所得税のための年末調整とは?基礎知識や対象になる人・ならない人を解説
更新日: 2024.3.5
公開日: 2022.3.9
OHSUGI
雇用主は毎年年末になると従業員に対して年末調整をしなくてはいけませんが、そもそもなぜ年末調整をおこなう必要があるのでしょうか。結論からお伝えすると、「所得税のため」です。
ここでは、所得税と年末調整との関係をはじめ、年末調整に関する基礎知識や、年末調整の対象になる人、ならない人の条件などについて詳しく解説します。
関連記事:所得税とは?納税方法や確定申告が必要な人・不要な人について解説
給与計算業務は税務リスクや労務リスクと隣り合わせであるため、
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1. そもそも所得税のための年末調整とは
企業では年末になると毎年当たり前のようにおこなわれている年末調整ですが、年末調整は所得税と密接な関係があります。というのも、年末調整は、従業員が納税しなければならない1年間の所得税額と、従業員の毎月給与や賞与から天引きしている所得税額を比較し、過不足を調整する作業だからです。
つまり、年末調整をしなければ正確な額の所得税を納めることができないため、税収が減ったり、反対に税収が多くなりすぎたりしてしまうのです。
2. 所得税のための年末調整はなぜ必要?
それではなぜ所得税に過不足が生じるのかと言うと、毎月の給与から天引きされている所得税はあくまでも見込み額だからです。そもそも所得税とは、1年間の総所得に対して課税される税金のため、その年が終わった後でないと所得税を計算することができません。
そこで、国税庁が公表している「給与所得の源泉徴収税額表」に基づき、一旦概算の所得税額を計算して毎月の給与から天引きし、12月末になってその年度の正確な所得が明らかになってから調整をおこないます。
毎月の給与から天引きしていた金額が正確な金額よりも多かった場合は、所得税を払いすぎていたことになるため過払い分が還付されます。反対に、毎月の給与から天引きしていた分の所得税額が少なかった場合は、不足分を徴収する必要があるのです。
2-1. 年末調整を正しくおこなわなかった場合は罰則がある
年末調整は原則として企業の義務となっており、年末調整を正しくおこなわなかった場合は次のような罰則があります。
【年末調整をおこなわず、従業員から正しい所得税額を徴収しなかった場合】
1年以下の懲役、または50万円以下の罰金
(所得税法242条)
【年末調整をおこなったものの、追加の徴収額の納付をしなかった場合】
10年以下の懲役、または200万円以下の罰金、あるいはその両方
(所得税法第240条)
ただし、従業員が年末調整の実施日までに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出しなかった場合、企業に年末調整の義務は発生しません。この場合は、従業員本人が確定申告をすることになります。
2-2. 年末調整では処理できない所得控除がある
所得控除とは、納税者の個人的事情を加味するために、所得額から一定額を差し引くことのできる制度のことです。主なものに、基礎控除や配偶者控除、扶養控除、勤労学生控除などがあります。
年末調整では、この所得控除も踏まえて所得税を計算しますが、中には年末調整で扱えないものがあります。年末調整の対象外となるのは、医療費控除や雑損控除、ふるさと納税に代表される寄付金控除などです。
先に挙げた所得控除の適用を従業員が希望している場合は、年末調整ではなく確定申告を従業員本人におこなってもらうよう案内する必要があります。
2-3. 年末調整の期限は翌年1月31日まで
年末調整は一般的に11月からおこなわれますが、書類提出の最終期限は翌年の1月31日までとなっています。1月31までに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が提出できなかった従業員に関しては会社で年末調整をおこなうことはできず、個人で確定申告をしてもらう必要があります。
また、確定申告は原則として毎年2月16日~3月15日までの間に手続きしなくてはいけませんが、期限に遅れた場合は従業員本人に無申告加算税や延滞税といったペナルティが科される可能性もあります。
3. 年末調整の対象になる人・ならない人
年末調整をおこなうことは雇用主となる企業側の義務です。しかし、必ずしも全ての従業員に対して年末調整をおこなう必要はありません。
それでは、どのような人が年末調整の対象となり、どのような人が対象にならないのかについて詳しく見てみましょう。
3-1. 対象になる人
年末調整に雇用形態は関係なく、パートやアルバイトといった非正規雇用の方でも対象となります。
主たる給与となる収入の金額が年間2,000万円以下で、災害による源泉所得税などの納税猶予や還付を受けていないこと、なおかつ会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していて、12月31日時点で勤務をしている方であれば年末調整の対象となります。
そのため、例えば本人が本当は年末調整を特に希望していなかったとしても、その人が「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している限り、会社は年末調整をしなければなりません。
さらに、年末調整は一般的に11月から翌年1月にかけておこなわれるものですが、次の条件に該当する従業員がいた場合には、年末でなくとも必要が生じた時点で年末調整をおこなわなければなりません。
- 死亡により退職となった場合
- 心身の障害によって年の途中で退職し、同年内に再就職が見込めない場合
- 12月中に給与を受け、12月中に退職した場合
- 年内に海外の支店や子会社に転勤し、非居住者となった場合
- アルバイトやパートとして勤務していたが退職し、その従業員に支払う給与の総額が103万円以下だった場合(退職後に別の勤務先から給与の支払いを受ける見込みがある場合を除く)
上記に該当しない退職者については年末調整の対象とはならないため、本人が確定申告をする必要があります。
3-2. 対象にならない人
先にお伝えしたとおり、年末調整は雇用形態には関係なく、その年の12月31日の時点で会社に勤務しており、なおかつ「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出した全ての従業員に対しておこなわれるものです。
しかし、次の条件に該当する従業員については年末調整をする必要はありません。
- 給与収入の1年間の合計が2,000万円を超える場合(対象の従業員本人が確定申告をおこなわなければならない)
- 給与収入以外の所得(譲渡所得や不動産所得など)が20万円以上ある場合(対象の従業員本人が確定申告をおこなわなければならない)
- 災害による源泉所得税などの納税猶予や還付を受けている場合(対象の従業員本人が確定申告をおこなわなければならない)
- アルバイトを掛け持ちしており、他社で年末調整をおこなう予定がある場合(年末調整は最も多く給与を得ているところでおこなうことが一般的)
- 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない場合
- 今年中途入社をし、今年分の前職の源泉徴収票が提出できていない場合
- 業務委託などにより「給与」を支給しているわけではない場合
- 日雇いなど継続して同一の雇用主に雇用されていない場合
4. 年末調整は期限を守って正しくおこなおう
年末調整は1年間納めていた概算による所得税を、1年の終わりに正確な金額で算出し、調整する作業です。年末調整を正確におこなわなかった場合には罰せられる可能性もあるため、慎重に書類作成をおこなう必要があります。
また、年末調整においては一人ひとりの状況により控除額なども違う上に提出期限も決められているため、効率良く作業をすることも大切です。
年末調整は、専用の管理システムなどを利用することで、人事労務担当者の負担を軽減し、正確かつ効率良く作業をすすめることが可能です。税制改正に対応したクラウド型の管理システムであれば、手動でシステムを修正することなくスムーズに対応できます。
期間内に正確な内容で提出をおこなうために、まだ管理システムなどを導入されていない場合は、ぜひ検討してみてください。
関連記事:年末調整の基礎知識|必要な人や手続きの流れを詳しく紹介
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