労働基準法におけるパート・アルバイトの有給休暇の条件と日数・賃金の計算方法
有給休暇とは賃金の発生を伴う休暇日のことです。正確には「年次有給休暇」といい、労働基準法に定められた条件を満たした全従業員に対して所定日数の有給休暇が付与されます。パートやアルバイトなど非正規雇用の従業員も付与の対象です。
また、2019年の法改正により、有給休暇の付与に加えて休暇の最低取得日数にも条件が設定されています。担当者の方は有給休暇のルールを正しく理解し、全従業員がゆとりを持って働ける環境を整えましょう。
この記事では、労働基準法におけるパート・アルバイトの有給休暇の条件について解説します。
▼そもそも労働基準法とは?という方はこちらの記事をまずはご覧ください。
労働基準法とは?雇用者が押さえるべき6つのポイントを解説
パート・アルバイトであっても、雇い入れから6ヶ月が経過し、その間の出勤率が8割以上であれば有給休暇を付与しなくてはなりません。
とはいえ、「本社からアルバイトにも有休を与えるよう指示されたが、どうやって対応すればいいか分からない…」という方も多いでしょう。
そのような方に向け、当サイトではパート・アルバイトへの有給休暇の付与方法や、有給休暇をめぐるトラブルを防ぐ取得ルールの例などをまとめた資料を無料で配布しております。
アルバイトへの有休付与のルールや管理の方法、「休まれたら困る!」という時の対応まで、アルバイトの有休管理ですべきことを確認したい方は、ぜひこちらからダウンロードして資料をご覧ください。
目次
1. 労働基準法におけるパート・アルバイトの有給休暇の条件
従業員に対して年次有給休暇を付与する条件は以下の2点です。
- 雇入れの日から6ヵ月継続勤務している。
- 全労働日の8割以上出勤している。
有給休暇を付与する条件に雇用区分は関係ありません。正規社員だけではなく、パートやアルバイトといった非正規社員も上記条件を満たせば有給休暇付与の対象となります。
1-1. 6ヵ月の継続雇用があること
労働基準法におけるパート・アルバイトの有給休暇の条件として、6ヵ月の継続雇用が重要となります。有給休暇は、雇用開始日から6か月間継続して勤務した場合に初めて付与されます。その後も、継続して1年間勤務するごとに有給休暇が付与されることが法律で定められています(労働基準法39条1項~3項)。
パートタイム労働者やアルバイトであっても、この継続勤務期間の要件は正社員と同様です。つまり、6か月以上の継続勤務が認められれば、パートやアルバイトでも一定日数の有給休暇を取得する権利があります。このため、企業の人事担当者や管理者は、有給休暇の付与条件や計算方法について正確に理解し、適切に管理することが求められます。従業員の労働環境の改善と共に法的義務の履行を確実に行うことが重要です。
参考:e-GOV法令検索
1-2. 基準期間内の全労働日に対して8割以上出勤していること
労働基準法に基づき、パートやアルバイトの有給休暇の条件は、6ヵ月の継続雇用が必要です。
この条件を満たすためには、まず基準期間内の全労働日に対して8割以上出勤していることが求められます。基準期間とは、最初の有給休暇付与に関しては雇入れから6ヵ月、それ以降は有給休暇が付与される直前の1年間を指します。
具体例を挙げると、週3日勤務のパートやアルバイトの所定労働日数は1年間で106日となります。この場合、出勤日数が85日以上であれば、有給休暇を取得する権利が得られます。また、有給休暇を使用した日も出勤日として計算されるため、有効に利用すれば出勤率の条件をクリアしやすくなります。
これにより、人事担当者や管理者は労働者の出勤日数を正確に管理し、有給休暇付与の法的要件を効率的に満たすことが可能です。
1-3. 付与条件に関する注意点
なお、業務に起因する怪我や病気により止むを得ず仕事を休んだ場合、有給休暇の取得条件のうえでは欠勤扱いにはなりません。また、法令に基づいて育児休暇や介護休暇を取得した場合も出勤したとみなします。
初回付与が完了すると、次回の付与は1年後です。その後も1年経過するごとに新たな有休を付与していきます。有給を付与するタイミングは全社員一律ではなく、入社日(入社月)によって異なるため注意しましょう。
