労働時間とは?定義や上限ルール、必要な休憩時間や計算方法を労働基準法の視点から解説
更新日: 2024.12.2
公開日: 2020.3.20
OHSUGI
労働時間は、従業員へ賃金支払いの義務が生じている時間です。したがって、企業の勤怠管理担当者や管理者は、従業員の労働時間を正確に把握し管理しなければなりません。
しかし、法律上の定義や、どの時間が労働時間にあてはまるのかを正確に理解している方は少ないのではないでしょうか。
この記事では、勤怠管理担当者として知っておくべき労働基準法のルールや、労働時間の基礎知識について解説していきます。
【関連記事】労働時間について知らないとまずい基礎知識をおさらい!
目次
人事担当者様からの労働時間に関するご質問回答BOOK!
私たちが普段働くときにイメージする「労働時間」と労働基準法での「労働時間」は厳密にみるとズレがあることがよくあります。勤怠管理をおこなう上では、労働時間の定義や、労働させられる時間の上限、休憩を付与するルールなどを労働基準法に基づいて正確に知っておかなければなりません。
当サイトでは、労働基準法に基づいた労働時間・残業の定義や計算方法、休憩の付与ルールについての基本をまとめた資料を無料で配布しております。
【資料にまとめられている質問】
・労働時間と勤務時間の違いは?
・年間の労働時間の計算方法は?
・労働時間に休憩時間は含むのか、含まないのか?
・労働時間を守らなかったら、どのような罰則があるのか?
労働時間や休憩などに関するルールをまとめて確認したいという方は、ぜひこちらからダウンロードして資料をお役立てください。
1. 労働時間とは
まずは労働時間の定義やどんな時間を労働時間に含むのか、類似語と違いなど労働時間を正しく理解するために基本知識を解説します。
1-1. 労働時間の定義
労働時間の定義は、労働者が使用者の指揮命令下にある状態です(三菱重工長崎造船所事件最高裁判決)。
就業規則に記載されている時間かどうかではなく、客観的に見て「使用者の指揮命令下にある」と判断ができれば、労働時間であるとみなされ、賃金を支払う義務が発生します。
就業規則に明記されていない、会社としては認知していなくても、「労働時間」とみなされる時間が発生することもあるため、定義をしっかりと把握しておきましょう。
1-2. 労働時間に含まれるもの
「労働時間は、労働者が使用者の指揮命令下にある時間である」とすると、直接的に業務をおこなっていなくても、「労働時間」とみなされる時間が発生します。具体的には、以下のような時間は労働時間とみなされ、勤怠管理と賃金支払いの対象となります。
- 業務上必要な所定の作業着・制服に着替える時間
- 上司からの命令で全員でおこなう朝の清掃やラジオ体操
- 参加が強制の社内研修や上司からの命令で業務に関する学習をした時間
- 休憩時間中の電話番 など
1-3. 法定労働時間と所定労働時間
労働時間には、「法定労働時間」と「所定労働時間」の2種類があります。
法定労働時間とは、労働基準法で定められている労働時間のことで、「1日8時間・週40時間」までとされています。
一方、所定労働時間とは「会社によって定められた労働時間」を指し、いわゆる定時のことです。たとえば、9時出勤18時退社の場合、会社にいる時間は9時間です。多くの会社で休憩を1時間にしていることが多く、その場合では、実際に働く8時間を所定労働時間としてカウントします。
所定労働時間のポイントは、所定労働時間=法定労働時間ではないという点です。所定労働時間は、始業から終業まで会社で働く時間のことを指しているため、8時間未満になる場合もあります。たとえば、10時出勤16時退勤の場合、所定労働時間は6時間です。
1-4. 「労働時間」「就労時間」「勤務時間」などの違いは?
