計算とは?計算方法や業務上のリスク、効率化について徹底解説
給与計算のミスは、残業の割増率などの単純な計算間違いだけでなく、そもそも労働時間の集計が誤っていた、昇給や介護保険の新規加入などを反映し忘れ社会保険料の徴収金額を間違えていたなど、様々な要因で発生します。
当サイトでは、給与計算で生じるミスの対処方法を場合別に紹介した「給与計算のミス別対応BOOK」を無料で配布しております。
- 給与計算でミスが頻発していてお困りの方
- 給与計算業務のチェックリストがほしい方
- 給与計算のミスを減らす方法を知りたい方
上記に当てはまるご担当者様は、「給与計算のミス別対応BOOK」をぜひご覧ください。
目次
1. 給与計算前に準備しておくもの
まず、給与計算を実施するにあたって、あらかじめ準備しておくべきものについて確認しておきましょう。
ここでは、給与計算前に準備しておく4つの項目を取り上げていきます。
- 就業規則や給与規程の作成
- 保険への加入
- 従業員情報の把握および更新
- 従業員の勤怠管理
以下、具体的にこれら4点についてご紹介してきます。
1-1. 就業規則や給与規程の作成
給与計算前に準備しておくものとして、就業規則や給与規程の作成が挙げられます。
従業員の勤務に関するルールや労働条件を定めた就業規則は、10人以上の従業員を要する事業所では必ず作成・届出をしなければなりません。
また、給与計算で必要となる賃金の決定や支払い方法など、必ず記載しなくてはいけない絶対的必要記載事項があるため、作成の際は注意が必要です。
給与規程は、従業員に給与を支払う上で給与計算のもとになりますので、こちらについてもあらかじめ準備しておきましょう。
1-2. 保険への加入
給与計算をする上で、保険への加入は重要な項目となります。条件にあてはまる従業員はすべて加入する義務がありますので、忘れることのないようにしましょう。
なお、対象となる保険は次の5つとなります。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 介護保険
- 雇用保険
保険料を計算した上で、従業員の給与から天引きしなくてはいけないため、正しい計算方法を身につけておくことが重要です。なお、計算方法については後述の記事でご紹介します。
1-3. 従業員情報の把握および更新
従業員は、勤続年数や役職の変更により、基本給や手当等が変更になります。また勤務地・居住地の変更があった場合は、通勤手当が変わることもあるでしょう。
このような従業員の情報については、給与計算に大きく関係する部分でもあります。
そのため、常に最新の情報を把握し、給与計算時には情報の更新をしておきましょう。
1-4. 従業員の勤怠管理
最後に、給与計算時に欠かせないものとして、従業員の勤怠管理の情報が必要になります。
従業員の勤怠管理情報は、通常の労働時間の計算のほか、時間外労働分、またパート・アルバイトで働く従業員の給与計算に利用します。
2. 給与計算の正しい方法
ここからは、給与計算をする上での正しい方法4つについてご紹介します。
- 支給額を計算する
- 保険料の計算をおこなう
- 所得税・住民税の計算をおこなう
- 差引支給額を計算する
以下、具体的にこれら4つの方法について解説します。
【給与計算の方法をさらに詳しく知りたい方はコチラ▶給与計算はこれで解決!給与計算の方法や流れなど分かりやすく解説】
2-1. 支給額を計算する
まず、給与として支給する額の計算をおこないます。
給与支給分は大きく2つのものに大別され、固定的な給与(基本給・職務手当)と変動的な給与(残業代や深夜手当・休日手当)から構成されています。
固定的な給与については、雇用契約書や就業規則を参考に算出しますが、変動的な給与については別途計算の必要があります。
変動的な給与支給額の計算方法
残業手当や深夜手当・休日手当といった変動的な給与支給額は、以下の計算式で計算をおこないます。
- 1時間当たりの賃金は「月給÷1ヵ月あたりの平均所定労働時間」から算出(月給は基本給に役職手当・資格手当を含める)
- 1ヵ月あたりの平均所定労働時間は「{ (365日-年間所定休日数)×1日の所定労働時間数 } ÷ 12(ヵ月)」から算出
なお、割増率は労働基準法にて定められたものを用いる形となるので、給与計算前にはあらかじめ確認をしておきましょう。
2-2. 保険料の計算をおこなう
給与計算をする上で算出の必要がある保険料には、次の3つが挙げられます。
- 雇用保険料
- 健康保険料(介護保険料)
- 厚生年金保険料
以下、これら3つの保険料の計算についてご紹介します。
雇用保険料の計算方法
雇用保険料は、厚生労働省の雇用保険料率表をもとに以下の計算式で算出します。
雇用保険料=月支給額合計×保険料率
雇用保険料率は2022年の引き上げに加えて、2023年4月以降もさらに引き上げとなっているため、常に最新の保険料率を確認しておくようにしましょう。
参考:令和5年度雇用保険料率のご案内|厚生労働省
健康保険料(介護保険料)の計算方法
健康保険料(介護保険料)は、全国健康保険協会の都道府県ごとの保険料額表をもとに、以下の計算式で算出をします。
健康保険料(介護保険料)=標準報酬月額×保険料率
2023年の健康保険料率は以下の全国保険協会のサイトから確認することができます。
参考:令和5年度保険料額表(令和5年3月分から)|全国健康保険協会
厚生年金保険料の計算方法
厚生年金保険料は、日本年金機構の保険料額表をもとに以下の計算式で算出をします。
厚生年金保険料=標準報酬月額×保険料率
厚生年金保険料率は2017年以降、18.3%で固定されています。
参考:厚生年金保険料額表|日本年金機構
