月またぎの振替休日とは?給与計算方法の注意点も解説!
更新日: 2025.9.29 公開日: 2021.9.6 jinjer Blog 編集部

振替休日とは、事前に休日と勤務日を入れ替えることを指します。例えば「今週の土曜日に出勤する代わりに、来週の火曜日を休みにする」といったケースが、振替休日に該当します。
振替休日は、単に勤務日と休日を入れ替えるだけの制度であるため、一見すると複雑な処理は不要のように思われがちです。しかし、月をまたいで振替休日を取得する場合には、勤怠管理や賃金の扱いなどにおいて注意すべき点がいくつかあります。
この記事では、企業が知っておくべき月またぎの振替休日の正しい処理方法について、法的観点や実務上のポイントを踏まえて解説します。
目次
人事担当者の皆さまは、労働基準法における休日・休暇のルールを詳細に理解していますか?
従業員に休日労働をさせた場合、代休や振休はどのように取得させれば良いのか、割増賃金の計算はどのようにおこなうのかなど、休日労働に関して発生する対応は案外複雑です。
そこで当サイトでは、労働基準法にて定められている内容をもとに、振休や代休など休日を取得させる際のルールを徹底解説した資料を無料で配布しております。
「休日出勤させた際の対応を知りたい」「代休・振休の付与ルールを確認したい」という人事担当者の方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 振替休日の月またぎとは?

そもそも、振替休日の月またぎとはどのようなケースを指すのでしょうか。まずは、「振替休日の月またぎ」の意味や、該当するケースについて見ていきましょう。
1-1. 振替休日の月またぎは「翌月に振替をする」こと
振替休日の月またぎとは、振替によって勤務日が発生した翌月に休日を取得することです。
月をまたがない場合でも、「給与の締日」をまたぐと、勤怠処理上は月またぎと同様に扱われるケースがあります。例えば、締日が月末の会社で4月15日に振替休日によって出勤し、5月15日に休みをとった場合、月(締日)をまたいで振替休日をおこなったことになります。
なお、振替休日の取得期限について明確な法的規定はありませんが、一般的には労働基準法第115条の「賃金その他の請求権」に基づく2年の時効が適用されると解されていることが多いです。そのため、月をまたいで振替休日を取得しても、就業規則などに反しない限り法的には問題ないとされています。
関連記事:振替休日に期限はある?週をまたいだ時の対応や期限における注意点を解説
1-2. 振替休日は同一賃金支払期間内におこなうことが原則
月をまたいだ振替休日の取得については、先述の通り、法的には明確な制限があるわけではないので原則として問題ありません。しかし実務上は、同一の賃金支払期間内で振替をおこなうことが推奨されています。
これは、勤務日と振替休日が異なる月にまたがることで、給与計算や勤怠管理が煩雑になるためです。また、休日の取得が過度に遅れると、従業員の健康維持や適切な休息確保の観点からも望ましくありません。
振替休日と労働日は、なるべく近接した日(直前または直後)に設定することで、企業・従業員双方にとって管理のしやすさや健康配慮といったメリットが得られます。なお、行政通達(昭和23年7月5日 基発968号、昭和63年3月14日 基発150号)においても、次のように示されています。
業務等の都合によりあらかじめ休日と定められた日を労働日とし、その代わりに他の労働日を休日とするいわゆる休日の振替を行う場合には、就業規則等においてできる限り、休日振
替の具体的事由と振り替えるべき日を規定することが望ましいこと。なお、振り替えるべき日については、振り返られた日以降できる限り近接している日が望ましいこと。
関連記事:振替休日とは?代休との違いや取得期限、労働基準法の観点から見る注意点を解説
2. 振替休日と代休の違い

振替休日と同じような用語に「代休」があります。振替休日も代休も同じ「休日」ですが、管理上では意味がまったく異なります。
振替休日は、あらかじめ休日と定められていた日が労働日になる代わりに、他の労働日を休日とする「事前の休日振替」です。振替休日を適用する場合、休日に労働してもそれは通常の労働日とみなされるため、休日労働には該当せず、割増賃金の支払い義務も発生しません。ただし、時間外労働の割増賃金が発生する可能性はあります。
一方、代休は急な仕事や残業をしても終わらない業務などをするために、休日に働くことになり、その代わりに振り替えられた日を「休日」とする制度です。この場合、労働は休日におこなわれた事実として残るので、法定休日に労働した場合には、休日労働の割増賃金の支給が必要になります。
このように、振替休日は「事前に休日と労働日を入れ替える制度」、代休は「休日に働いたあとに代わりの休みを与える制度」であり、勤怠管理や給与計算などの管理上も法的な扱いも異なります。
関連記事:振休(振替休日)と代休の違いとは?をわかりやすく徹底解説!
3. 月またぎの振替休日の給与計算方法