ここまで労働時間について解説してきましたが、労働時間と「就労時間」「勤務時間」「拘束時間」などの違いがよく分からないという方もいらっしゃるでしょう。それぞれの違いを簡単にまとめました。こちらの内容は法律などで定義されているものではないですが、勤怠管理を行う上でこのようにまとめるとわかりやすいかもしれません。
- (実)労働時間…事業場で仕事をした時間から、休憩時間を差し引いた時間で、実際に労働があった時間(残業含む)
- 就労時間…就業規則に記載されている始業と終業の時間から、休憩時間を差し引いた時間(残業含まず)
- 勤務時間…いわゆる定時をさし、休憩含む就業規則に定められているの始業・就業時間(残業含まず)
- 拘束時間…労働が開始してから終了するまでの時間で、休憩時間を含み事業場にいる時間(残業含む)
ややこしくみえますが、勤怠管理をおこなう上では(実)労働時間の定義と所定労働時間・法定労働時間の違いを把握していれば問題ありません。
2. 時間外労働時間と労働時間の上限ルール
労働時間とは労働者が使用者の指揮命令下にある時間でしたが、上限時間が設けられています。
労働基準法32条では労働時間について次のとおり定義しています。
‟使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない”
引用:労働基準法| e-Gov法令検索
条文からも把握できるとおり、労働時間とセットで覚えておきたいのが、休憩時間の決まりです。
労働時間の上限と、休憩時間について確認しておきましょう。
2-1. 原則1日8時間・週40時間を超えて働かせてはいけない
労働基準法第32条では、労働時間は「1日8時間、週40時間」までと定めています。この時間は「法定労働時間」とよばれており、法定労働時間を超える残業や仕事をする場合、従業員と企業の間で残業や休日などの扱いについて定めた「36協定」の締結が必要です。
【関連記事】労働時間の正しい計算方法についてわかりやすく解説
2-2. 法定労働時間を超えた労働時間は時間外労働になる
法定労働時間を超える労働時間は、「時間外労働」になり、割増賃金を支払う必要があります。
ここで注意しておきたいのは、残業には「法定内残業」と「法定外残業」の2種類があることです。法定内残業とは、所定労働時間を超えて法定労働時間以内で労働させる時間であり、法定外残業は法定労働時間を超えて労働させる時間です。
割増賃金を支払う必要がある時間=時間外労働時間は法定外残業を指すため、給与計算の際には注意しましょう。
【関連記事】残業による割増率の考え方と残業代の計算方法をわかりやすく解説
2-3. 36協定があっても月45時間・年360時間以上の残業は違法
従業員に時間外労働をさせるためには、36協定の締結と届け出が必要です。
ただし、36協定を結んでいても、残業時間は原則月45時間・年360時間までです。限度を超えた長時間の残業は法律違反による処罰の対象になるため、「気が付いたら上限を超えていた」ということがないように管理しなくてはなりません。
労働時間にまつわる内容(休憩や残業を含む)は、労働基準法でも明確に規定されているため、人事担当者は最初に理解すべき内容であるといえます。
当サイトでは、労働時間でよくいただく質問についてまとめた資料を無料で配布しておりますので、労働時間について詳細まで確認したい方はこちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
2-4. ただし特別条項付きの36協定があれば年720時間まで残業できる
なお、「特別な事情があって従来の基準よりも多くの残業が必要なケース」に関する条項を設定した36協定を締結している場合、年間720時間まで残業可能です。
ただし、2ヵ月から6ヵ月の残業時間を平均して80時間以内に抑えること、月間の残業時間が休日出勤を合わせて100時間未満になることといった条件があり、無制限に残業させられるわけではありません。
【関連記事】36協定における残業時間の上限を基本からわかりやすく解説!