パート従業員の有休取得に関しては組織内でルール化されていなかったり管理方法がきちんと決まっていないケースもしばしば見受けられます。当サイトではパート従業員の有休管理の方法や取得方法、定めるべきルールの例などをまとめた資料を無料で配布しております。店舗内でパート従業員の有休管理をしっかりと行っていきたい方は、こちらから資料をダウンロードしてぜひご覧ください。
2. パート・アルバイトの有給休暇の日数の計算方法
パートに付与する有給休暇の日数は「雇用継続期間」と「週の所定労働日数」を基に算出します。週の所定労働日数とは雇用者と労働者の間で取り決めた「1週間のうちにシフトに入る日数」のことです。
ここでは、フルタイムで働く従業員とパートタイムで働く従業員に分けて、有給休暇の付与日数の計方法を解説します。
2-1. フルタイムで働く従業員の有給休暇計算方法
フルタイムと定義される従業員の条件は以下の通りです。
- 週の所定労日数が5日以上、または年間の労働日数が217日以上
- 週の平均労働時間が30時間以上
上記の条件を満たしていれば非正規社員であってもフルタイムの従業員に該当し、正社員と同様の基準で有給休暇を付与します。フルタイム従業員の場合、有給休暇付与日数に影響するのは雇用継続期間のみです。
【フルタイム従業員の有給付与日数】
勤続年数 | 付与日数 |
0.5年 | 10日 |
1.5年 | 11日 |
2.5年 | 12日 |
3.5年 | 14日 |
4.5年 | 16日 |
5.5年 | 18日 |
6.5年以上 | 20日 |
2-2. パートタイムで働く従業員の有給休暇計算方法
労働基準法では以下の条件に該当する従業員をパートタイムとして定義しています。
- 週の所定労働時間が4日以下、または年間の労働日数が216日以下
- 週の平均労働時間が30時間以下
パートタイムの場合、週の所定労働日数に応じて有給休暇の付与日数が変動することが特徴です。そのため、フルタイムに比べて有給休暇の付与日数自体は少なくなります。
【パートタイムの有給付与日数】
週の所定労働日数 | 年間の所定労働日数 | 勤続年数 | ||||||
0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年 | ||
4日 | 169~216日 | 7 | 8 | 9 | 10 | 12 | 13 | 15 |
3日 | 121~168日 | 5 | 6 | 6 | 8 | 9 | 10 | 11 |
2日 | 73~120日 | 3 | 4 | 4 | 5 | 6 | 6 | 7 |
1日 | 48~72日 | 1 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 |
2-3. 年の途中で所定労働日数が変更された場合
年次有給休暇は、雇用から6ヵ月経過した日を「基準日」として付与します。基準日時点の状況に基づいて判断されるため、年の途中で契約により所定労働日数などが変更となった場合でも、すでに付与した年次有給休暇の日数はそのまま有効です。次回の基準日に到達した時点で、その時の契約状況により付与日数が変更されます。
例えば雇用から半年経過時点の労働者で、所定労働時間は1日7時間、週4日出勤だったとします。この条件の場合、有給休暇は「7日分」付与されます。
続いて、同じ労働者が2回目の付与の予定日である雇用から1年半後の時点で、所定労働時間が1日8時間、週4出勤に変更していた場合、週の労働時間が30時間以上に該当するので、フルタイム、正社員と同じ日数である「11日分」付与されます。
有給付与数を確認する際は、基準日時点での所定労働時間をもとに考えましょう。
3. パート・アルバイトの有給休暇の賃金算出方法
パートの有給休暇の賃金算出方法には以下の3つがあります。
- 労働基準法で定める平均賃金
- 所定労働時間働いた場合に発生する賃金
- 健康保険の標準報酬月額の30分の1
いずれの方式を採用する場合でも、経営者は就業規則や社内規定にその内容を明記する必要があります。
3-1. 労働基準法で定める平均賃金
労働基準法第12条で定める平均賃金とは、「過去3ヵ月間の平均賃金」のことです。解雇予告手当や休業手当、年次有給休暇の賃金などを算定尺度として使われるのが「平均賃金」で、従業員の生活賃金をありのままに算定することが基本原理となっています。
