就業規則の意見書とは?様式・記入例や作成に必要な内容と押印時のポイントを解説 - ジンジャー(jinjer)|クラウド型人事労務システム

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就業規則の意見書とは?様式・記入例や作成に必要な内容と押印時のポイントを解説

弁護士に相談する様子

就業規則を届け出る際は、従業員代表から聴取した意見をまとめた「意見書」の添付が必要です。意見書には、就業規則に対する意見の他に従業員代表の選出方法を記載し、署名・捺印をしなければなりません。

この記事では、就業規則の意見書の概要と作成に必要な内容、反対意見が出たり記入を拒否されたりしたときの対処法を紹介します。

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1. 就業規則の意見書とは?

書類に何か書く様子

就業規則の意見書とは、就業規則の内容に対して、労働者の代表から意見を聴取し書き記した書類のことです。意見の聴取や意見書の添付については、労働基準法の第90条によって規定されています。

(作成の手続)
第九十条 使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
② 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。

引用:労働基準法|e-Gov法令検索

意見書は、就業規則を制定・変更し、管轄の労働者基準監督署へ届け出る際に添付しなければなりません。また、就業規則に対する意見聴取をしなかった際の罰則規定も設けられていますので注意しましょう。

関連記事:就業規則の届出方法と具体的な手順を分かりやすく解説

1-1. そもそも就業規則とは

就業規則とは、賃金・労働時間などの労働条件や職場内の規律を定めた規則集であり、社内規程の一種です。常時10人以上の労働者を雇用する場合は、労働基準法第89条に従って就業規則を作成しなければなりません。

(作成及び届出の義務)
第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

引用:労働基準法|e-Gov法令検索

就業規則に記載する内容は、大きく3つに分類されます。まず、絶対的必要記載事項として、労働時間や賃金などの事項があります。絶対的必要記載事項は必ず記載しなければなりません。

次に相対的必要記載事項として、退職手当や制裁など、制度が実施される場合に記載が求められる事項があります。3つ目は、任意記載事項です。任意記載事項は、企業が自由に定めることができます。

就業規則は、労働契約の一部として労働者が守るべき事項を明確にするために作成され、労働基準法などの法令に基づいて適正に整備しなければなりません。就業規則を通じて、労働者が会社での働き方を理解し、安心して勤務できる環境を整えることが求められます。

1-2. 会社の就業規則には届出義務がある

就業規則を作成または変更した場合、使用者は労働基準監督署にその内容を届け出る義務があります(労働基準法89条)。なお、就業規則の届出義務が発生する条件は、「常時10人以上の労働者を使用する使用者」です。

作成するだけではなく届出をおこなわなければ、就業規則の効力が発揮されないため注意しましょう。

1-3. 意見書のテンプレート

就業規則の意見書のテンプレートは、厚生労働省のホームページからダウンロードできます。Word形式とPDF形式があるため、使いやすい形式でダウンロードしましょう。

参照:様式集|厚生労働省

1-4. 就業規則の意見書の提出先・提出期限

就業規則の意見書は、「就業規則(変更)届」に添付し、所轄の労働基準監督署長へ提出しましょう。就業規則を新たに作成したときはもちろん、変更したときも同様の手続きが必要です。提出方法には、窓口への持参、郵送、電子申請があるため、効率のよい方法を選びましょう。

提出期限については、法律上の明確な規定はありません。ただし、原則としては就業規則の施行期日までには届け出るようにしましょう。

2. 就業規則の意見書における労働者とは

労働基準法

ここまで解説した通り、就業規則の届け出に際しては、労働者代表の意見を聴いたうえで、その内容をまとめた意見書を添付しなければなりません。

“労働者”とは、正社員のような正規雇用者、パート・アルバイトのような非正規雇用を問わず、該当の事業所で働く全ての人を指します。
正社員だけでなく、パートやアルバイトなどを含めた労働者の過半数で組織する労働組合でないと認められないケースもあるため注意しましょう。

2-1. 労働者の代表とは

意見を聴取すべき“労働者の代表”とは、下記のいずれかを指します。

  1. 労働者の過半数で組織する労働組合
  2. 1がない場合は、民主的に選ばれた労働者の過半数を代表する者

2は、経営者に近い立場で業務をおこなう者(部長・課長などの管理監督者)は選出されても代表となることはできません。そのため、一般職の労働者から、選挙や投票などの方法で選出することが求められます。

2-2. 労働者に意見を聴取する理由

なぜ就業規則の制定や変更の際に、労働者からの意見聴取が義務化されているかというと、労使トラブルを回避するためです。以下のような理由から、労働者への意見を聴取することが義務化されています。

