法人税とは?税率や計算、申告、納付の方法などをわかりやすく解説
更新日: 2024.7.2
公開日: 2022.8.2
jinjer Blog 編集部
法人が事業において利益を上げた際には法人税を計算して期限までに支払うことになります。法人税の支払内容は法人税法に定められているので、納税方法を詳しく確認しておきましょう。
この記事では法人税の概要やルールについて詳しく説明していきます。また、法人税納税の対象となる法人の種類や法人税の種類、課税率、納付の具体的な方法についてもご紹介いたします。
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1. 法人税とは法人の所得に応じて課される税金のこと
法人税とは、法人の所得に対して課される税金のことをいいます。法人の所得とは、売上などの益金から原価や家賃といった損金を差し引いた部分です。
法人税は法人税法の取り決めに応じて課税されます。法人税法には、法人の納税義務者や課税される所得の範囲、計算方法や納付方法が詳しく定められています。
また、法人税の大きな特徴は、法人が黒字の所得を上げたときにのみ課税されるという点にあります。また、税金を納める人と負担する人が同じ場合を指す直接税であることも、法人税の特徴です。
1-1. 法人税の申告期限と納付期限
法人税は、原則として事業年度が終了した翌日から2ヵ月以内が申告と納付の期限となっています。仮に3月31日が事業年度の最終日であった場合は、4月1日から2ヵ月以内、つまり5月1日が申告・納付の期限です。この場合、5月1日が閉庁日(土日祝日など)の場合は、次の開庁日が申告期限になります。
もし期限を過ぎてしまったときには、もともと支払うはずだった税金とともに、加算税や延滞税を支払うことになるので注意が必要です。
法人税のほかにも法人には、法人住民税や法人事業税、特別法人事業税といった税金が課せられます。
関連記事:法人税の申告期限はいつ?期限を過ぎてしまった場合のペナルティも確認
1-2.地方法人税と法人税の違い
地方法人税も法人の所得に対して課税される税金ではありますが、法人税とは異なる税金です。計算方法も異なるので混同しないように注意しましょう。
地方法人税は地域間の税収格差を縮小するために平成26年3月に公布されたもので、法人が国に対して納付し、地方交付税として各自治体に配分される税金です。
また、地方法人税は国に納めるため地方税ではなく国税である点も注意が必要です。
2. 法人税が課せられる法人とは?
法人税が課せられる法人とは次のようなケースです。
- 普通法人(株式会社や有限会社、医療法人など)
- 協同組合
一方、公益法人等や公共法人などは社会に必要な公益性の高い事業をおこなっていると考えられるために法人税は原則として非課税です。しかし、公共法人以外が不動産や物品などを売買したことで収益が発生したのであれば法人税が課せられます。
3. 法人税の課税率は何パーセント?
