社会保険料の納付方法は?仕組みや納付期限・滞納時のリスクもまとめて解説
更新日: 2025.8.18 公開日: 2021.11.13 jinjer Blog 編集部

企業は毎月、従業員負担分と事業者負担分の社会保険料を期日までに納付しなくてはなりません。本記事では、社会保険料の納付方法、期日、納付先、納付が遅れた場合の対応方法などを解説します。
初めて社会保険料を納付する企業や人事担当者の参考になれば幸いです。
▼給与計算で社会保険料を算出する方法や、計算時の注意点について知りたい方はこちらもチェック
関連記事:社会保険料の計算方法とは?給与計算や社会保険料率についても解説
目次
従業員の入退社、多様な雇用形態、そして相次ぐ法改正。社会保険手続きは年々複雑になり、担当者の負担は増すばかりです。
「これで合っているだろうか?」と不安になる瞬間もあるのではないでしょうか。
◆この資料でわかること
- 最新の法改正に対応した、社会保険手続きのポイント
- 従業員の入退社時に必要な手続きと書類の一覧
- 複雑な加入条件をわかりやすく整理した解説
この一冊で、担当者が押さえておくべき最新情報を網羅的に確認できます。煩雑な業務の効率化にぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 社会保険料(健康保険・厚生年金保険)の納付方法


社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)の徴収は、日本年金機構(年金事務所)がおこなっています。毎月20日前後に、日本年金機構から送られてくる「保険料納入告知書」に記載された保険料額を基に、支払い期限までに「保険料納入告知書」を添付して金融機関へ社会保険料を納めます。
納付のフローはどの企業でも同じですが、支払方法は3つの方法から選ぶことが可能です。
ここでは、それぞれの支払い方法について解説します。
1-1. 金融機関窓口での直接納付
社会保険料の納付方法1つ目は、金融機関の窓口での直接納付です。
事前の手続きは不要で、管轄の年金事務所から送られてくる納入告知書(納付書)を持っていけば、どこの金融機関でも現金で納付することができます。
ただし、毎月窓口で直接納付すると業務負担も大きいため、次に説明する口座振替やPay-easyを活用すると良いでしょう。
1-2. 口座振替による納付
社会保険料の納付方法2つ目は、指定口座からの振替納付です。指定口座からの振替を希望する場合、「健康保険厚生年金保険 保険料口座振替納付(変更)申出書」に必要事項を記入した上で、所在地を管轄する事務センターまたは年金事務所に提出します。
この様式には口座振替を利用する金融機関の確認を受ける必要があるため、記入してある所定様式を持って金融機関の窓口で申請しましょう。
なお、金融機関では預(貯)金口座の照合確認をおこない、1枚目(年金事務所用)が金融機関から年金事務所へ送られます。しかし、申請が通らずに届出書を返された場合、1枚目の修正点を確認した上で1枚目と2枚目(金融機関用)を年金事務所もしくは事務センターへ提出しましょう。
事前の手続きに時間がかかるかもしれませんが、社会保険料の払い忘れを防げますし、支払い手続きも簡略化できるので、口座振替による納付はおすすめの方法です。
1-3. 電子納付「Pay-easy(ペイジー)」による納付
社会保険料の納付方法3つ目は、電子納付「Pay-easy(ペイジー)」による納付です。
電子納付を利用する場合は、「保険料納入告知書」に記載された「収納機関番号(00500)」、「納付番号(16桁)」、「確認番号(6桁)」の情報を使用します。
電子納付「Pay-easy(ペイジー)」にも、4つの納付方法があります。
- インターネットバンキング:インターネット上で納付可能
- モバイルバンキング:携帯電話を使用して払込手続きをおこなう
- ATM(Pay-easyマークのあるもの);現金およびキャッシュカードも利用可能
- テレフォンバンキング:電話の音声案内で振込手続きをおこなう
なお、インターネットバンキング、モバイルバンキング、テレフォンバンキングを利用する場合、事前に利用される金融機関と契約を結んでおく必要があります。事前契約の方法は、取引をおこなう金融機関に問い合わせましょう。
また、電子納付は領収書が発行されないため、領収書が必要な方は金融機関の窓口納付をおこないましょう。
2. 社会保険料納付の仕組み・タイミングをおさらい


