所定休日と法定休日の違いや運用ルールを分かりやすく解説
更新日: 2024.11.15
公開日: 2021.9.8
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会社が労働日を決めるときは、従業員に与える休日についても考えなくてはいけません。休日には「所定休日」と「法定休日」の2種類があり、それぞれの定義や運用方法は異なるため、きちんと区別することが大切です。
この記事では、所定休日と法定休日の違いを説明します。正しく意味の違いを把握して、法律を遵守して休日の管理をしていきましょう。
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1. 所定休日と法定休日の違い
従業員にとっては、所定休日も法定休日も同じように感じるかもしれませんが、両者は法的な扱いがまったく異なります。さっそく、それぞれの違いについて見ていきましょう。
1-1. 所定休日とは
所定休日とは、「法定外休日」と呼ばれることもある休日です。その名の通り法に定められている休日ではなく、会社が独自に決められる休日になります。
一般的に多く見られるのは、週末2日間の休みのうち、土曜日を所定休日と決めている会社です。勘違いされやすいのですが、国民の休日は労働基準法上で定められている休日ではありません。
したがって、休みにするためには所定休日として規定しておく必要があります。休ませる日数や日にちは、会社が自由に決めることが可能です。なお、決めた所定休日は、必ず就業規則や休日規程などで明確にしておく必要があります。
関連記事:所定休日とは?その意味や設定のポイント・注意点を解説
1-2. 法定休日とは
法定休日とは、労働基準法で定められた休日のことです。同法35条では、週に1日もしくは4週に4日の休日を与えることが義務付けられています。
この最低限の休日が、法定休日なのです。なお、日数の要件さえ満たしていれば、1週間のうちいつ法定休日を取得させても問題ありません。日曜日に法定休日を決めている会社が多いですが、火曜日や水曜日などを法定休日とすることも可能です。
注意したいのが、法定休日だけでは所定労働時間の要件を満たせない会社が多い点です。労働基準法の32条では、1日8時間、週に40時間を超えて仕事させてはいけないと定めています。
1日8時間労働の会社で法定休日のみで休日を運用してしまうと、就労時間が40時間を超えてしまうケースがあるため注意しましょう。8時間勤務の会社は1日所定休日を与える、週6日勤務の会社は1日6時間40分未満の労働時間にするなど、法律に違反しないための工夫が必要になります。
1-3. 所定休日と法定休日を分ける理由
所定休日と法定休日は、そもそも定義や要件が異なるため区別されています。しかし、ほかにも両者を分けて考えておくべき理由はあります。詳しくは次の章で紹介しますが、両者では休日出勤をしたときに発生する手当や割増賃金が異なるためです。
会社にとっては法定休日に働かせるほうがコストが大きいため、区別したうえで休日出勤させる必要があります。会社側はもちろん、従業員側にも各休日の違いを理解してもらい、正しい賃金について把握してもらうことが大切です。
2. 所定休日や法定休日の割増賃金について
従業員にとってはいつ出勤しても「休日出勤」であることに代わりませんが、会社側の給与計算はどちらに該当するかで異なってきます。
ここからは、それぞれの割増賃金について詳しく見ていきましょう。
2-1. 法定休日に出勤したときの割増賃金
労働基準法で義務付けられている休日は、「法定休日」です。法で定められた休日に働かせるときは、「休日手当」の支給が必要になります。
休日手当を支給するときは、通常の135%の賃金率を支払わなくてはいけません。つまり、時給1,500円の会社で8時間仕事をしたときは、「1,500円×135%×8時間=16,200円」の休日手当が発生するということなのです。
なお、代休を取ったとしても法定休日に仕事したことに変わりはないため、割増賃金はかかります。休日出勤と代休で給料を相殺することはできますが、割増分の35%の賃金は支払う必要があるというわけです。
割増賃金については労働基準法で明記されているため、代休や振替休日、それぞれ定義の違いなどを理解した上で業務をおこなわなければ、法律違反となる可能性があります。
2-2. 所定休日に出勤したときの割増賃金
所定休日は法で定められた休日ではないため、休日手当は発生しません。ただし、時間外労働に対する割増賃金が発生するケースがあります。
労働基準法では労働の上限を1日8時間、週に40時間と規定しています。この基準を超えるときは、「超過時間×125%」の割増率をかけた割増賃金が必要です。
たとえば、月曜日から金曜日まで8時間勤務する会社で、所定休日である土曜日に出勤が必要になったとき、労働時間は48時間となります。40時間からオーバーした8時間に対し、時間外労働の割増賃金を支払うことになります。
なお、労働時間が40時間を超えなければ、所定休日に働かせても割増賃金はかかりません。たとえば「土曜日に出勤するから、同じ週の平日に代休をとっておこう」というケースでは、割増賃金は必要ないのです。ただし、週の起算日を超えて代休を取るときは1週間あたりの労働時間をオーバーするため、割増分の25%は必要になります。
関連記事:法定休日と祝日の違いや割増賃金の計算法を詳しく解説
3. 振替休日と代休の違い
まず振替休日は、予め休日と定められていた日を労働日とし、そのかわりに他の労働日を休日とすることを指します。いっぽうで代休は、休日労働がおこなわれたあとに、その代償として以後の特定の労働日を休みとすることを指します。つまり、振替休日は「休日と勤務日を入れ替えること」であり、代休は「休日勤務した代わりに休みを取ること」を意味しています。
振替休日と代休の違いは、休みを決めるタイミングと給与の計算方法の2つありますが、こちらの記事では給与の支払い方法に絞って解説します。違いを詳細まで確認したい場合は参考記事をご参照ください。
関連記事:振替休日と代休の違いとは?労働基準法違反になりかねないポイントを事例と併せて解説!
