みなし残業制度とは?メリット・デメリットや違法とならない導入・運用方法を解説!
更新日: 2026.2.27 公開日: 2021.9.7 jinjer Blog 編集部

みなし残業(固定残業)とは、一定時間分の残業代を給与に含めて支払う制度です。計算の効率化や人件費の把握が容易になるメリットがある一方、運用を誤ると労働基準法違反や未払い賃金トラブルにつながるリスクも抱えています。
本記事では、みなし残業の基礎知識から、導入・運用時に守るべき法的要件、メリット・デメリットまでをわかりやすく解説します。法令を遵守し、企業と従業員双方が安心・納得できる運用を目指すためのポイントを確認していきましょう。
関連記事:残業の定義とは?正しい知識で思わぬトラブルを回避!
人事労務担当者の実務の中で、勤怠管理は残業や深夜労働・有休消化など給与計算に直結するため、正確な管理が求められる一方で、計算が複雑でミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
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1. みなし残業(固定残業代制)とは

みなし残業(固定残業代制)とは、あらかじめ一定時間分の残業代(時間外労働手当)を毎月の給与に含めて支給する制度です。
この制度を適法に導入するためには、明確区分性(通常の賃金部分とみなし残業代部分が明確に区分されていること)や、対価性(みなし残業代が実際の時間外労働に対する対価であること)といった要件を満たす必要があります。
また、企業はあらかじめ「○時間分の残業代」を定額で給与に組み込み、従業員の残業時間がみなし残業時間以下であれば、実際の残業時間にかかわらずその残業代を支払います。
例えば、みなし残業時間を月20時間と定めている場合、実際の残業時間が20時間より少なくても20時間分の残業代を支給します。逆に、実際の残業時間が20時間を超えた場合は、その超過分の残業代を別途支払わなければなりません。
1-1. みなし残業代に含まれる割増賃金の範囲
みなし残業代は、あらかじめ割増賃金を含めて設定する必要があります。そのため、設定されたみなし残業時間内の労働については、追加で割増賃金を支払う必要はありません。
法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える時間外労働をみなし残業に含める場合は、時間外労働の割増賃金も含める必要があります。また、夜勤や休日出勤をみなし残業に含める場合は、深夜労働や休日労働に対する割増賃金も組み込む必要があります。
みなし残業代に含まれる割増賃金の種類とその割増率は次の通りです。
|
割増賃金の範囲 |
割増率 |
|
時間外労働(月60時間以内):法定労働時間を超える労働 |
25%以上 |
|
時間外労働(月60時間超え) |
50%以上 |
|
深夜労働:22時~翌5時の労働 |
25%以上 |
|
休日労働:法定休日の労働 |
35%以上 |
例えば、もし深夜労働の割増賃金(深夜手当)を含めずにみなし残業代を設定した場合、実際に深夜労働が発生した際には追加で深夜手当を支払う必要があります。
関連記事:割増賃金とは?深夜や休日の割増賃金率や計算、副業の取扱などをわかりやすく解説
関連記事:時間外労働の上限規制はいつから?上限時間と罰則・労働時間管理のポイントを解説
1-2. みなし残業と36協定(時間外・休日労働に関する協定)の関係
みなし残業時間を設定する際は、36協定(時間外・休日労働に関する協定)で定められた時間外労働の上限に注意する必要があります。
36協定とは、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える時間外労働や、法定休日における休日労働を認めるために、労使間で結ぶ協定のことです。36協定がなければ、そもそも時間外労働をさせることはできません。
通常の36協定では、時間外労働の上限は「月45時間・年360時間」と定められています。そのため、みなし残業時間をこの上限を超えて設定すると、労働基準法違反となる可能性があります。
なお、特別条項付き36協定を締結した場合、次の条件を満たす範囲で時間外労働や休日労働をおこなわせることが可能です。