社会保険料の納付先、タイミングなど、基本情報をまとめて解説します。
2-1. 社会保険料の納付先
社会保険料は、日本年金機構に納付する仕組みとなっています。毎月20日ごろに、日本年金機構から「保険料納入告知書」が郵送されてくるので、期日までに納付することが義務付けられています。納付方法は前項で紹介していますが、これらの方法以外での納付は認められていません。
例えば、個人で納付することもある国民年金保険料はクレジットカードで支払うことができますが、会社が納付する社会保険料はクレジットカードでの支払は認められていないので、間違えないように注意しましょう。
2-2.社会保険料の納入告知書(納付書)
納入告知書(納付書)は、毎月20日頃に年金事務所から各事業所へ送付されます。郵便事情により遅延する場合もありますが、万が一、納入告知書が届かない場合は最寄りの年金事務所に再発行を依頼しましょう。
納入告知書は、1枚目「領収済通知書」、2枚目「領収控」、3枚目「納入告知書(納付書)・領収証書」の3枚つづりとなっています。
2-3. 社会保険料の計算方法
社会保険料は、被保険者の標準報酬月額にそれぞれの保険料率を掛けて計算します。標準報酬月額とは、給料などの報酬月額を区切りの良い幅で区分した、社会保険料の計算のもととなる等級表です。健康保険は1級から50級まで区分され、厚生年金は全32級となっています。
東京都内の協会けんぽに加入する事業所で、被保険者の標準報酬月額が30万円の場合、保険料の計算方法は以下のとおりです。
健康保険料:30万円×9.91%=29,730円
健康保険料(介護保険料込み):30万円×11.50%=34,500円
厚生年金保険料:30万円×18.30%=54,900円
参考:令和7年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表 | 全国健康保険協会(東京都)
社会保険料の計算について、次の記事で詳しく解説しています。
関連記事:社会保険料の計算方法とは?給与計算や社会保険料率についても解説
2-4. 納付期限・スケジュール
社会保険料の納付期限は、納付対象月の「翌月末日」となっており、末日が土曜・日曜・祝日の場合は、金融機関の翌営業日となります。
ただし、「翌月末日」というのは、保険料納入告知書が届いた「翌月」ということではないので注意しましょう。
社会保険料は1ヵ月ごとに計算するので、支払う月の前月分の保険料を納付します。
例えば、3月分の社会保険料を納付する場合、4月10日ごろに社会保険料が確定された後、4月20日前後に納入告知書が日本年金機構から送付され、4月30日が社会保険料の支払い期限となるのです。
そのため、「翌月末日」が納付期限となっていても、「保険料納入告知書」が届いた月の末日までに支払うと覚えておくと良いでしょう。
3. 社会保険料の滞納によるリスク