計算方法はいろいろありますが、基本は3か月間に支払われた賃金総額を3か月間の総日数で割って算出します。
3-2. 所定労働時間働いた場合に発生する賃金
雇用契約書において、1日当たりの所定労働時間が定められている場合は、「所定労働時間×時給」で賃金を算出することも可能です。完全固定シフトの場合は、その日の労働予定時間を基に算出するケースもあります。
3-3. 健康保険の標準報酬月額の30分の1
標準報酬月額とは、保険料等を算出するために毎月の給料を区切りのよい幅で区切った金額のことです。標準報酬月額を30分の1にした標準報酬日額を有給休暇の賃金とすることもできます。ただし、この方法は労働者にとって不利に働く場合もあり、適用には労使協定の締結が必要です。
4. パート・アルバイトの有給休暇に関連するルール
4-1. 有給休暇の有効期限は2年間
1年間で消化しきれなかった有給休暇は次の1年間に繰り越せます。ただし、有給休暇の有効期限は2年間です。次の1年間でも消化しきれなかった有給休暇は自動消滅してしまいます。
パート従業員に限らず、従業員のほとんどは有給休暇の繰り越しや有効期限について正確に把握していないことが多いようです。「有給休暇が気づかないうちに消滅していた」ということがきっかけで、トラブルとなるケースも考えられます。トラブルを防ぐには、新たにパート従業員を雇入れる際に、入社時に有給休暇の制度について説明しておくことが重要です。
関連記事:有給休暇は消滅する?時効や未消化分の取り扱いの注意点
4-2. 有給休暇の付与を早めることもできる
「有給休暇の初回付与は入社後6ヵ月後」というのは、あくまで労働基準法で定められている最低基準です。各企業の判断で、初回の付与を前倒しすることに問題はありません。福利厚生に力を入れている企業などは、入社後すぐに有給休暇を付与することもあります。
有給休暇の繰り越し日数や有効期限についても、法令で定められている最低基準を下回らなければ、企業の裁量でルールを決定できます。
ただし、最低基準が守られていない場合は労働基準監督署や行政の指導が入る可能性もあるので、ルールを決める際には法令順守を心掛けましょう。
4-3. 退職時の有給消化を認める必要がある
すでに職場の退職日が決まっているとしても、有給休暇が余っている場合には残りの有給休暇を全て消化する(使い切る)ことが可能です。
有給休暇は労働基準法で守られているため、従業員が有給休暇を申請すれば雇用主は拒否できません。そのため、たとえ退職日が決まっている場合でも、通常と同じく有給休暇の取得が可能となります。しかし、退職通知から退職日までの期間が短いと、引き継ぎや人員確保をする必要があるので、休暇を取得されると困ってしまう業種もあるでしょう。
このような状況にならないために使用者側ができる対策は、早く通知をもらえるように就業規則に退職時の通知時期について明記すること、時季変更権を用いて労働者に退職時期の延長を働きかけることなどが挙げられます。とはいえ、退職日の変更は難しいケースが多く、認めざるを得ない可能性も少なくありません。
4-4. 半休・時間休などが認められる場合がある
通常、有給休暇は1日単位で付与されるものですが、労働契約や就業規則で半日単位の取得が明記されていれば、午前休や午後休として半休が認められます。また、労使協定を締結することで、時間単位での有給休暇(時間休)の取得も可能となります。これにより、個別の事情に応じた柔軟な働き方を実現できるため、企業としても従業員の働きやすさを確保し、労働環境の向上につなげることができます。
4-5.有給休暇請求に対する時季変更権とは
有給休暇は、従業員本人が任意のタイミングで取得することが原則です。しかし、従業員の有給休暇の取得によって正常な業務が遂行できない場合に限り、雇用主には休暇の取得時期を変更する権利が認められています。これは時季変更権というもので、従業員の雇用形態がパートやアルバイトの場合にも適用される使用者側の権利です。
ただし、使用者側は有給休暇の日程を変更できますが、有給休暇の取得そのものを認めないとすることは禁じられています。また、単に「忙しい」「代わりの人がいない」という理由だけでは変更できないので注意が必要です。