- 時間外労働:年720時間以内
- 時間外労働と休⽇労働の合計:⽉100時間未満、2ヵ⽉~6ヵ⽉平均80時間以内
- 時間外労働が⽉45時間を超えられる月数:年6ヵ⽉
ただし、特別条項付き36協定はあくまで臨時的な特別事情がある場合に認められるものです。毎月のように特別条項を発動する形でみなし残業を恒常的に設定する運用は、違法となる可能性があります。
1-3. みなし残業とみなし労働時間制の違い
「みなし残業」と似た制度に「みなし労働時間制」があります。みなし労働時間制とは、従業員の実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間働いたものとみなし、賃金を支払う制度です。みなし労働時間制には大きく分けて、「事業場外労働のみなし労働時間制」と「裁量労働制」の2種類があります。
事業場外労働のみなし労働時間制は、営業職の外回りや在宅勤務など、企業の外で働く従業員について、労働時間の正確な把握が難しい場合に適用されます。この場合、所定労働時間や通常必要とされる時間をあらかじめ働いたものとみなして賃金を支払います。
裁量労働制は、従業員の実労働時間にかかわらず、労使間で取り決めた一定時間(みなし労働時間)働いたものとして賃金を支払う制度です。裁量労働制には「専門業務型」と「企画業務型」の2種類があり、それぞれ適用条件が細かく定められています。そのため、すべての従業員や業種に適用できるわけではありません。
関連記事:裁量労働制とは?労働時間管理における3つのポイントを徹底解説
2. みなし残業制の有効要件


- 判別可能性(明確区分性)
- 対価性
- みなし残業代が労働基準法に基づき計算される金額以上である
もしこれらの要件を満たさない場合、適切な残業代・割増賃金が支払われていないことになり、未払い賃金が発生するリスクがあります。ここでは、それぞれの要件について詳しく解説します。
2-1. 判別可能性(明確区分性)
判別可能性(明確区分性)とは、通常の労働時間に対する賃金と、みなし残業代を明確に区別できるかどうかを指します。従業員が自身の賃金内容を正しく理解するために重要な要素です。
例えば、「基本給〇円(固定残業代含む)」とだけ記載されている場合、通常の労働に対する賃金とみなし残業代の内訳がわかりません。このままでは、従業員が残業代の計算方法や支給額を把握しにくく、労働基準法上も不十分と判断される可能性が高いです。
そのため、「基本給〇万円、固定残業代△万円(□時間分)」のように、基本給とみなし残業代を分けて明示することが求められます。これにより、従業員は賃金の内訳を正確に理解でき、労務管理における透明性も確保されます。
2-2. 対価性
対価性とは、みなし残業代が実際の残業(時間外労働などの割増賃金を含む)に対する適正な対価として支払われているかどうかを指します。みなし残業代は、実際に残業をおこなったか否かにかかわらず支給される性質の賃金であるため、単に金額が支払われているだけでは不十分で、労働の対価として妥当であることが求められます。
例えば、名目上「みなし残業代」として支給されていても、役職手当や業績連動型インセンティブなど、残業とは直接関係のない手当が含まれている場合には、その部分は残業の対価として認められず、適正なみなし残業代とはいえません。したがって、みなし残業代の設定にあたっては、残業の対価として支払われる金額と内容が明確であることが重要です。
2-3. みなし残業代が労働基準法に基づき計算される金額以上である
みなし残業代は、労働基準法に定められた割増率(時間外労働は25%以上など)に基づき計算される金額を下回ってはいけません。
もし、法定割増率を下回る額でみなし残業代を設定した場合、労働基準法違反となり、みなし残業制が無効と判断される可能性があります。
また、その差額分は未払い残業代として従業員から請求されるおそれもあるので、設定には十分注意が必要です。
3. みなし残業代の設定方法


3-1. 1時間あたりの基礎賃金を確認する
みなし残業代を計算する際は、まず従業員の1時間あたりの基礎賃金を確認します。月給制の場合は「月給 ÷ 月平均所定労働時間」で時間単価を算出します。