月またぎの振替休日は望ましくないものの、実務上の都合でどうしても休日の取得が翌月以降になってしまうケースは少なくありません。
それでは、もし月をまたいで振替休日を取得することになる場合、企業はどのように対応すればよいのでしょうか。この章では、月またぎの振替休日を適切に処理するための手順について解説します。
3-1. まずは休日に勤務した賃金を支払う
当月に休日勤務させて翌月以降に休みを取らせるという、月またぎで振替休日を取得することになる場合、まず当月に一旦勤務した分に対する賃金をすべて支払わなくてはいけません。
たとえ将来的に振替休日を与える予定であっても、締日を迎えた時点では、勤務実績に応じた給与をいったん支給する必要があります。一方で、月をまたがずに同一の賃金支払期間内(例:月内)に振替休日を取得する場合には、このような処理上の問題は発生しません。月や締日をまたぐケースにのみ、特別な配慮が必要になります。
3-2. 休日を取得したあとに控除する
賃金支払い後、月をまたいで休日を取得できたときは、その月の給与から休んだ分の賃金を控除します。控除できるのは基本給の部分のみで、そのほかにかかった割増賃金などは控除できません。
振替休日によって時間外労働や深夜労働の割増賃金が生じた場合には、正しい金額を控除するように気をつける必要があります。なお、振替休日は「労働日と休日を入れ替えた」だけであるため、たとえ休日に出勤しても休日労働の割増賃金(休日手当)の支給は不要です。
ただし、予定していた振替休日が何らかの理由で取得できなかった場合、事後的に「代休」とみなされることになり、法定休日に勤務していた場合には35%以上の割増率を適用した休日手当の支払いが必要になるので注意しましょう。
このように月またぎの振替休日について考える際には、代休やそれぞれの割増率を一緒に考えなければなりません。当サイトでは、振休・代休の定義や割増賃金の考え方を解説した資料を無料で配布しております。休日出勤時の対応について不安な点がある方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
関連記事:休日出勤させて代休なしは違法?割増賃金や振替休日についても解説
3-3. フレックスタイム制の場合はどのように計算する?
フレックスタイム制とは、会社が定めた清算期間(最大3ヵ月)の総労働時間の範囲内で、従業員が始業・終業時刻を決めて柔軟に働くことのできる制度です。
フレックスタイム制でも、振替休日の制度を導入できます。清算期間内で休日を振り替えるのであれば、総労働時間は変わらないため、実労働時間が法定労働時間の総枠を超えなければ時間外労働の割増賃金の支払いは不要です。
一方、例えば清算期間1ヵ月の場合で、月またぎの(清算期間をまたぐ)振替休日を取得する場合を考えてみましょう。休日から勤務日に振り替えられた日を含む清算期間については労働日が1日増え、勤務日から休日に振り替えられた日を含む清算期間は労働日が1日少なくなります。
仮に清算期間の総労働時間の計算方法を「所定労働日数×1日の所定労働時間(8時間)」のように、振替休日による所定労働日数の増減を考慮して設定している場合、月またぎの振替休日の取得により、それぞれの清算期間の総労働時間および法定労働時間の総枠が変更され、それを超えた場合に残業代や割増賃金が生じることとなります。
なお、総労働時間を「暦日が30日の月は170時間」のように定めている場合には、月またぎの振替休日を取得したとしても、総労働時間・法定労働時間の総枠は変わりません。そのため、労働日が増えた月については、残業代が発生する可能性が高くなるので給与計算に注意しましょう。
関連記事:フレックスタイムにおける労使協定を解説!届け出が不要な場合も紹介
4. 月またぎの振替休日の注意点