【給与計算にかかる社会保険料の計算について知りたい方はコチラ▶給与計算で社会保険料を算出する方法を分かりやすく解説】
2-3. 所得税・住民税の計算をおこなう
所得税および住民税は、会社が給与からあらかじめ差し引いて徴収し、従業員の代わりに税務署に納付する(源泉徴収)という形をとっています。
そのため、これら2つについても控除の対象となります。
【住民税の計算について知りたい方はコチラ▶給与計算における住民税とは|住民税の計算・納付・注意点について解説】
【所得税の計算について知りたい方はコチラ▶所得税とは?|源泉所得税の計算方法や税額表の見方を解説】
2-4. 差引支給額の計算をおこなう
総支給額と控除額、それぞれの計算ができたら、総支給額から控除額を差し引いた支給額を計算します。社内預金の積み立てや給与天引きの団体保険などがある場合は、このときに差し引きましよう。
最終的な支給額が確定したら、給与明細の作成や給与支給の手続き、各保険料や税金の納付手続きなどをおこないます。
3. 給与計算で初心者が注意すべき3つのこと
ここでは、給与計算の実施において初心者が注意すべき点を3つ取り上げ、紹介します。
- 賃金支払い5原則を守る
- 最低賃金ルールを確認する
- 残業代の支払いは正確に
以下、具体的にこれら3つの注意点について解説します。
3-1. 賃金支払い5原則を守る
「賃金支払い5原則」とは、労働基準法第24条で定められたもので、必ず守らなければならないものです。
- 通貨で支払う
- 直接本人に支払う
- 全額払いする
- 毎月1回以上支払う
- 支払期日を特定する
これらの原則を守らない場合、30万円以下の罰金の対象となりますので、注意が必要です。
なお、状況に応じて労働協約を締結し、規定を設けることにより、本人の同意を得た上で、例外が認められる場合もあります。
3-2. 最低賃金ルールを確認する
基本的に、給与を支払う場合は地域別の最低賃金ルールに則った形での支給が必要となります。
このルールは、毎年秋に見直しをされていますので、都度従業員の給与が最低賃金ルール以下の金額となっていることはないか、確認をおこなうようにしましょう。
3-3. 残業代の支払いは正確におこなう
法定労働時間を超えて働いた労働分については、残業代として支払う義務があります。この残業代については上述の通り、法で決められた割増賃金で支払う必要があります。
割増賃金は、時間外と休日・深夜で割増率が異なりますので、あらかじめ確認しておきましょう。
【残業と割増賃金の関係を知りたい方はコチラ▶残業による割増率の考え方と残業代の計算方法をわかりやすく解説】
4. それでも給与計算が不安な方は…
手動での給与計算等で計算ミスのリスクを感じる場合は、自動化する方法を検討しましょう。自動化することで、給与計算業務に関する作業時間の減少も見込めるため一石二鳥です。
▼給与計算を自動化する手段
- エクセルを用いて計算を自動化する
- 給与計算ソフトを導入する
- 給与計算業務自体をアウトソーシングする
4-1. エクセルを用いて計算を自動化する
大半の企業にエクセルは導入されているため、導入費用を最小限に抑えて給与計算の自動化が可能です。
一方で、最新の保険料率などを常に把握して、適宜計算式のアップデートをおこなわなければならないなど、運用時の手間が懸念されます。
具体的な方法を知りたい方は以下の記事をご参考ください。
▶給与計算をエクセルでおこなう方法とは?4つのコツと注意点を解説
4-2. 給与計算ソフトを導入する
給与計算ソフトを導入すれば、給与計算のほとんどの作業を自動化することが可能です。
給与計算ソフトにはさまざまな種類があり、給与計算のみに対応しているものから、勤怠管理システムと連動できるもの、さらにはさまざまな人事情報と連動させられるものなどがあります。
また、提供元によっては企業規模ごとに最適化した製品を用意している場合もあります。
エクセルと比較して、給与計算ソフトの購入費用や操作方法を覚えなくてはならないといった初期コストが発生するのが懸念点です。
給与計算ソフトについて詳しく知りたい方は以下の記事をご参考ください。
▶給与計算ソフトの選定ポイント7つ!メリット・デメリットをおさえて自社に合うシステムを
4-3. 給与計算業務をアウトソーシングする
自動化とは少し異なる視点ではありますが、給与計算業務を外部の業者にアウトソーシングするという手段もあります。
給与計算に関する業務すべてを任せられるため、社内工数の削減が可能です。
一方で、委託業者が作業できるように勤怠情報など必要な情報をとりまとめて渡さなければならないため、スケジュールの調整ややりとりなどの工数は発生してしまいます。
給与計算のアウトソーシングについて詳しく知りたい方は以下の記事をご参考ください。
▶給与計算の代行・アウトソーシングのメリット・デメリットと相場をご紹介
5. 給与計算は事前に準備が大切!焦らず正確におこなおう
今回は、給与計算を初めておこなう担当者の方に向けて、給与計算前に準備しておくものや給与計算の正しい方法、注意すべき点についてご紹介してきました。
給与計算のミスは、労働問題など大きなトラブルに発展することもありうる事項です。
本記事で紹介した給与計算におけるルールをあらかじめ確認した上で、間違いのない計算をおこなうよう心がけましょう。
給与計算のミスは、残業の割増率などの単純な計算間違いだけでなく、そもそも労働時間の集計が誤っていた、昇給や介護保険の新規加入などを反映し忘れ社会保険料の徴収金額を間違えていたなど、様々な要因で発生します。
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