3. 労働時間と必要な休憩時間の関係性
労働時間と必要な休憩時間は、従業員の健康を守るために密接に関係しています。労働基準法第34条により、従業員には法定の休憩時間が与えられなければなりません。この休憩時間は「労働時間の途中に置かれた、労働者が権利として労働から離れることを保証された時間」と定義されています。つまり、労働者が継続して働くことによる負担を軽減し、労働効率を向上させるために設定されているのです。労働時間と休憩の適切な管理のため、詳しくみていきましょう。
3-1. 労働基準法上で必要になる休憩時間
労働基準法において必要な休憩時間は、労働者の健康と労働環境を守るために定められています。
労働時間が6時間以内の場合、休憩時間は0分とされており、6時間を超え8時間以内の場合は最低45分、8時間を超える場合は1時間の休憩が必要です。この休憩時間は、労働から離れることが保障された時間であり、企業は従業員が適切に休憩を取れるよう配慮しなければなりません。また、休憩時間中に業務を依頼することは労働時間として扱われるため、雇用者は別の時間帯で休憩を設けるなど、調整を行う必要があります。
3-2. 休憩時間は労働時間に含まれない
労働時間とセットで覚えておきたいのが、休憩時間です。休憩時間とは、労働者が労働から完全に離れることを保障された時間で、労働時間数に応じて与える休憩時間数が異なります。
労働基準法では、1日の労働時間が6時間を超えて8時間以内の場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を取ることを企業に義務付けています。
休憩時間は労働者が労働から完全に離れていなければならないため、「オフィスで電話番をする」「休憩中に上司から連絡や指示がある」など、実質的に会社の指揮命令下に置かれている場合、正確には休憩ではなく労働時間にあたり、賃金を支払う必要があります。
【関連記事】企業の労働時間における「休憩」の考え方を詳しく解説
3-3. 雇用形態に関わらず与える必要がある
労働基準法では、休憩時間のルールが雇用形態にかかわらずすべての労働者に平等に適用されることが定められています。正社員、パート、アルバイト、派遣社員といったさまざまな雇用形態に関係なく、労働時間に応じた適切な休憩を与えることが求められます。
これにより、すべての労働者が労働からの休息を確保でき、健康的な労働環境が維持されることを目指しています。
3-4. 一括して取得させる必要がある
労働基準法では、休憩は原則として全従業員に一括して取得させる必要があります。一斉に休憩を付与することで、労働者がしっかりと休息を取り、業務の効率を向上させることが期待されます。
しかし、業種や業態によっては一斉休憩が難しい場合もあり、その際には労使協定を締結することで例外が認められることもあります。また、特定の業種、例えば官公署や運輸交通業では、業務の特性により一斉付与が適用されないことがあります。このように、労働基準法には、従業員の健康と業務の効率を両立させるための柔軟な対応が求められています。
4.労働時間として認められる事例
労働時間は、労働者が使用者の指揮命令下にある状態を指します。そのため、過去には仮眠時間であっても労働から完全に離れられないと判断され、労働時間と認められた判例があります。このケースでは仮眠時間であっても仮眠室で待機すること、警報や電話などに対応することが義務付けられていたため、労働時間にあたるという判例が下されました。
他にも次のような事例が労働時間として認められる可能性があります。
- 着替え時間
- 勉強会・研修
- 健康診断
- 始業前の朝礼
参考:【労働時間】労働時間の定義| 独立行政法人労働政策研究・研修機構
5.労働時間として認められない事例
労働時間として認められない事例は次のようなケースです。
- 通勤
- タイムカードの打刻
- 朝の掃除や準備
- 始業時間よりも早い出勤
過去にはオフィスに入ってからタイムカードを押すまでの時間は労働時間として認められないという判例が下されたことがあります。
なお、朝の掃除や準備、始業時間よりも早い出勤は、従業員が自主的におこなっているのであれば、労働時間として認められないでしょう。しかし、掃除の当番制や早出を義務付けている場合は労働時間として認められる可能性があります。
6. 労働時間と労働基準法においてよくある質問
労働時間と労働基準法のルールに関して、よくある質問とその回答をご紹介します。
6-1. そもそも労働基準法とは?
労働基準法とは、労働者の権利を守るために定められた法律で、労働条件の最低基準を規定しています。この法律は、労働時間や休憩、賃金の支払い、労働契約の管理など、広範な労働環境に関するルールを提供し、労働者が安全で快適な労働条件のもとで働けることを目的としています。
社会全体での労働基準の確立を図るために、労働基準法は不可欠な法律です。
6-2. 労働基準法に違反する契約内容はどうなりますか?