社会保険料を納付期限までに支払わなかった場合、督促状が企業へ送付されます。延滞金が課されるケースについて解説します。
3-1. 社会保険料の督促状と延滞金
納付期日までに納付が確認できない場合、まず、督促状が翌日15日頃に発送されます。納付期日後、ただちに延滞金が課されるわけではなく、督促状に記載してある期日までに納付が確認できない場合、または督促状で指定する期日より後に納付された場合に、延滞金が発生します。
さらに、督促状の指定期限が過ぎても納付がおこなわれない場合、財産差し押さえなどの法的措置が取られる可能性があります。
もしも、何かしらの事情で納付が難しい場合は、管轄の年金事務所まで足を運び、納付できない理由をしっかり伝えて納付計画を立てましょう。
延滞金の割合は、支払いタイミングにより異なります。令和3年1月1日以降は、納付期限の翌日から3ヵ月を経過する日までの期間については、年7.3%と「延滞税特例基準割合+ 1%」のいずれか低い割合となります。
納付期限の翌日から3ヵ月を経過する日の翌日以降の期間については、年14.6%と「延滞税特例基準割合+ 7.3%」のいずれかの低い割合です。詳細は、日本年金機構の別表でご確認ください。
決まった額の社会保険料を期限内に納付することは、企業が果たさなければならない義務です。もしも納付を延滞してしまった場合はさまざまなリスクを負うことになります。ここでは納付期限が過ぎたことによる具体的なリスクを以下の通り6つ説明します。
5-2. 財産が差し押さえられる
社会保険料を支払わないと、年金事務所や労働局の職員による財務調査がおこなわれます。そして財務調査により差し押さえられる財産があった場合、差し押さえが執行される前に予告通知が届く流れです。
この時点で滞納していた社会保険料を延滞金とともに支払うと、差し押さえも回避できることもあります。しかし、そのまま放置すると財産が差し押さえられるリスクがあるため、要注意です。
差し押さえの処分を受けると、銀行に預けている資金を自由に使えなくなってしまったり事務所に入れなくなったりと、事業の継続が困難になる可能性があります。
5-3. 金融機関から融資を受けられなくなる
社会保険料を滞納し、預貯金などの財産が調査されたり差し押さえを受けてしまったりした場合、当然ながら金融機関にもその情報が伝わります。
金融機関は将来的な利息と返済を見込んで企業に融資しています。したがって、社会保険料を滞納するほど財務状況が厳しい企業に対しては、融資自体を断る可能性が高まります。
関連記事:社会保険料を滞納する8つのリスクや支払えないときの対策を解説
5-4. 従業員が離職する
社会保険料が未納であることが従業員に知られると、企業の信頼性が低下し、従業員が転職を考える可能性が高まります。特に、給与の支払い遅延や社会保険料の未納は、従業員にとって将来の不安材料となり、離職を促進します。従業員の離職は、新たな人材の採用や育成のコストを発生させ、業務運営にも支障をきたします。さらに、従業員の不満が他の社員に波及し、社内の士気低下にもつながりかねません。
5-5. 社会的信頼の失墜
社会保険料の滞納が続くと、企業の社会的信頼が大きく損なわれます。社会保険料は法的義務であり、守らない企業は法令遵守意識が欠如していると見なされかねません。その結果、新規取引先を獲得する際に不利な立場に立たされてしまうでしょう。社会的信頼失墜は、従業員の新規採用にとっても足かせになってしまうでしょう。
5-6. 顧客との取引終了
社会保険料の未納が報じられた場合、企業は顧客や取引先からの信用を失う危険性があります。取引先が企業の社会的責任を重視する場合、未納問題を理由に取引契約を終了することもあるでしょう。顧客との取引が終了すれば、売上や利益に直接的な影響を及ぼすだけでなく、企業のブランド価値にも悪影響が生まれてしまいます。
4.社会保険料納付のよくある質問


社会保険料の納付にまつわる、よくある質問に回答します。納付の際にぜひご確認ください。
4-1.郵便局で社会保険料を納付できる?
郵便局では、社会保険料や公共料金をはじめ、所得税や法人税などの国税を支払うことが可能です。郵便局の窓口か、Pay‑easyに対応したゆうちょ銀行のATMでも納付が可能です。
4-2.納付書をなくしたら再発行できる?
社会保険料の納入告知書(納付書)が届かない場合、または紛失した場合は、最寄りの年金事務所で再発行を依頼しましょう。
4-3.社会保険料はいつ徴収するの?
納付対象月の翌月末日までに納付します。毎月、従業員の給料と賞与から被保険者負担分の社会保険料を天引きして、事業主負担分とあわせて納めましょう。
なお、給料から保険料を天引きするときは、当月支払う給料から、前月の社会保険料を差し引くことが可能です。このとき、前月の標準報酬月額をもとに保険料を計算することも大切です。
5. 社会保険料の徴収月における注意点