ここでいう月給とは、基本給に、役職手当などの諸手当を加算したものです。ただし、通勤⼿当や住宅手当など、法令で定められた特定の手当は除外して計算できます。
なお、名称が通勤手当や住宅手当であっても、実費負担や住居形態にかかわらず、「全従業員に一律で1万円を支給する」といった支給方法の場合、法令上の除外対象とはならず、基礎賃金の算定に含めなければならないので注意が必要です。
関連記事:割増賃金の基礎となる賃金とは?計算方法など労働基準法の規定から基本を解説
3-2. みなし残業時間に基礎賃金および各種割増率を掛け合わせる
次に、設定するみなし残業時間に応じて、割増賃金を計算します。例えば、月20時間の時間外労働をみなし残業時間として設定する場合、基礎賃金2,000円、割増率25%とすれば、つぎのように、基準となる残業代は50,000円(= 20時間 × 2,000円 × 1.25)と計算できます。
3-3. 実際にみなし残業代を定める
実際に設定するみなし残業代は、あらかじめ算出した基礎賃金にみなし残業時間と各種割増率を掛けた金額以上に設定する必要があります。これを下回ると、労働基準法違反となり、みなし残業制が無効と判断される可能性があるため注意が必要です。
4. みなし残業のメリット


みなし残業制を正しく導入すれば、企業にとって費用管理や業務効率の面で大きなメリットがあります。従業員側にも一定のメリットがある制度です。具体的にどのような点があるのか、4つ紹介します。
4-1. 残業代の計算が効率化する
みなし残業時間が適切に設定されている場合、従業員の残業代計算の手間が軽減します。大幅な工数削減となり、給与担当者の業務効率化につながるでしょう。
ただし、残業時間の設定が適切におこなわれない場合は、残業時間の超過が頻繁に発生するかもしれません。この場合は、通常の残業と同様に、個々の超過時間等を把握する必要があります。
関連記事:固定残業代とは?制度の仕組みやメリット・デメリット、導入のポイントをわかりやすく解説
4-2. 人件費を把握しやすくなる
残業代が月々の給与に含まれる場合、人件費の把握が容易となります。残業代による人件費の変動が起こりにくく、企業は支出の見通しをより正確に立てやすくなるでしょう。
人件費は、企業支出のなかでも高い比率を占める支出です。大幅な増減があると、企業は支出予測を修正しなければなりません。人件費についてあらかじめ見通しが立てられるということは、経営上大きなメリットとなるでしょう。
4-3. 業務効率アップが期待できる
みなし残業制は従業員の働き方にも良い影響を及ぼす可能性があります。みなし残業制では、あらかじめ残業代が給与に含まれているため、残業してもしなくても給与がほぼ変わりません。
その結果、従業員の残業に対する意識が変化し、「長時間残業して稼ごう」よりも「残業しても給料は同じだから、テキパキ仕事を終わらせて定時で帰ろう」と考える従業員が増えるでしょう。このような意識の変化は、生産性の向上や業務の効率化につながります。
4-4. 従業員の給与が安定する
みなし残業制には従業員の収入を安定させるメリットもあります。毎月の給与に一定の残業代が含まれるため、たとえ残業が少ない月でも手取り額が大きく落ち込むことはありません。
従業員にとっては毎月の収入が推定できるようになり、生活設計が立てやすくなるでしょう。生活が安定することは従業員の安心感につながり、モチベーション維持にも寄与します。
5. みなし残業のデメリット


一方で、みなし残業には注意すべきデメリットやリスクも存在します。「残業代を固定で支給する」という仕組み上、企業側・従業員側それぞれにデメリットがあり得ます。導入前に考慮しておきたいポイントを3つ確認しましょう。
5-1. 人件費がかさむ場合がある
みなし残業を導入すると必ずしも人件費削減になるわけではなく、場合によっては人件費が増加するリスクがあります。みなし残業制は「残業代を払わなくて済む」制度ではありません。定めたみなし時間分の残業代は必ず支払う必要があるため、実際には残業が少なかった場合でもその分の残業代を含めた給与を支給しなければなりません。
極端に言えば、残業がほとんど発生しない企業でも一定額の残業代を支払うことになるので、通常の残業代支給より人件費が割高になる可能性があります。
5-2. サービス残業が増える可能性がある