法律に違反する契約内容は無効になります。
例え、36協定を締結せずに従業員と企業が「1日11時間働く」という雇用契約を結んでいたとしても、法律上その内容に従う必要はありません。
上記の場合、労働基準法に基づいて1日の労働時間は最大8時間までです。労働基準法違反の就業規則が設けられていても、その部分は無効になり、労働基準法で定められている規定が適用されます。
勤怠管理担当者は、労働基準法に則った労働時間を設定しましょう。
7. 労働時間の正しい計算方法
労働時間の計算は、正確な勤怠管理を行う上で非常に重要です。ここでは、労働時間を正しく計算するための手順を紹介します。計算方法を理解し、給与支払いを適切に行うための基盤を築きましょう。
7-1. 労働時間の計算手順
労働時間の計算手順は、正確な勤怠管理を行うための基本です。
まず、始業時刻と終業時刻を確認し、そこから休憩時間を引きます。この計算により、実際に働いた時間を算出することができます。
さらに、残業時間が発生した場合は、その時間も正しく計上し、適切な給与計算に反映させることが重要です。
7-2. 1日の所定労働時間が7時間の際、残業代はどうなりますか?
たとえば1日の所定労働時間が7時間の企業で、1日8時間の労働をした場合、1時間は所定外労働時間(法定内残業)となります。
法定内残業については、法定外残業に適用される25%の割増賃金を支払う義務はありません。
8. 労働時間に関する制度
通常、労働時間は1日8時間、週40時間と定められていますが、業務効率を上げるために、この規定に縛られない労働形態が存在します。
多様な労働形態として代表的な「変形労働時間制」「フレックスタイム制」「裁量労働制」について、それぞれご紹介します。
8-1. 変形時間労働制
変形時間労働制とは、週の平均労働時間が40時間におさめれば、特定の日や週について、法定労働時間を超えて労働させることができる制度です。
繁忙期がはっきりしている業界や業態に向いており、忙しい時期の労働時間を増やす代わりに、閑散期の労働時間を減らすなどの調整により効率よく業務を進めることができます。
【関連記事】1年単位の変形労働時間制の定義やメリット・デメリット
8-2. フレックスタイム制
フレックスタイム制は1ヶ月や3ヶ月などの清算期間内において、労働時間の週平均が法定労働時間を超えない範囲で労働者が自由に始業と終業の時間を決めることができる制度です。
ただし、始業と終業の時間は決まっていませんが、必ず業務につかなければならない「コアタイム」を設けることもでき、コアタイム以外の自由に出退勤できる時間を「フレキシブルタイム」といいます。
【関連記事】フレックスタイム制とは?清算期間の仕組みやメリット・デメリットを解説
8-3. 裁量労働時間制
裁量労働時間制とは、労働時間の実態にかかわらず一定の時間労働したと「みなす」制度です。したがって、労働者は自由に労働時間や始業・終業の時間を決めることができ、業務の時間配分も労働者に委ねられています。
ただし、裁量労働時間制を適用できる職種は法律で定められているため、全ての労働者が対象となるわけではありません。
【関連記事】裁量労働制とは?労働時間管理における3つのポイントを徹底解説
9. 労働時間について基本を把握して労働環境の改善をしよう
働き方改革によって、残業時間の上限規制が強化されました。
基本的な知識を身につけることで、残業代の未払いを始めとした労使トラブルが起きても適切な対処ができるので、労働時間や残業時間を正確に把握するためにもタイムカードや勤怠管理システムの使い方を知っておきましょう。
【関連記事】労働時間の短縮による課題とその対策を分かりやすく解説
人事担当者様からの労働時間に関するご質問回答BOOK!
私たちが普段働くときにイメージする「労働時間」と労働基準法での「労働時間」は厳密にみるとズレがあることがよくあります。勤怠管理をおこなう上では、労働時間の定義や、労働させられる時間の上限、休憩を付与するルールなどを労働基準法に基づいて正確に知っておかなければなりません。
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【資料にまとめられている質問】
・労働時間と勤務時間の違いは?
・年間の労働時間の計算方法は?
・労働時間に休憩時間は含むのか、含まないのか?
・労働時間を守らなかったら、どのような罰則があるのか?
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