3-1. 振替休日と代休は割増賃金が異なる
「振替休日」は、あらかじめ出勤日と休日を入れ替えておくものなので、休日労働の扱いにはなりません。したがって、休日の割増賃金の支払い義務はないのです。
例外として、週をまたいで休日を振り替えた場合、当該の週の法定労働時間が40時間を超えているときは25%以上の割増率をかけた割増賃金を支払う必要があります。会社と従業員との認識のズレが原因で、休日割増手当がもらえると思っていたら当てが外れたとしてトラブルになる場合もあるようです。
「代休」は、休日出勤をしたあとに、その代償として与えられる休日のことを指します。従業員は休日に労働しているわけですから、35%以上の割増賃金を支払わなければなりません。ただしここでいう休日は法定休日のことを指します。もし週の労働時間が40時間を超えている状態で、所定休日に休日出勤をする場合は、時間外労働に対する割増賃金のみが支払われます。
正しい割増賃金を払わないと労働基準法違反になるケースもあるため、しっかり理解しておきましょう。
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4. 所定休日や法定休日の運用ポイント
会社が健全な仕事環境を整えるためには、休日の違いを押さえたうえで、適切に運用することが欠かせません。
最後に、所定休日や法定休日を運用するときのポイントを見ていきましょう。
4-1. 労働基準法の要件を満たす
休日を決定して運用するときは、労働基準法の要件を満たさなくてはいけません。
同法では、「週に1回以上または4週間に4回以上の休日」と「1日8時間、週に40時間の労働時間」を定めているため、これに違反しないように休日を決める必要があります。
極端な話、「4週間のうち月末の4日でまとめて休日を取らせる」ということも可能です。しかし、これでは所定労働時間の要件を満たせなくなりますし、労働者の健康を確保する点から好ましくはありません。あくまでも4週4日の休日は例外という扱いになります。
法定休日と労働時間の双方をクリアできるよう、休日の管理をしなくてはいけません。なお休日は、原則として0時から24時の暦日単位で与える必要があります。
夜勤を導入している事業者では、シフトの組み方に注意が必要です。
4-2. 休日出勤があるときは36協定を締結する
36協定とは、1日8時間・週40時間の法定労働時間を超える時間外労働、および休日出勤が発生するときに締結しなくてはいけない協定です。
正式名称は「時間外・休日労働に関する協定書(届)」ですが、労働基準法の36条に記載されている内容であるため、一般的に36協定と呼ばれています。
該当する従業員が1人でも届出は必要で、怠ると法律違反になります。休日出勤が必要になるときは、必ず36協定を締結しましょう。
関連記事:36協定の届出とは?作成の方法や変更点など基本ポイントを解説
4-3. ルールを明記する
休日に関するトラブルを防ぐためにも、運用時はルールを明記しておきましょう。
休日の詳しい運用内容までは法律で定められていませんので、自社で規定したものを就業規則や雇用契約書などに記載しておけば問題ありません。
とくに、「いつが法定休日・所定休日なのか」「休日出勤したときの賃金はいくらになるのかについて」は、きちんと記載しておきましょう。また休日出勤が多い企業は、振替休日や代休の扱いについても規定しておくことを推奨します。あとから休日日数や賃金でトラブルが生じてしまう恐れがあるため注意が必要です。
4-4. 所定休日・法定休日の有給取得に注意
退職する従業員の中には、退職日までに残りの有給休暇が消化できないからと、所定休日や法定休日に有給休暇を申請してくるケースもあるようです。
本来、有給休暇は労働義務のある日に休みを取るための休暇であるため、労働義務のない所定休日や法定休日に取得することはできません。
退職時に有給休暇が余りそうな場合、会社側で買い取ることは違法ではないため、業務調整が難しく有給休暇が取得できない時は、買い取りなどの対応が必要となるでしょう。
関連記事:有給休暇の買い取りは違法?退職時の対応やトラブル事例を解説
4-5. 雇用・労働形態の違いに注意する
雇用形態や労働形態の違いに注意することは、所定休日や法定休日の運用において非常に重要です。
労働者がパートやアルバイト、契約社員など異なる雇用形態で働いている場合、休日出勤手当の取り扱いは同様に適用されますが、契約社員の場合は派遣元との36協定が必要になるため、特に注意が必要です。
また、労働者が年俸制やフレックスタイム制で働いている場合は、給与の内訳や休日出勤手当に関する取り決めが異なるため、これを確認することが大切です。
年俸制においては、休日手当が年俸の内訳に含まれているのか否かによって、支払いの必要性が異なり、休日手当が年俸の内訳に含まれていない場合は別途支払が必要です。また、フレックス制においても、多くの場合は休日労働が想定されていないため、休日手当の支払が必要です。
このように雇用形態や労働形態を把握することで、適切な対応ができ、労働環境の向上につながります。
5. 所定休日と法定休日の違いや割増率を理解して適切に運用しよう
法定休日とは、労働基準法に定められた原則は週1日、例外として4週4日の休日です。他方で所定休日は会社が独自に決められる休日で、必ず付与する義務はありません。
両者では法律上の取り扱いや割増賃金が異なるため、分けて運用することが大切です。法定休日の要件を満たしていれば、所定休日は会社が自由に決められます。
従業員の健康管理に配慮したうえで、自社の業務に合わせて適切に休日を管理していきましょう。
関連記事:休日と休暇の違いとは?休みの種類や勤怠管理のポイント
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