所得税のための年末調整とは?基礎知識や対象になる人・ならない人を解説
更新日: 2025.3.11
公開日: 2022.3.9
OHSUGI
雇用主は毎年年末になると従業員に対して年末調整をしなくてはいけません。年末の繁忙期と重なり、さらに期限もある業務であるため、負担に感じてしまうことも多い業務です。しかし、年末調整は期限を守って正確におこなわなければならない非常に重要なものです。
ここでは、所得税と年末調整との関係をはじめ、年末調整に関する基礎知識や、年末調整の対象になる人、ならない人の条件などについて詳しく解説します。
関連記事:所得税とは?納税方法や確定申告が必要な人・不要な人について解説
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1. そもそも所得税のための年末調整とは
年末調整では、給与を受け取っている人が納めるべき正確な所得税額を計算することになります。すでに徴収している源泉徴収税額との差額を算出できるため、過不足を調整するために年末調整が必要なわけです。
また、年末調整と深く関係する源泉徴収税の納付期限や法定調書の提出期限を守る必要があるため、これらの期限を意識して業務を進めなければなりません。年末調整そのものにいつまでにしなければならないという期限はありませんが、年末調整をしなければ進まない業務があるため、余裕をもって取り掛かるようにしましょう。
2. 所得税のための年末調整はなぜ必要?
年末調整は所得税を正確に計算し、正しく納税するために必要だとお話をしました。しかし、年末調整が必要な理由はそれだけではありません。もっと詳しく年末調整をおこなう理由を見ていきましょう。
2-1. 所得税の過不足を調整するため
所得税に過不足が発生する理由は、毎月の所得税および復興特別所得税として徴収している源泉徴収税は、あくまでも見込み額だからです。
所得税とは、1年間の総所得に対して課税される税金のため、その年が終わった後でないと正確な所得税を計算することができません。しかし、1年分をまとめて納付する場合、納税額が多額になり納税者の負担になる可能性や、申告漏れなどが発生するリスクが高まります。
そこで、国税庁が公表している「給与所得の源泉徴収税額表」に基づき、一旦概算の所得税額を計算して毎月の給与から天引きし、12月末になってその年度の正確な所得が明らかになってから調整をするようになっています。これが源泉徴収税がある理由と、それを年末に調整して正しい所得税との差額を埋める理由です。
毎月の給与から天引きしていた金額が正確な金額よりも多かった場合は、所得税を払いすぎていたことになるため過払い分が還付されます。反対に、毎月の給与から天引きしていた分の所得税額が少なかった場合は、不足分を納税することになります。
2-2. 各種控除を受けるため
年末調整が必要なもう一つの大きな理由は、給与所得者が各種控除を受けるためです。
所得税は給与所得者の収入によって決定しますが、給与収入をそのまま所得税算出の元にするわけではありません。家族構成や保険加入状況など、各家庭の事情を考慮した控除がおこなわれます。控除された金額は所得から差し引かれるため、所得税額も安くなるわけです。
年末調整では以下のような控除を受けることができます。
- 基礎控除
- 配偶者控除・配偶者特別控除
- 扶養控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 社会保険料控除
- 障害者控除
- ひとり親控除、寡婦控除
- 勤労学生控除
それぞれの控除を受けるには条件があります。その条件を満たしている場合はしっかりと控除をしたうえで所得税額を算出しなければなりません。
なお、2024年の年末調整では、定額減税による年調減税額の計算も求められます。控除と同様に所得税を節税できる制度であるため、忘れずにおこないましょう。
2-3. 住民税を正確に算出してもらうため
給与所得者の住民税は、前年の年末調整を元に算出されます。ここまでに説明してきたように、年末調整では各種控除や、定額減税などを計算し、課税対象の所得を計算します。
そのため、もしも年末調整をしていなかったり、誤った内容で提出していたりすると、住民税が正確に算出されません。特に年末調整をしていない場合は、給与所得にそのまま住民税がかかってしまうため、支払う住民税額も高くなってしまいます。
年末調整は所得税だけでなく住民税の算出にも非常に重要なものであるため、必ずおこなう必要があるのです。
2-4. 年末調整は会社の義務になっているため
年末調整は原則として企業の義務となっており、年末調整を正しくおこなわなかった場合は次のような罰則があります。
【年末調整をおこなわず、従業員から正しい所得税額を徴収しなかった場合】
1年以下の懲役、または50万円以下の罰金
(所得税法242条)
【年末調整をおこなったものの、追加の徴収額の納付をしなかった場合】
10年以下の懲役、または200万円以下の罰金、あるいはその両方
(所得税法第240条)
ただし、従業員が年末調整の実施日までに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出しなかった場合、企業に年末調整の義務は発生しません。この場合は、従業員本人が確定申告をすることになります。
3. 年末調整で注意したいポイント
年末調整は所得税や住民税に深く関係する非常に重要なものであることが分かりました。間違いのない計算と正しい申告をするには、以下のポイントを守るようにしましょう。
3-1. 年末調整では処理できない所得控除がある
控除はとは、納税者の個人的事情を加味するために、所得額から一定額を差し引くことのできる制度のことでした。基礎控除や配偶者控除、扶養控除、勤労学生控除などがあります。
年末調整では、この所得控除も踏まえて所得税を計算しますが、中には年末調整で扱えないものがあります。年末調整の対象外となるのは、医療費控除や雑損控除、ふるさと納税に代表される寄付金控除などです。
