就業規則の意見書とは?様式・記入例や作成に必要な内容と押印時のポイントを解説
就業規則を届け出る際は、従業員代表から聴取した意見をまとめた「意見書」の添付が必要です。意見書には、就業規則に対する意見の他に、従業員代表の選出方法や署名・捺印が必要です。
この記事では、就業規則の意見書概要と、作成に必要な内容、反対意見が出た際や、記入を拒否されたときの対処法を紹介します。
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就業規則とは?人事担当者が知っておくべき基礎知識
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目次
1. 就業規則の意見書とは?
就業規則の意見書とは、就業規則の内容に対して、労働者の代表から意見を聴取し書き記した書類のことです。
意見書は、就業規則を制定・変更し、管轄の労働者基準監督署へ届け出る際は添付が法律上義務付けられています。また、就業規則に対する意見聴取をしなかった際の罰則規定も設けられていますので注意しましょう。
関連記事:就業規則の届出方法と具体的な手順を分かりやすく解説
1-1. そもそも就業規則とは
「就業規則」とは、賃金・労働時間などの労働条件や職場内の規律を定めた規則集であり、社内規程の一種です。就業規則に記載される内容は大きく3つに分類されます。まず、絶対的必要記載事項として労働時間や賃金などの必須事項があり、次に相対的必要記載事項として退職手当や制裁など、制度が実施される場合に記載が求められる事項があります。3つ目に、任意記載事項として、企業が自由に定めることが可能な内容があります。就業規則は、労働契約の一部として労働者が守るべき事項を明確にするために作成され、労働基準法などの法令に基づいて適正に整備される必要があります。この文書を通じて、労働者が会社での働き方を理解し、安心して勤務できる環境を整えることが求められます。
1-2. 会社の就業規則には届出義務がある
就業規則を作成または変更した場合、使用者は労働基準監督署にその内容を届け出る義務があります(労働基準法89条)。なお、就業規則の届出義務が発生する条件は、「常時10人以上の労働者を使用する使用者」です。つまりこの条件に該当する事業所に対して届出が義務付けられています。就業規則の意見書はフォーマットやテンプレ―ㇳを入手可能なので、適切に対応しましょう。労働条件に直接影響を与える重要な社内規程であるため、労働者への周知を徹底し、労働者の意見を反映させることが奨励されています。
2. 就業規則の意見書における労働者とは
就業規則の届け出に際しては、労働者の代表の意見を聴いた上で、その内容をまとめた意見書を添付しなければなりません(同法90条2項)。
“労働者”とは、正社員のような正規雇用者、パート・アルバイトのような非正規雇用を問わず、該当の事業所で働く者全てを指します。
正社員だけでなく、パートやアルバイトなどを含めた事業場の全ての労働者の過半数で組織する労働組合でないと認められないケースもあるため注意しましょう。
2-1. 労働者の代表とは
意見を聴取すべき“労働者の代表”とは、下記のいずれかを指します。
- 労働者の過半数で組織する労働組合
- 1がない場合は、民主的に選ばれた労働者の過半数を代表する者
2は、経営者に近い立場で業務をおこなう者(部長や課長など管理監督者)は選出されても代表となることはできません。そのため、一般職の労働者から、選挙や投票などの方法で選出することが求められます。
2-2. 労働者に意見を聴取する理由
なぜ就業規則の制定や変更の際に、労働者からの意見聴取が義務化されているかというと、労使トラブルの回避がその目的となります。
- 会社側は、労働者に不利なルールを勝手に作成・運用しないため
- 労働者側は、労働条件に関心を持ち、就業規則の内容を把握するため
このように、労働者に対して就業規則の内容を告知し、労使間の闘争を事前に防ぐ意味合いがあります。
3. 就業規則の意見書の書き方(異議なし・異議あり)の様式・記入例
それでは実際に就業規則の意見書の書き方を説明します。意見書の書き方に決まったフォーマットはありませんが、参考になる様式・記入例としてここでは意見がなかったケースと、あったケースに分けて紹介します。
3-1. 就業規則に対し意見がなかった場合の意見書の書き方
- 特になし
- 特に異議はございません。
- 内容を確認しましたが、特に意見はありません。
意見がない場合は、そのことが分かるように記載していれば問題ありません。
異議なしの場合のひな形・記載例
以下は「異議なし」場合の意見書の記載例です。
意見書 年 月 日 株式会社〇〇〇 就業規則について、〇年〇月〇日に労働者代表者会議を開催し、労働者代表者に意見を求めたところ、特に意見はありませんでした。 労働者代表 労働者の過半数を代表する者の選出方法( ) |
3-2. 就業規則に対し意見があった場合の意見書の書き方
就業規則に対しての異議なしだけではなく、異議ありのケースも把握しておきましょう。
就業規則に対し意見があった場合は就業規則のどこをどのように変更して欲しいか、具体的に記載してもらいましょう。
記載例
以下は「異議あり」の場合の意見書の記載例です。
意見書 年 月 日 株式会社〇〇〇 就業規則について、〇年〇月〇日に労働者代表者会議を開催し、労働者代表者に意見を求めたところ、以下のような意見がありました。 1.労働時間の延長について明確な取り決めがないため、具体的な基準を設けるべきである。 労働者代表 労働者の過半数を代表する者の選出方法( ) |
4. 就業規則の意見書に記載すべき内容
就業規則の意見書には、就業規則に対する意見や、労働者代表の氏名、労働者代表の選出方法などを記載します。
なお、就業規則の意見書に決まった様式はありませんが、労働基準監督署のホームページなどに掲載されているものを利用すれば、記載漏れを防げるでしょう。
記載が必要な項目を解説します。
参考:厚生労働省 | 就業規則意見書
4-1. 話し合いをした日付
就業規則に対する意見を求められた日(話し合いをした日)を記載します。
意見書の日付は施行日にすべき?