社会保険料の徴収月で間違いやすい点と、法人ならではの注意点を解説します。
5-1. 社会保険料は日割り計算されない
社会保険料の徴収月の注意点1つ目は、社会保険料は日割り計算が適用されないことです。
社会保険料は月割り計算なので、例えば3月30日に入社して1日しか出勤していなかった従業員であっても、1ヵ月分の社会保険料を払わなければなりません。
また、従業員によっては、社会保険料が月割り計算だと知らないこともあるので、事前に説明しておくと良いでしょう。
5-2. 入社したばかりでも翌月支給から控除される
社会保険料の徴収月における注意点の2つ目は、社会保険料は基本的に翌月支給の給与から控除されるということです。
例えば、4月10日に入社した従業員がいた場合、控除がおこなわれるのは当月の4月20日ではなく、翌月の5月20日になります。控除月については担当者でも勘違いしてしまうことがあるため、給与計算をする際には気を付けましょう。
ただし、会社によっては当月の給与から控除すると規定する場合もあります。自社の規定に沿って手続きをおこない、なおかつ従業員に周知することも大切です。
5-3.法人はクレジットカードで納付できない
結論からいうと、法人はクレジットカードで社会保険料の納付はできません。
個人の国民健康保険料や国民年金保険料はクレジットカード払いが可能なので、社会保険料も納付できると思う方もいるかもしれません。しかし現時点では、窓口での直接納付か口座振替、電子納付のいずれかに限られているため、自社にあった納付方法で手続きをおこなってください。
5-4. 産休・育休中は条件によって社会保険料が免除される
社会保険料は産休、育休の従業員がいた場合、条件を満たすことで社会保険料が免除されます。産休、育休中の従業員の社会保険料を免除するには手続きは必要なため忘れずに対応しましょう。
6. 社会保険料納付業務を効率化するポイント


最後に、社会保険料の納付業務を効率化するためのポイントをご紹介します。
6-1. スケジュール管理の徹底
納付期限を守るために、スケジュールを詳細に管理し、事前に準備を整えることが大切です。毎月同じ日に納付対応をおこなう、リマインダーをセットする、複数名で声かけをおこなうなど工夫を凝らし、スケジュール管理を徹底しましょう。
万が一、納付漏れが発生した場合でも、慌てずに対応をしてください。とくに、従業員の採用や退職が続いたときは、慎重にスケジュールを確認し、納付対応をしたら必ず記録を残すよう習慣づけると良いでしょう。
6-2. 計算ミスを防ぐためのチェック体制
社会保険料の計算ミスを防ぐために、ダブルチェックを導入することが効果的です。担当者同士で確認作業をおこない、正確な金額を算出します。Excelなど手作業で計算している場合は、システムの金額や納入告知書の内容と突合して確認するなど、複数回の確認体制を整備すると安心です。
しかし、手作業だとヒューマンエラーのリスクが伴うため、勤怠管理システムや給与計算システムを導入し、計算ミスを最小限に抑えることが望ましいでしょう。
6-3. 他部門との連携で作業の重複を防ぐ
人事部門や経理部門と連携し、業務の重複や情報の漏れを防ぎましょう。担当者が曖昧だったり、連携がうまくいかなかったりすることで、納付漏れが発生する場合もあるでしょう。社会保険料の計算や給与計算に必要なデータを漏れなく社内共有できるよう、定期的なミーティングやデータの統一化を図ることが、業務効率を向上させるためのカギとなります。
6-4. 電子申請システム・クラウドツールの活用
電子申請システムやクラウドツールを活用することで、データの入力ミスを減らし、申請手続きの迅速化が可能です。クラウド型のシステムを導入すれば、情報がリアルタイムで更新され、場所を問わずどこからでもアクセス可能です。これにより、納付業務の負担を大幅に軽減し、エラーや手間を削減できます。
7. 社会保険料は毎月期限を守って正しく納付しよう


社会保険料は、納入告知書に記載された金額をもとに、納付期限までに納めます。納付方法は、①金融機関の窓口納付、②口座振替、③電子納付(Pay-easy)の3種類です。納入告知書の到着から納付期限までは約10日と短いため、従業員数が多い場合や担当者が少ない場合は、ミス防止のためにも事前の準備が重要です。余裕を持って正しく手続きできるよう、納付方法や注意点を把握しておきましょう。
▼社会保険に関するさまざまな記事を公開しています。ぜひ参考にしてください。
関連記事:社会保険料の計算方法とは?給与計算や社会保険料率についても解説
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関連記事:社会保険の随時改定とは?標準報酬月額を改定する条件や月額変更届の手続きを解説
関連記事:社会保険の加入手続きや必要書類、加入対象の従業員の範囲もあわせて解説



従業員の入退社、多様な雇用形態、そして相次ぐ法改正。社会保険手続きは年々複雑になり、担当者の負担は増すばかりです。
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