公休とは?意味や有給との違い・給料の取り扱いをパートアルバイトのケースまで解説
法定休日・有給休暇など、企業はさまざまな種類の休みを従業員に付与し、従業員の健康を損なわないように努めています。
企業が従業員に休日を与えるときによく使うのが、「公休」という言葉です。公休という言葉を耳にしたことがある人は多いかもしれませんが、実際の詳しい意味を知らない人もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、企業が必ず知っておきたい公休について紹介します。正しい意味や運用方法を理解して、法令を遵守した労働環境の整備をおこないましょう。
目次
「公休と他の休日との違いがよくわからない」
「公休時に出金した際の割増賃金について知りたい」
「そもそも公休について基礎から正しく理解できていない」
など公休について詳しくわかってないという担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方に向けて当サイトでは「公休の扱い方ガイドブック」という資料を無料配布しています。本資料では、公休に関する基礎知識はもちろん、公休時に出金した際の対応など公休に関して網羅的に解説しています。公休の取り扱いに関してに不安のある方は、ぜひ資料をダウンロードしてご覧ください。
1. 公休とは?
「公休」とは、そもそもどのような意味を持つ言葉なのでしょうか。まずは、基礎知識となる公休の意味について解説します。
1-1. 公休の意味
公休とは、会社が社員に対して与えている休日のことです。一般的には、法定休日と所定休日の両方の休日を合わせた休みのことを、「公休」とよびます。
週休二日制をとっているほとんどの会社は、土曜と日曜に休日を設定しています。この土曜と日曜の2日間の休みは、労働基準法35条で定められた「法定休日」に、企業が自由に設けられる「所定休日」を組み合わせた休日です。
なお、法定休日や所定休日には「何曜日に与えなくてはいけない」という定めはないため、会社の規定に沿って付与することができます。
法定休日
ただし、法定休日とは、労働基準法35条で定められた休日のことで、週に1日もしくは4週に4日の休日を与えることが労働基準法上で義務付けられているので、この要件を満たせるように公休を設定しなくてはいけません。
法律では、この基準を下回る労働をさせてはいけないと規定されています。また労働基準法には、従業員の労働時間を1日8時間かつ週40時間以内におさめなければならないと規定されています。
法定休日だけでは週に1回の休みしか取れないため、1日8時間勤務の企業ではこの労働基準法にある労働時間の要件を満たすことはできません。そのため、企業が独自に設定できる「所定休日」を設けることで、従業員の休日を確保するのです。
公休は、この法定休日と所定休日の両方を合わせた休みのことをいいます。つまり、法定休日と公休は別物なのではなく、法定休日は公休の一部ということなのです。
関連記事:法定休日と祝日の違いとは?出勤時は割増賃金になる?計算方法も詳しく解説
関連記事:所定休日と法定休日の違いや運用ルールを分かりやすく解説
参考:e-Gov|労働基準法
1-2. 公休には最低日数がある
企業が公休を設定するときは、最低日数に気をつけなければいけません。
なぜなら、労働基準法に定められた、「週に1回または4週に4回の法定休日」や、「1日8時間かつ週40時間までの労働時間」の要件を満たさなければいけないためです。
この2つの要件を複合的に判断すると、1日8時間勤務の企業における公休の最低日数は105日となります。ただし、36協定を締結していて時間外労働について労使間で合意をしている場合は、この限りではありません。
公休日数の計算方法
公休日数の計算は以下のような手順でおこないます。
【Step1】1年間を週換算します。
365日÷7日(1週間)=約52週
【Step2】週の数に週の公休日数をかけます。
週休1日の場合:52週×1日=52日
週休2日の場合:52週×2日=104日
【Step3】国民の祝日を所定休日に設定している場合は、上記で算出した日数に年間の国民の祝日を足します。
2022年の場合、国民の祝日は16日あるため、【Step2】で算出した日数に16日を足します。
週休1日の場合:52日+16日=68日
週休2日の場合:104日+16日=120日
【Step4】最後に、会社独自で所定休日としている日がある場合は、その日数を足すことで、その会社の公休日数が算出されます。
土日祝休みで、会社の創立記念日を所定休日としている場合は、以下のように計算します。
週休1日の場合:68日+1日=69日
週休2日の場合:120日+1日=121日
従業員ごとに取得する日が異なる有給休暇や特別休暇などは公休には含まれないという点には、注意しましょう。
一般企業の公休日の日数相場は何日?