  • 会社側は、労働者に不利なルールを勝手に作成・運用しないため
  • 労働者側は、労働条件に関心を持ち、就業規則の内容を把握するため

このように労働者の意見を聴取することには、労働者に対して就業規則の内容を告知し、労使間の闘争を事前に防ぐ意味合いがあります。

3. 就業規則の意見書の書き方(異議なし・異議あり)の様式・記入例

書類の説明をする様子

それでは実際に、就業規則の意見書の書き方を説明します。意見書の書き方に決まったフォーマットはありませんが、参考になる様式・記入例として、意見がなかったケースと、あったケースに分けて紹介します。

3-1. 就業規則に対し意見がなかった場合の意見書の書き方

  • 特になし
  • 特に異議はございません。
  • 内容を確認しましたが、特に意見はありません。

意見がない場合は、そのことが分かるように記載していれば問題ありません。

異議なしの場合のひな形・記載例

以下は「異議なし」場合の意見書の記載例です。

   意見書

            年 月 日

株式会社〇〇〇
代表取締役〇〇〇〇殿

就業規則について、〇年〇月〇日に労働者代表者会議を開催し、労働者代表者に意見を求めたところ、特に意見はありませんでした。

労働者代表
〇〇〇〇(氏名)
〇〇〇〇会社(会社名)

労働者の過半数を代表する者の選出方法(   )

3-2. 就業規則に対し意見があった場合の意見書の書き方

就業規則に対して異議があったケースの書き方も把握しておきましょう。
就業規則に対し意見があった場合は、就業規則のどの部分をどのように変更して欲しいか、具体的に記載してもらいましょう。

記載例

以下は「異議あり」の場合の意見書の記載例です。

  意見書

           年 月 日

株式会社〇〇〇
代表取締役〇〇〇〇殿

就業規則について、〇年〇月〇日に労働者代表者会議を開催し、労働者代表者に意見を求めたところ、以下のような意見がありました。

1.労働時間の延長について明確な取り決めがないため、具体的な基準を設けるべきである。
2.賃金の遅延に対する措置が不十分であるため、具体的な対応策を記載すべきである。

労働者代表
〇〇〇〇(氏名)
〇〇〇〇会社(会社名)

労働者の過半数を代表する者の選出方法(   )

4. 就業規則の意見書に記載すべき内容

デモの様子

就業規則の意見書には、就業規則に対する意見や、労働者代表の氏名、労働者代表の選出方法などを記載します。
なお、就業規則の意見書に決まった様式はありませんが、労働基準監督署のホームページなどに掲載されているものを利用すれば、記載漏れを防げるでしょう。
ここでは、記載が必要な項目を解説します。
参考:就業規則意見書|厚生労働省

4-1. 話し合いをした日付

就業規則に対する意見を求められた日(話し合いをした日)を記載します。

意見書の日付は施行日にすべき?

意見書の日付は、意見書を作成した日を記載するのが一般的です。これは従業員代表者が実際に意見を記入した日を示すものであり、使用者に提出した日とも異なる場合があります。施行日との関係でも、意見書の日付は施行日よりも前であることが望ましいです。ただし、実際にはそれほど問題視されません。

4-2. 会社名及び代表取締役氏名

労働者から意見書を提出する相手は、“会社”となります。
そのため、下記のように会社名を正式名称で記載し、代表取締役氏名もフルネームで記載しましょう。

株式会社〇〇 代表取締役〇〇〇〇殿

4-3. 就業規則に対する労働者代表の意見

話し合いで得られた、就業規則に対する労働者代表の意見を、代表者自身に記載してもらいます。
「特になし。」などでも問題ありません。

4-4. 労働組合の名称、または労働者代表の職名と氏名

話し合いをした労働組合の名称、または労働者代表の氏名をフルネームで記載し押印します。職名は「一般職」などで問題ありません。

4-5. 労働者の過半数代表者を選出した方法

労働者の過半数代表者を選んだ方法を記載します。「投票により選出」など、具体的に記載しましょう。

5. 就業規則の意見書作成時に法律上、押印は必要?不要?

電球これまでは就業規則の届出時には署名・押印が必要とされていましたが、現状はどうなっているのでしょうか。ここでは、署名や押印に関する法改正について説明します。

5-1. 2021年4月1日以降は署名・押印が廃止

2021年4月1日以降、就業規則の届出の際に必要であった署名・押印が廃止されました。就業規則の意見書についても同様です。

この法改正は行政手続きを簡素化し、デジタル化を進める目的があります。そのため、現在の就業規則の意見書においては署名や押印を必ずしも求められなくなりました。

ただし、誰が作成した書類であるかを明確にする必要はあるため、署名は必要です。意見書を提出する前に、署名があるか確認しておきましょう。

参照:労働基準法施行規則等の一部を改正する省令に関するQ&A ~行政手続における押印原則の見直し~|厚生労働省

6. 就業規則の意見書作成・変更時のポイント

summary

意見書を作成するうえで、労働者代表から就業規則への同意が得られなかったり、意見書すら書いてもらえなかったりするケースもあるでしょう。
ここでは、就業規則の意見書に関する注意点を解説します。