法人税には比例課税方式が採用されており、どの企業にも一定の税率が適用されます。課税率は年度ごとに見直され、2021年度時点の場合では23.2%でした。
法人にはいくつもの種類があり、法人税の課税対象となるか非課税対象となるかはそれぞれ異なります。法人税の課税対象となるのは、普通法人や協同組合です。
- 普通法人:株式会社、有限会社、合名会社や合資会社、相互会社、医療法人、企業組合など
- 協同組合:農業協同組合、漁業協同組合、労働者協同組合、信用金庫など
法人とよばれる団体でも、公共法人や公益法人は課税対象外です。公益法人とは地方公共団体や金融公庫、国立大学法人、地方独立行政法人など、公益法人とは社団法人や財団法人、学校法人、社会福祉法人、宗教法人などのことです。
これらの法人は社会のために公益事業を営んでいたり、営利を目的とせず公益に関する事業をおこなっていたりすることから、基本的には法人税の対象から除外されます。また、年間の所得が赤字となった場合も、法人税は課税されません。
下記は、平成31年4月1日以降に事業を開始した事業者に対する主な税率区分です。
事業者区分 | 年間課税所得が800万円以下の部分 | 年間課税所得が800万円超の部分 |
普通法人 | 15% | 23.20% |
上記以外の普通法人 | 23.20% | |
協同組合 | 15% | 19% |
基本的にはすべての所得に対して法人税が適用されますが、協同組合や期末資本金が1億円以下の中小法人の場合には軽減税率が適用となり、法人税率は15%となります。ただし中小法人であっても所得金額が800万円を超えていれば法人税率は資本金が1億円以上の場合と同じ23.2%となります。
この軽減税率は、資本金が5億円以上となる法人の子会社等は除外されます。
法人税の課税率や課税方式は都度変更されます。また、法人税率は法定実行税率や表面税率の計算にも用いるので、最新の情報を把握しておくことが重要です
関連記事:法人税の実効税率とは?表面税率との違いや計算方法とあわせて紹介
4. 法人税の計算、申告、納付の流れ
法人税の計算や納付の流れを確認していきましょう。法人税は「課税所得×法人税率」で算出します。
4-1. 課税所得を確認する
課税所得とは税法上の企業の儲けのことです。「益金ー損金」で算出されます。
課税所得は会計上の企業の儲けである利益と混同しないように注意しましょう。利益は「収益ー費用」で算出されます。例えば、交際費は企業会計上は費用として算出されます。しかし、税務上の損金には含まれない勘定科目です。このように益金と収益、損金と費用のそれぞれの該当項目は異なる場合があるため、法人税は「所得」をベースに計算するように注意しましょう。
関連記事:寄付金により法人税の控除も可能!損金算入のための手続きも紹介
4-2. 法人税を計算する
法人税の計算式は下記の通りです。
法人税=課税所得×法人税率
法人税率は先述の通り、企業の所得や資本金の額で変化します。
所得税額が800万円以下の部分と、800万円超の部分で税率が異なるため、800万円を超える課税所得がある場合には、それぞれ分けて計算をして最後に合算しましょう。
例えば、課税所得が1,000万円の中小企業の場合でシミュレーションしてみましょう。課税所得1,000万円のうち、法人税の割合は次のとおりです。
課税所得の範囲 | 法人税率 | 法人税額 |
800万円まで | 15% | 120万円 |
800万円を超える残り200万円 | 23.2% | 46.4 万円 |
つまり、次のように法人税を算出可能です。
- 120万円+46.4 万円=166.4万円
関連記事:法人税の計算方法を確認!計算後の仕訳方法や納付書の書き方も紹介
4-3. 適切な勘定科目で仕訳をおこない決算処理をする
法人税は期末の翌日から2ヵ月以内に申告及び納付するため、決算段階では納付をおこなっていません。そのため決算時には「未払法人税等」という勘定科目を使って仕訳をおこないます。
例えば、先程の146.4万円の法人税を納税する場合、
借方 | 貸方 | ||
法人税等 | 1,464,000円 | 未払法人税等 | 1,464,000円 |
ただし、前年の所得税納付額が20万以下でない場合や事業初年度でない場合などは、原則として法人税額の半額を期首の6ヵ月後の翌日から2ヵ月以内に所得税を中間納付します。そのため多くの企業は法人税を中間納付で一度すでに納めているでしょう。
仮に中間納付で既に60万円分の法人税を納めていた場合、仕訳は下記のようになります。