実際には、週休二日制を導入して公休を120日に設定している企業が多い傾向にあります。1日の労働時間が8時間未満の企業の場合、より少ない公休を設定している場合もあります。
厚生労働省の調査によると、2018年の一般企業における年間休日の平均は、労働者1人あたりで113.7日、1企業あたりでは107.9日となっています。このため、求人情報に「年間休日120日以上」と記載されている場合、企業の平均よりも多い休日日数が確保されていると考えて良いでしょう。
休日を多く設定することで、働きやすい労働環境の整備にもつながるため、従業員の健康状態なども考慮したうえで公休を設けると良いでしょう。
なお、公休は雇用の際に契約書に記載してある休日であり、アルバイトの雇用契約を締結するときも有効です。アルバイト従業員を雇うときも、必ず週に1日もしくは4週に4日以上の公休を与えましょう。
2. 公休と「有給」「公休日」「公休扱い」その他の休みとの違い
企業が取り扱う休みには、公休以外にも多くの種類があります。有給休暇との違いや、よく似た言葉として公休日、公休扱いという言葉もあります。ここではその具体的な違いと、関連する休暇や休みとの違いをわかりやすく説明します。
2-1. 公休と「有給休暇」の違い
公休と有給休暇は全くの別物です。
公休とは、そもそも労働の義務がない休みのことで、有給休暇とは、労働の義務があるが免除された日に取得する給料が発生する休暇のことを指します。有給休暇は給料が発生するのに対して、公休は給料が発生しません。
有給休暇は雇い入れから6ヵ月以上が経過し、かつ全労働日の8割以上出勤した従業員に対して、勤続年数に応じた日数を与えなければなりませんが、公休は法定休日と労働時間を守っていれば、企業側で自由に設定することができます。
そもそも公休と有給休暇はまったく性質が異なるため、しっかりと区別しておきましょう。
関連記事:年次有給休暇とは?付与日数や取得義務化など法律をまとめて解説
2-2. 公休と「公休日」の違い
公休と似た言葉に公休日があります。同義で扱われる場合もありますが、両者には微妙な違いがあります。
「公休」は先に述べた通り、会社が定めた休日のことを指します。
対して「公休日」は、一般的な休日のことを指す場合があります。週末の土日や国で定めた祝日など公的に休日とされる日全般のことです。
本記事では、会社が定めた休日を公休、一般的な休日を公休日と定義して扱います。
2-3.「公休扱い」とは?欠勤との違い
従業員の勤怠処理をおこなうとき、「公休扱いで処理します」といったような言葉を聞いたことがある人もいるかもしれません。
公休扱いとは勤怠管理上でよく使われる言葉で、欠勤にならない休日のことです。
例えば親族の葬儀や結婚式に参加したりするとき、本来は勤務日であった日でも公休扱いにすれば、従業員は欠勤にならないのです。
公休扱いと欠勤は区別して考える必要があります。なぜなら、公休扱いか欠勤扱いにするかどうかで、有給休暇の付与にかかわる出勤率や、昇給や賞与にかかわる人事評価が変動するからです。
公休扱いにすることは従業員にとってメリットが多いため、社内でルールを設けて公休扱いとするケースを規定しておくと良いでしょう。
2-4. その他の休みとの違い
その他にも特別休暇や年休、祝日など労務管理する上で出てくる休みと公休の違いを解説します。ポイントを抑えて、正しく使い分けられるようにしましょう。
公休と「特別休暇」の違い
公休と特別休暇も全くの別物です。
法律で付与することが義務づけられた年次有給休暇のほかに、バースデー休暇や結婚等の慶弔休暇、葬儀・忌引き休暇など、独自に認めた有給休暇を「特別休暇」と言います。このような有給休暇はすべて公休とは異なり、公休には含まれません。
公休と「年休」の違い
年休とは年次有給休暇の略称です。つまり有給休暇であるため、公休とは別物になります。
公休と「祝日」との違い
祝日とは国や地域の法律で特別に定められた公的な休日です。先に述べた公休日と同義になります。そのため、公休と祝日も別物になります。
3. 公休を取得した際の給料の取り扱いとは
公休を取得している場合の給料の取り扱いについても正しく理解しておく必要があります。公休で休みを取得させる場合に「給料が発生するのかどうか」というポイントを解説します。
3-1. 給料の支払いは発生しない
毎週会社が付与する土日のような休日をイメージしてもらうとわかりやすいかもしれませんが、公休は基本的に無給です。そのため、給与の支払いは発生しません。同様に、公休扱いも無給となります。そもそも公休は労働義務がない休日であるため、有給になることはありません。
なかには、葬儀や結婚式に参加する従業員に有給で休みを与える企業もありますが、この場合は公休ではなく「特別休暇」を与えたことになるため、公休には該当しません。