6-1. 会社が従業員代表を指名することはできない

従業員代表の選出はあくまでも民主的に、従業員自らがおこなう必要があります。そのため、会社側が勝手に代表者を決定し、意見書を記載してもらうことはできません。

同意を得るために、会社側が代表者を決定するような対応は禁止されているため注意しましょう。意見書の提出時にはこの選出方法も記載しますので、適切なものである必要があります。

参考:e-Gov法令検索 | 労働基準法施行規則

就業規則の意見書における民主的な選出方法とは

民主的な選出方法の具体例は、従業員全員による投票、挙手、話し合いなどの方法があります。選出後は、従業員代表が就業規則案を検討し意見をまとめ、意見書を作成します。

管理監督者は代表者になることができない

管理職や監督者(管理監督者)は、他の従業員を指導・監督する役割を持つため、労働者代表にはなれません。例外として、事業所に管理監督者しかいない場合のみ、管理監督者が労働者代表になることが許されます。

6-2. 就業規則の意見聴取は事業所ごとにおこなう

就業規則の意見聴取は、各事業所ごとにおこなう必要があります。複数の事業所がある企業では、各事業所で労働者代表を選出し、意見を聴取しなければなりません。特定の従業員に適用される就業規則であっても、全従業員が参加して選出します。

6-3. 会社側で作成しないようにする

当然ですが、就業規則の意見書は会社側で作成しないようにしましょう。就業規則の意見書は、従業員の代表者が作成すべきものです。

従業員の意見を聞かなかったり、意見書を正しく作成しなかったりした場合は、労働基準法違反となり罰則を受ける可能性もあります。また、刑法上の文書偽造に該当する可能性もあるため、絶対に避けましょう。

6-4. 反対意見があっても意見書を添付すれば問題ない

意見書は労働者に対して意見を聞き、その内容をまとめたものであり、必ずしも同意が必要なわけではありません。そのため、就業規則への反対意見があったとしても、労働基準監督署に届出をおこなううえでは問題ありません。

また、従業員に対して周知をすれば、就業規則として効力も発揮します。ただし、就業規則の変更が労働基準法を下回る内容である場合には認められないケースもあります。

6-5. 意見書の提出を拒否された場合「意見書不添付理由書」が必要

労働者代表に就業規則の説明をおこない、意見を聞いたものの、意見書の提出を拒否された場合は、別途「意見書不添付理由書」の作成が必要です。
なお、会社側としては、意見を聞いていることに変わりはないため、意見書を添付できなかったとしても違反とはなりません。

「意見書不添付理由書」には、意見を聞いたが応じてもらえない経緯を記載しますが、詳しい記載方法は、管轄の労働基準監督署に確認しましょう。

また、法律上は問題がないとはいえ、話し合いさえ難しいなか、就業規則を強行すればさらに労使間の溝が深まる可能性には十分留意しましょう。

7. 使用者が労働者の意見聴取を実施しないときの罰則

ブロック

就業規則の作成・変更の際に労働者の意見を聴くことは使用者の義務であり、労働者代表に意見を聞かずに、会社側で意見書を作成し提出した場合、労働基準法上の違反となり、最悪の場合30万円以下の罰金が科される恐れがあります。

第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

引用:労働基準法|e-Gov法令検索

さらに、労働者の意見を聴くべき立場にある人(代表取締役など)が、労働基準法の規定に従って意見を聴かなかった場合は、会社に対しても同様に「30万円以下の罰金」が科されます。労働基準法違反で刑事罰を受けると、会社のレピュテーションの悪化が懸念されますので、注意が必要です。

とはいえ、就業規則は本来、会社側が一方的に作成・変更できるため、従業員に周知さえすれば、効力自体に影響はありません。しかしながら、このような対応は労働紛争のきっかけともなりかねません。
必ず就業規則について、労働者代表と話し合いの場を設けるようにしましょう。

8. 就業規則の届出には意見書を添付し労働基準監督署へ提出を

討論する様子

今回は、就業規則の意見書を作成する意味や、作成するときの注意点などを解説しました。就業規則を届け出る際は、意見書の添付が必要です。厚生労働省のホームページでテンプレートが公開されているため、ダウンロードして作成しましょう。

労働者代表から意見を聴取した事実があればよいため、意見書の内容は賛成・反対、どちらが記載されていても問題ありません。会社側で意見書を作成することは労働基準法違反であるため、絶対に避けましょう。

もし、意見書の記載を拒否されたら「意見書不添付理由書」を添付すれば問題ありませんが、労使間の溝を埋めるためにも、話し合いの継続が求められます。

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