先に挙げた所得控除の適用を従業員が希望している場合は、年末調整ではなく確定申告を従業員本人におこなってもらうよう案内しなくてはなりません。特に新入社員や若手社員は、ライフステージやライフスタイルが変化したことでこうした手続きが必要になるケースがあります。余裕のあるタイミングでわかりやすく説明しておくようにしましょう。
3-2. 年末調整の期限は翌年1月31日まで
年末調整は一般的に11月からおこなわれますが、明確な期限はありません。しかし、関連する書類提出の最終期限は翌年の1月31日までとなっています。1月31までに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が提出できなかった従業員に関しては会社で年末調整をおこなうことはできず、従業員が個人で確定申告をしなければいけなくなります。
また、確定申告は原則として毎年2月16日~3月15日までの間に手続きしなくてはなりません。もしもこの確定申告もできない、または遅れた場合は、従業員本人に無申告加算税や延滞税といったペナルティが科される可能性もあります。
3-3. 年末調整ができなかった場合は確定申告が必要
前項でも触れましたが、何らかの理由で年末調整ができなかった、あるいは申告期日を守れなかった場合は、給与所得者が個人で確定申告をしなければなりません。会社側でできることはなくなってしまいます。
収入があるにも関わらず年末調整と確定申告のどちらもしなかった場合は、所得税や住民税の金額が決定せず、無申告や所得隠しなどといった刑事罰に科される恐れもあります。
確定申告は慣れていないと非常に複雑に感じる業務で、期限も「翌年の2月16日~3月15日の間」と厳しく定められています。また、そもそも確定申告が必要であることを認識していない人も少なくありません。確定申告が必要なケースがあることや、年末調整ができなかった事実などは、必ず余裕をもって伝えるようにしましょう。
4. 年末調整の対象になる人・ならない人
それでは、どのような人が年末調整の対象となり、どのような人が対象にならないのかについて詳しく見てみましょう。
4-1. 対象になる人
年末調整に雇用形態は関係なく、パートやアルバイトといった非正規雇用の従業員でも対象となります。
主たる給与となる収入の金額が年間2,000万円以下で、災害による源泉所得税などの納税猶予や還付を受けていないこと、なおかつ会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していて、12月31日時点で勤務をしている方であれば年末調整の対象となります。
そのため、例えば本人が本当は年末調整を特に希望していなかったとしても、その人が「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している限り、会社は年末調整をしなければなりません。
さらに、年末調整は一般的に11月から翌年1月にかけておこなわれるものですが、次の条件に該当する従業員がいた場合には、年末でなくとも必要が生じた時点で年末調整をおこなわなければなりません。
- 死亡により退職となった場合
- 心身の障害によって年の途中で退職し、同年内に再就職が見込めない場合
- 12月中に給与を受け、12月中に退職した場合
- 年内に海外の支店や子会社に転勤し、非居住者となった場合
- アルバイトやパートとして勤務していたが退職し、その従業員に支払う給与の総額が103万円以下だった場合(退職後に別の勤務先から給与の支払いを受ける見込みがある場合を除く)
上記に該当しない退職者については年末調整の対象とはならないため、本人が確定申告をする必要があります。
4-2. 対象にならない人
年末調整は雇用形態には関係なく、その年の12月31日の時点で会社に勤務しており、なおかつ「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出した全ての従業員に対しておこなわれるものです。
しかし、次の条件に該当する従業員については年末調整をする必要はありません。
- 給与収入の1年間の合計が2,000万円を超える場合(対象の従業員本人が確定申告をおこなわなければならない)
- 給与収入以外の所得(譲渡所得や不動産所得など)が20万円以上ある場合(対象の従業員本人が確定申告をおこなわなければならない)
- 災害による源泉所得税などの納税猶予や還付を受けている場合(対象の従業員本人が確定申告をおこなわなければならない)
- アルバイトを掛け持ちしており、他社で年末調整をおこなう予定がある場合(年末調整は最も多く給与を得ているところでおこなうことが一般的)
- 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない場合
- 今年中途入社をし、今年分の前職の源泉徴収票が提出できていない場合
- 業務委託などにより「給与」を支給しているわけではない場合
- 日雇いなど継続して同一の雇用主に雇用されていない場合
年末調整が不要な従業員に対して年末調整をしてしまったとしても、問題はありません。しかし、不要な業務を増やすことになってしまうため、年末調整の対象外の人は事前にリストアップしておくとよいでしょう。
5. 年末調整は期限に注意して余裕をもっておこなうようにしよう
また、年末調整においては一人ひとりの状況により控除額なども違う上に提出期限も決められているため、効率良く作業をすることも大切です。
年末調整は、専用の管理システムなどを利用することで、人事労務担当者の負担を軽減し、正確かつ効率良く作業をすすめることが可能です。税制改正に対応したクラウド型の管理システムであれば、手動でシステムを修正することなくスムーズに対応できます。
期間内に正確な内容で提出をおこなうために、まだ管理システムなどを導入されていない場合は、ぜひ検討してみてください。
関連記事:年末調整の基礎知識|必要な人や手続きの流れを詳しく紹介
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