ここまで公休の基本的な扱いについて解説しましたが、公休は他の休日休暇と定義が混ざりやすく、給与の扱いをどうすればよいかわからなくなりがちです。「わからなくなったときにすぐ確認できるようにしたい」という方に向け、当サイトでは本記事の内容をわかりやすくまとめた資料を無料で配布しておりますので、公休の扱いに不安のある方はこちらからダウンロードしてご覧ください。
4. 公休に有給休暇を充てられるのか
公休は「労働義務のない休み」です。有給休暇は、労働義務のある日に請求できるお休みです。つまり、もともと出勤日ではない日である「公休」に有給休暇は充てられません。混同しやすいポイントですので、正しく理解しておきましょう。
5. 公休に従業員(正社員)が出勤する際の対応
公休は会社が従業員に与える労働の義務がない日ですが、やむを得ない理由で出勤が必要になるケースも多々あるかもしれません。それでは、公休に従業員が出勤したときは、どのように対応したらいいのでしょうか。
公休に従業員が出勤するときの対応について2つのポイントを紹介します。
5-1. 割増賃金を支払う
公休に従業員が出勤したときは、割増賃金が必要になるケースがあります。割増賃金が必要になるのは、具体的に以下の2ケースです*。
法定休日に出勤した場合:休日の労働時間×135%の休日手当
所定休日に出勤した場合:1日8時間、もしくは週40時間を超えた労働時間×125%の割増賃金
法律で定められた法定休日に出勤するときは、35%の休日手当が必要になります。対して所定休日の場合は休日手当が不要ですが、労働時間が1日8時間、週に40時間を超えてしまう場合は、時間外労働に対する25%の割増賃金が発生します。
出勤する公休によって発生する賃金が異なるため、十分に注意しましょう。
5-2. 振替休日もしくは代休を付与する
公休に従業員を出勤させたら、振替休日もしくは代休を与えることが望ましいです。公休が減ってしまうと、従業員の健康やメンタルヘルスに悪影響を与えてしまうためです。
なお、振替休日は「あらかじめ休日と勤務日を指定して入れ替える制度」で、代休は「休日出勤の代わりに後から休みを与える制度」です。振替休日は休日手当が不要ですが、勤務時間が1日8時間、もしくは40時間を超えた分は25%の割増賃金がかかります。
対して、代休は休日出勤に該当するため、法定休日に出勤させた場合は35%の休日手当が必要になります。あとから休みを与えて給料を相殺することはできますが、割増賃金や休日手当の割増部分は支払わなくてはいけないことをおさえておきましょう。
関連記事:振替休日とは?定義や代休との違い、付与のルールを分かりやすく解説
関連記事:代休の定義や振休との違い・運用のポイントを詳しく解説
5-3. 自然災害時など出勤できないときの公休の扱いとは
台風の接近や地震などの自然災害が公共交通機関に影響を及ぼし、従業員が出勤することが困難になった場合、公休に該当するかどうかは会社によって対応が異なります。
例えば、企業が従業員を出勤させるのは危険と判断した場合に関しては、公休として扱われるケースが多いですが、従業員が自ら出勤できないと判断した場合に関しては、欠勤や有給消化日として扱われる可能性があります。
このような自然災害時の対応について、企業側は従業員が疑問を持たないように、あらかじめ就業規則に明記しておきましょう。
6. パート・アルバイトなどシフト職員にも公休はあるのか
パートやアルバイトなど労働時間の短い従業員に対しても、使用者は法定休日を遵守したうえで公休を与えなければなりません。
例えば、労働時間が1日2時間で働くアルバイト従業員を月1回の休みで働かせることは労働基準法に違反していることになります。
法定休日とは「従業員に最低週1日以上、あるいは4週間を通じて合計4日以上の休日を与えること」を指します。
そのため雇用形態に関わらず、最低週1日以上、あるいは4週間を通じて合計4日以上の休日を与えるよう、使用者はシフトを組まなければなりません。
7. 公休の基礎知識を理解して労働基準法を遵守した運用を!
公休とは、企業が従業員に付与する労働義務がない休日のことです。公休は「法定休日+所定休日」であり、所定労働時間が8時間であれば最低日数は年105日です。
企業は労働基準法で求められている労働時間や法定休日の要件を踏まえ、適切に公休を設定することが肝心です。公休に出勤した従業員がいる場合は、割増賃金や手当の支給が必要になります。
法定休日と所定休日の賃金計算が複雑で面倒だと感じる企業は、勤怠管理システムや給与計算システムを導入しましょう。管理の手間やミスを大幅に減らすことができます。
関連記事:休日と休暇の違いとは?休みの種類や勤怠管理のポイント
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