借方 | 貸方 | ||
法人税等 | 1,464,000円 | 未払法人税等 | 600,000円 |
未払法人税等 | 864,000円 |
ただし、業績の悪化などで赤字決算となった場合など、期末に確定した法人税の納付額が中間納付で納めた仮払法人税額を下回った場合には、差額が還付金として返納されます。この場合には還付される金額(仮払法人税額ー確定した法人税額)を借方に未収入金として記帳しておきます。
関連記事:法人税の勘定科目とは?ケースごとの仕訳ルールや注意点を解説
関連記事:未払法人税等とは?仕訳方法や未払法人税等の具体例、計上の手順を解説
関連記事:法人税等充当金とは?勘定科目や仕訳方法、注意点を確認
4-4. 申告書を作成し、提出する
期末に法人税の納税額が確定したら、法人税の申告書である法人税申告書を作成します。法人税の申告書は税務署で入手することができます。また、国税庁のホームページからもフォーマットをダウンロ―ドすることができます。
申告書の作成に際し、最低限用意するべき書類は下記の3種類です。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 株主資本等変動計算書
上記の書類を見ながら下記の作成ステップで申告書を作成します。
- 別表六以降を完成させる:収益と所得の差分についてを明確にする
- 別表四に別表六までの記載内容をまとめる:課税所得を確定するための調整をおこなったことを明確にする
- 別表七の記入をする:過去の損失と今期の損失について明確にする
- 別表五㈠を記入し、法人税を確定するために別表一の記入:法人税や地方税等の各税額を計算して申告する
- 別表五㈠と別表五㈡に納税額を記入する:④で確定した税額を記入する
- 別表二に株主公正を記載する:会社がグループ会社出ないことを示す
関連記事:法人税申告書の書き方とは?作成に必要な書類や具体的な作成手順、ポイントを解説
関連記事:法人税申告書とは?提出に必要な明細書や作成方法、提出方法を紹介
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4-5. 納付する
確定した納税額を納付します。法人税の申告及び納付は事業年度の終了日の翌日2ヵ月以内に管轄の税務署へおこないます。
5. 法人税の納付方法
法人税は所轄の税務署に対して納付するか、金融機関で支払いをします。納付が遅れてしまうと加算税や延滞税が加算されるおそれもあります。規定の期間内に、法人税申告書や添付書類を添えて納付するようにしましょう。
法人税の納付方法は現金納付のほか、クレジットカード納付、ダイレクト納付、インターネットバンキング納付などが選べます。
5-1. 法人税を現金で納付する方法
現金納付の場合、税務署の窓口か金融機関、コンビニエンスストアでの納付が可能です。コンビニエンスストアでの納付にはバーコード付きの納付書かQRコードが必要です。
5-2. 法人税を電子納付する方法
ダイレクト納付やインターネットバンキング納付をする際にはe-Taxの利用手続きが必要となります。e-Taxでダイレクト納付口座の届け出をすれば、申告後に預貯金口座から振替がおこなわれます。インターネットバンキング納付は、金融機関のインターネットバンキングにログインする方法で納税が可能です。
現金納付を選んでも特に問題はありませんが、手間を省くためにもぜひe-Taxを活用した納付を検討してみましょう。
5-3. 法人税をクレジットカードで納付する方法
クレジットカード納付をする際には「国税クレジットカードお支払いサイト」を利用します。24時間、場所を問わず納付可能ですが、明細書の発行のみで個別の領収書が発行できない点に注意しましょう。
6. 法人税の中間納付(中間申告)とは
法人税は企業の資金繰りの負担を軽減することや税収の安定を目的として、会計期間の中間で納付見込み額の半分を前払いで納付する中間納付という制度を設けています。
中間納付の対象となるのは前期の法人税額が20万円を超えている場合です。事業初年度の企業や法人税額が20万円以下の企業については中間納付の対象ではありません。
中間納付の方法には、予定申告による納付と仮決算による納付の2種類があります。
6-1. 予定申告による納付
予定申告による納付は、前年度の決算で納付した法人税額を基準に納税額を算出する納付方法です。計算方法は下記の通りです。
中間納付する法人税額=前期の法人税納付額÷前期の月数÷6
6-2. 仮決算による納付