時季変更権が認められない事例
このほか、時季変更権が行使できない事例には次のようなものがあげられます。
- 退職前に有給休暇を消化する場合など、その日でないと取得が不可能な場合
- 変更により、取得日が産後休業・育児休業の期間にかかる場合
- 計画的付与に指定されている日
- 有給休暇の権利が時効により消滅する場合
これらに該当する場合、使用者側は時季変更権を行使できず、従業員の権利が優先されます。繁忙期のタイミングが分かっている労務担当の方は、早めに従業員へ相談し、繁忙期に有給休暇の取得は難しいと働きかけることがトラブルを未然に防ぐことにつながるでしょう。
関連記事:時季変更権とは?行使するための条件や注意点を徹底解説
5. 労働基準法の改正で最低5日間の有給休暇取得が義務化
2019年4月に施行された労働基準法の改正により、全ての事業者には「時期を指定したうえで従業員に有給休暇を取得させる」義務が課せられました。これは特定の時期に有給休暇の取得が集中してしまうことを防ぎ、確実に休暇を取得させるための法改正です。
そのため、各事業所においては従業員の有給取得を分散して取得させる工夫も必要となります。
5-1. 有給休暇の取得義務がある従業員の条件
有給休暇の取得が義務化されるのは「年間の有給休暇付与日数が10日以上の全従業員」です。パートを始めとする非正規社員も例外ではなく、条件に該当する従業員は全て有給休暇の取得義務が生じます。
ただし、年間の付与数が9日以下の従業員であれば有給休暇を所得させなくてもよいということではありません。有給休暇の取得は労働者に与えられた権利です。従業員の求めがあれば、原則として希望に沿った休暇を与える必要があります。
フルタイムの社員数が増えた場合、「誰が何日分の有給を取得したのか」を管理するのが難しくなります。そこで必要性が高まっているのが、年次有給休暇管理簿です。年次有給休暇管理簿とは、従業員一人ひとりの有給休暇の取得状況を記録する帳簿のことをいいます。詳しくは以下の記事をご覧ください。
関連記事:年次有給休暇義務化にともなう管理簿とは?作成方法と保存期間を解説
5-2. 時期指定のうえで最低5日間の有給休暇取得が必要
法令による有給休暇の取得義務は、年間で5日です。そのため、労働者に付与されている全ての有給休暇を取得させなければいけない、ということはありません。
また、今回の法改正では「有給休暇の取得時期を事前に指定する」ことを義務付けています。これは特定の時期に有給休暇の取得が集中してしまうことを防ぎ、確実に休暇を取得させるための措置です。そのため、各事業所においては従業員の有給取得を分散して取得させる工夫も必要となります。
なお、有給休暇は従業員本人が任意のタイミングで取得することが原則です。しかし、従業員の有給休暇の取得によって正常な業務が遂行できない場合に限り、雇用主には休暇の取得時期を変更する権利が認められています。これを時季変更権といいます。
関連記事:有給休暇年5日の取得義務化とは?企業がおこなうべき対応を解説
6. パート従業員の有給休暇を正しく管理しよう
有給休暇とは、従業員の心身の疲労を回復し豊かな生活を保障するための制度です。経営者にはパート社員を含めて全従業員の有給休暇を正しく管理・運用する義務があります。従業員が心身ともに健康であることは、業務効率のアップや職場環境を良好に保つなどのメリットに繋がるので、年次有給休暇の制度をしっかり説明して積極的に取得を促すことをおすすめします。
適切な有給休暇の付与は従業員からの信頼も得られるので、法令を遵守して休暇が取りやすい労働環境を整えていきましょう。
パート・アルバイトであっても、雇い入れから6ヶ月が経過し、その間の出勤率が8割以上であれば有給休暇を付与しなくてはなりません。
とはいえ、「本社からアルバイトにも有休を与えるよう指示されたが、どうやって対応すればいいか分からない…」という方も多いでしょう。
そのような方に向け、当サイトではパート・アルバイトへの有給休暇の付与方法や、有給休暇をめぐるトラブルを防ぐ取得ルールの例などをまとめた資料を無料で配布しております。
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