みなし残業制を正しく運用しないと、サービス残業(無給残業)が横行するおそれがあります。みなし残業制は「一定時間分の残業代は給与に含まれているが、それを超えた分の残業代は支払われる」制度です。
しかし、従業員の認識が不十分だと、「みなし残業代に含まれているのだから、超過分の残業代は一切支給されない」といった誤解が生じてしまうことがあります。
その結果、従業員が超過分の残業時間を申告せずに自主的にサービス残業をしてしまう可能性があります。
こうした事態を避けるために、不要な残業をさせない工夫をするとともに、超過分の残業代を支払うことを周知徹底しましょう。
5-3. 従業員の不満が発生する場合がある
みなし残業制に対する従業員の理解不足は、不満やトラブルの原因となります。制度を正しく説明しておかないと、「みなし残業時間ぎりぎりまで働くことが期待されている」と勘違いする従業員も出てきます。その結果、業務が早く終わった日でもオフィスに残ろうとしたり、定時で帰ることに罪悪感を抱いたりするケースが考えられます。
さらに、現場の管理職側においても「みなし残業代を払っているのだから一定時間の残業はさせないと損」という誤った意識が生まれる危険があります。管理職がその点を履き違えれば、従業員に無駄な残業を強いる風土ができてしまい、従業員の不満や士気低下を招くでしょう。
このような事態を防ぐには、みなし残業制の仕組みやルールを従業員に正しく理解させることが大切です。
6. みなし残業制を実際に導入する際のポイント


みなし残業制を自社で導入する際には、事前の準備と社内周知が重要です。制度を有効に機能させ、違法運用によるトラブルを避けるために、次のポイントを押さえておきましょう。
6-1. 募集要項や求人票には基本給とみなし残業代が区分できるよう記載する
求人情報や募集要項には、基本給とみなし残業代を明確に区分して記載することが重要です。具体的には、次の3点を明示することが望まれます。
- みなし残業代を除いた基本給の金額
- みなし残業代の対象となる労働時間数および金額の計算方法
- みなし残業時間を超える時間外労働・休日労働・深夜労働が発生した場合に追加で割増賃金を支払う旨
参考:固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。|厚生労働省
このように記載することで、応募者や従業員は給与の内訳を正確に把握でき、自身の収入の仕組みを理解したうえで入社判断ができます。また、給与に関する誤解やトラブルの発生を未然に防ぎ、透明性の確保にもつながります。
6-2. 就業規則・雇用契約書にルールを明記して従業員に周知する
みなし残業制を導入する場合は、就業規則や雇用契約書に制度の内容を具体的に記載することが必要です。みなし残業代の計算方法や支払い方法は賃金に関わる重要な事項であるため、就業規則に詳細を明記することが求められます。
記載の際には、「判別可能性(明確区分性)」や「対価性」といった、みなし残業制の有効要件を満たしていることがわかるようにすることが重要です。また、就業規則の内容は従業員に正しく周知する義務があります。
さらに、新たに入社する従業員に労働条件を明示する際にも、賃金に関する定めを含めなければなりません。みなし残業制を採用する場合は、必ずその内容を明示し、従業員が労働条件に合意した証拠として、雇用契約書を交わすことが推奨されます。
関連記事:雇用契約書と労働条件通知書の違いとは?兼用はできる?作成方法も解説
6-3. 不利益変更となる場合は従業員の同意が必要
みなし残業制の導入や条件変更が従業員に不利益をもたらす場合は、事前に従業員の同意を得る必要があります。一方的な変更は労働契約違反となるおそれがあるため注意が必要です。なお、合意に基づく変更であっても、労働基準法や就業規則で定められた条件を下回ることはできません。
なお、同意が得られない場合でも、原則として一方的な就業規則の変更による労働条件の変更は認められません。ただし、変更内容が合理的であり、かつ労働者に周知されている場合には、就業規則による条件変更が認められることもあります。
参考:労働契約(契約の締結、労働条件の変更、解雇等)に関する法令・ルール|厚生労働省
関連記事:雇用契約の条件は途中で変更できる?契約期間内に変更する方法をご紹介