仮決算による納付は、上半期を1事業年度として中間決算をして、その時点での課税所得をもとに中間納付する法人税額を算出する方法です。前期よりも経営状況が悪い場合に中間納付での納付額を抑えられるメリットがあります。
関連記事:法人税中間納付とは何か?納付の方法や計算方法、注意点を確認
7. 法人税の種類
法人税の対象企業が支払う税金は以下のように大別できます。
- 各事業年度の所得に対する法人税
- 各連結事業年度の連結所得に対する法人税
- 特定信託の各計算期間の所得に対する法人税
- 退職年金等積立金に対する法人税
それぞれの法人税について詳しく見ていきましょう。
7-1. 各事業年度の所得に対する法人税
各事業年度の所得に対する法人税とは、その年度ごとに得た所得に応じてかけられる税金のことをいいます。単に法人税といった場合には、各事業年度の所得に対する法人税を指すのが一般的です。
法人の事業年度は1年以内と会社法で定められているため、各事業年度の所得に関する法人税も基本的には1年ごとに納税します。ただし、例外として条件に合致すれば事業年度を1年半まで延長でき、この場合には法人税の支払時期も変わってきます。
また、法人税は所得に対して課税されるため「赤字(=所得がない状態)の企業」も課税の対象とはなりません。
関連記事:法人で赤字が出た際に免除される税金・されない税金は?赤字決算での法人税の取り扱いも紹介
7-2. 各連結事業年度の連結所得に対する法人税
グループ経営をしている会社には、各連結事業年度の連結所得に対する法人税が適用となります。
法人税法では基本的に、法人に対して個別に法人税額を算定する単体納税をおこないますが、一定の資本関係にあるグループ企業の場合は、親会社と子会社がそれぞれ法人税を支払うのではなく、グルーブ全体を一つの法人とみなし、所得の合計に対して税率を算出します。この場合、、親会社がグループ全体の所得を連結し、法人税額を算定して申告と納税をおこない、子会社は所轄の税務署へ連結所得に関する書類を提出します。
7-3. 特定信託の各計算期間の所得に対する法人税
こちらは、信託会社を対象とする法人税です。特定の資産を運用するときには、それぞれの計算期間ごとの所得に対して法人税が課税されます。
7-4. 退職年金等積立金に対する法人税
退職年金等積立金に対する法人税は特別法人税として適用されます。その対象となるのは、退職年金に関する業務を扱っている保険会社や信託会社などです。
企業は信託銀行などに対し、厚生年金基金や確定給付企業年金、確定拠出年金といった退職年金などの積み立てをおこなうことがあります。これらの積立金についても法人税が課税されることになります。
退職年金に対する課税は従業員が退職するまで発生しませんが、退職年金等積立金に対する法人税はこれに対する遅延利息のような意味合いを持ちます。
ただし、1999年4月から2023年3月末までに開始する事業年度の退職年金等積立金に関しては課税されないことになっています。
8. 法人税の申告と納付の期限が切れた場合の対応
法人税は期限までに申告、納付する必要があります。期限後に自ら申告~納税した場合は税務署に指摘されたケースよりもペナルティが軽くすみます。自ら申告、納税したケースで支払うのは延滞税のみです。そのため納付の期限が切れた場合はすぐに納付しましょう。
税務署が税務調査に入るまでに申告と納付を放置していたのであれば、所得金額や納める税額を判断して納税額が通達されます。税務署の指示を無視すると督促がおこなわれます。督促を放置してしまうと財産を差し押さえされる可能性があります。また、税務署の調査によって無申告が発覚した場合は延滞税だけでなく無申告加算税も課せられます。大きなペナルティを下されないためにも期限内に申告と税金の納付をしましょう。
9. 税率や申告期限を守り適切に法人税を納付しよう
一般的な法人の所得には必ず法人税がかかります。ただし、法人の種類や事業で得られる所得の金額によっては、法人税の課税率が大きく下がったり課税が免除されたりすることもあります。
法人税の支払いを怠った場合、加算税や延滞税が課されるなどのペナルティーの対象となります。会社を設立する場合には法人税の支払いは必須と考え、ルールを守って納税することが重要です。
関連記事:法人税の繰越欠損金とは?控除によるメリットや適用要件も解説
関連記事:法人税の節税対策におすすめの方法9選!節税実施時の注意点も確認
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