住民税の特別徴収とは?普通徴収との違いや手続きの流れを解説
更新日: 2025.6.11
公開日: 2025.6.1
jinjer Blog 編集部
「住民税の特別徴収とは何?」
「普通徴収との違いは?」
上記のようにお悩みの方も多いでしょう。
住民税の特別徴収とは、会社が従業員の住民税を毎月の給料から天引きして代わりに納める制度です。納付方法や徴収回数が普通徴収と異なります。会社側に納付する義務が発生するため、制度を正しく把握しておくことが重要です。
本記事では、住民税の特別徴収と普通徴収の違いや義務付けられる事業者を解説します。住民税を特別徴収する際の手続きや注意点も解説しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
1. 住民税の特別徴収とは
住民税の特別徴収とは、従業員が納付すべき住民税を会社(給与支払者)が毎月の給与から天引きし市区町村に納付する制度です。対して、従業員が自分で住民税を納めることを普通徴収と呼びます。
普通徴収は従業員一人ひとりが納期を管理して納付する必要がありますが、特別徴収では会社が一括して管理するのが特徴です。
地方税法では、給与支払者である会社は、原則として従業員の住民税を特別徴収することが義務付けられています。会社は市区町村から送付される特別徴収税額決定通知書に記載された税額を納期限内に納付しなくてはなりません。
会社側で住民税を管理する負担が増えますが、従業員が住民税を納付し忘れることを防止できます。
住民税の特別徴収は従業員の利便性を高め、市区町村の安定した税収確保につながる重要な仕組みです。
2. 住民税の特別徴収と普通徴収の違い
住民税の特別徴収と普通徴収には、納付方法や徴収回数に違いがあります。それぞれの特徴は以下のとおりです。
制度 | 納付方法 | 徴収回数 |
特別徴収 | 会社が納税義務のある従業員の給料から天引きし、翌月10日までに市区町村へ納付する | 年12回(毎月の給与から天引き) |
普通徴収 | 納税者本人が納付書や口座振替を利用して直接納める | 年4回(通常は6月、8月、10月、翌年1月) |
特別徴収は会社が毎月の給料から住民税を天引きして、従業員が住んでいる市区町村へ納付します。住民税が12分割されるため、1回あたりの税負担が少なくなるのが特徴です。住民税の通知は会社に送付されます。
一方で、普通徴収は従業員本人が居住地の市区町村に住民税を直接納める制度です。居住地の市区町村から従業員に納税通知書が届きます。住民税は4分割されるため、1回あたりの税負担が大きくなるのが特徴です。
なお、どちらの徴収制度も税額の決定が遅れたり年の途中で税額が変更されたりする場合は、徴収回数が変わる可能性があります。
3. 住民税の特別徴収が義務付けられる事業者
原則として、所得税の源泉徴収をおこなう義務のある事業者は、住民税の特別徴収もおこなうことが義務付けられています。
前年中に給与の支払いを受けており、かつ当年度の初日(4月1日)において給与の支払いを受けている従業員がいる場合、会社は特別徴収をおこなわなければなりません。特別徴収の対象になる従業員は正社員だけでなく、アルバイトやパートも含まれます。
ただし、以下に該当する場合は普通徴収への切り替えが可能です。
- 事業所の総従業員数が2人以下の場合
- ほかの事業所で特別徴収をおこなう場合
- 給与が少なくて住民税が引けない場合
- 給与の支払いが不定期の場合
- 従業員が事業専従者の場合(個人事業主のみ)
- 退職者もしくは退職予定者の場合(5月末日まで)
- 休職により4月1日現在で給与の支払を受けていない場合
普通徴収に切り替える際は、市区町村へ給与支払報告書とともに「普通徴収切替理由書」を提出する必要があります。
4. 住民税を特別徴収する際の手続き
会社で住民税を特別徴収する際の事務手順は以下のとおりです。
- 1月末までに市区町村へ給与支払報告書を提出する
- 4月1日現在に在籍していない従業員がいる場合は、4月15日までに市区町村に届け出る