6-4. 実態を踏まえて適切なみなし残業時間を設定する
みなし残業制度を適切に運用するためには、まず実際の業務量や残業の実態を正確に把握したうえで、みなし残業時間を設定することが不可欠です。もし設定が実態よりも少なすぎると、従業員の不満やモチベーション低下の原因となるだけでなく、企業側の事務負担も増大します。
一方で、過剰に設定してしまうと、賃金の過払いが発生したり、労働基準法違反といった法的リスクにつながったりする可能性があります。さらに、制度を運用する際には、自社が締結している36協定の内容を必ず確認し、設定するみなし残業時間が上限を超えていないかチェックすることも重要です。
6-5. 残業時間・労働時間の管理を徹底する
みなし残業制を導入する場合、より厳密に個人の労働時間を把握する必要があります。「みなし時間内に収まっているかどうか」「収まっていない場合、何時間分超過したか」などをそれぞれ確認する必要があり、混乱を招くケースもあるでしょう。
これを未然に防ぐには、適切な勤怠管理ツールが不可欠です。個々の残業時間を一元的に把握できる、使い勝手のよいツールを選ぶとよいでしょう。
7. みなし残業制が違法になる可能性が高いケース


安易にみなし残業制を導入すると、労働基準法に抵触しトラブルとなる可能性もあります。制度を導入する際は、最低賃金・労働時間に注意することが必要です。
みなし残業制を導入する際、注意したいポイントを紹介します。
7-1. 基本給が最低賃金を下回っている
みなし残業代を給与に組み込む際に注意したいのが、基本給部分の最低賃金割れです。最低賃金法第4条では、従業員に最低賃金以上の賃金を支払うことが定められています。すなわち、みなし残業代を除いた基本給を時間あたりに換算したうえで、最低賃金以上かどうかを確認しなければなりません。
最低賃金は各都道府県によって異なるため、都道府県労働局や事業所の労働基準監督署で最新の情報を確認しましょう。参考として、令和7年度の最低賃金はすべての都道府県で1,000円を超えており、企業側はこれを下回らないよう給与設計をおこなう必要があります。
参考:最低賃金法第4条|e-Gov法令検索
参考:地域別最低賃金の全国一覧|厚生労働省
関連記事:固定残業代の計算方法とは?2種類の計算方法をわかりやすく解説
7-2. 雇用契約書や就業規則にみなし残業制の詳細を明記していない
みなし残業制を導入する場合、就業規則への明記は不可欠です。また、労働基準法により、従業員への正しい周知も求められます。
さらに、労働契約を締結する際には、みなし残業制の内容を含めた労働条件を明示する必要があります。この際、従業員の同意を確認するために、雇用契約書を交わすことが望ましいです。
就業規則や契約書に必要な情報を記載していない場合、労働条件が適切に明示されていないと判断され、みなし残業制自体が無効とされる可能性があります。
7-3. 労働時間を適切に管理できていない
従来は、みなし労働時間制が適用される従業員について、使用者が実際の労働時間を詳細に管理するかどうか曖昧な部分もありました。しかし、2019年4月に働き方改革関連法である労働安全衛生法が改正され、労働者の労働時間把握が義務付けられています。
また、労働時間を適切に管理していない場合、みなし残業時間を超えた残業の有無が不明確となります。もし超過分の残業代・割増賃金を支払っていない場合、労働基準法違反となる可能性があるため、正確な労働時間の把握と超過残業代の支払いが必須です。
関連記事:勤怠管理は法律上の義務!勤怠に関する労働基準法と2024年最新の法改正を徹底解説
7-4. 法定割増率を下回る残業代に設定している
みなし残業代を設定する際には、労働基準法で定められた基準を下回らないよう注意することが不可欠です。具体的には、時間外労働に対する割増賃金を含める場合、法定の割増率である25%以上を適用する必要があります。
もしこの割増率を適用せずにみなし残業代を設定すると、法定基準に達していないこととなり、違法な給与制度となる可能性があります。そのため、みなし残業代を導入・見直す際には、必ず法令に照らして適切な金額であるかを確認することが重要です。
7-5. みなし残業超過分の残業代を支払っていない