意見書の日付は、意見書を作成した日を記載するのが一般的です。これは従業員代表者が実際に意見を記入した日を示すものであり、使用者に提出した日とも異なる場合があります。施行日との関係でも、意見書の日付は施行日よりも前であることが望ましいです。ただし、実際にはそれほど問題視されません。
4-2. 会社名及び代表取締役氏名
労働者から意見書を提出する相手は、“会社”となります。
そのため、下記のように会社名を正式名称で記載し、代表取締役氏名もフルネームで記載しましょう。
株式会社〇〇 代表取締役〇〇〇〇殿
4-3. 就業規則に対する労働者代表の意見
話し合いで得られた、就業規則に対する労働者代表の意見を、代表者自身に記載してもらいます。
「特になし。」などでも問題ありません。
4-4. 労働組合の名称又は労働者代表の職名と氏名
話し合いをした労働組合の名称、または労働者代表の氏名をフルネームで記載し押印します。職名は「一般職」などで問題ありません。
4-5. 労働者の過半数代表者を選出した方法
労働者の過半数代表者を選んだ方法を記載します。「投票により選出」など、具体的に記載しましょう。
5. 就業規則の意見書作成時に法律上、押印は必要?不要?
5-1. 2021年4月1日以降は署名・押印が廃止
2021年4月1日以降、署名・押印が廃止されたため、就業規則の意見書もこれに従います。この法改正は行政手続きを簡素化し、デジタル化を進める目的があります。そのため、現在の就業規則の意見書においては署名や押印を必ずしも求められなくなりました。
6. 就業規則の意見書作成・変更時のポイント
意見書を作成する上で、労働者代表から就業規則への同意が得られなかったり、意見書すら書いてもらえなかったりするケースもあるでしょう。
就業規則の意見書の注意点を解説します。
6-1. 会社が従業員代表を指名することはできない
従業員代表の選出はあくまでも民主的に、従業員自らがおこなう必要があります。そのため、会社側が勝手に代表者を決定し、意見書を記載してもらうことはできません。
意見書の提出時にはこの選出方法も記載しますので、適切なものである必要があります。
就業規則の意見書における民主的な選出方法とは
民主的な選出方法の具体例は、従業員全員による投票、挙手、話し合いなどの方法があります。選出後は、従業員代表が就業規則案を検討し意見をまとめ、意見書を作成します。
管理監督者は代表者になることができない
管理職や監督者(管理監督者)は、他の従業員を指導・監督する役割を持つため、労働者代表にはなれません。例外として、事業所に管理監督者しかいない場合のみ、管理監督者が労働者代表になることが許されます。
6-2. 就業規則の意見聴取は事業所ごとに行う
就業規則の意見聴取は各事業所ごとに行う必要があります。複数の事業所がある企業では、各事業所で労働者代表を選出し、意見を聴取します。特定の従業員に適用される就業規則であっても全従業員が参加して選出します。
6-3.反対意見があっても意見書を添付すれば問題ない
意見書は労働者に対して意見を聞き、その内容をまとめたものであり、必ずしも同意が必要なわけではありません。
そのため、就業規則への反対意見があったとしても、労働基準監督署に届出をおこなう上では問題ありません。
また、従業員に対して周知をすれば、就業規則として効力も発揮します。ただし、就業規則の変更が労働基準法を下回る内容である場合には認められないケースもあります。
6-4. 意見書の提出を拒否された場合「意見書不添付理由書」が必要
労働者代表に就業規則の説明をおこない、意見を聞いたものの、意見書の提出を拒否された場合は、別途「意見書不添付理由書」の作成が必要です。
なお、会社側としては、意見を聞いていることに変わりはないため、意見書を添付できなかったとしても、違反とはなりません。
「意見書不添付理由書」には、意見を聞いたが応じてもらえない経緯を記載しますが、詳しい記載方法は、管轄の労働基準監督署に確認しましょう。
また、法律上は問題がないとはいえ、話し合いさえ難しいなか、就業規則を強行すればさらに労使の溝が深まる可能性には十分留意しましょう。
7. 使用者が労働者の意見聴取を実施しないときの罰則
就業規則の作成・変更の際に労働者の意見を聴くことは使用者の義務であり、労働者代表に意見を聞かずに、会社側で意見書を作成し提出した場合、労働基準法上の違反となり、最悪の場合30万円以下の罰金が科される恐れがあります。(労働基準法120条1号)。
さらに、労働者の意見を聴くべき立場にある人(代表取締役など)が、労働基準法の規定に従って意見を聴かなかった場合は、会社に対しても同様に「30万円以下の罰金」が科されます(同法121条1項)。労働基準法違反で刑事罰を受けると、会社のレピュテーションの悪化が懸念されますので、注意が必要です。
とはいえ、就業規則は本来、会社側が一方的に作成・変更できるため、従業員に周知さえすれば、効力自体に影響はありません。
しかしながら、このような対応は労働紛争のきっかけともなりかねません。
必ず就業規則について、労働者代表と話し合いの場を設けるようにしましょう。
8. 就業規則の届出には意見書を添付し労働基準監督署へ提出を
就業規則を届け出る際は、意見書の添付が必要です。
意見書は、労働者代表から意見を聴取した事実があればよいため、内容は賛成・反対、どちらが記載されていても問題ありません。
もし、意見書の記載を拒否されたら「意見書不添付理由書」を添付すれば問題ありませんが、労使間の溝を埋めるためにも、話し合いの継続が求められます。
参考:労働基準法|e-Gov法令検索
参考:労働基準法施行規則|e-Gov法令検索
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