- 5月31日までに送付されてくる特別徴収税額決定通知書を受け取る
- 通知書に記載されている住民税額を毎月の給料から天引きする
- 天引きした住民税を翌月の10日までに市区町村に納付する
特別徴収税額決定通知書は事業者用と納税義務用の2種類が送られてきます。納税義務者用は従業員へ渡しましょう。
天引きした住民税は金融機関や自治体の窓口で納付します。普通徴収の場合は口座振替を利用できますが、特別徴収の場合は口座振替ができない自治体がほとんどです。
5. 住民税の特別徴収における納期の特例
住民税の特別徴収では税金を毎月納付する必要がありますが、「納期の特例」を利用すれば年2回に分けての納付が可能になります。ただし、納期の特例はすべての会社が利用できる制度ではありません。
給与の支払いを受ける従業員が常時10人未満の事業所が市区町村に承認を受けた場合に利用できます。承認を受ける際には、従業員が居住する市区町村ごとに申請書の提出が必要です。
納期の特例が承認された場合は、納期が以下のように変更されます。
- 6月分から11月分の税額:12月10日まで
- 12月分から翌年5月分の税額:翌年6月10日まで
納期の特例はあくまでも特別徴収した住民税を半年分まとめて納入できる制度です。従業員の給与から住民税を天引きする作業は、通常と同じく毎月おこなう必要があります。
6. 住民税を特別徴収する際の注意点
住民税を特別徴収する際に企業が注意すべき点は、以下のとおりです。
- 滞納は会社の責任になる
- 税額や徴収回数が変更になる場合がある
- 従業員の転職や退職にともなう手続きが必要になる
それぞれの注意点を解説します。
6-1. 滞納は会社の責任になる
特別徴収する住民税を滞納した場合、会社は責任を負うことになるため注意しましょう。住民税の納税義務者は従業員ですが、納付する義務は会社側にあります。
納付が遅れて延滞金が発生した場合は、企業が延滞金を負担しなくてはなりません。納付忘れや遅延が続くと会社の財産が差し押さえられる可能性もあります。
納期の遅延は会社の信用問題にも関わるため、定められた期限内で確実に納付することが重要です。
6-2. 税額や徴収回数が変更になる場合がある
特別徴収により毎月給与から天引きする住民税の額は、年の途中で変更されることがあります。税額決定後に従業員が確定申告をしたり自治体の調査により所得控除額が変わったりした場合などに、税額が再計算されるためです。
税額が変更されると、市区町村から会社に「特別徴収税額の変更通知書」が送られてきます。会社は変更通知を見落とさずに正しい金額を給与計算に反映させなくてはなりません。
誤って変更前の税額で徴収をおこなうと税額の徴収不足や過徴収が発生するため、変更があった場合は適切に対応しましょう。
6-3. 従業員の転職や退職にともなう手続きが必要になる
従業員が年の途中で会社を辞める場合は、住民税の特別徴収に関する手続きを会社がおこなう必要があります。給与から住民税を天引きできなくなるためです。
転職や退職などで従業員の異動が発生した場合は、「特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を市区町村に提出します。
また、転職により入社した従業員の住民税を年度の途中から特別徴収に切り替える際も、手続きが必要です。従業員が1月1日現在に居住していた区市町村に特別徴収へ切り替えるための申請書を提出します。
手続きが遅れると従業員の住民税の支払いに影響を及ぼすため、速やかに済ませましょう。
7. 住民税の制度を理解して特別徴収を適切におこなおう
従業員の住民税を特別徴収することは会社の義務です。原則、パートやアルバイトを含めた全従業員の住民税を管理して納付する必要があります。
納付が遅れると、会社が延滞金を支払わなくてはなりません。従業員に迷惑をかける場合もあるため、特別徴収の制度を正しく理解して手続きを適切におこないましょう。
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