月またぎの振替休日は、一旦賃金を支払ってあとから控除する処理をおこなうことが一般的です。しかし、振替が月をまたいでしまうときは、賃金の処理以外にも注意したいポイントがあります。
ここでは、月またぎの振替休日における主な注意点について確認していきましょう。
4-1. 未取得の賃金で相殺することは違法
月またぎの振替休日を取得する場合、未取得の休日と実際に働いた分の賃金を相殺することは違法です。これは、労働基準法第24条に基づく「賃金全額払いの原則」により、労働の対価は原則として所定の支払日に全額支払う必要があるためです。
とくに中小企業などでは、事務負担の軽減を目的に未取得分の休日と相殺処理をおこなうケースが多いといわれていますが、法的には認められておらず是正が必要です。また、このような相殺処理をすると、後で従業員から未払い賃金の請求を受けるだけでなく、法令違反により罰則を課せられる恐れもあります。賃金の相殺ができるのは、同一賃金支払期間内での振り替えのみと理解し、正しく給与計算をおこないましょう。
関連記事:賃金支払いの5原則とは?例外や守られないときの罰則について
4-2. 割増賃金が必要なケースがある
振替休日はあらかじめ休日と勤務日を入れ替える制度であるため、休日手当の支払いは不要です。しかし、残業手当や深夜手当といったそのほかの割増賃金が発生する可能性はあります。
とくに月またぎの振替休日を取得する場合、休日と労働日を入れ替えたことで法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働が発生してしまうケースもよくあります。たとえ同一賃金支払期間内で休日と労働日を入れ替えられ、基本給部分の賃金を相殺できても、割増賃金の支払い義務は残るので注意しましょう。
また、振替休日と代休を混在しがちな場合が多いですが、割増賃金の考え方は全くもって異なるため計算時には注意が必要です。当サイトでは、振替休日と代休でそれぞれどのように割増賃金が発生するのかまとめた資料を無料で配布しております。その他にも休日・休暇の定義の違いなども解説しておりますので、不安な点がある方はこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
4-3. 法定休日を下回ってはいけない
労働基準法第35条では、週に1日もしくは4週に4日の休日を与えることが義務付けられています。この必須の法定条件である休日を「法定休日」といいますが、たとえ月をまたいで振替休日をおこなうとしても、法定休日を下回る休日を与えることはできません。
つまり、振替休日をおこなう際でも、週に1日もしくは4週に4日以上の休日を与える必要があるのです。法定休日を下回ってしまった場合、振替休日の適用が否認されるだけでなく、従業員の健康を害したりコンプライアンス違反による責任問題を追求されたりする恐れもあります。
そのため、振替休日の制度を運用する場合は、必ず法定休日の要件を満たすようにしましょう。
関連記事:所定休日と法定休日の違いや運用ルールを分かりやすく解説
4-4. 36協定の締結が必要
労働基準法では法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働を原則禁じています。とくに月またぎの振替休日を取得する場合、週に40時間を超えた労働が発生しやすくなります。
従業員に法定労働時間を超えた労働をおこなわせるためには、あらかじめ労使間で36協定(時間外・休日労働に関する協定)を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。また、36協定を締結・届出したとしても、時間外労働や休日労働には上限が設けられているので、それを超えないよう適切に勤怠管理をおこないましょう。
関連記事:36協定における残業時間の上限を基本からわかりやすく解説!
4-5. 月をまたいで先に休む(前倒しする)ことは可能?
振替休日とは、事前に休日と労働日を入れ替える制度です。そのため、あらかじめ振り替える日が決まっていれば、労働日より先に休む場合であっても、休日の前倒し処理が認められます。
この場合、先に休日を取得した月については、「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき賃金控除が可能です。また、休日から勤務日に入れ替えられた日は通常の労働日扱いになるので、休日手当は発生しません。月をまたいで先に休む(前倒しする)振替休日制度を導入する場合、従業員とのトラブルを生まないためにも、就業規則に細かくルールを明記しておきましょう。
4-6. 振替休日を取得できないときは休日出勤扱いに
休日に出勤させる場合でも、あらかじめ代わりとなる休み(振替休日)を決めておけば、その出勤日は通常の労働日とみなされます。例えば、法定休日に出勤しても、事前に振替休日を設定していれば、その日は休日出勤とは扱われず、休日労働の割増賃金(休日手当)の支払いは不要です。
ただし、事前に決めた振替休日を実際に取得できなかった場合は、結果として法定休日に労働したことになるため、休日手当の支払いが必要です。また、休日出勤後に何らかの理由で振替休日が取れず、後日改めて休みを与えた場合、それは「代休」となります。代休では休日出勤の事実は変わらないので、たとえ後日休ませても、法定休日に出勤したのであれば、休日手当は支払わなければなりません。
5. 正しく振替休日を運用する方法