みなし残業時間を超えた分の残業代を払わないことは明確な違法行為です。
労働時間を適切に把握せず、超過分を支給しなければ、「未払い残業代の請求」や「残業拒否」など従業員とのトラブルに発展する可能性があります。
従業員からの信頼を失うリスクもあるため、正確な労働時間を把握して未払いがないように注意しましょう。
関連記事:みなし残業(固定残業)が違法になるケースや対処法を解説
7-6. みなし残業時間を45時間超にしている
一般的にみなし残業時間は月45時間以内に収めるのが望ましいとされています。実際、過去の判例でも「45時間程度」が一つの目安と考えられており、80時間を超えるようなみなし残業時間設定は「時間外労働に対する正当な対価ではない」と判断されたり、「公序良俗に反し無効」とされたりする可能性が高いです。
常態として月45時間を超える残業を前提とする契約は、従業員の健康管理の面からも問題があり好ましくありません。
関連記事:固定残業代の上限は45時間?超過するリスクを徹底解説
7-7. みなし残業代が給与明細に記載されていない
給与明細の発行義務は、労働基準法ではなく所得税法によって定められています(所得税法第231条)。みなし残業代は労働の対価に該当するため、課税対象となる給与として扱い、給与明細に含めて記載する必要があります。
もし、みなし残業代を給与明細上の支給額から除外している場合、毎月の源泉徴収や年末調整に影響が生じ、結果として所得税額を誤って計算・納付してしまうおそれがあります。
給与明細には、支給額だけでなく、税金や社会保険料などの控除額も記載するのが一般的です。ただし、給与明細の具体的な記載項目やフォーマットについて、法令で細かく定められているわけではありません。
そのため、従業員の理解と安心につなげる観点から、みなし残業代の内訳や、計算の基礎となるみなし残業時間なども併せて明示しておくことが望ましいでしょう。
関連記事:給与明細とは?保管期間や注意点、記載項目までくわしく解説
7-8. 【注意】労働基準法に違反すると罰則が適用されるリスクがある
違法なみなし残業代制を導入・運用している場合、労働基準法違反として罰則が課されるおそれがあります。
例えば、みなし残業代を法定の割増率を下回る金額で設定していると、割増賃金を適正に支払っていないものと判断され、労働基準法第37条違反に該当します。この場合、労働基準法第119条により、6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が適用される可能性があるのです。
実際には、直ちに刑事罰が適用されるケースは多くありませんが、労働基準監督署からの是正勧告や指導を受ける可能性は十分にあります。さらに、従業員に不利益が生じている場合には、未払い賃金の請求や、訴訟に発展して損害賠償を求められるリスクも否定できません。
このようなリスクを回避するためにも、みなし残業代制度は法令に沿った適切な設計と運用をおこない、定期的に内容を見直すことが重要です。
8. みなし残業の導入は法に則っておこなうことが重要


みなし残業は、従業員の給与にあらかじめ「一定時間分」の残業手当を含めて支給する労働契約です。この制度を適切に活用すれば、残業代計算の負担軽減や人件費の見通し向上などのメリットが得られ、従業員にとっても収入の安定や働き方の意識改革といったプラス効果が期待できるでしょう。
一方で、運用を誤れば労働基準法違反となり制度自体が無効と判断されるリスクがあります。
みなし残業時間は45時間を超えない範囲に留め、最低賃金を下回らない給与設計にするなど、常に法令順守を最優先すべきです。導入にあたっては就業規則や契約書の整備、労働時間管理の徹底など準備を万全におこない、企業と従業員双方にとって安心・納得できる形でみなし残業制を活用しましょう。
関連記事:みなし残業と固定残業の違いとは?それぞれの定義を紹介



人事労務担当者の実務の中で、勤怠管理は残業や深夜労働・有休消化など給与計算に直結するため、正確な管理が求められる一方で、計算が複雑でミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
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