振替休日を導入する際には、法定休日を正しく確保するとともに、残業代や割増賃金を正確に計算・支給することが求められます。誤った運用は労働基準法違反につながる恐れがあるため、ルールの理解と制度の整備が不可欠です。
ここでは、振替休日を適切に運用するための具体的な方法や実務上の注意点について詳しく解説します。
5-1. 振替休日の取得期限を定めておく
月またぎの振替休日が発生すると、勤怠管理や給与計算が複雑になりやすいです。そのため、できる限り月またぎの振替休日を発生させず、同一の賃金支払期間内で休日と労働日を振り替える運用体制を整えることが望ましいでしょう。
あらかじめルールや仕組みを整備しておくことで、管理業務の効率化と法令遵守の両立が図れます。
関連記事:振替休日に期限はある?週をまたいだ時の対応や期限における注意点を解説
5-2. 振替休日の仕組みを就業規則に明記して従業員に周知する
振替休日は法律で義務づけられた制度ではなく、企業が自主的に導入する任意の制度です。そのため、振替休日を適切に運用するためには、就業規則にルールを明確に定めておくことが不可欠です。あらかじめ詳細な取り扱いを記載しておくことで、制度の運用がスムーズになり、従業員とのトラブルも未然に防ぐことができます。
ただし、「労働日の翌月に振替休日を取得した場合、その労働日に対する賃金は翌月に支払う」といった内容を就業規則に定めたとしても、その規定は労働基準法に違反するため無効となり、労働基準法の基準が優先されて適用されることになります(労働基準法第13条)。振替休日制度を導入する際は、法令に適合した内容で就業規則を整備することが重要です。
関連記事:雇用契約書と就業規則の優先順位とは?見直す際の2つのポイントを紹介
5-3. 勤怠管理システムを導入する
月またぎの振替休日を完全になくすことは難しいかもしれません。しかし、月をまたいで振替休日を取得させた際に、勤怠管理や給与計算を正しくおこなわなければ、労働基準法違反として、罰金などの罰則が課せられる可能性もあります。
このようなリスクを防ぎ、振替休日の管理を効率化したい場合には、勤怠管理システムの導入がおすすめです。勤怠管理システムを活用すれば、振替休日の申請・承認をツール上でスムーズにおこなえるだけでなく、労働時間の集計から残業代・割増賃金の計算まで自動化することも可能です。これにより、人的ミス削減とコンプライアンス強化の両立が実現できます。
6. 月またぎの振替休日の処理は正確にしよう

月またぎの振替休日を取得する場合は、ひとまず休日に勤務してもらった分の賃金を支払い、休みをとった月に給与から控除する手続きをするのが原則です。月をまたいで未取得分の休日と労働した賃金を相殺することは違法であるため、十分に注意しましょう。
月またぎの振替休日に関しては、法定休日の確保や36協定の締結・届出といった法的な要件も関係していきます。勤怠管理や給与計算が複雑になりやすくなるので、可能な限り同一賃金支払期間内で振替をおこなう仕組みを設けることが望ましいでしょう。
関連記事:休日・休暇とは?違いや種類・賃金の注意点など勤怠管理のポイントを解説
人事担当者の皆さまは、労働基準法における休日・休暇のルールを詳細に理解していますか?
従業員に休日労働をさせた場合、代休や振休はどのように取得させれば良いのか、割増賃金の計算はどのようにおこなうのかなど、休日労働に関して発生する対応は案外複雑です。
そこで当サイトでは、労働基準法にて定められている内容をもとに、振休や代休など休日を取得させる際のルールを徹底解説した資料を無料で配布しております。
「休日出勤させた際の対応を知りたい」「代休・振休の付与ルールを確認したい」という人事担当者の方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
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